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大岡裁きの巻(死神くん7巻)

むかしむかし大岡越前という悪人を裁く御奉行がおりました
ある日ひとりの子どもにふたりの母親が現れどちらが本当の母親かを決める
裁きが行われました
大岡越前は子どもの手を引っ張り合い奪い合うように言いました
ふたりの母親が子どもの手を引っ張り合うと子どもは痛がって大声で泣きだしました
すると片方の母親が手を離してしまいもう片方の母親が自分こそ本当の母親だと言いました
しかし大岡越前は先に手を離した方が母親だと裁きを下しました
「本当の母親ならば子どもが痛がっているのを無理に引っ張るはずがない」
そういって子どもは手を離したやさしい本当の母親のもとにもどりました

由美「ふーん 優しい方が本当のお母さんだったんだね
ひろ子「そういうこと!はいもう寝なさい!
由美「はーい
おやすみなさーい
ひろ子「ハイ!おやすみ
ひろ子の夫「ふー 引越しの荷物は半分も片付いてないよ
ひろ子「あとは明日にしましょう
窓から外を見つめるひろ子
ひろ子「私 戻ってきたのね 20年ぶりのふるさとよ
ひろ子の父「いやあすまないね
持病が悪化して店を手伝ってもらうはめになっちまって・・・
夫「いいんですよお父さん
会社が倒産して就職口がなくて困っていたんですから
自分もサラリーマンよりこんな商売の方がむいてるんじゃないかって思っているんですよ
ひろ子「あーそれは考えが甘いな
朝がすごく早いんだからねー 低血圧のくせに
夫「だいじょうぶだ
ひろ子の父「それよりひろ子
ひろ子「なあに?お父さん
ひろ子の父「小夜子のことなんだが
ひろ子「え
ひろ子の父「でるんだよ
ひろ子「でるって?
ひろ子の父「これだよ これ
ひろ子「これってオバケ?
ひろ子の父「幽霊と言ってくれ
中乃口川の川原に小夜子の幽霊がでるんだよ
ひろ子「お姉さんの幽霊?
アハハハハ なに言ってんのよ
ひろ子の父「本当だ目撃した人が何人もいる
自分の娘とは言え怖いこっちゃ
ひろ子(お姉さん・・・)

〜回想〜
車に乗っている親子3人
前から向かって来たトラックを避けようとして急ハンドルを切る
車は川原に転落
救急隊が駆けつける
隊員A「子どもがいる まだ息があるぞ!!
隊員B「早くしろ!!
隊員A「よし もうだいじょうぶだ
〜葬式〜
由美「お母さんどこいったの?ねェ・・・お母さん
ひろ子「由美ちゃん
由美「おばさん
ひろ子「今日から私がお母さんよ
回想終了

ひろ子「そうかあれからもう4年も経つのか
ひろ子の父「由美もすっかりなついてうまくやってるじゃないか
ひろ子「そんなことないわ
窓から外を見ながら
ひろ子「あの子は
私のことまだ一度もお母さんてよんでくれたことないのよ
ふとんの中で話を聞いていた由美
由美(だって私の本当のお母さんは・・・)

お母さんが死んだ川原にやってきた由美
由美(この川原でお母さんは・・・・・・)
小夜子「由美!由美じゃないか
小夜子の幽霊が現れる
由美「お・・・お母さん!?
小夜子「ずっと待っていたんだよ由美・・・
由美「キャーッ
走って逃げる由美
振り返ると小夜子はもういなかった
死神「よう!気をつけなよ
突然現れる死神、驚く由美
死神「あの人とは付き合わない方がいいぜ
由美「な・・・なあに?
あんた何年生?チビのくせに!
死神「子どもじゃないんだけどな
とにかくあのおばさんは危険だからな
去っていく死神

場面変わって由美の自宅(八百屋)
ひろ子の夫「さあいらっしゃいいらっしゃい今日はトマトが安いよ!!
由美「ただいまー
ひろ子「おかえり 由美!
由美「あのね今日ね学校で・・・
ひろ子「忙しいからあとでね
ひろ子は由美の話を聞かずに店の方へ
由美「つまんないの
部屋に入る由美
死んだお母さんの写真を見つめる

〜夜〜
ひろ子「えっと売り上げが・・・ 明日の仕入れは・・・
由美「ねェ見て ホラ今日のテスト!
ひろ子は見向きもしない
ひろ子「由美ちゃん悪いけど忙しいから早く寝なさい わかった?
由美の手には100点のテスト
仕方なく布団をしいて寝る由美

再び川原にやってきた由美はお母さんの幽霊と話す
小夜子「由美ちゃん!
由美「お・・・お母さん
小夜子「そうだよお母さんだよ 思い出してくれたんだね
さあ行きましょう
由美「どこへ行くの?
小夜子「いい所だよ
通りすがりの人、楽しそうにひとりで話をしている由美を見て
「ん なんだいあの子 ひとりで何やってんだ
空から様子を見ている死神
死神「ほかの人には彼女の姿は見えないだろう
でもあの子には見えているんだ
ほかの誰よりも見えるんだ
このままじゃまずいことになるぞ

〜再び夜〜
ひろ子「だめだわ売り上げが落ちてきてるわ
夫「うーむ
おまえこの前つり銭間違えただろう!?
ひろ子「なによ あんたこそ手アカだらけで汚いって苦情がきたわよ!!
夫「まったく計算が弱いんだからな
ひろ子「あんたどなりすぎでつばがとんで汚いってさ!!
夫「なんだ やんのかてめー
ひろ子「なによ甲斐性なし!
ひろ子の父「よさんか!
店のことはどうでもいい
たまには由美といっしょに外でも遊びにいったらどうだ
夫「そうだな 気晴らしにどこか行くか・・・
このごろぜんぜんかまってやれないし・・・・・・
ひろ子「あの子 最近楽しそうに帰ってくるわ
きっと学校で友だちがたくさんできたのよ・・・
あの子のことは心配いらないわ
それに・・・
どうせ・・・私の子どもじゃないしね・・・
夫「なんてこと言うんだおめーは!!
ひろ子「うるさいわね あんたに私の気持ちがわかるの!?
どんなにつくしても”お母さん”って呼んでもらえないのよ!!
夫「オレだって”おじちゃん”って呼ばれてんだぞ
二人の目には涙が
ひろ子の父「やめんか!!

布団の中で話を聞いていた由美
こっそり家を抜け出し川原へ
由美(ごめんね おじさん おばさん
いままで育ててくれてありがとう
由美はお母さんといっしょに行きます)

由美の家、酒を飲んでいるひろ子
死神が現れる
死神「オイオイ大変なことになったぞ
ひろ子「な・・・・・・
なによ!!あんた
どこから入ってきたの!?
死神「のんびり酒なんか飲んでる時じゃない 由美ちゃんが大変だ
ひろ子「由美が?
ひろ子は由美の部屋を覗くが、由美はいない
ひろ子「由美!!
ど どこへ!?
死神「信じてもらえるかどうかわかんないがあんたのお姉さんの所へ行った
ひろ子「お姉さん!?
死神「幽霊が出るってうわさされてただろう?
ひろ子「まさか・・・
死神「しかし幽霊じゃない ”意識”だ
4年前の・・・あの事故の時だ

小夜子の魂「由美!由美は!?
死神「だいじょうぶ あんたがクッションがわりになってケガひとつしてないよ
小夜子の魂「由美も由美もいっしょにつれてきて!!
死神「バカ言うなよ
小夜子の魂「由美は私の子よ!!だれにもわたしはしない!!
死神「オイオイ
小夜子の魂「由美ーっ!!

死神「いつでも いっしょにいたいという気持ちがよほど強かったのだろう・・・
魂は霊界へ行ったが 彼女の意識は地上に残った・・・
引っ越したことも知らず彼女はずっと待った
その間意識はどんどん強くなった
さっ早く来るんだ でないと大変なことになる
彼女は由美ちゃんを連れて行く気だ
ひろ子「ど・・・どこへ・・・
死神「彼女が死んでいった世界・・・
つまり霊界だ
それは死を意味する!!
ひろ子「そんな!!由美ちゃん!!
川原に向かうひろ子と死神

ひろ子「お・・・お姉さん
死神「怖がっちゃだめだ!
小夜子「ひろ子・・・この子を育ててくれてありがとう
わるいけど返してもらうよ
ひろ子「な・・・なんてこと言うの!!
そ・・・そんなことしたら由美は・・・
小夜子「さあ行きましょう
由美「うん
小夜子は由美の左手を握り上空へ
由美「あ・・・
ひろ子「由美!
ひろ子は由美の右足をつかみ止めようとする
ひろ子「やめて!お姉さん
由美はもう私の子よ!!
小夜子「なにを言っているの 由美は私の子だよ
ひろ子「お姉さんは死んだのよ
今のあなたに由美は育てられないわ!!
上空へと引っ張られる由美
由美「う
小夜子を下へ押し戻そうとする死神
死神「すごい意識の力だ
ひろ子「由美ちゃん 行っちゃだめよ!!
あなたのお母さんは私よそうでしょ!?
何も答えない由美
ひろ子「どうして?どうしてなの由美ちゃん
どうして私をお母さんて呼んでくれないの!?
由美「だっておばさんは継母っていうんでしょ?
それは本当のお母さんじゃないってみんな言ってるもん
ひろ子「血のつながりはなくても私はお母さんよ
由美ちゃんが私のことお母さんって思ってくれればそれでいいのよ!!
由美「いやだ!!ふたりもお母さんいらないもん!!
私のお母さんはこの世でひとりしかいないもん!!
さらに上へと引っ張られる由美
由美「いたあい!!いたいよォ!!
思わず手を離すひろ子
由美はそのまま小夜子に上空へと連れて行かれてしまう
ひろ子「ああ 由美!!
そんな・・・そんな
由美ーっ
小夜子を下に押し戻そうとする死神
死神「すごい力だ
もうどうすることもできない!!

由美「どうして・・・どうしてなのお母さん
どうして無理やり手を引っ張ったの?
私が痛いってさけんだのにどうして・・・
小夜子「なにをいってんだい由美 やっとふたりになれたんだよ
由美「おばさんは手を離した
それはやさしいから
それは由美の本当のお母さんだから・・・?
ひろ子との思い出を回想する由美
由美「手を離した方がお母さんなんだよ
小夜子「どうしたの?由美ちゃん
由美「手を離して!
やさしい方が本当のお母さんなんだ!!
私のお母さんはあの人だよ!!あんたなんかお母さんなんかじゃない!!

川原で泣いているひろ子
ひろ子「由美・・・由美・・・ゆ・・・
空から由美が落ちてくる
ひろ子「由美!!
キャッ!!
なんとか水の上で由美を受け止める
ひろ子「由美ちゃん!由美ちゃん
由美・・・
由美「お母さん・・・
しっかりと抱き合うふたり
空から様子を見ていた死神の独り言
死神「由美ちゃんの一言で意識が消えた・・・
でも死んでいったお母さんを恨んじゃだめだよ由美ちゃん!

〜後日川原にて〜
花を供え手を合わせるひろ子と夫と由美
ひろ子「そういえばお姉さんは店の仕事もやりながら
由美ちゃんのめんどうもちゃんと見ていたわね・・・・・・
私も見習わなくちゃ!
さっ行きましょう!
由美「うん
夫「オイオイ
どうしていきなり遊園地に行くんだよ!?
店はどーすんだよ!?

終わり

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