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ドラゴンクエストZ オルゴ・デミーラの歩み 第7章 後編

ぐふう・・・!!・・・ふふふ・・・神は滅びた・・・。これで、人間世界を思いのままに支配できる!!
それにしても、神のやつめ・・・。最後のわるあがきとは言え、我にこれだけの傷を与えるとは・・・。
いまいましいやつめ・・・!!
・・・傷が深すぎて、とても行動できん・・・!!くそ・・・!この傷さえ無ければ我が・・・!!
・・・まあ、良いだろう。人間世界はすでに、我の下僕どもがすでに支配した。人間どもは抵抗できまい。
・・・く!・・・この傷を完全に癒すには、しばらく時間が必要のようだ・・・。
「誰かいるか!!伝えたいことがある!!」
呼ぶと、我の下僕である魔物が1匹現れた。
「ははっ!オルゴ・デミーラ様!!なんでございましょう?」
「我が受けたこの傷を癒すために、しばしの眠りにつく。人間世界のことはすべてお前達に任せたぞ。」
「・・・しかし、報告などはどういたしましょう?」
「・・・勝手にしろ。とにかく我は傷を癒したいのだ。この傷が治らぬ限り、魔力も思うように操れん。」
「わかりました。・・・あ、それからオルゴ・デミーラ様の元で働きたいと申す、女戦士がここに・・・。」
「・・・なんだと?・・・どこから連れてきた?」
「ウッドパルナです。」
「・・・通せ。」

・・・以外だ。我の元で働きたいと言う者がいるとは。しかも、人間・・・。
「・・・我が魔界によく来たな。我が魔王オルゴ・デミーラなり。・・・人間が何の用だ?」
「・・・私は、『マチルダ』と申す者です・・・。ここに来た理由は、
人間達に、しかえしをしたいからです・・・。」
「・・・しかえしだと?」
「・・・はい。実は・・・。」
マチルダと言う女戦士の話によると、最愛の兄が魔物との戦闘にただ一人挑んだらしく、
その後に援軍を必ず送ると言う、村人達の言葉を裏切られたあげく、その兄は戦死した・・・。
兄を裏切った村人達にしかえしをしたい、と言うことらしい。
「・・・理由はなんにせよ、ここで働くにはまず魔界の住民として、生まれ変わらなければならん。」
「・・・魔界の住民・・・?」
「そうだ。その人間の姿で我の元で働くことは出来ん。姿を魔物に変え、魔物として生きるのだ。
そして、我の元で働くと言ったからには、永遠に私の元で働くのだ。良いな?」
「・・・わかりました・・・。」
「ではまず、その人間である姿を今から魔物の姿に変えてくれよう!!」
我は、指先からぶきみなひかりを放ち、女戦士マチルダに浴びせる。
すると、みるみるうちに姿が魔物の姿に変えられていく・・・。
「ふふふ・・・。では、マチルダ。人間世界へ行け。
そして、仲間の魔物どもと協力して、人間世界を支配して来い!」
この言葉を聞いたマチルダは、無言のまま人間世界へ行った。魔物の姿になって・・・。
「・・・では、我はこの傷を癒してくるぞ。」
「わかりました。おやすみなさいませ。」
そう伝えると、我はこの魔城を後にする。

その後、魔界の異空間に来た我は、その傷を癒すためにしばしの眠りについた・・・。
しかし、その眠りから覚めたのは、遅くは無かった。
ある報告により、我は目覚めた。しかし、傷はまだふさがってはいなかった。

「オルゴ・デミーラ様!!」
「・・・なんだ?我の眠りを邪魔しよって・・・。何か事件でも起きたのか?」
「・・・ウッドパルナが、解放されました!!!」
「な、なんだと!?」
「申し訳ありません!!突然現れた人間どもが、それもたったの3、4人の・・・。」
「貴様らは何をやっていたのだぁ!!!マチルダはどうした!マチルダは!?」
「・・・裏切りました!!」
「裏切りだと!?」
「やはり、人間としての心が残っていたのでしょうか!人間どもと協力しながら、次々に仲間を倒していき、
ついには、ウッドパルナを支配していた魔物は全て倒されてしまいました!!」
「・・・愚かな・・・。そのわずかな人間どもに、なぜお前らが敗れた!?」
「・・・そ、それは・・・。」
「ええい!!もう良い!!マチルダを呼べ!!!」
「それが・・・マチルダは死にしました。」
「死んだだと!?」
「人間どもに、魔界の仲間だと告げたらしく、その裏切りのむくいと言ったところでしょうか。
あっさりと倒されてしまいました!!」
「・・・この程度の使い道しかなかったのか、あのマチルダの奴め・・・。
・・・それで、その3人組の人間達は、どんなやつらだ!?」
「・・・エスタード島の人間達です!しかも、子供の!!」
「エスタードだと!?」
そう、この時エスタード島にはまだ魔物を向かわせていなかった。
しかし、今頃向かわせるわけには行かなかった。ほとんどの魔物が、他の大陸に行っているからだ。
「・・・名前は!?」
「緑色の服の子供が、『アルス』。黄色の髪をした王子のような子供が、『キーファ』。
そして、女の子までいました!!『マリベル』と言う名前らしいです!」
「ぬぬぬ・・・、まさかそこから人間どもが来るとは・・・。しかしどこから?
過去の世界へ来ることなど・・・。」
その時、はっとした。あの人間どもがどうやって、過去の世界へ行ったか。
あの不思議な遺跡の石版だ。あそこから入ったようだ。
しかし、あの時もはや誰も入れないように、石版を粉々に砕きいたる地方へ飛ばしたはず・・・。
「あの人間どもめ!!石版を完成させたな!!!」
「・・・いかがいたしましょう!?」
「我の傷がまだ治っていないと言う時に!!なんと言う役立たずどもだ!!!」
「申し訳ございません!!・・・しかし、原因はあの人間どもが・・・!」
「やかましい!!我に言い訳など無用だ!!!他の大陸に向かったモンスターどもにも
その人間どものことを伝えろ!!!」

なんてことだ・・・。まさかたったの3人の人間どもに、しかも子供だと!!
なぜ、こんなにも簡単に解放された!!!
怒り狂っていた我は、もはや傷のことなど忘れていた。
そこで、魔法使いの魔物を呼び、あの人間のことについて、詳しく調べることにした。
「ふむ・・・なるほど。このアルスと言う人間が、あの魔物どもを倒したのですな?」
「そうだ!・・・で、どうなんだ?」
「・・・このアルスと言う人間、運命のカギらしきものを握っておりますな。」
「なんだと!?この子供が!?」
「はい。もしかして、オルゴ・デミーラ様がいずれこの子供に倒されるかもしれないのです。」
「なんだと!?絶対無比の存在であり、完全なるこの魔王オルゴ・デミーラが、
あの子供に倒されると言うのか!?」
「私でも考えられません。しかし・・・あの子供からは、確かに運命の力を感じるのです。」
「・・・そうか。もう良い。後の始末は考える。」

あのアルスとか言う人間が我を倒すだと?ありえん!!
しかも、あんなただの子供が運命のカギを握っているだと!?
そんな考えの中、今までのことを思い出してみた。
我の誇り高き部下どもを倒した人間どもは、どれもみな運命の力とやらで動いていたと・・・。
伝説の勇者の子孫、ありうるはずのないモンスターマスター、そして導かれた勇者・・・。
やはり我らが動くと、決まって人間どもが邪魔しに来る。
この後も他の大陸が解放される可能性も出てきた。
となると、我があんな人間に負ける・・・かもしれないのか・・・。
そこで我は、過去の人間世界を改めて回ってみることにした。

まだ我の下僕どもが支配していた大陸がほとんどであった。唯一我らの支配から解放された村は、
ウッドパルナただひとつ。そう、あのマチルダの故郷である村・・・。今では、死んだ裏切り者に過ぎんが。
人間世界を見回っている内に、ふと異様な気配を感じ取った。
「この気・・・神の気だと!?」
神はあの時滅びたはず。それにもかかわらず、なぜ神の気配がするのだ!?
「む?あれは・・・!」
見つけたのは、とある湖の近くにある神の神殿。
はるか昔、神の住んでいた場所だ。だが、ここには神は存在しない。
あの時確かに滅びた。滅びたのなら、なぜ気配が消えない・・・?
近くを調べると、山の周辺にキャンプのテントを見つけた。どこかの民族だろうか・・・。
「う・・・!?こ、この人間どもは!・・・ユバールの人間どもか!!」
ユバール族。それは昔、神とつながりが一番深い民族のことだ。
はるか昔から、我ら魔界の者とユバール民族は戦いを続けていた。もちろん、戦いには神もいた。
神のおかげで、ユバールを滅ぼそうにも滅ぼせなかった。そして、現在に至る。
だが今は、神の加護も無いただの人間どもだ。すぐに葬ってくれる!!
今すぐに葬ってやりたいが、傷はまだ完全に癒えていなかった。思うように魔力を操れん・・・。
神め・・・このことも予想していながら、自分の命と引き換えに、我にあの人間を始末することを
阻止してくれたな・・・。
神がここまでいまいましかったとは・・・。改めて実感したぞ。
そして我はまた傷を癒すべく、魔界の異空間で眠りについた。我の傷が完全に癒えるまでに、
人間どもははたして、どこまで魔物達を倒せるものか・・・。

「オルゴ・デミーラ様、やはりあの人間どもはただ者ではありません!
次から次へと、我々が支配した大陸を解放していきます!」
「ふむ・・・そうだろうと思った。どうせ、大陸は解放されていたのであろうと思っていた。
・・・で、その人間どもは今、どこにおる?」
「・・・フォロッドです。」
「フォロッドか・・・。」
「フォロッドにはすでに魔物を投入してあります。いかがいたしましょう?」
「まあ待て。今、面白いことを思いついた。」
「はあ?」
「ただ魔物を戦わせるだけじゃつまらん。あそこは武力が優れているのだからな。」
「では、どうしろと?」
「ふふふ・・・からくり兵を送れ。」
「なんですと?あの機械兵を投入するんですか!?」
「うむ。人間どもには良い屈辱だ。それに、からくりには心などないだろう?
破壊の言葉をインプットさせ、人間どもを滅ぼすと言うのもなかなか面白いものだと思うが?」
「なるほど、そう言うことですか!ただちにからくり兵を投入いたします!」
まさかからくり兵を実戦で使えるようになるとは・・・。
まあ、最初に造ったサンプルみたいなものだから特に強くは無いが・・・。
人間達にはあの程度で十分だな。

数ヶ月経ったある日の事である。
我はさりげなく人間世界を回ってみることにした。もちろん過去の世界の、だ。
予想通り、いくらかの大陸はあのいまいましい人間ども、それも子供に解放されていた。
なぜ人間に、しかも子供に魔物が負けると言うのだ・・・?わからぬ・・・。
気が付くと、からくり兵を送り込んだあのフォロッドさえも解放されていることに気付いた。
しかもアルス達は、仲間を増やしていた。
オルフィーの白いオオカミの子供、『ガボ』・・・。言わば奴はオオカミ人間と言うところだ。
我の下僕が、人間になるような魔力でもかけたのだろうか?しかし醜い姿だ。ククク・・・。
・・・おっと、油断するわけにはいかんな。 仲間が増えたとなっては、さらに面倒になってしまう。
全大陸が解放されるのも時間の問題、と言えるか。
その時、我は思いついた。この際、人間どもに大陸を解放させてしまおうと!
それも、ただ解放させるだけではない。
そのうちに、解放された住民どもが奴らに頼るようになるだろう。
そして見事全大陸を開放した後、我があの人間どもを・・・。
面白い!面白すぎる!! そして楽しみだ!!
人間どもが我の部下を全て倒し、全ての大陸を解放して我に挑む・・・。
だが、我が糸も簡単に返り討ちにする!!
奴らが我の手によって死んでくれれば、他の人間どもは絶望のどん底に落ちるであろう!!
絶望を味あわせ、歯向かう者は全て我に倒され、大陸も我の物・・・。
こんなすばらしいアイディアがなぜ出なかったのだ!!
実行する頃には、我の傷も癒えている!!
ククク・・・人間どもよ。 今のうちだけ見逃してやろう。好きなだけ解放するが良い。
そして、我の元にたどり着くのだ。 死ぬためにな!!!

待ちきれぬ思いで心を満たした我は、たまらなく嬉しい気持ちだ。
まあ、多少の犠牲はあったとしても我が支配するのだ。 他の人間どもは我の奴隷。 我の思うがままだ!!
奴隷となった人間どもが生きる方法はただ一つ、我をあがめることだけだ!!!
さあ・・・いまいましい人間どもよ! どんどん解放しろ!!
全ての大陸を解放したあかつきには、我から名誉ある死を与えてくれよう!!

このような考えが浮かぶとは、正直自分でも思わなかった。
どうやら我の物語は、まだ続きそうだ。
人間どもが来るまで、我はどうしていようか・・・。

                                  第7章 完

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