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第8話 鬼婆と穴山

輝達は、割符に書いてあった新座村へとやってきた。
「見たところ平和みたいですね。」
「とりあえず聞き込みをしましょう。」

昨日 神谷道場にて
いつものように1日を過ごしていた輝たちのもとに隼人がやってきた。
そして隼人から信じられないことを聞いたのであった。
「鬼婆!?」
「そっ、人を襲ってはさらっていくんだ。犠牲者も出てるんだ。」
「でも、この明治の世に鬼婆だなんて……。」
「だけど、本当にいたらしいんだ。」
「おいおい、冗談もほどほどにしなよな。そんな古くせえバケモンがいるわけねえだろうが。」
「……ホントだぞ、嘘だと思うんなら、新座村に行って実際に確かめてみろよ!」
「新座村!?」
隼人の言葉に輝は驚いた。
「どうしたんだ、輝?」
「確か、根津が落とした割符にそんな村が載ってような……。」
「まさか、あの野郎と鬼婆とどういう関係があるんだよ!?」
「分からないわ。でも、とりあえず明日にでも行ってみましょう。どっちにしても放っておけないわ。」
ということで4人は新座村へと向かうことになったのであった。

しばらくして、4人は集まって報告を始める
「隼人の言う通り、鬼婆が出て現にここの村の人がさらわれちまったそうだ。」
「確か、ここから西にある谷に鬼婆がいるそうです。」
「よーし、人助けついでに早速行くぜ!」
「うん。」
「薫さん、大丈夫ですか?」
「なにが?」
「鬼婆、怖くないのかな……って。」
「大丈夫よ。何心配してるの輝さんは、鬼婆が怖くて神谷活心流の師範代が務まらないわよ。」
「でも、オバケとかは苦手なんだけどな。」
弥彦が薫をからかうことを言ってきた。
「放っておいてよ!」
「まあまあ……とりあえず行ってみましょう。根津の仕業かもしれませんし……。」

そして一行は鬼婆の谷へとやって来た。
谷へ入ってきて突然辺りから不気味な声が聞こえてきた。
『ここを鬼婆の谷と知って来やったか……おのれらすべて喰うてやるぞえ……。』
不気味な声一行は驚いた。
「……不気味ですね。」
「でも、鬼婆なんて、マジにいるのかよ!?」
『命が惜しくば立ち去れ……立ち去るのじゃ……。』
「……構わず進みましょう。」
「おう!」
一行は足を止めず先に進んだ。途中で狼などの野生動物に襲われるものの輝と佐之助が問題なく蹴散らすのであった。
すると……。
『命を惜しまぬ愚か者よ……今すぐ立ち去るがよい…………。」
「また聞こえた!」
不気味な声が再び聞こえてきた。
『立ち去れ……でなくば、死が待つのみじゃ…………。』
「へっ、死ぬのが怖くて人助けができるかって!」
弥彦は反吐を吐くかのように言った、そして一行はそれでも足を先へ先へと進めるのであった。
しばらくするとまたしても不気味な声が聞こえてきた。
『まだわからぬのか、愚か者めが……それほどまでに、命が惜しくないというのじゃな…………。』
「!?」
輝は何か違和感みたいなのを感じた。
「どうした?輝。」
「うん、なんだか前のときに比べて声が近くなってきた気がするんですけど……。」
「…………誰もいないわよ。」
薫は辺りを見回すが、岩ばかりがあるだけで人一人いなかった。
「…………………………。」
佐之助は何故か黙り込んでいた。
「佐之助?」
「どうやら、輝の言ってることは間違いじゃなさそうだな。」
「!?」
佐之助の言うことに3人は戸惑った。そんなことをよそに不気味な声が辺りに響く。
『もはや許しはせぬ……たった今出て行かぬなら、おぬしらを食う…………。』
「……んなとこで、何してやがんでえっ!」
佐之助は突然輝達の目の前にある岩を拳で粉砕した。
すると壊れた岩の向こうから人らしき者が現れたが顔は布(今で言うフード)に覆われてるためわからない。
「鬼婆!?」
「そんなわけあるか!」
佐之助が布(フード)を無理矢理剥ぎ取ると、そこには白い鉢巻をした美しい女性の顔が露になった。
「お、女!?」
「…………っ!」
女性はすたこらと逃げていった。
「ま、待ちやがれっ!」
「きれいな人……だけど、普通の人間だわ。」
「鬼婆のふりまでして、何をしようってんだ?」
「う〜ん……わからないけど、後を追わなくちゃ。」
一行は女性の後を追いかけた。なんとその先に小屋を見つけた。
「あの女、ここに逃げこみやがったのかな。」
「そうみたいね。」
そして中へと入っていった。中には先程の女性がいた。
そして女性の先には牢屋がありその先にはさらわれた人々がいるのであった。
「見つけたぞ!何だって、鬼婆の真似なんかしやがったんだ。」
「…………………………。」
女性は答えようとせず後に引く。
「だんまりかよ。そこの牢にいるのは、さらわれたはずのヤツらじゃねえのか。」
「お願い、女の人に手荒なことしたくないの。その人達を帰してあげてください。」
「あなたがどんな人か知らないけど、私からもお願いします。」
「…………………………。」
女性は口すら開ける気配はない。そんな女性に佐之助はいらついていた。
「返事くらいしたらどうでえ!」
「返事は否だ!」
「!?」
突然男の声が聞こえ、4人が後ろを振り向くと無精ひげで角刈りの男が立っていた。
「百鬼(ひゃっき)!」
女性は輝達の目の前にいる男の名前らしきのもを言い出した。
「ここを知られたからには、こいつらを帰すわけにはいかんな。死んでもらおうか!」
「ふざけないで!あなたなんかに、やられるものですか!」
輝は刀を抜いて戦闘体制に入ろうとするが
「待ちな、輝。」
「佐之助?」
佐之助に制止されるのであった。
「ここは、俺にまかせな。」
「……うん。」
輝は佐之助に対しあいづちを打った。

「さっきてめえ俺達を殺すといったな。おもしれえ、やれるもんならやってみろよ。」
佐之助は百鬼を挑発する。
「貴様、後悔するなよ!」
2人とも距離をおき様子を見た。そして百鬼が佐之助に先に攻撃を仕掛けた。
「おお!」
「おっと!」
佐之助は軽くひょいとかわした。そして佐之助は百鬼に右ストレートを命中させるが百鬼は平然としていた。
「意外としぶてえな。」
「これでもくらいな、蛇蠍(だかつ)!」
「おおっと!」
百鬼は佐之助に技を放つもかわされるのであった。
その後も戦闘は続けられるが、戦局的には佐之助のほうが有利であった。
「どうした?もう終わりか?」
「まだだ!うおおおおおおお!!」
百鬼は佐之助に斬りかかってきた。……が佐之助は刀を片手で受け止めた。
「スキあり!」
百鬼はなんと佐之助にいきなり顔面に向けて蹴りを放った。
「佐之助!」
「どうだ!……ん!!」
しかし佐之助にはまったく効いてなかった。
「たいしたことのねえ蹴りだな。輝のかかと落しのほうがよっぽど効くぜ。」
「なっ!?」
佐之助の頑丈さに百鬼は驚きを隠せなかった。
「蹴りってモンはよ、こうやるんだよ!!」
佐之助は百鬼の脇腹にきつい蹴りを放った。
「うっ!」
百鬼はよろめいた。
「おぅらぁ!!」
そこをすかさず佐之助の正拳づきが百鬼に直撃た。そして百鬼は倒れかけた。
「うお……ぐっ!」
「へっ!腕の差だな!」

「ううっ……形勢不利のようだな。小糸(こいと)、ここは退くぞ!」
百鬼と小糸はすぐさま逃げていった。
「あっ!また、逃げやがった!」
「いいわ。今はとにかく、牢の中の人たちを助けましょう。」
「そうですね。…………危ないから扉から離れててください!」
輝は牢の中にいる人たちに注意を促がした。……そして
「たあ!!」
輝は牢の扉を刀でバラバラに切りつけた。
「あ、ありがとうございました!」
「ああ、これで家に帰れる!」
捕らわれた人々はひと足先に新座村へ戻っていった。
「俺たちも、ひとまず村に戻ろうぜ。」
「うん。」
輝たちも村へと向かっていった。

一行は村に着くと、村長さんがお礼がしたいということで村長の家へと向かった。
「ありがとうございました。本当に助かりましたよ。」
「いいんです。でも、鬼婆のふりまでして、何をするつもりだったのかしら。」
「百鬼ってヤツも、根津の仲間に決まってらあ。」
「まあ、お礼といっては難ですが、今日はここでゆっくり休んでくだされ。
 たいしておもてなしもできませんがな。」
「構いませんよ。」
「おう、世話になるぜ。」
こうして4人は村長さんの家で一晩過ごすことになった。


一方……。
「なんでえ、これは!?」
190cm台もある大男が、鬼婆の谷にある小屋にやってきて目を疑った。
どうやら捕らえた人たちがいないことに驚いたようだ。
「も……申しわけありません。」
「実は、不振なヤツらが来て、せっかく集めた人間を逃がしてしまったのです。」
小糸と百鬼は大男に事情を説明した。どうやら大男は百鬼と小糸を仕切る頭のようだ。
「フウム?おまえを打ち負かすたあなかなかできるヤツに違いねえな。
 まあ、俺の戻りが遅くなったのが悪かった。」
「いいえ、そんな……。わたくしたちのせいです。」
「いいってことよ。もう一度、村を襲えば済むことだ。」
「穴山(あなやま)様がいてくだされば、こわいものなしだぜ!」
「行くぜ!」
どうやら穴山たちは輝たちに仕返しをすべく村へと向かっていった。


輝たちは村長さんの家で眠りについていた……しかし
「キャーーーーーーッ!」
突然聞こえた女性の悲鳴に目が覚めた。
「悲鳴だわ!行ってみましょう!」
「うん!」
一方佐之と弥彦のいる部屋でも
「今の聞こえたか!?」
「ああ、行ってみようぜ!」
こうして四人は家の前で合流するのであった。
「輝!薫!」
「何の騒ぎだ!」
「わかんないわ。行ってみましょうよ。」
一行は悲鳴が聞こえた方へ歩いていった。するとそこに穴山達が入り口の前にいた。
「穴山様、ヤツらが来ました!」
(穴山!?……こいつもこの事件の首謀者なの!?)
「何だと?おまえ、あんなガキどもに負けたってのか。」
穴山は輝たちを見て少々驚いた。確かに輝たちは平均年齢からして若い少年少女くらいである。
「は、はあ……。」
「まあいい。とにかく、この俺が来たからには、もう邪魔はさせねえ。大儀のために死んでもらうぜ!」
穴山のセリフに4人は構えを取る。
「へっ、おもしれえじゃねえか。」
「やれるもんなら、やってみろ!」
いざ戦闘が始まろうとしたその時「た、助けてくれぇ!オ、オイラは関係ないんだ。」
物陰から男が助けを求めに現れた。
「よし、わかった。こっちへ来い!」
弥彦は男を誘導した。…………しかし、男が弥彦に近づいた途端ドスッという鈍い音がした。
「な……んだと……?」
弥彦はその場に倒れこんでしまう。それと同時に男も倒れこんだ。
「!?」
「弥彦っ!?」
何が起こったのか3人は状況をつかめず驚いた。すると穴山はあざ笑うかの如く高笑いをする。
「ウワーッハハハ!こいつは、俺が操っていたんだ。」
「なんですって!?」
「おまえらみたいに正義ぶるヤツは、こんな手にすぐ引っかかりやがる。ウワーッハハハ!」
「てめえ!」
佐之助が穴山を殴りかかるが薫に止められてしまう。
「今はそれどころじゃないわ!弥彦を助けなきゃ!……って、輝さん!?」
「!?」
輝はいつのまにか穴山の真上にいた。どうやら神速(?)で向かっていったらしい。
「このお!!」
「うお!!」
穴山の頭に輝得意のかかと落しがさく裂した。……しかし穴山はよろめくことはなかった。
「うっ……ぐっぐ……このアマ!!」
穴山は輝に蹴られた頭をかかえた。
「輝さん!!」
「薫さんと佐之助は弥彦とその人を頼みます!私はこいつらを!!」
輝は血相を変えて佐之と薫に言った。どうやら輝は穴山の卑劣な手に怒りを爆発させていた。
「……どうりで百鬼たちが負けるわけだ……今回はここで退くが、次からはそうはいかねえ!行くぞ!百鬼!小糸!」
そうして穴山たちは村から去っていった。
「……………………。」
「……サンキュな、輝、おかげですっきりしたぜ。」
「それよりも輝さん!弥彦が……弥彦が……!!」
「…………!」
薫の言葉に輝は我を取り戻した。その後弥彦を村長さんの家まで運んだ。

「うう……。」
弥彦は苦しそうな表情をしている。すると村長さんは血相を変えた。
「これはいかん。傷自体はたいしたことはないのじゃが、刃に毒が塗ってったらしいのう。」
「弥彦は……弥彦はどうなるんですか!?」
薫も血相を変えた。もしかしたら弥彦が死ぬかもしれないという状況であったが為である。
「このままでは危ないのう。」
村長さんの口からは弥彦の命にかかわる一言がもれた。
「何か方法はねえのかよ!」
佐之助は村長に対処法を聞きだしてきた。
「うーむ、あるいは……、村の南にある沼に、ある種の藻が生えるのじゃ。その藻を煎じれば解毒薬になる
 ということじゃが。」
「南の沼ですね!」
早速一行は南の沼に向かおうとした……が村長さんの忠告が来た。
「いや、待つのじゃ!実は、近頃沼の近くに、おかしな男が住み着きおってな。
 この村で、いろいろと聞き回ったりしとるのじゃ。ヤツらの仲間だとしたら、危険じゃ。」
「だからって、弥彦を見捨ててはおけないわ!ねえ、そうでしょ!?輝さん!?佐之助!?」
「もちろんよ!それに弥彦にも仮があるから放っておけません!薫さんの意見に同感です!」
「俺も同感だ!坊主が一人前になる前に死なせるわけにはいかねえんでな!」
「よかった!じゃあ、行きましょう。」
こうして一行は駆け足で村の南にある沼へと向かった。

南の沼へと着いた一行……しかし3人はどうしていいかわからなかった。
「藻を煎じろっ言ったって、どれをどうすりゃいいんだよ?」
「そんなこと言われても……!?薫さん、佐之助、あれ!」
悩んでいたところに輝は小屋を発見した。
「こんな所に小屋だなんて……。」
「村長さんがいってた男って、ここにすんでるのかしら……。」
「……とにかく、中へ入ってみましょう。」
輝たちは小屋の中へと入っていった。
そこで佐之助は小屋の中にいる男を見て驚くのであった。
「!?……てめえは……!」

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