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侍戦隊シンケンジャーの第48話



たった一つ しかし大きな嘘で隔てられた丈瑠と流ノ介たち
ようやく想いを一つにしたのも束の間
薄皮太夫は数百年の未練を手放し 解き放たれた嘆きと苦しみは
一気に三途の川を増水させ 再び 血祭ドウコクがこの世へ

ドウコク「戻ったぜ、太夫」

レッド「血祭……ドウコク!」

一大決戦の幕が──今!













さいごの だいけっせん



薄皮太夫「はぁ、はぁ…… ドウコク……」
ドウコク「てめぇが三味線を手放すとはな。最後の音色、聞いたぜ」
薄皮太夫「そ、そうか……」
ドウコク「だが、昔みてぇな腹に染みる音じゃなかったな…… ちっとも響いてこねぇ」
薄皮太夫「うぅっ…… あれが…… ほ、本当の三味だよ。ドウコク、わちきは…… 初めて、巧く弾けた。これほど気が晴れたのは、数百年ぶりだ……」

自らシンケンピンクの剣を浴びて息も絶え絶えの太夫を、ドウコクが抱きとめる。

ドウコク「もう、俺が欲しかったてめぇじゃねぇな」
薄皮太夫「昔のようには弾けん…… 二度とな」
ドウコク「だったら…… 終わるか?」
薄皮太夫「あぁ、それもいいな……」

ドウコクを薄皮太夫を抱く腕に力をこめる。

スス木霊「タユウ、タユウ?」
薄皮太夫「お行き……」

ずっと自分に連れ添っていたスス木霊を解き放つ薄皮太夫。
シンケンジャー一同が固唾を呑む。

ピンク「ダメ…… やめて!」
ドウコク「じゃあな、太夫」

薄皮太夫の体がドウコクの体へ溶け込むように消え去り、人間のとき纏っていた衣だけが残る。

スス木霊「タユウ、タユウ?」
ピンク「薄皮……太夫……」
ドウコク「ううぅぅおおぉぉ──っっ!!」

生身のままナナシ連中と戦っていた丈瑠も、ドウコクの咆哮に気づく。

丈瑠「あれは…… ドウコクか!?」

ドウコク「シンケンジャー! 俺を騙してくれてた志葉の当主は、どこにいる!?」
ブルー「気をつけろ! 無闇に仕掛けるな」
ドウコク「出て来ぉい!」

シンケンレッド(薫)が、シンケンゴールドとともに現れる。

レッド「ここだ! 志葉家18代目当主、志葉 薫! 血祭ドウコク、今日こそお前を封印する!」
ドウコク「てめぇのような小娘に何ができる? 今日が志葉一族最期の日だ!」
レッド「最期なのはお前だ」
ドウコク「しゃらくせぇ!」
ゴールド「危ねぇっ!」

ドウコクの攻撃。危うくゴールドがレッドを連れて横っ飛びし、攻撃をかわす。

ゴールド「大丈夫か!?」
レッド「あぁ」
一同「姫様!」「姫!」
レッド「これから封印の文字を使う。だが、ある程度の時間が必要だ。みんな……頼む!」

レッドがインロウマルをブルーに、恐竜ディスクをグリーンに託す。

一同「はい!」「はっ!」
グリーン「あぁ、これで戦いが終わるんだ」
ゴールド「頼むぜ、お姫様!」
レッド「うむ」

ブルーたちがドウコクに挑む。再びドウコクの攻撃。
瞬時にブルー、グリーンがスーパーシンケンブルー、ハイパーシンケングリーンとなってかわす。

ブルー「姫に指1本触れさせるな!」
グリーン「あぁ!」
一同「うおぉぉ──っっ!!」

5人が一丸となってドウコクに斬りかかる。
しかしドウコクにはまったく通じず、逆にドウコクの嵐のような攻撃が次々に一同を襲う。

ドウコク「ハハハ、てめぇらザコに用はねぇ!」

レッドは封印の準備に入る。

ドウコク「そこかぁ!」
グリーン「待てぇ!」
ブルー「ドウコクぅ!」
ドウコク「邪魔だぁ!」

封印の邪魔をさせまいとする一同だが、ドウコクに吹き飛ばされ、ゴールドが地面に叩きつけられる。

ピンク「源太!?」

なおもドウコクに挑みかかる一同。
その間にレッドがショドウフォンで、空中に封印の文字を描き始める。
一筆ごとに筆跡が炎のように燃え上がり、空中に文字を形作っていく。


志葉家の屋敷。
じっと座している彦馬と、落ち着きのない様子の丹波。

丹波「姫…… 亡き殿の悲願を、今こそ! 神よ、仏よ、姫にご武運を……!」


レッド「くッ…… 絶対、成功させる! この日のためにこそ…… 父上……!」

ドウコクがゴールドを踏みつけ、刀を突きつける。

グリーン「やめろぉぉ!」

一同が助けに入ろうとするが、ドウコクの放つ衝撃の前に、近づくことができない。
ゴールド目掛け、刀が振り下ろされる。

ダイゴヨウ「てめぇぇ──っ! このぉ!」

間一髪、ダイゴヨウが飛来してドウコクを攻撃するが、ダイゴヨウもドウコクに吹き飛ばされる。

ダイゴヨウ「うわぁっ!」
ゴールド「ダイゴヨウ!?」
ダイゴヨウ「お、親分、もうひと踏ん張り……」
ゴールド「いくぜぇ!」

一同が力を振り絞って立ち上がり、必死にドウコクを食い止める。

ドウコク「志葉のぉぉ──っ!!」

ブルーとグリーンが互いの必殺剣を合せ、ドウコクに叩きつける。
だが2人がかりの剣撃もドウコクには通じず、逆にドウコクの攻撃が容赦なく一同に浴びせられる。

レッド「もう少しだ……」
ドウコク「させるかよぉ!」

丈瑠がナナシ連中を一掃し、戦いの場にたどり着く。

ドウコクが刀を振るう。
同時にレッドが封印の文字を書き終える。

レッド「外道封印!!」

レッドの放った文字が、ドウコクの攻撃を跳ね返してドウコクの体に命中。
そのままドウコクが岩盤に叩きつけられる。

ドウコク「ぐっ!? ぐっ……ぐわあぁぁ──っっ!!」

大爆発。火柱が上がり、ドウコクが炎に包まれる。

レッド「はぁ、はぁ……」
ピンク「ドウコクが……」
グリーン「やった!」

力を使い果たし、憔悴しきったレッドが崩れ落ちる。

レッド「父上…… ようやく、ドウコクを…… はぁ、はぁ……」

満足げに頷く丈瑠。
だが──封印されたはずのドウコクが、炎の中からゆっくりと姿を現す。
刀を振るうや、ドウコクを取り囲んでいた炎も一掃される。
体も左胸が白く変色しているのみで、他は無傷。

一同「あぁっ……!?」
ドウコク「残念だが、終わってねぇぜ」
丈瑠「ドウコク!?」
イエロー「ウソや……」
グリーン「なんで、なんでだよぉ!?」
レッド「バカな…… そんなはずは!?」
ドウコク「太夫…… てめぇの体、役に立ったぜ」
ピンク「はっ、もしかして…… はぐれ外道の薄皮太夫を取り込んだから?」


六門船。

シタリ「ふぅ、良かった…… 太夫のお陰だねぇ。半分人間の体が封印の文字から守ったんだ!」


茫然自失となるレッド。

レッド「そんな……!?」
ドウコク「全員、死ね!」

ドウコクの掌底から放たれた衝撃で、一同が炎に包まれる。

一同「わあぁぁ──っっ!!」

さらにレッドに攻撃が炸裂。変身を解除された薫が地面に叩きつけられる。

薫「う、うぅっ……」
丈瑠「!? 退くぞ!」

咄嗟に丈瑠が飛び出し、黒子が陣幕を張る。
丈瑠がショドウフォンで「煙」の字を描くと、一面に煙が満ち、それを隠れ蓑にして一同が退散する。

ドウコク「チッ、とどめはお預けか」


スス木霊「タユウ? タユウ、タユウ……?」

薄皮太夫の衣にすがりついているスス木霊。
ドウコクはスス木霊を無情に踏み潰すと、衣を手にし、隙間へと帰って行く。


夜、志葉家の屋敷。
彦馬と丹波のもと、傷の手当を受けて寝ている薫。

彦馬「命には別状ないとのこと」
丹波「何たることだ…… 封印の文字も効かず、姫の存在も知られたとなっては、先代からの策は完全に失敗! あぁ、姫ぇ〜!」
彦馬「落ち着いてくださいませ」
丹波「これが落ち着いていられるかぁ!?」
薫「た、丹波……」
丹波「あぁっ、だ、大丈夫でございますか!? お苦しくは?」
薫「失敗だった……」
丹波「はっ、誠に……無念。しかし今は、お体を……」
薫「……影はいるか?」
丹波「影が、何か?」
薫「呼んでくれ。話がしたい」
丹波「!? 姫直々になど、お、恐れ多い! 御用があれば、この丹波から」
薫「2人だけで話がしたい」
丹波「姫!?」

彦馬が丈瑠を呼びに行く。

丹波「日下部……? 日下部! 姫ぇ〜!」
薫「うるさい……」


広間では、流ノ介たち一同がうな垂れている。

源太「参ったなぁ…… 封印の文字まで効かねぇとは」
茉子「本当だったら、効くはずだったんだよ。でも、薄皮太夫が……」
流ノ介「ドウコクの奴、命拾いを…… もう一歩早ければ……」
千明「どうすりゃ…… どうやって、ドウコクを……」
ことは「お姫様、辛いやろな…… お父さんから受け継いで、一生懸命稽古してきはったのに……」


彦馬に連れられ、丈瑠が薫のもとに現れる。

丹波「影の分際で姫に直々に話など、本来なら……」
薫「丹波! 早く出てけ。2人だけで話がしたい」
丹波「は、いや、しかしそれは……」
彦馬「丹波様、姫のお言いつけでございますぞ」
丹波「ぶ、無礼があってはならんぞ! あ、あぁっ、それ以上近づいてもならん! 良いなぁ!?」

彦馬が丹波を部屋から連れ出し、障子が閉まる。

薫「……丹波」

障子が開く。聞き耳を立てていた丹波が、慌てて立ち去る。
ようやく2人きりになった丈瑠と薫。

薫「許せ。丹波は、私のことしか頭にないのだ」
丈瑠「……当然です」
薫「ずっと、自分の影がどういう人間なのかと思っていた。私より時代錯誤ではないな。私は、丹波のせいでこの通りだ……」

力なく笑う薫に、丈瑠も頬を緩める。

薫「でも…… 会わなくても、一つだけわかっていた。きっと、私と同じように一人ぼっちだろうと…… いくら丹波や日下部がいてくれてもな。自分を偽れば、人は一人になるしかない……」
丈瑠「はい…… ただ」
薫「ただ?」
丈瑠「それでも、一緒にいてくれる者がいます」
薫「あの侍たちだろう? 私もここへ来てわかった。自分だけで志葉家を守り、封印までなど、間違いだった…… 一人ではダメだ」
丈瑠「俺も……やっと、そう思えるように……」

丈瑠の脳裏に、流ノ介たち5人の笑顔がよぎる。

薫「丈瑠…… 考えがある」


六門船の浮かぶ三途の川。
稲光が飛び交い、川面の水が激しく揺らめいている。

シタリ「おぉ…… もうすぐ川があふれるよ! 太夫のお陰で、お前さんも水切れの心配はなくなったし、封印の文字も効かない! あたしたち外道衆も、好きなだけ人の世に出て行けるってもんさね!」
ドウコク「あぁ……」
シタリ「ん?」

ドウコクが、薄皮太夫の衣を六門船の外へ投げ放つ。

シタリ「何っていうんだろうねぇ、外道衆のあたしたちに念仏もないだろうし…… ドウコク、お前さんも因果だねぇ」

衣が川面へと沈んでいく。

ドウコク「……行くぜ」


あくる日、志葉家の広間。
右腕を包帯で吊ったままの薫のもと、流ノ介たち5人、彦馬、丹波、黒子たちが勢ぞろいする。

薫「みんな揃ったか」
流ノ介「はっ!」

薫が上座を立つ。

丹波「姫、ご無理をなさっては……」
薫「外道衆は待ってはくれない! 戦いを前に、伝えることがある。封印の文字が効かない以上、私は…… 当主の座から離れようと思う」
丹波「え!? しかし、シンケンレッド抜きにしては、た、戦いが……」
薫「シンケンレッドはいる。丈瑠!」

丈瑠が現れる。
流ノ介たちが無言で見守る中、丈瑠が静かに進み出、薫に代わって上座につく。

丹波「姫……? この者は影でございますぞ!? こ、こらぁ! 影の分際で!」
薫「影ではない!」

黒子が志葉家の家計図を示す。
初代・志葉烈堂から続く家系、薫の次の代に、なんと丈瑠の名がある。

薫「私の養子にした」
丹波「……はぁ!?」
流ノ介「え!?」
茉子「ウソ!?」
千明・源太「へ!?」
ことは「お母さんにならはったんですか?」
薫「そうだ」

ことはの相変わらずのボケに、源太がコケる。

千明「マジかよ……」
薫「封印の文字は使えなくても、丈瑠のモヂカラは戦うには充分。跡継ぎがなければ養子を迎えるのは、昔からあることだ」
丹波「め、メチャクチャでございます! 大切なのは、志葉のチ・ス・ジ! だいたい、子供のほうが年上ではございませんか! とにかく、いいから早く降りろ!」
薫「無礼者! 年上であろうと、血が繋がってなかろうと、丈瑠は私の息子。志葉家19代目当主である! 頭が高い! 一同、控えろ!」

満面笑顔となった一同が、わざとらしくひれ伏す。

一同「ははぁ〜っ!!」

丹波も観念した様子で、しぶしぶ頭を下げる。


街中。
通行人が行きかう中、どこからか轟音が響く。

人々「あれ、何の音だ……?」

ビルとビルの間、歩道の排水溝、ありとあらゆる「隙間」が赤く光る。


志葉家。

丹波「恐れながら、お尋ねいたします。封印の文字が効かぬ今…… 一体どのように、ドウコクを倒すおつもりであるか?」
丈瑠「策ならある」

身を乗り出す一同に、丈瑠が自信ありげな表情で切り出す。

丈瑠「力ずくだ」
一同「……?」
丹波「は? ……そ、それの……どこが、策?」
茉子「プッ!」
千明「ハハッ、そりゃそうだ」
茉子「確かに、倒すしかないんだもんね」
流ノ介「おぉっ! 殿、素晴しい策ですぞ!」
ことは「うち、頑張ります!」
丹波「お前たち……」

半ば呆れ気味でガックリする丹波に、源太が笑顔でサムズアップ。

丈瑠「それに、封印はできなかったが、ドウコクにダメージは与えている。志葉家の火のモヂカラが有効なのは間違いない」

丈瑠が新たな赤い秘伝ディスクを取り出す。

丈瑠「姫が……いや、母上が作った志葉家のモヂカラのディスクだ。封印することはできないが、俺でも使えるし、今なら倒せる可能性はある。ギリギリの戦いになるのは、間違いないがな」

そのとき、隙間センサーが反応。
大量の知らせ棒が、滝のように次から次へと吐き出される。

源太「おいおいおい、何だこりゃあ!?」
流ノ介「これは!?」
彦馬「三途の川があふれた……」


街中。

ビル街の隙間から三途の川の水が、一気に大量にあふれ出る。
そして怒涛のごとく流れ出る水に乗り、ドウコクとシタリを乗せた六門船がついに、この世に姿を現す。

ドウコク「飲み込めぇ! 人間どもを好きなだけ苦しめろぉ!!」

ドウコクの号令でナナシ連中が街中にあふれ、人々が逃げ惑う。

ドウコク「この世は外道衆のもんだぁぁ!!」


志葉家。
隙間センサーから大量の知らせ棒が、際限なく流れ続けている。

千明「やるしかねぇよ。だろ?」

頷き合う一同。

源太「丈ちゃん!」
丈瑠「あぁ」
彦馬「殿のご出陣──!!」


荒野。

陣太鼓が響き、志葉家の幟が掲げられる。
黒子の張った陣幕を背に、袴姿の丈瑠たち6人が登場する。
目の前には外道衆たちが、地平線を埋め尽くさんばかりにあふれている。

千明「おぉ〜、いるねぇ」
源太「久々の殿様ご出陣だぁ! こんぐらいじゃねぇとなぁ!」
丈瑠「どうあっても外道衆は倒す。俺たちが負ければ、この世は終わりだ!」
一同「おぅ!」「はい!」

丈瑠「お前たちの命…… 改めて預かる!」
流ノ介「元より!」
千明「当〜然でしょ!」
茉子「何度でも預けるよ!」
ことは「うちは何個でも!」
千明「はは! いや、1個だから」
源太「じゃ、俺たちは2人合せて、さらに倍だぁ!」
ダイゴヨウ「持ってけ泥棒!」

一同「一筆奏上!」「一貫献上!」「ハァッ!!」

ショドウフォンとスシチェンジャーを振るい、一同がシンケンジャーに変身する。

レッド「シンケンレッド、志葉丈瑠!」
ブルー「同じくブルー、池波流ノ介!」
ピンク「同じくピンク、白石茉子!」
グリーン「同じくグリーン、谷千明!」
イエロー「同じくイエロー、花織ことは!」
ゴールド「同じくゴールド、梅盛源太!」
レッド「天下御免の侍戦隊!」
一同「シンケンジャー、参る!!」


名乗りを決めた6人が、陣太鼓の音を合図に刀を抜き、ナナシ連中の大群目がけて駆け出す。

一同「はぁぁ──っっ!!」



ついに決戦のとき 後のないシンケンジャーは
果たしてドウコクを 外道衆を打ち破ることができるのか
シンケンジャー第四十八幕 次回 いよいよ最終幕へ続きます



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「アニメ、漫画、特撮の最終回」の「さ行」から
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