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鳥人戦隊ジェットマンの第50話


公園の池で、竜、雷太、アコが楽しげにボートで遊んでいる。

アコ「ほ〜ら」
竜「ほれ雷太、早く来い、ほら!」
アコ「雷ちゃん、早く早く!」
雷太「くっ……待てぇ、竜!」
アコ「頑張って!」
竜「ははっ、待ったないよ〜だ!」
アコ「雷ちゃん、頑張ってぇ!」

その楽しげな様子を、ベンチに掛けた凱と香が眺めている。
香は微笑ましく3人を眺めているが、凱の表情はどこか苦々しい。

香「良かった……竜、すっかり立ち直ったみたいね。リエさんを失った悲しみから」
凱「そう思うか?」
香「え?」
凱「気に入らねぇなぁ……どうも……」

最愛の恋人を永遠に失ったにも関らず、元気すぎるほど元気な竜……凱は彼の本当の気持ちを悟っているかのようだ。


それぞれの死闘


鳥人戦隊基地、スカイキャンプ。

夜中、竜が1人でジェットストライカーの改造に取り組んでいる。
途中、ふと手を止めて、クロスチェンジャーに貼ったリエの写真を見つめる。
リエの死に際の言葉が頭を過ぎる。

(リエ『竜、来ないで! これで、これで良かったのよ、竜……私の手は、血で汚れてしまった……』『あなたの胸から、私の記憶を拭い去って……』)

竜の目から涙が零れ落ち、テーブルに拳を叩きつける……


次元戦団バイラム、魔城バイロック。

ラディゲが一輪の花を手にしつつ、リエが自分に剣を浴びせたことを思い出している。

(ラディゲ『謀ったな……マリアァッ!!』)
(リエ『せめて……せめて一太刀、お前に浴びせたかった、ラディゲ!』)

自分が独占した筈のマリア = リエが自分に歯向かった……彼は手にした花を握りつぶし、周囲にばら撒く。


後日、昼間のスカイキャンプ司令室。

アコ「アコさん特製の美味しいコーヒー。どうぞ! はい、香ちゃんどうぞ」
香「ありがとう」
アコ「凱は自分で取ってね。1杯千円」
凱「あぁ?」
アコ「これは長官に……長官、美味しいコーヒー、どうですか?」
長官「どうもありがと!」

そこへ雷太が飛び込んで来る。

雷太「大変だ、みんな! 竜が、竜が……! はぁ、はぁ……」
長官「どうしたの!?」
雷太「竜がいなくなっちゃったよぉ!!」
一同「えぇっ!?」
長官「竜が……? どういうことなの!?」

雷太が差し出した置き手紙を、小田切長官が受け取る。



長官、みんな、俺はリエの仇を取りに行きます。
これは、個人的な行動です。
俺は今、地球のため、平和のために戦うことができません。
明らかに、俺は戦士として失格です。
従って、今日限りで、鳥人戦隊を脱退します。

  すまない、長官、みんな

                  竜



凱「くっ……あの野郎!」

凱が置き手紙を床に叩きつけ、飛び出してゆく。
雷太たち3人も後に続く。

長官 (焦っちゃ駄目、竜……個人的な感情に流されては、バイラムには勝てない!)


竜が単身、バイクを飛ばして決戦の地へ向かう。


ラディゲ「むっ! 感じる……レッドホークの波動を! 決着の時だ、レッドホーク!!」


凱のジェットスピーダー、雷太たち3人のジェットバンサーも竜を追って走る。
その彼らの前に、バイラムのロボット幹部、グレイが立ち塞がる。

凱「グレイ!」

スピーダーから降りる凱。雷太たちもバンサーから降りて凱と共に立ち向かう。

凱「行け!」
一同「えぇっ!?」
凱「ここは俺に任せろ! 今の竜には助けが必要だ……行け!」
アコ「でも凱……」
凱「馬鹿野郎! 俺を信じろ!」
雷太「……わかった、行こう!」
香「うん……」

雷太たちがバンサーに戻り、走り去る。

凱「いよいよサシで勝負だな、グレイ……しかしよぉ、不思議なもんだ……なぜかわからねぇが、お前とは戦いたくねぇ」
グレイ「言うな、ブラックコンドル……いや、結城凱。私は戦士。戦うことが定めなのだ」


竜が辿り付いた場所は、ラディゲがリエを斬殺したあの海岸。
リエがラディゲに手傷を負わせた、レッドホークのブリンガーソードが地面に刺さったままになっている。

虚空からラディゲが出現する。

ラディゲ「もはや言葉は要るまい……レッドホーク!」
竜「リエの仇、お前だけは……お前だけは許さん!!」

竜の体が炎で燃え盛る如く、レッドホークへと変身を遂げる。
そして、地面に刺さったブリンガーソードを手にする。


凱とグレイが対峙する。
木々から大勢の鳥たちが飛び立ち、それを合図にしたかのように戦いの火蓋が切られる。
生身の凱に、グレイが容赦なくパンチの連打を浴びせる。

凱「このぉ……クロスチェンジャー!」

凱がブラックコンドルに変身。

ブラック「ブリンガーソード!」


海岸では、レッドホークとラディゲの戦いが展開されている。
レッドのブリンガーソード、ラディゲの魔剣ブラディゲートの鍔迫り合い。
ラディゲが衝撃波を放てば、レッドもバードブラスターを撃ち返す。
激戦の最中、レッドが渾身の力でラディゲの背後に回りこみ、羽交い絞めにする。

レッド「ジェットストライカー!」

ジェットストライカーが飛来。必殺武器ファイヤーバズーカに変形する。

レッド「スコープ・ロック!」

ファイヤーバズーカが無人のまま宙に浮き、砲門がラディゲを捉える。

レッド「見たか! ファイヤーバズーカをオート・コントロールに改造したんだ。俺と一緒に地獄に堕ちろ、ラディゲ!」


ブラックコンドル対グレイ。

グレイがブラックコンドルを投げ飛ばす。
尚も手刀を振り下ろすグレイに、ブラックがキックの連打で応酬する。
まさに実力は伯仲だ。


海岸でのレッドホークとラディゲの戦い。

ラディゲ「ハハハハ……どうやら俺の力を見くびったようだな、レッドホーク」
レッド「何!?」
ラディゲ「ハハハハ!」
レッド「ファイヤー!!」

ファイヤーバズーカがプラズマ弾を発射。
だがラディゲが口からビームを放ってプラズマ弾を押し戻す。
ファイヤーバズーカが爆発四散──

レッド「これは……!?」

呆然とするレッドをラディゲが振り解き、衝撃波を浴びせる。
ダメージで変身が解除され、竜の姿に戻ってしまう。

ラディゲ「今の俺の力は、以前の比ではない!」
竜「くっ……!」
ラディゲ「最期だな……」

ブラディゲートを振るって突進するラディゲ……!
突如、その足元に銃撃が放たれる。

駆けつけてくる雷太たちのジェットバンサー。

雷太たち「竜──!」「竜!」

バンサーを停め、3人が竜へ駆け寄ろうとする。

香・アコ「竜!」
竜「来るなっ!!」
雷太「竜!?」
竜「これは俺の戦いだ……リエの仇は、俺の力で取る!」
ラディゲ「フッ、健気な……今すぐ愛しい愛しいリエのもとに送ってやる!」

竜目掛け、ラディゲがとどめの衝撃波を放つ。
咄嗟に香が飛び出して盾となる。

香「竜! ああぁぁ──っ!?」

衝撃波の直撃を食らった香が倒れる。

竜「はっ、香!?」
アコ「香!?」
雷太「香さん!?」

気を失った香を、竜が抱き起こす。

竜「香! しっかりしろ、香! 香ぃっ!!」


スカイキャンプで小田切長官が状況をモニターしている。

長官「香が危ない……竜、逃げるのよ!」


意識を取り戻した香を抱え、竜がひとまず撤退、近くの小屋へ逃げ込む。
脚を抑える香。

香「うっ……」
竜「香……? 香、しっかりしろ」
香「大丈夫、たいしたことないわ」

竜がハンカチで応急手当を施す。

竜「大丈夫か?」


ブラックコンドルは依然、グレイとの激戦を続ける。

ブリンガーソードがグレイの胴体を切り刻む。
だがグレイがブラックを投げ飛ばすと、肩のグレイキャノンで砲撃。
凄まじい爆撃に吹き飛ばされながらも、ブラックはバードブラスターとビークスマッシャーの同時撃ちで反撃。
グレイの左腕とグレイキャノンがちぎれ飛ぶ。
それでもグレイは右腕の銃・ハンドグレイザーで反撃。
銃撃にブラックが倒れる。ヘルメットのバイザーが砕け、素顔が覗く。


竜たちの避難した小屋。
竜は座り込み、頭を抱えている。

香「今の竜を見たら……きっとリエさん、悲しむわ」
竜「何?」
香「今の竜は戦士じゃない……ただ闇雲に突っ走っているだけ……リエさんは、戦士としての竜を愛したはずよ?」
竜「……」
香「私たちはジェットマンなのよ? 地球のため、平和のために、5人の力を合わせなければ、バイラムには勝てない!」

不意に竜が立ち上がる。

香「どこに行くの、竜!?」
竜「リエの仇を……リエの仇をこの手で……!」
香「駄目! 思い出すのよ、竜! リエさんの、最期の言葉を!」
竜「……」
香「思い出して、竜……リエさんが、あなたに言った最期の言葉を……『竜、忘れて……私のことを……あなたの胸から、私の記憶を拭い去って……』」

竜の視界の中、リエの言葉を復唱する香の姿が、リエ自身へと変わってゆく。

リエ「あなたに、憎しみのために戦ってほしくない……平和のために、正義の戦士として生きてほしい……」
竜「リエ!!」

竜とリエが抱き合う。


ブラックコンドルは深手を負いながらも、かろうじて立ち上がる。
爆撃の最中でブラックが取り落としたブリンガーソードを、グレイが拾い上げる。

グレイ「これまでだ、結城凱……」

グレイがブラックに歩み寄り、ブリンガーソードを突きつける。

グレイ「とどめだ!」

ブリンガーソードが振り下ろされる瞬間、ブラックが渾身の力でジャンプしてそれを避け、さきほどちぎれ飛んだグレイのグレイキャノンを手にする。

ブラック「勝負は終わってねぇぞ、グレイ!」

グレイキャノンの砲撃がグレイ自身に炸裂。
爆撃で、グレイの手にしていたブリンガーソードが宙を舞う。
そのソードをブラックが受け取り、遂にグレイの胴を貫く──!

グレイ「ぐわぁぁ──っ!?」


一方の竜たち。

リエ「竜……目を覚まして。戦士としての、あなたに戻って……」
竜「リエ……」

リエが竜にすがりつき、竜がリエの肩を抱く。
ふと、我に返った竜が、目の前にいるのがリエではなく香であることに気付く。

竜「あ……?」
香「お願い、竜……リエさんの気持ちを、無駄にしないで!」
竜「香……!」


遂にグレイを倒したブラックコンドル。
変身を解除して凱の姿に戻り、倒れたグレイのもとへ歩み寄る。

グレイ「見事だ……結城凱……」
凱「……」
グレイ「行け」
凱「グレイ……」
グレイ「私は戦士……最期の姿を見られたくない……」

グレイが葉巻を咥える。
凱が懐からライターを取り出し、火をつける。

そして一度だけグレイの方を振り向くと、その場を後にする。

グレイ「マリア……」

グレイの脳裏に、愛するマリアが奏でるピアノの音色が響き渡る。
やがて、その腕が地面に倒れ、瞳の光も消える──


海岸での戦い。
生身の雷太、アコをラディゲが容赦なく痛めつける。

ラディゲ「地獄へ行け……ブルースワロー、イエローオウル!」

そこへ、香を抱いた竜が現れる。

竜「そこまでだ、ラディゲ!」
雷太「はっ、竜!」

竜が香を地面に降ろす。

竜「大丈夫か、香?」
香「脚が折れたって、戦うわ!」
ラディゲ「4人揃ったところで、何も変わらんぞジェットマン!」

そこへ凱も現れる。

凱「4人じゃねぇ! 5人だぁ!」
一同「凱!」
竜「本当の戦いはこれからだ、ラディゲ! 俺たち5人、ジェットマンのすべての力を見せてやる! みんな、行くぞぉ!」
一同「おぅ! クロスチェンジャー!!」

最後の変身を遂げる5人。

レッド「レッドホーク!」
ブラック「ブラックコンドル!」
イエロー「イエローオウル!」
ホワイト「ホワイトスワン!」
ブルー「ブルースワロー!」
レッド「鳥人戦隊!」
一同「ジェットマン!!」

ラディゲ「小癪なぁ……」

ラディゲが一際強力な衝撃波を、ジェットマン目掛けて放つ。
だがジェットマンはジェットウイングで宙を舞い、それをかわす。

ラディゲ目掛けて急降下するジェットマンたちの体が、炎と化して燃え上がる。
5人がひとつとなり、巨大な火の鳥と化してラディゲの体を貫く。
最強最後の必殺技、ジェットフェニックスが炸裂──!

ラディゲ「がああぁぁ──っっ!!」
レッド「見たか、ジェットマンの真の力を!」
ラディゲ「くっ……ジェットマンの真の力、確かに見た! 次は、俺の真の力を見せてやる!!」
レッド「何!?」

ラディゲが魔剣ブラディゲートを高々と掲げると、その体が光に包まれ、見る見る巨大化する。
その姿は紛れもなく、かつてジェットマンを震撼させたあの謎の巨大獣──ラゲム。

レッド「あれは!?」
ホワイト「あの怪物の正体が、ラディゲだったなんて!?」


ジェットマンに、最後の戦いの時が、そして最強の敵が迫っていた──


つづく


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