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第23話 第6の仲間

孝幸が命を賭して打った名刀凍雲を手に入れた剣心組は再び下妻町にやってきた。
日光へ向かうには刃澄の里からこの町を抜けなくてはならないからだ。
「?」
素通りしようとした途端騒がしい雰囲気を感じた一向はその先へと向かっていった。
すると…………。
「そこをどきやがれ!」
「そうはいかん!婦女子に嫌がることを要求し尚且つ暴行を加えようとしたことは言語道断!
 罪を重ねたくなければ、大人しく去れ!」
見るとガラの悪い不良3人から眉目秀麗の優しい顔つきで警官の制服を着て刀を差した男が女性を庇っている。
「なんだかこの状況、私が初めて剣心に会ったときと似てるわね。」
「うむ、確かに……。」
剣心が輝の言葉に頷いた。
「ふざけるな!そんな細身で何が出来る!?」
「俺達を誰だと思ってるんだ!!」
「ただのチンピラだ!それとも貴様ら、伊藤博文総理の親戚だとでも言うのか?
 ふっ、こんなガラの悪い親戚を持った総理なんて国中を探してもいないぞ!」
男は不良の問いに対しキッパリときつく言い放ち両手を広げた。
「てめぇ、ふざけやがって!!」
不良の一人が男に向けて飛び掛り殴りかかってきた。
「なっ!?」
しかしその瞬間拳を受け止められしまいその後大きく投げ飛ばされてしまった。
しかも男は不良を片手で投げ飛ばしたのである。不良は地面に大きく叩きつけられた。
「警官にまで暴力を振るうとは、この場合公務執行妨害に当てはまるが……どうする?
 このまま大人しく去るか、それとも最後まで抵抗してブタ箱で惨めな生活を送るか、さあ選べ!!」
男は不良達を鬼をも逃げ出す鋭い眼光で睨みつける。しかし不良達は怯えるも逃げる様子はない。
「こ……こいつめ!」
「今のはまぐれだ!とっちめてやる!!」
不良2人はなんと懐からドスを取り出し男に襲い掛かってきた。
「そんなものまで取り出すとは、廃刀令違反にも属する!!」
ドスが男に振りかかろうとしたその瞬間、一筋の閃光が走った。その後不良のドスは空中を舞い地面に突き刺さった。
男が刀を抜いて目にも止まらぬ速さでドスを弾いたのであった。
あまりの出来事に不良2人は呆然としている。
「失せろ!それともブタ箱に行きたいのか!?」
またしても男は鋭い眼光で不良達を睨みつける。
「ひぇぇぇぇぇ!!」
今度はあまりの恐怖に不良の一人が全速力で逃げ出した。しかしもう一人の方は逃げる気配はない。
「くっ!この優男が!!」
残った不良が殴りかかったその瞬間男と不良との間に誰かが割り込み拳を受け止めた。
「!!」
「やめておけ、先程のことで決着は既についておる。この男の言う通り罪を重ね惨めな生活を送りたくなければ去れ!」
割り込んだのは剣心であった。剣心は鋭い眼光で不良を睨むつける。
「お……お前はあの時の…………ひぇぇぇ!!命だけはお助けをーーーーーーー!!」
剣心を知ってるらしく、不良は恐怖のあまり全速力で逃げ出した。
「ま……待ってくれーーーーーーーー!!」
先程投げ飛ばされた不良も2人が逃げてく様を見て追いかけるように逃げ出した。
「さ、もう大丈夫だ。」
「あ、ありがとうございます!そこの剣客さんもありがとうございます。」
女性は男と剣心に礼を言った後その場を後にした。
「剣客?」
男は剣心を見るとすぐさま目に逆刃刀が目に入った。男の目線に気がついた剣心は思わず『しまった!』の顔をする。
なにせ警官に廃刀令違反がバレてしまったからには言い逃れしようがないからである。
しかし男は逆刃刀を見た後剣心をジロジロと見る。すると意外な言葉が飛び出してきた。
「あなたが、緋村剣心さんですね?」
「おろ?拙者を知っているのでござるか?」
「ええ。……立ち話も難ですので、茶屋で話をしましょう。」

と、男に勧められるまま剣心達は茶屋に行きお茶や甘味を堪能しながら話をすることにした。
男性陣はみたらし団子を、薫はみつ豆、輝はぜんざいを頼んだ。
「あなた方のことは署長と藤田警部補から聞きました。なんでも警察では不解決な事件を解決してきたと……。」
「う〜〜ん、そういうことになるわね。」
「前から気になってたんだけどよ、おめぇ何モンだ?」
「失礼、自己紹介をしてませんでしたね。本官は……いえ、私は東京の署に勤めている獅堂達也(しどうたつや)です。
 階級は刑事、現在色んな所で起こっている不可解な事件を捜査しております。」
「不可解な事件?」
「恐らく貴方達が追ってるのと同じ内容です。なんでも人がおかしくなって暴れ出したり
 化け物が出てきたり……」
「それって今十勇士の……あっ!」
輝は思わず声を出してしまい口を塞ぐも既に遅かった。達也は輝に問い出す。
「今十勇士?それがこの事件の首謀犯ですか?」
「ああ。真田十勇士の名を語り明治政府を混乱させようと言う組織でござる。」
「剣心!」
「この男は信用できる。それに、拙者と同じ目的であれば隠すことはなかろう?
 それとも信用できぬ訳があると言うのでござるか?」
「そうじゃないわよ。……ただ、私達は今まで楽勝だったけど警官では手も足も出ない奴らと戦ってたのよ。
 薫さんや弥彦より弱い人と一緒にいたら足手まといに……」
「足手まといだなんて失礼だなぁ……これでも藤田警部補と手合わせして互角に戦ったことがあるんですよ?」
達也はムスッとして言い放った。
「ホントにアイツと互角に戦ったのか?」
佐之助は達也を疑いの眼差しで見つめる。すると達也は
「なんでしたら、試してみます?」
鋭い眼光で佐之助を睨み出した。すると佐之助は思わず退きだした。
(な、なんだぁ!?この感覚は……まるで蛇に睨まれた蛙みたいだ……こんな優男に
 どうしてこんな眼光が出せるんだ!?……いや、ハッタリかもしれねぇ……)
佐之助は冷や汗を掻くも意を決して拳をグッと握った。
「後悔すんじゃねぇぞ!!」
佐之助が達也に殴りかかる。しかし達也は右手で佐之助の拳を受け止めそれをグッと握り締める。
「!?」
「これで分かったでしょ?藤田警部補と互角だって事がハッタリでないことを……。」
(なんて力だ……俺の拳を軽く受け止めるなんて普通ならあのチンピラの様になってたってわけか……。)
佐之助が拳に力を入れるもうんともすんとも言わずただ達也の手の中で止まっている。
すると佐之助は観念したのか拳の力を抜くとそれに合わせて達也も握るのを止めた。
「ハッタリじゃねぇのは確かなようだな。ただアイツと違って礼儀がいいからな
 信用してもいいぜ。」
「ありがとう佐之助。ついでに言うと、私も藤田警部補は近寄りがたい感じがしますし……」
達也は苦笑いをした。
「誰なんです?藤田警部補って、そんなに強い人なんですか?」
輝が剣心達に問い出した。
「輝さんは知らなかったのね。藤田って言うのは、本当は斉藤一(さいとうはじめ)って名前なの。」
「斉藤一!?……って、あの新撰組の!?」
輝は驚愕の顔をあげた。
「輝さん、新撰組知ってるの?」
「うん。名実共に知ってます。」
「あいつは新撰組の三番隊隊長なんだ。……といっても、昔の話だけどな。
 剣心と互角以上の腕前を持つが、正直言ってあいつは好かねぇ。」
「なにせ奴は、悪・即・斬という信念のもとで戦ってるでござるからな。
 いくら国を守るためとはいえ、仲良く出来る奴ではござらん。維新志士と新撰組は敵対だったからでござったからな。」
「あの陰険釣り目の狼野郎を思い出すと腹立たしいときたらありゃしねぇぜ!」
「剣心が維新志士の剣客だったのは知ってたけど、それとは無関係の人にも嫌われてるなんてね……。」
輝は腕を組んで頷き出した。
「無関係……とは言わんが、ある意味間違ってねえ。」
佐之助が輝に突っ込みを入れた。
輝はこれまでの話を聞いて斉藤を想像すると、思わず顔が引きつり出した。
「……剣心達が好かない理由がなんとなく分かる気がするわ。
 正直言って私も、関わりたくないわね……。」

その頃当の本人は……
「いっくし!へっきし!ふぇっくし!ぶっきし!おっきし!ふぇっきし!」
蕎麦屋で食事中にくしゃみをしていた。しかも6回も連続で。
「藤田さん汚いですよ。」
「……失敬。
 ふぅ……相変わらず、嫌われているな。」
ため息を一回ついた。
「まあ、いつの時代でも新撰組は嫌われているからな。」
慣れていることの為か斉藤は気にも留めず茶をすする。
「……しかし、残りの一回は何なんだ?」


場所は変わって再び下妻町。
「それで、そなたはどうしてこの町に?」
「実は、ある列車強盗の件にて世話をした日光のある商人の令嬢が何者かに狙われてるとの連絡がありまして
 それで向かってたのですが、途中で先程の騒ぎがありまして……」
「そして偶然、私たちと出会ったって訳ね。」
薫の言葉に反応して達也は頷きながら茶をすする。
「日光か……目的地も偶然俺達と同じってわけか。」
弥彦は呟きながら団子をひとつ食べた。
「同じって?」
「十勇士の連中が持っている割符をもとに私達は旅をしているんです。
 割符が、奴らの計画書の代わりになってるみたいなんです。」
「その割り振ってヤツを見せてくれませんか?」
「え……ええ。」
輝は頷いて荷物から割符を取り出し繋げ達也に見せた。
それを見た達也はジロジロ見ては頷き出した。
「……なるほど、関東の地図と形が一致している。
 これを基に今十勇士を追い詰めようって事か。蛇の道は蛇とはよく言ったもんだ。」
「うむ。これ以上奴らを野放しにすれば罪亡き人が苦しむでござるからな。」
「それで、おめぇはこれからどうするんだ?」
佐之助の言葉に反応して達也は頭を上げた。
「みなさんについて行こうと思うんですけど……迷惑ですか?」
「いんや、さっきのことで実力は認めたから迷惑をかけなきゃ問題ねえぜ。」
佐之助の意外な一言を聞いて達也以外の者達は思わず唖然とした。
「……どうした?鳩が豆鉄砲食らった顔なんかして。」
「いや……佐之助がそんな事言うなんて珍しいなぁ……って。」
「そりゃあ俺よか強いし、斉藤と違って人当たりが良いからなぁ。」
「佐之に認めさせるとは、なかなかの芸達者でござるな。獅堂殿。」
「達也でいいです。」
「私達よりも警察に顔がきく人がいてくれて助かるわね。」
薫が前向きにそう言ってきた。
「んじゃ、勘定済ませて日光に向かうとしますか!」
そう言って佐之助が立ち上がると達也が
「できれば自分達の勘定は自分達で払ってもらえますか?なにせ生活費が心配なもので……」
と達也が冷や汗を掻いて訴えてきた。
「……財布は堅ぇんだな。」
「佐之助!!達也さんは『おごる』とは言ってないわよ!」
ため息をついて呟いた佐之助に対して輝が睨み出した。
「わ……分かったからそんな睨むなよ。嬢ちゃんや娘狐より怖ぇんだから輝は……。」
さすがの佐之助冷や汗を掻き怖気づく。まさに蛇に睨まれた蛙状態であった。
「……こんな人でごめんなさい。」
輝は達也にお辞儀をした。
「いえ、いいですよ。やっぱり佐之助って藤田さんの言ってた通りの人ですね。」
達也は笑顔で返事をした。先程の言葉に佐之助は神妙な顔をした。
とりあえず一行は達也の言うとおり茶屋の会計を割り勘で済ませた。ただし佐之助だけは未払いである。
そして町を後にしようとすると
「みなさんよろしくお願いします。えっと……」
達也が挨拶をしその後神妙な顔をする。
「どうしたの?」
「いえ、緋村さん、佐之助、薫さん、弥彦君は知ってるんですけど……あと一人、そこの白装束の君なんだけど……」
輝のほうを向いて達也が問い出した。
「私ですか?」
「ええ。仕事に集中しててあなたのことだけは聞いてなかったんです。」
「では紹介しますね、私は神崎輝。えっと……」
素性を言おうか悩んでいる輝を佐之助が言っちゃっても良いんじゃねえのと言う意味で肘でつついた。
「大きな声では言えませんが、神爪の民の……生き残りです。」
「神爪の民の…………輝さんにも事情があったんですね。」
「えっ!?」
達也の爽やかな対応に輝は驚きだす。
「大体の事情は知ってます。とりあえず町を出てから話しましょう。」


そして町を出た一行は先程の話の続きをする。
「皆さんの事情は知ってると言いましたが、すべて高荷恵さんや署長から聞きました。」
「で?」
「別に取って食おうって訳ではありません。皆さんの気持ちはよく分かります。
 自分の正義を信じて幕府と戦った緋村さんに佐之助、父の代の剣術を守り抜くために精進している薫さん、
 士族の誇りを最後まで貫き通す弥彦君、そして輝さんは……神爪の民の使命を最後までやり遂げることですかね?」
「…………分からない。」
輝は俯き出した。
「確かに使命をやり遂げることは大切だけど、それ以外に何かやらなくちゃいけないことがあったような気がするの。
 ……分からないけど。」
「分からない?どうしてですか?」
「私……実は記憶喪失なの。といってもほぼ思い出したんだけど、何かを忘れているような気がするの。
 でも思い出したくない。そんな感じがするの。」
「それは辛すぎる過去だからじゃ何でしょうか?緋村さん達もそんな過去がありますからね。」
「そうかもしれない……。」
「輝殿、前にも申したが覚えていない過去にこだわる必要などない。
 輝殿は、輝殿の思うように生きれば良いでござるよ……。」
「緋村さんの言う通りです。過去にこだわって後ろ向きに考えるよりも、未来を信じて前向きに考えた方がいいです。
 そうすればきっと良いことがありますから。」
「…………そうね。前向きに、焦らないで考えればきっと良いことがあるもんね。」
輝は笑顔になりいつものペースを取り戻した。
「ありがとう達也さん。おかげでスッキリしました。」
「いえ、呼び捨てで結構です。私はまだ18なので。」
「その歳で刑事なのか!?スッゲーな。」
弥彦が驚きの顔をした。
「頭が良いのと、実力を認められたから今の地位があるんです。」
こうして剣心組は獅堂達也と言う新しい仲間を加えて再び日光へと足を向けたのであった。





あとがき&オリキャラ紹介
妄想爆発!!ということで剣心組側のオリジナルキャラを作っちゃいました。

名前 獅堂達也
年齢・性別 18歳 男性 
身長 170cm
体重 75kg(といってもほとんど筋肉の)
性格 真面目で人当たりが良いが、もの凄い“純”
趣味 新聞記事集め(国内海外問わず)
流派 我流
技の特徴 主に連撃や突進技などの素早さを駆使したもの。

ほとんど作者である私が感情導入して彼の活躍を描きます。(笑)
もしかしたらゲームをクリアした方は“あれ”が彼で展開するかも知れませんよ……。
……と、調子に乗ってしまってごめんなさいm_ _m
FF11の奴隷状態(やらないときもありますが)の為と他のゲームに夢中、そして仕事で疲労困憊に小説のネタがでないことで
進行が疎かになってしまい。楽しみにしてる方々(いるかな?)申し訳ありません。m_ _m
仕舞いには「これとハガレンオリジナル小説が終わったら今度はFF11オリジナル小説書こうかな?」……なんてことを
考えてしまっております(本気度5%くらいですけど)。気が早すぎて駄目ですね私って(汗)。
こんな私の書く小説ですけど大きな目で見てもらえればありがたいと思っております……。

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