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「ここは僕が引き受ける!デュラン達は英雄王の所へ急いで!」
「お前一人じゃ、無理だ。」
「いいから早く!できるだけ時間を稼ぐから!」
「・・分かった。死ぬなよ、イクス。」
「皆もね。」
イクスを残して、全員が階段を上がる。
「さあ来い!百人だろうと、千人だろうとここから先は通さないぞ!!」
イクスは弓を構える。

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聖剣伝説 〜神龍の皇子〜
第五話 封印された心獣 ルシエド
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・・少し前 モールベア高原
マイアのボン・ボヤジの大砲で飛ばされた一行
「あの野郎、しくじりやがってぇ。」
「そんなの気にしている場合じゃないよ。」
「あのなぁ!こっちは自分の国がピンチなんだぞ!!」
「・・ゴメン。僕は故郷の記憶が無いからよく分からない。」
「あっ・・そうだったな。」
「急ぎましょう。」
「急ぐ!」
「いくでち。」
「・・だって。」
「そうだな・・行くぜ!」
七人はフォルセナに向かって走り出した。

・・フォルセナ
『!?』
あの美しく平和だったフォルセナの町に多くの兵士が倒れていた。
「酷い・・。」
「う・・うう・・。」
「オイ!しっかりしろ!」
デュランが兵士を起こす。
「デュ・・デュラン・・帰ってきたのか?」
「大丈夫か!」
「俺はいい・・早く城へ・・陛下が危ない。」
「!?」
「デュラン、先を急ごう!」
「ああ!」

・・フォルセナ城
ボボボボボ・・
ガシャガシャガシャガシャ・・
ファイアーボールやアイススマッシュが次々とフェルセナの兵士達を襲う。
フッ・・
残像を見せながら、アルテナの指揮官:紅蓮の魔導師が現れた。
「もう良い、これから魔法生物を召喚する。お前達は退避していろ。」
「ハッ!」
アルテナの女魔導師達が退却する。
スッ・・
紅蓮の魔導師は門をすり抜けて、城に入っていった。
「クソッ!一足遅かったか!」
その直後、デュラン達一行が城に到着した。
「魔法生物ってマシンゴーレムとかの事か?」
「おそらくそうよ。」
「急ごうぜ。このままじゃ、マジで英雄王様が危ないぞ。」
「オウ!」

・・城内
「デヤッ!」
ズバッ!
「ハッ!」
ビュン・・ドスッ!
「ソラッ!」
ザクッ!
デュラン、イクス、ホークアイが次々とモンスターを蹴散らす。
「ウォォォォォ!!」
ドガッ!・・バキッ!
ケヴィンの蹴りでマシンゴーレムを壁に叩き付けた。
「オイ!あまり城を壊すな!」
「ゴ、ゴメン。」
「ダイヤミサイル!」
ズドドドドドド!!
アンジェラは新しく覚えた『ダイヤミサイル』を連発する。
「でし!」
ボコッ!
「ヤッ!」
ズバッ!
シャルロットとリースも続く。
ドウゥゥゥゥ!
「エッ?」
遠くでマシンゴーレムがロケットパンチを放った。
「リース、危ない!」
バキッ!・・ピシッ
イクスが弓で飛んできたパンチを弾いた。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます。」
「オイ、何か変な音しなかったか?」
「・・気のせいじゃないかな。」
「そうか?」

・・階段
「この階段を登れば、謁見の間だ。」
・・待て!・・
アルテナの魔導師達が追いかけてきた。
「クッ、こんな時に!」
「・・。」
イクスが前に出る。
「イクスさん?」
「僕が食い止める。・・デュラン達は上に行って!」
「!?」
「むちゃでち。いくらイクスしゃんでもきけんでち!」
「そんな事言ってる場合かよ!」
「ナッ!?」
「上にはあの赤いマントの男もいるはずだ。単体じゃかなわないだろうが!」
「・・分かった。」
「デュラン!?」
「イクスがこう言ってるんだ。任せてみようぜ。」
「ホークまで。」
「・・。」
「死ぬなよ、イクス。」
「もちろんだよ。」
「絶対、来て。」
「イクスさん・・待っています。」
「ああ!」
デュラン達はイクスを残して上の階へ向かった。
「逃がさん!」
魔導師が魔力を溜める。
ビュンッ・・バキンッ!
「クッ!?」
魔導師の杖の宝玉がイクスの矢で砕けた。
その間にデュラン達は上の階へ登っていった。
「ココから先は行かせないよ・・たとえ、僕の命と引き換えにしてもな!!」

・・謁見の間
英雄王は紅蓮の魔導師の呪文で動けなくなっていた。
「フフフ・・いくら英雄王でも動けなくてはどうしようもあるまい。」
「これも理の女王・・ヴァルダの意思か。」
「世界中のマナストーン占領のため、フォルセナが邪魔になる前に潰せとのご命令だ。
いつまでも、過去には、こだわらないともうされていた。」
「・・。」
「話はそれだけか・・ではそろそろ死んでもらおう。」
バンッ!
「待て!!」
間一髪でデュラン達が到着した。
「ほう、いつかの小僧にアンジャラ王女か。」
「ブライアン!」
「ブライアン?」
「アイツの本名よ。」
「あぁ、なるほど。・・テメェ!この間の借りを返してやるぜ!」
「俺、コイツ嫌いだ!」
「なんか、キザそうな奴だな。」
「なるしすとでち。」
「邪悪な気配を感じます。」
以上、全員の意見でした。
「丁度いい。相手をしてやろう。」
「この野郎!この前の俺と一緒にするなよ。」
「フフフ・・おもしろい。来るがいい。」
「行くぞ!」
デュラン達はブライアン(紅蓮の魔導師)にそれぞれの攻撃を開始した。

・・階段
「ハァ・・ハァ・・。」
階段の真ん中辺りで弓を構えているイクス。
「な、なんて奴だ。」
階段の下には気を失ったアルテナ兵や破壊された魔法生物が転がっていた。
「まだ来るかい?」
ミシッ・・
「!?」
よく見ると、イクスの弓にヒビが入っていた。
「(クソッ、やっぱり気のせいじゃなかったか!)」
「今だ、魔力を集結しろ!」
「クッ・・こうなったら、いちかばちかだ!」
グググググ・・
イクスは残った矢を全て引く。
「エクスプロード!!」
「ジェノサイドキャノン!!」
ズドーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
シュパパパパパパパパ!!・・バキッ!
イクスの弓が砕け散った。
「ウワァ!?」
イクスは爆発に飲み込まれた。
ドドドドドドド!!
前にいた魔法生物や魔導師の宝玉が貫かれた。
「部隊長!魔法生物が全滅しました!」
「・・仕方がない。あとはブライアン様に任せよう・・総員、撤収!」
魔導師達は全員撤収した。
「や・・やった。」
イクスがゆっくりと起き上がる。
「早く・・皆の所へ。」
ピシピシピシピシ・・
「エッ?」
ズドーーーーーーン!
階段が砕け、大穴が開いた。
「ウワァァァァァァァァ!?」
イクスはその穴に落ちていった。

・・倉庫
「ウ・・イタタタタ・・。」
階段の穴から落ちたイクスが起き上がる。
「ここは・・。」
『そこにいるのは・・誰だ。』
「!?」
イクスが振り向くとそこにいたのは鎖で繋がれた紫色をした狼だった。
「君は・・誰?・・魔物とも・・魔法生物とも違う。」
『我が名はルシエド。・・人の欲望を司る心獣。』
「神獣だって!?」
『お前が思ったのはマナストーンに封じた神獣であろう。フェアリーに選ばれし者よ。』
「分かるの?」
フッ・・
『彼は人間の感情を司っているの。精霊とも神獣とも違うわ。』
『まさか、この目で再びフェアリーを見るとは思わなかったぞ。』
「他にもフェアリーが!?」
『フェアリーがこの世界に来るのは世界の危機を現す。僅か十数年で再び訪れるとはな。』
「・・。」
『小僧よ。・・お前は力が欲しいか?』
「えっ?」
『その武器ではもはや戦えまい。』
「・・。」
イクスは折れた弓を見る。
『お前は強い。・・だが、その弓では強くはなれない。・・我を使えば、最強になれるぞ。』
「・・断る。」
『!?貴様、最強の力が必要ないのか!』
「確かに僕は力が欲しい・・でも、君が言うのは破壊の力だろ?」
『・・。』
「僕はそんな力はいらない!僕が欲しいのは皆を助ける力だ!」
『・・フハハハハ!』
「何が可笑しい!」
『・・フェアリーよ。お前はどうやらずいぶん甘い奴を選んだな。』
「それが悪い事なのか!」
『いや・・それで良いのだ。』
「えっ?」
『力を欲する者の末路は己の破壊だ。・・それで良い。』
「ルシエド・・。」
『お前は戦いの中で暴れたくても、その心で過剰な思いを止めている。』
「・・。」
『その志、見事!・・我が戦いへの欲、この美しい世界と守るべき者の為に使うがいい!』
パァァァァァァァァ・・
「!?」
紫色の輝きが倉庫を包み込んだ。

・・謁見の間
「フハハハハハ!この程度の力で戦いを挑むとはな、愚か者が。」
「ク・・。」
デュラン達は度重なるブライアンの攻撃でボロボロになっていた。
「さあ、そろそろ終わりにしようか。・・まずはお前だ。」
シュゥゥゥゥゥ・・ピキピキピキ・・
アイススマッシュの氷を鋭く尖らせ、リースに向ける。
「お前もあの銀髪の小僧の後を追うがいい。」
「!?どういう事ですか!」
「先ほど私の使い魔が報告してきた、あの小僧は・・死んだ。」
「「「「「「!?」」」」」」
「う、嘘です!」
「嘘かどうかはあの世で確かめるがいい。」
「や、やめろ。」
「死ね!!」
バシュゥゥゥゥゥ!
氷の刃がリースに迫る。
「リース!?」
「リースしゃん!?」
「!?(・・イクスさん。)」
ヒュルルルルルル・・シュピィィィィィン!
リースに当る直前、謎の風が氷の刃を斬り裂いた。
「だ、誰だ!?」
ヒュルルルルルル・・パシッ!
謎の風は紫色に輝くブーメランであり、それを投げたのは・・。
「イ・・イクスさん!!」
そう、ブーメランを投げたのはイクスだったのだ。
「皆、お待たせ!」
イクスが皆の元に駆け寄る。
「遅いぞ、この野郎!」
「イクス、無事で良かった。」
「ゴメンな。ちょっと色々あって。」
「イクスしゃん。ゆみはどうしたでちか?」
「弓は折れた。・・今はこれで戦う!」
イクスはブーメランを構える。
「死に損ないが、くらえ!」
ボボボボボ・・
ブライアンはファイアーボールを放った。
「甘いよ!」
フッ・・
イクスはその場から姿を消した。
ビュン!ビュン!ビュン!
何かが振られる音と共に、ファイアーボールはかき消された。
「何!?」
「夢幻斬!」
フッ・・
イクスがブライアンの真正面に現れた。
「クッ!?」
それをギリギリでかわす。
「おのれ!!」
ドドドドドド!
ブライアンはブレイズウォールを放つ。
「失敗したな・・これじゃあ、そっちもこちらを見れまい。」
「この状態で何ができる。」
「これさ。・・ルシエド、アロー!」
イクスのブームランが弓に変形した。
「いくぞ。」
グググ・・ヴゥゥゥン
弓の弦を引くと紫色の矢が出現した。
「彗星弾!!」
ビュゥゥゥン!!
イクスの矢がブレイズウォールを吹き飛ばした。
「ク、クソッ!」
フッ・・
突き刺さる直前、ブライアンの姿が消えた。
ドォォォォォォォォォォォォンンン!!!!!
矢は一直線に飛び、城の天井の一部を破壊した。
『今回は油断したが・・次はこうはいかんぞ!』
ブライアンの声だけが響く。
「・・ふぅ。」
イクスはその場に座り込んだ。
「イクス!」
デュラン達がイクスに駆け寄る。
「皆、大丈夫?」
「お前の方こそ、どうしたんだよ!アイツが死んだって言ってたのにさ。」
「いやぁ、階段が崩れて下の倉庫に落ちちゃってさ。龍族じゃなきゃ即死だったよ。」
「いや、そんな事をサラッと言われると、こっちも対応に困るんだけどよ。」
「とにかく、皆さんが無事で良かったですね。」
「うん。」
ドクンッ・・
「おっと、忘れる所だった。・・ルシエド。」
ブルルルルルル!
弓から狼の姿に戻ったルシエドが全身を震わせる。
「お疲れさん。」
『フゥ・・久々の変化はキツかった。』
「オ、オイ・・なんだよそれ!」
「コイツはルシエド。倉庫に閉じ込められていたんだ。」
「ルシエドだと!?」
「知ってるの、デュラン?」
「ルシエドについては私が話そう。」
「英雄王様。」
英雄王が玉座から立ち上がり、デュラン達の所にやって来た。
「まずは礼を言おう、勇敢な少年達よ。そしてデュラン、よく戻ってきてくれた。」
「英雄王様、目的を果たさずに戻ってきた事をどうかお許しください。」
「いや、おかげでこの国は助かったのだ。」
『フン・・久しいな、リチャードよ。』
「このっ!英雄王様になんて口を!」
「良いのだ、デュラン。・・ルシエド、ついに主を見つけたか。」
『あぁ。コイツの心は心地よいのでな。』
「・・少年よ。名はなんと言う。」
「僕は・・私はイクスと申します。」
「そうか・・フェアリーと心獣に選ばれし者よ。国を救ってくれた事、礼を言うぞ。」
「いえ・・ん?陛下。今、フェアリーと申しましたか?」
「ウム。まさか、再びフェアリーを見る事になるとは思わなかった。」
「英雄王様、フェアリーをご存知なのですか?・・イツッ。」
「今日はもう遅い。明日にでも話そう。今日はゆっくり休むが良い。」
「・・ありがとうございます。」

・・夜
「ガァァァ・・ゴォォォォ・・。」
「グゴゴゴゴゴ・・。」
大きなイビキをするデュランとケヴィン、気にしないホークアイと主のいないベッド

・・外
ヒュン!ビュン!
ルシエドが変身した大剣振るうイクス。
「ハァ・・ハァ・・まさか、ルシエドの得意な姿が大剣なんてね。」
『昔の主が大剣の使い手だったんでな。』
「へぇ〜。」
『この辺にしておこう。後は実戦で経験を積めばいい。』
「ねぇ、ルシエドみたいな心獣は他にもいるの?」
『我を含めて四体だ。希望・勇気・愛・欲望の四つに分かれている。』
「・・ルシエド。君、前の主が悪者だった・・なんて言わないよね?」
『・・その質問、前の主にも言われたぞ。』
「あっ、ゴメン。」
『・・そろそろ出てきたらどうだ。』
「?」
ガサッ・・
「リース。」
「ごめんなさい、隠れるつもりはなかったのですが・・。」
「・・こっちにきなよ。」
「はい。」
リースはイクスの隣にチョコンと座った。
「綺麗な星ですね。」
「うん、本当に。
『・・ほぉ。』
「どうしたの、ルシエド?」
『この娘も良い心をしている・・いずれ、心獣が宿るかもしれん。』
「ルシエドは欲望だよね?・・じゃあ、リースは愛とか希望かな。」
「そんな・・。」
リースは赤くなる。
「あの・・。」
「ん?」
「どうして私を助けてくれるのですか?」
「えっ?・・迷惑・・かな?」
「イ、イエ違うんです!ただ・・どうしてか気になって・・。」
「う〜〜ん、難しいなぁ。」
「えっ?」
「記憶を無くす前からかもしれないけど、やりたいからやる。ただ、それだけだよ。」
「フフ・・イクスさんらしいですね。」
『2人とも、今宵はもう遅い。話は明日にすればいいだろう。』
「・・そうだね。それじゃあ、また明日。」
「はい。また明日。」
こうしてフォルセナの危機は去り、戦士達もその日は安心して眠りについた。

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