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第2話 強襲!愚連隊

輝が神谷道場に居候することになってから一週間が経過し傷も癒え多少はここでの生活に慣れるようになった。
しかし、まだ慣れてないところがあるのか少々ぎこちなかった。
台所には何故か輝がいた。実は、先日の夕食を輝が作り、評判が良かったのがきっかけで自分の意思で
朝食などの食事作りをやっているのである。(前までは怪我のためできなかったので)そんな最中に薫が台所に入ってきた。
「おはよう輝さん。」
「おはようございます薫さん。」
「昨日のあれだけでよかったのに……朝ごはんまで作ってもらってホントにごめんね。」
「いえ、せめてものささやかな恩返しですから……。」
「それにしても手付きいいわねえ、普段からこんな風に料理とかしてるの?」
「……えっと、それは……。」
薫の質問に輝は戸惑っていた。すると薫は
「わかった。花嫁修業をしてたからとか。」と安易な答えを出した。
すると輝は「まあ…そんな感じ……かな?」と顔を赤らじめて答えた。
「アハハハ、照れない照れない。それじゃあ私、弥彦起こしてくるから。」
そう言って薫は台所を去っていった。
(そういえば、私なんでこんな器用なことができるのかしら……?)
輝は自分のことについて考え出そうとしたが
「輝さーん。朝ごはんできました?」
薫の叫び声に考えることをとぎられた。
「あっ!はい!もうすぐできます!」
輝は考えるのをやめて朝食作りの仕上げを行った。

朝食の最中
「そういえば、今日は他の道場から、人が出稽古に来るの。」
薫が輝に話しかけた。
「どうしてですか?」
「自分の流派の教えだけでなく、他の流派教えも見て腕だけでなく精神の精進と
 他流との交流も兼ねてやって来るの。」
「なるほど。……ところで、なんでこの道場には弥彦以外に門下生がいないんですか?」
輝の質問に薫はうつむいてしまった。
確かにこの道場には弥彦以外に門下生はいない。名簿には弥彦以外に『塚山由太郎』(予定)とあるが実際は弥彦一人である。
「あっ!ごめんなさい!言いたくないんでしたら言わなくて結構です。」
「ううん…気にしないで、あの時のことを思い出しちゃったから……心配かけてごめんね。」
薫は笑顔で輝に答えた。それから輝はほっとした。(あの時とは詳しくは原作第一話を読んでね)
「ところで薫さん、その稽古を見学してもいいですか?」
「いいわよ。輝さん…剣に興味があるの?」
「え……その……そうです。」
(?……なんなのかしら?さっきの間は)
「ごっそさん!」
弥彦は手っ取り早く朝食を済ませ颯爽と食卓を後にした。
「いつもより気合が入ってるわね、弥彦ったら。」
「輝が作ったうまい飯だから気合が入るんだよ。薫のまずい飯じゃ気合が入んねえからな。」
弥彦の一言に薫はカチン!ときて。「弥彦!」と怒鳴ったが弥彦は既に家を出ていた。
そのとき輝は冷や汗をかいていた。
「まあまあ、薫さん…ここは穏便に……。」
輝は怒る薫を制止した。
「ところで、弥彦はよく朝食の後出かけるんですけど、どこに行ってるんですか?」
「妙さんの所よ。」
「赤べこに…ですか?」
「そ、燕ちゃんのお手伝いなんかもやってるの。」
「剣の稽古の方はいいんですか?」
「あそこでね、重い物とかをよく運んでいるから本人がいうには『これも修行って』いうのよ。
 まっ、あれでも強くなってるからいいけどね……っといけない!早く終わらせないと稽古に遅れちゃう。」
薫が時計を見るとまだ時間はありそうだが、このままでは輝との雑談で稽古が遅れるため食事を早く済ませることにする。
輝も稽古の見学のために早く済ませることにした。

「よろしくおねがいします!」
他の道場の人達の挨拶とともに稽古が始まった。竹刀の響き渡る音や「面!」「やあ!」等といった掛け声が道場に響いた。
「そこ!間合いの取り方が甘いわよ!君も!そんな風に相手は普通待ってくれないわよ!」
胴着姿の薫の指導の声が普段とは違って凛々しい感じが出ており、輝はそんな薫にに見とれてしまっていた。
(なんだか、このときの薫さんってなんか素敵ね……。……でも、この稽古を見てると…なんだろう?なにか……)
「輝さん。」
「はい!?」
考え事の最中に薫に声をかけられてしまい輝は驚いてしまった。
「よかったら輝さんもやってみる?」
「えっ!?……あ…うん……。」
その後とりあえず輝は渋々と竹刀を手に薫との体験(?)稽古を行うことにした。
「お手柔らかにお願いします……。」
「輝さん、竹刀は利き手を上にして手との間隔を離して持つのよ。」
「あっ!……。」
輝は慌てて竹刀の持ち方を薫の指導どうりに直した。
「うふふ…それじゃ行くわよ。」
(なんだろう?この感覚……。)
輝は竹刀を持った途端剣を持ったのは初めてではないような感覚を持った。
「まずは基本からね、剣は、突く、払う、押す、斬るという使い方があるの。あと斬りなんだけど、相手の面を狙う面打ちに、
 胴体を狙う胴打ち、手元を狙う小手打ちとあるの。とりあえず、私の後に続けてやってみてね。」
「わかりました。」
輝は我に戻り、薫の言う通りに竹刀を振るった。……しばらくして
「それじゃ、試しに、一回試合をやってみる」
「は…はい、お願いします。」
初めて実戦を行うことにした。薫は一呼吸つけて……「めーーーーん!」
「わっ!?」
薫の竹刀を輝はなんとか受け止めさらに稽古を続けるが輝は防戦一方でなかなか反撃ができない。
「やあ!」
「なんの!えい!」
輝はやっとのことで反撃をしたが薫に防がれ、薫の一撃で持っていた竹刀を弾かれてしまった。
稽古が終わった後薫は何故か少々息切れをしていた。
「か…薫さん……。」
「はぁ、はぁ、……ごめんね輝さん…防御があまりにも上手だったからつい本気になっちゃって……」
「い…いえ……。」
「それにしてもいい筋してたんじゃない?ちょっとぎこちなかったけど。」
「そ…そうなんですか?(そういえば、竹刀を持ったときなんかぎこちなかったけど、なにか思い出せそうな気がする……)」

数時間後
「今日はこれで帰ります。
「ありがとうございました。」
稽古は終了し道場の人達は帰っていった。
「無事に終わったわね。どう輝さん?何か感想はある?」
「えっと……正直すごかったです。薫さんも普段と違って凛々しくて素敵でしたし……」
「ありがとう、素敵って他人から言われるの初めてなの……。」
薫は顔を赤らじめた。
「本気で言ってるんですよ。別にお世辞じゃないですから。」
そんな輝と薫の微笑ましい雑談中に「きゃーーーっ!!」という叫び声が外の方から聞こえた。
「何かしら!?」
「外の方よ!行ってみましょう!」

道場の外回り
「あいつら、どうかしてるぞ!?」
「助けてくれぇっ!」
道場の外にて町の人達が何者かに襲われていた。
「うひゃはははっ!」
「おらら、逃げ回るんじゃねえよっ!」
町の人を襲っている連中はイカレてるかのように危ない目つきをしていた。
「!?、か…薫さん!あれ!」
「なんなの!?あの人達!?」
「死ねーーーーっ!」
町が一人の愚連隊に襲われそうになったその時「危ない!」
薫が持っていた竹刀で愚連隊の頭らしき男の凶器を受け止めた。
「天下の往来で、何してるのよ!相手は丸腰じゃないの!」
「なんだ、てめーはっ!邪魔しやがると、てめえからブッ殺すぞ!!」
「やれるもんなら、やってみなさいよ!」
「薫さん!!」
「大丈夫よ!輝さん。私これでも強いから。」
「この野郎!」
「なんのこれしき!」
薫は頭らしき男からの攻撃を竹刀で受け止めた。すると「はあ!やあ!」
手早く相手の武器を払い見事に面を決めた。
「うう……。」
男はたった一発の面を食らってそのまま倒れこんでしまった。
「このアマ!!」
すると、他の仲間が怒って薫にまとめて襲いかかろうとしたその時
「薫さん!私も手伝います!」
輝が竹刀を道場から持ってきて助太刀に来た。その後弥彦が赤べこの手伝いから帰ってきた。
「おい、こりゃ何だ。薫のヤツ、何を始めたんだ!」
弥彦は状況を理解できずにいた。
「詳しいことは後よ!弥彦も手伝って!」
「わ、わかった!よーしいくぜ!」
かくして3対3の戦いが始まった。

「このガキ!ちょこまかちょこまかしつけぇんだよ!!」
愚連隊1が弥彦に攻撃をかますがいとも簡単にかわされ、攻撃が当たらないことにイライラした。
「スキあり!!」
弥彦は相手の隙を突いて高くジャンプして愚連隊1に面を決めた。すると愚連隊1は戦闘不能になった。
先程の一撃が致命的となったのだろう。
薫のほうは先程のお頭らしき男同様なんの問題もなく弥彦とほぼ同時に愚連隊2を倒した。
一方輝は……「この野郎!!」
「くっ!やあ!」
先程の稽古同様ぎこちないためか防戦一方で苦戦を強いられていた。
攻撃を避けるのが精一杯でなかなか反撃に移ることができず動きもぎこちなかった、そしてとうとう「!?」壁際に追い込まれてしまった。
「へっへっへ!追い詰めたぜ!」
「はあ!」
輝はやけくそになったのか持っていた竹刀を相手に向かって投げた。しかし、それは勿論外れてしまう。
「へっ!コケおどしもこれまでだ!死ねえ!!」
愚連隊3の攻撃が輝に襲い掛かったその時……キン!!という金属音が鳴り響いた。
「「!?」」
薫と弥彦は輝が右手に持っているものを見て驚きを隠せなかった。
なんと輝は、右手に小振りな刀を(逆手に)持って相手の攻撃を防いでいたのであった。
実は輝は5日前、着替えの際に刀を見つけてた。しかし何のために持っていたのかわからなかった。
そこで輝は背中に壁を当てたときに腰にある刀に気付いたので竹刀を捨て咄嗟に刀を抜いたのである。
すると輝は、水を得た魚のように今までの苦戦が嘘のように感じさせるが如く以前と違い相手の攻撃を軽やかにかわし そして……
「やあ!」
「ぐわっ!」
隙を突いてかかと落しを相手に命中させ相手を倒したのであった。
(……今のは、一体?…これ(刀)を持ったとたん、違和感なく戦えた……なんだか体が勝手に動いたみたいだった……)
輝は自分の戦い方に疑問と既視感を感じていた。その時
「ううっ……きゅ、急に頭が……!」
突然愚連隊全員が頭痛を訴えバタバタと倒れこんでしまった。
「な……何?どういうことなの、いったい。」
薫は、輝の戦い方も気になるが、今はこの愚連隊のことでそれどころではなかった。
「ともかく、こいつ(頭)を家に運んで取っちめようぜ!」
「待って、それより医者が先よ!」

神谷道場内 座敷
薫たちは、愚連隊の頭らしき男を運んで布団に寝かせた。(残りは警察に届けた。)
弥彦は薫に言われたと通り医者を連れてきた。女性である。その人は薫を超える美人で年も20代くらいであった。
「連れてきたぜ!」
「まったく、わけもいわず引っ張り出すんだから……。」
女医は弥彦の強引さに呆れているが「あら?そちらは、お客様?」
輝を見て女医は薫に聞いてきた。
「あ……うん。そういえば、まだ名前しか聞いてなかったわね。あなたのこと、もっと詳しく教えてくれない?」
薫は輝に問いただした。
輝は承諾し自分の名前以外のことを……すぐには言えなかった。
自分の事を考え出し、しばらくしたその時「うっ!う……あ…あああああ!」
輝は突然頭を抱え込み苦痛の表情を浮かべうずくまってしまう。
「輝さん!」
薫は心配そうに輝をを見る。
「ちょっとあなた!」
女医がいきなり輝に近寄り支えた。
「どうしたってんだよ、いきなり!?」
女医の行動に弥彦は驚いた。
「ごめんなさい薫さん!なにも…わからない!…思い出せない!」
「……何も思い出せないのね。無理に考えようとすると、頭が痛くなるんだわ。」
「どういうこと?」
薫は女医に輝のことを聞きだした。
「この子は、おそらく記憶喪失……。名前以外の記憶を、すべてなくしているのよ。何か、よほどの体験をしたんでしょうね。」
「そんな……治す方法はないの?」
「わからないわ。何かの拍子にフッと記憶が戻ることもあれば、一生そのままという事も…。」
「そのまま……?」
「そんな……私…これからどうしたらいいの?」
輝は自分が記憶喪失であることにショックを受けてしまった。すると薫が突然
「輝さん!記憶が戻るまで、うちにいていいからね!一緒に頑張ろう。」と輝に持ちかけた。
「……ありがとう…薫さん…。」
「ううーん……。」
すると愚連隊の頭(男)が意識を取り戻した。
「ここは……どこだ?俺、何でこんな所にいるんだ?」
男は体を起こすと辺りを見回した。
男には先程までのイカれたような目をしていなかった。
「何で、じゃねえ!大暴れして、ブッ飛ばされたのを忘れたか。」
弥彦は男に向かって怒って言った。
「大暴れだと。いったい、何のこった?」
男は狐につままれたような顔をした。
「今さら、しらばっくれる気かよ!」
弥彦は怒りのあまり男につかみかかろうとしたが「待ちなさい!」
女医に止められてしまった。
「あなた、ちょっと目を見せて。」
「えっ?な、なんで……。」
「いいから!それから口を開けて、舌も見せて頂戴……。」
男は女医に言われるがままにした。女医は男の目や舌を丹念に見た。しばらくして…
「うーん、特に薬物を使ってたわけでもなさそうね。」
「どういうことですか?」
輝は女医に質問をした。
「もし薬物による狂乱なら、目や舌に薬物を服用した時にできるあとがあるはずなんだけど…それがないの。」
「じゃあ、そいつも記憶ソーシツってヤツかよ?」
「違うと……思うわ。もっと何か、作法的な感じ。」
「でも、嘘をついているようには見えないわよ。本当に自分のやった事を覚えてないみたい。」
「催眠術かもしれないわね。でも、誰が何のために、そんな事。」
「おい、なんなんだよ。俺が何したって言うんだよ?」
男は完全に四人にすっぽかされていた。輝達はそれを申し訳なさそうに思った。
すると弥彦が男に説明と同時に質問をした。
「おめえは誰かに操れられて、町中で武器を振り回してたんだよ。誰にやられたか覚えてないのか?」
「な……なんだって!?お、俺が、そんな……。」
男は驚き、そして誰に操れられたのか思い出そうとするが……
「……何も覚えてねえや。クソ!、俺があっさり操れられちまうなんて……。」
しばらくして男は何か思い出した。
「……そうだ!何となく、思い出してきたぜ。同じ顔した子供が三人、楽しそうにケタケタ笑ってやがんだ。」
「同じ顔した子供?男の子?それとも女の子?」
「女だったぜ。けど、俺の意識のないうちに、操って動かすなんて真似できる奴等にゃ見えなかったけどな。」
「そもそも、そんなやつがホントにいたかも、わかんねえじゃねえか。幻覚かもしれないし。」
「うーん、それをいわれると、確かにね……。」
弥彦の言葉に薫はうなづいた。
「……何にしても、迷惑かけちまったんなら謝るぜ。俺は桧ノ山隼人(ひのやまはやと)。
ゴロツキ長屋に いるから、何かあったら訪ねてくれよ。」
「ああ……もう大丈夫?」
「おう。俺にこんな恥をかかせた奴等を探して、落とし前をつけさせるつもりだ。そんじゃあな。」
隼人は道場を出て行った。
「……桧ノ山さんの言うことが本当なら、どこかで悪巧みをしてる奴等がいるのね。
 催眠術で他人を暴れさせるなんて、ろくな人間じゃないわ。とっつかまえてやる!」
「本気かよ、薫!?剣心もいないのに!?」
(……剣心?……誰なのかしら?薫さんの言ってた食客さん?)
「私だって、神谷活心流師範代よ。剣心が戻ってくるまで、知らなかったふりで待ってるなんてできない。
 弥彦、あんたはついてこなくてもいいのよ。」
「冗談いうない!薫一人じゃ、危なっかしくて見てらんねえ。輝はどうすんだ、ここで待ってるか?」
「……ううん、私も行く!それに、何で私、あんなふうに戦えたのか気になるし……」
輝は弥彦の問いに対し首を横に振って答えた。
「そういえばそうね……輝さん、刀を持った途端に私より強いみたいだったし……」
「ああ、剣心みたいに身軽で攻撃もすごかったしな……なあ輝、なんであんなことできるんだ?」
弥彦の質問に輝は答えず考えもしなかった。考えればまた頭痛が起こるからであった。
「そんなことよりも、ともかく、同じ顔した3人の女の子か、正気をなくして暴れている探してみましょう。」
薫が輝のことを気にかけて会話の内容を元に戻した。
「そうですね。では、行きましょう薫さん、弥彦。行ってきます……えっと……。」
「申し遅れたけど、私は高荷恵(たかにめぐみ)、医者よ。小國診療所ってところに住んでるから、
 用があったらいらっしゃい。」
「わかりました恵さん。では行ってきます。」
恵はいったん診療所に戻り、輝たちは同じ顔した女の子か正気を失って暴れてる人を探すことにした。


あとがき
『輝の利き腕が違うぞ!』と思った方いらっしゃると思ってあとがきを書きます。^^;
輝は通常ゲームでは左利きなんですが……(刀を左手で持ってたので)この作品ではあえて右利きにしております。
それは、私(作者)が右利きのため左利きのフリでするとどうも刀を振る以外の動作がやりづらそうという単純なことで
変えてしまいました。この小説を読んでいる左利きの方、るろ剣のゲームをやりこんでた方申し訳ありませんm_ _m
どうかこれからも大きな目と心でこの作品を見てやってください。あと、輝の苗字は私オリジナルのものです。
それにこの小説を書いたのは最後まで主人公は喋らないので、もし喋るとしたらこうかな?ということで書きました。
後は私が考えた設定と共にこの作品をどうぞ最後までよろしくお願いします。m_ _m

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