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(……ここは、どこなのかしら?)
輝は見知らぬ場所にいた。そこは雪が降りしきるどこかの山であった。
そこには、一人の男と男の子がいて2人は赤い鉢巻をしていた。
(?……誰かしら?もう一人は佐之助みたいだけど……)
いま輝がいる所は夢の中で、輝の目の前にいるのは幼き日の佐之助と佐之助の師で赤報隊隊長相楽総三(さがらそうぞう)であった。
「よく見ておけ、佐之助……。やがて徳川三百年の支配が終わり、新時代が幕を明ける。
 そして、弱者が虐げられ、泣き寝入りするしかなかった時代が終わり、上も下もない、いわば四民平等の時代がきっと来る。
 我ら赤報隊は……。」
「その先駆け!俺たちが頑張って、一年でも早く、新しい世の中を作ろうってんでしょ?もう耳タコっすよ。」
「……………………。」
どうやら輝の姿は2人には見えてないようだ。
「ねェ、隊長。四民平等になったら、俺も苗字を名乗れるんスか?」
「ああ。」
「そしたら俺、隊長の名前もらって、相楽って名乗っていいスか?ねっ、隊長?」
「相楽佐之助か……。よせよせ、変な名前になってしまうだろ。」
「………………。」
そして2人は山を後にするのであった。

第6話 新たなる謎

ゴロツキ長屋
「さあ〜てと……行きますか!」
佐之助は上機嫌な顔で長屋を後にし神谷道場へ向かう。その途中で
「おっ、先生じゃねえか。学問塾は終わったのかい?」
「ああ、佐之さんか。いいえ。これからなんですよ。仕事が長引いてしまって、ついさっき戻ったところなんです。」
一人の男と出会った。彼の名は佐々木平八郎。かつては幕府側の剣士であったが今では学問を子供達に教える身である。
「そういやァ、同じ長屋に住んでるわりには、滅多に会わねーよな。」
「そういえばそうですね……っと、いけない!もうこんな時間だ。
 じゃあ佐之さん、私はこれで……。」
平八郎は寺子屋へと向かって行った。
「へへっ、頑張ってるな。先生……。」
「佐之助ー。」
ちょうど輝達が佐之助のところへやってきた。
「おっ!どうしてこんな所に?」
「佐之助があまりにも遅いから迎えに来ちゃったの。」
「別にいいって、これから飯食いに向かうってのに。」
「そんなことだと思ってこれ(おにぎり)作ってきたの。」
輝は佐之助に竹の皮で包んだにぎりめし(大きめ)を差し出した。
「おっ!すまねえな!」
佐之助は咄嗟にぎりめしを取り早速食べ始めた。
「それにしても珍しいな、朝一番に飯食いに来る佐之助が遅れるなんて……。」
「昨日…懐かしい人の夢を見たからな(モグモグ)……すっかり寝こけちまった。(モグモグ)」
「どうりで機嫌が良いわけね……。」
「?…なんで分かんだ?輝?」
「だって、佐之助の表情で分かるもの……。その人って赤報隊の……モガッ!」
輝が夢に出てきた人の事を聞こうとした途端薫に口を塞がれた。
「それより佐之助、寺子屋へ行ってみない?平八郎さんのこと輝さんにも教えたいし……。」
「おう。ちょっくら行ってみっか。」
「ふぇいふぁひほふふぁん?(平八郎さん?)」
「私達の知り合いなの。」
「ほへほひかふぉふふぁん、てほほへてふはふぁい。(それより薫さん、手をどけて下さい。)」
(ダメ、佐之助に赤報隊のことは言っちゃダメ。分かった?)
薫は輝に小声で言った。
輝はなんとなく理解して首をコクコクと上下に振った。(詳しくは原作コミック2巻を見てね。)

寺子屋
中では、子供達を教育している平八郎の姿があった。輝達はそれを見物をしていた。
「あの人が佐々木平八郎さんなの。」
薫が指を刺して言った。
「見たところどこにでも居そうな教師みたいなんですけど……。」
「いんや、昔は、幕府についてた剣客でな。殺人剣を振るってたんだ。」
「!?……あんな優しそうな人が!?」
輝は驚いた。
「「「シーッ。」」」
輝の大きな声に気付いたのか平八郎は輝達の方を向いた。
「っと!!わりぃ!邪魔しちまって……。」
佐之助は平八郎に謝った。
「そんな……邪魔だなんて……。」
「そうはいかねえよ。大事な学問なんだろ?……邪魔んなるから行こうぜ。」
「うん……。」
輝達は寺子屋を後にすることした。
「でも、その剣客さんがどうして学問なんかを?」
「これからの時代に剣は必要ないということであの人は剣を振るうことをやめてそうしたの。」
「そして、もう二度と剣は振るはないって約束を俺達としたんだ。」
「そうなんですか……。」
「所でどうすんだ?」
「なんのことですか?」
「根津ってヤツのことだよ。」
「確か割符によるとここ(東京)から近い竹林か新座村なんだけど……。
 竹林の方に行ってみようと思うの。」
「竹林なら分かるけど、その割符に書かれてんのは本当に新座村なのか?」
「あとで日本地図と合わせたんですけど…位置といい地形といい全て一致してたんです。」
「あと、竹林に建物の図が書いてあるんだ。多分そこが根津のアジトらしいんだ。」
「ふーん……。ま、とりあえず行ってみっか。」

「おーい!」
「あっ、桧ノ山さん」
竹林へ向かう途中ゴロツキ長屋で輝達は隼人と出会った。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと輝のことが気がかりで……。」
隼人はモジモジとした仕草をして輝達に話しかけた。
「私?」
「ああ、なんかそこの坊主や佐之助、剣術小町に比べてなんか不安だからさ……。」
「剣術小町?」
「嬢ちゃんのことさ。」
「これでも私、佐之助の次くらいに強いと思うのに……。」
輝はムスッとした顔をした。
「ま、まあ別に弱いってわけじゃねえんだけど……なんとなく無茶とかしてそうだからさ……。」
隼人は輝をなんとかフォローする。
「ともかく、輝のこと頼んだぜ。」
「もちろんよ。」
「おう!」
「まかしときなって隼人!」
3人は三者三様の返事をした。そんな中輝は『やっぱり頼りなく見えるのかしら?』と内心思った。

竹林に着いた四人は中を歩き回った。そしてそこで建物を発見し中へと入っていった。
「ここが、割符に書いてあった場所よね。根津はここにいるのかしら。」
「とりあえず探してみましょう。」
輝達は建物中を歩き回ることにした。……しかし根津はなかなかみつからない
そして、唯一広い部屋に到達したもののやはり根津の姿はなかった。
「……いねぇなあ。」
一行が諦めかけたその時
「!……来るわ!」
輝がなにか殺気みたいなものを感じみんなが驚き輝が振り向いた方向を向くとそこには根津がいた。
どうやら今からここに帰ってきたようだ。
「よくも、こんな所まで来やがったな!」
「わけのわからない術で、人を操るような真似、させておけるわけないでしょ!」
「てめえらには関係ないこった!」
根津は何か合図のようなことをした。すると根津に操れられてる人達が現れた。
「こいつらをやっちまえ!」
人達は根津の命令に従うがまま輝達に襲い掛かろうとした。
「おい……操られてるヤツらを、ブン殴るのかよ。何だか、気分よくねえぞ。」
佐之助は冷や汗をかきながら言った。
「大丈夫だぜ!」
と、弥彦が笑顔で水晶玉をかざすと、水晶玉は光を放ち、操られてる人達を正気に戻した。
「し……しまった!」
根津は水晶玉を取られたことを忘れていたようだ。
「あれ?今まで何してたんだろう?」
「やだ、ここどこよ?早く帰んなくちゃ。」
人達はアジトを去ろうとしたその時
「てめえら……よくもっ!」
「ぎゃあっ!」
根津は逆上して人を1人切り殺してしまった!
「!!」
「てめえ!」
「な……なんてことを!」
輝、弥彦、薫は目の前で起こった惨劇に怒りを覚える。
「うるせえ……。俺にはもう、後がねえんだ。ブッ殺してやる!!
 来い、茜!藍、碧!!」
「あーい、根津様!」
「こんなヤツら、今度こそ殺しちゃいましょう!」
「もう、手加減しないからね!」
根津の呼び声に答えて茜達が突然現れた。
「やれるものならやってみなさい!返り討ちにしてあげるわ!!」
輝の怒りが今!爆発する!

「藍!碧!今度こそ決めるわよ!」
「うん!」
「前みたいにはいかないんだから!」
前のように茜達は一斉に輝に襲い掛かった。前と違うところといえば気迫と動きであった。
しかし、それよりも輝の気迫のほうがもっとすごかった。
「えっ!?」
「消えた!?」
「うそ!?」
襲い掛かろうとしたとき、輝の姿が消えた……いや、正確には消えたように見えた。
「うわっ!」
「わあっ!」
「ううっ!」
そして3人をあっという間にやっつけてしまった。
「は……速えぇ!」
「……見えなかったわ。」
「ま…まるで剣心の神速みたいだったぜ……3人をあっという間にやっつけちまった……。」
薫達は輝のあまりの速さに驚いてしまった。
そんな本人は、気にもせず根津を睨む。
「こ…このアマ……一度ならぬ二度までも……。」
「あなたが殺した人の痛み!思い知りなさい!!」
輝は素早く根津の懐に飛び込んだ。
「なに!?」
「迦陵の型!」
輝の技が決まり、輝はさらに技に入る。
「!?」
「迦楼羅の型!」
またしても輝の技が根津に決まった。
「まだよ!吉祥の型!」
さらに輝の技が続く。根津は少し体制を崩した。
「くっ……このアマ……!!」
根津は輝に斬りかかるがすべての斬激は輝に受け止められなかなか決められない。
そして根津は輝との距離を置いた。
(くっ……なんてアマだ!この俺が追い込まれるなんて……。)
「さあ。観念なさい!」
「うるせえ!これでもくらえ!」
根津は包帯を輝に投げつけた。しかし輝はそれをかわした。
「同じ手は二度もくわないわ!」
「甘いんだよ!!哭き蛇!」
根津の技が輝に襲い掛かる……しかしそれも輝は難なくかわす。
「なに!?」
「これで!ダメ押し!」
「!?」
「斉天(せいてん)の型!」
輝は根津の胴体に乗りそして斬りつけた。(といっても峰打ち)
「うっ…………くっ……」
根津は後ずさりをしその後尻餅をついた。
「ね、根津様まで負けちゃうなんて……。」
「もうダメだよ。勝てるわけないよ!」
茜と碧は恐怖に怯え逃げてしまう。
「茜!碧……」
「ごめんね、根津様!わたい達、死ぬのヤなんだ!」
藍も逃げていってしまった。
「……藍まで!?」
「部下にも逃げられたか。情けねえな。」
「グッ……。」
根津は後ずさりをする。そんな根津に輝、佐之助、弥彦の3人が近寄ってきた。
「さーて、そんじゃあ教えてもらおうか。何のために、どうやって、町のヤツらを操ったりしたのか、をよ……。」
それでも根津は何も言わず後ずさりをする。
「もっと痛い目見てえのか?」
佐之助は怖い形相をして根津に向かって怒鳴った。
「素直に、さっさと白状しちまえ。」
「逃げようたって、そうはいかないんだから!」
「…………………………。」
根津はまったく口を割ろうとしない。
「……ええいっ!まだるっこしいっ!!」
佐之助が苛立ちのあまり根津の胸元をつかみにかかろうとしたその時
「うおッ!?」
根津の目の前に突然煙が立ち、煙が晴れるとそこには鉄の鞭を持った若い女性が現れた。
佐之助は突然の出来事のあまり驚いてしまった。
「由利(ゆり)!」
「情けないわね、根津。やっぱり、あんたには荷が重すぎたってわけ?」
「ううっ。」
「まあいいわ。とにかく戻るのよ!
 そういうわけなの。じゃあね。」
「な……っ!」
「ざけんなっ!」
「逃がさない!」
3人が根津と由利を捕まえようとすると由利は煙幕を放った。視界は煙で何も見えなくなってしまった。
「うっ!」
「ゲホッゲホッ!な……なんだこりゃ!?」
「煙幕たあ、あの女、ふざけた真似を!」
しばらくすると煙は晴れたが、根津と由利の姿はなかった。
「逃げられた!?」
「チックショウ!」
「チョコチョコ逃げ回りやがって…。うっとうしいヤツらだぜ!」
「……一体何なの?あの由利って人。根津の仲間みたいだったわね。」
「敵は根津だけじゃねえってか?」
「……謎が多すぎるわね……根津のこと、由利という女の人のこと、輝さんのこと。」
「私も……ですか?」
「だってそうじゃない。すごい技を放ったと思ったら今度は目にも止まらぬ速さで動くわで……。」
「確かにそうだよな……なんであんなに素早く動けるんだ?」
「わからないわよ。それにまた考え出したら頭が……」
「おっとそうだった!記憶喪失の人に聞いてもわかんねえんだったな……。」
「ごめんな、輝。」
「ううん、気にしないで。(でも、あの由利って人、どこかで見たことあるような気がする……)」
「輝、あんまり考えないほうがいいぜ。頭が痛くなるんだろ?」
「……う、うん。」
「とにかく、もう、ここにいてもしょうがないわね……。」
仕方なく3人は根津のアジトを後にすることにした。

根津意外にも敵がいるのか!?という新たな謎を抱え一行は東京へと戻っていった。

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