戻る TOPへ

第18話 神爪の里

「はぁ……はぁ……。なんなのかしら?この人たちは一体?」
息を切らしている輝は、何故か何処かの山の平原地点にいた。
そこには何故か多くの死体が転がっている。
「いきなり何も言わずに襲い掛かってくるなんて。」
輝がぼやいた後転がっている死体の中からまだ息がある賊の呼吸音を聞いた。
すると輝はその賊の胸倉つかみ出し刀を喉元に突き出した。
「どうして私達を襲ったりするの!?」
「……ある人に頼まれたんだ。」
「誰に!!?」
「それは知らん……、ただその人から『我らの理想の邪魔になる“神爪の民”を始末しろ!』と
 指示されただけだ。」
「神爪の民を始末ですって!?」
輝は驚いて大きな声を上げた。
「今ごろは……他の奴らがオマエの仲間を始末してるだろうよ……。」
「………………………。」
輝は怒っているのか身体を震わせている。
「そしたら、お前も仲間と同じように……ぐっ!!」
輝は賊の言葉にいらつき賊の喉元に刀を突き刺した。
「それ以上……しゃべらないで!」
輝は賊がぐったりしたのを確認すると掴んでいた胸倉をそのままパッと離した。
輝は改めて周りの様子を見た。そこには、賊の死体だけでなく輝に似た格好の者の死体が転がっていた。
どうやら輝と同じ神爪の民のようである。
「みんな…………。兄さん、忍、英二……みんな無事かしら……?」
輝は親しい人の安否を思った。どうやら輝達は人々の平穏を保つ為の暗躍任務を行っているようである。
しかしその途中沢山の賊に問答無用で襲われ仲間が駆けつけるも輝を除くすべての者達は殺されてしまったのであった。
ここで、ふと輝がある方向に目をやった。
「!!」
その方向からなんと煙が激しく立ち昇っていた。
「あれは、里の方向からだわ!」
輝はそのまま駆け出した。いやな予感を感じ、それが当たらないで欲しいと思いつつ里へと向かっていった。

輝が神爪の里に着いたとき、既にそこでは火の海が広がっていた。
「…………里が!……!!、みんな!」
輝の目線の先には地面に転がる多くの死体があった。その中にはもちろん神爪の民の者の死体もあった。
「なんでこんなことに…………!、長老は!?」
輝は慌てて目線を向こう側にやった。するとそこにたった一軒だけ火が点いていない家を見つけた。
そして輝はその家に向かって駆け足で向かった。
中には長くて白い眉毛で目が隠れている小柄な老人と、輝と同い年くらいで黒髪でツインテールに分かれている女の子に、
同じく輝と同い年くらいの青い鉢巻きをした若い男に、白い鉢巻きをした男性、そして短い髪の女性がいた。
しかも全員輝動揺耳元だけ髪を伸ばしている。
輝が中に入ってくると全員入り口の方を向いた。
「輝!」
ツインテールの女の子が声をかけた。
「忍!」
「おお、無事じゃったか。」
長い眉毛の老人も声をかけた。
「長老!」
「輝…よかった。」
青い鉢巻きの男も輝に声をかけた。
「英二も……良かった……。」
輝はほっとため息をつき胸を撫で下ろした。そして辺りをキョロキョロと見渡した。
「……長老、龍也兄さんは?」
「お前の兄なら、まだ戻ってきておらん……無事を確認した者もおらん。。」
長老は首を横に振って答えた。すると輝は表情を変えてすぐさま後ろに向いた。
「何処に行くんだ!?」
「兄さんを探してくる!」
「駄目だ!危険すぎる!龍也さんはきっと無事だよ!」
「でも、そうとは言い切れないじゃないの!!」
「いかん!輝!!」
長老と英二の制止を振り切り輝が外へ出ようとしたとたん
「きゃ!」
「おっと!」
誰かにぶつかった。それは輝よりひとつくらい年上で黒い髪で橙色の鉢巻きをしている男であった。
「……あっ!兄さん!」
「龍也さん!無事だったんですね。」
輝は男の顔を見上げた。それは凛々しい顔立ちであった。彼こそが輝の兄で“竜神の子”の異名を持つ龍也である。
「ああ。輝、大丈夫か?」
「うん。」
輝は龍也に対して相槌を打った。
「そうか……よかった。ふう……。」
すると龍也は大きくため息をつき座敷に大きく腰を下ろした。
「輝が無事なのを見てホッとしたのか、気が抜けたちまったぜ……。」
忍は龍也が座敷に座った後瓶から柄杓で水をすくった。
「龍也さん、お水。」
「ああ、ありがとう。」
龍也はそれを受け取り中の水を一気に飲み干した。すると長老が声を駆け出した。
「さあ、皆の衆。覚悟を決める時が来たようじゃぞ。」
そして全員長老の方に注目し始めた。
「外の火も強くなってきた。もう、ここでこうしていても、合流してくる仲間もおるまい。」
「あいつらの目的は何なの!?里を襲うなり、火を放って、仲間を倒して……。何がしたいって言うのよ。」
「確かにそうだ、それにこの里はそう簡単に見つからないはずだ。なのになんで……!」
「……わからん。じゃが、考えられることは一つあるわい。」
「俺達を神爪の民と知って……滅ぼそうとしてるってことか。」
「おそらくのう。わしらが邪魔な、何物かの仕業じゃろうて。この里を見つけたのも裏などに詳しい者がいたからじゃろう。
 神爪の民を、ここまで追い詰めるとはかなりの手練れじゃな。」
「はい。“吉祥天の化身”である私でも手こずったから……“竜神の子”である兄さんでも…多分……。」
輝がうつむいて呟き出した。
「そ、そんな……。」
忍は絶望に打ちのめされて言葉を失ってしまった。
「に、逃げましょうよ!今ならまだ……。」
忍はみんなに逃げることを告げる。しかし……。
「このまま、一矢も報いることもなく逃げ出すのはゴメンだ!」
「そうよ!神爪の民の底力、見せてやらなくちゃ!なにせこっちには“竜神の子”と“吉祥天の化身”がいるんでしょ!?」
若い男女2人が反対し抗議をかけた。しかし長老がそれを遮る。
「ならぬ!皆の者逃げるのじゃ。このまま滅びることは許されぬぞ。」
「里を捨てるというのですか!?」
「八雲さん!ここにいても無駄死にするだけで意味がありません!」
「そうじゃ!つまらぬ過去や土地にしがみつき、無駄な死を遂げるのが、神爪の民の末路か?
 未来の為に、若い者を生き延びさせることこそ、わしらのすべきことではないか。」
「…………………………。」
長老の言葉に八雲と呼ばれる若い男は思わず黙り込んだ。
そして龍也が座敷から立ち上がった。
「長老のいうとおりだ。行こう、みんな。」
「うん。霞さん……。」
「……仕方ないわね。」
霞と呼ばれる若い女性は仕方なくその意思に従った。そして小屋を出ようとしたその時。
「!」
小屋に見たことのある男女2人が入ってきた。根津と由利である。
どうやら里を襲った連中とは十勇士のことであった。
「こんな所にまだ残ってるじゃねえか。死に損ないどもがよ。」
「貴様ら!」
龍也は2人を睨む。
さらに小屋に老いた男が入ってくる。今度は海野である。
「あなた達!里を襲ってきて何が目的なの!?」
「神爪の民は、この先きっと我らの計画の邪魔となる。その前に、始末させてもらう……。」
「計画計画って、一体何の計画なの!?」
「それは語ることはできん。根津!由利!こいつらを片付けろ!」
海野は偉そうに2人に命令をする。
「……んもう、ちょっとは自分で動いてよね。……でも、やらせてもうわよ。」
由利は海野に対して文句を言うが仕方なく持っている鉄鞭を地面に叩きつけて構える。
輝は唾を持って構えようとするが、由利と目があった瞬間『やられる!』という予感を感じ
他の者達と共に後ずさりをするだけであった。
「う……ううっ、どうせ殺されるなら、一人でも道連れにっ!」
八雲は刀を抜き相打ち覚悟で由利に飛び掛った。
「八雲さん!」
「うおーーーーーーっ!!」
八雲は不意討ちを仕掛けに向かうが、突然二つの閃光が彼に飛び掛ってきた。
「うっ……。」
八雲の前には女と見間違う程の緑の髪の長髪で髪を後ろにまとめている男と朱色で何故かポニーテールの男が立っていた。
八雲はそのままバタッと倒れてしまう。
「八雲さん!」
「あんたあっ!」
「霞さん!危ない!」
輝の制止を振り切り霞は八雲に寄り添った。
「うふふ……こんな奴、手助けはいらないのに。でもいい子ね、松風。ありがとう千鳥。」
由利は不適に笑い彼女の前に立つ男2人に礼を言う。
2人は由利の方を向き黙って礼をする。
「よ……よくもぉっ!」
霞も刀を抜き飛び掛るも由利の激しい鉄鞭裁きに刀を弾かれるだけでなく身体を激しく打たれ返り討ちにあってしまう。
「きゃあああっ!」
「うふふ……弱いくせにおバカさん。」
由利はまた不適に笑う。
「おいおい、俺の獲物も残してくれよ。」
「あーら、早い者勝ちでしょ。」
根津の文句も関係なく由利は相変わらず高笑いをする。
残された5人のうち龍也と英二そして輝の3人は歯を食いしばり苛立ちだしている。
「こいつら……ふざけやがって!」
「何人殺せば気が済むんだ!!」
3人は刀を抜き構えようとするがそれを長老に遮られる。
「待つのじゃ3人とも、ここで立ち向かっていては返り討ちにあうのがオチじゃ。」
「しかし、このままでは……っ。」
「ここは任せよ!」
「長老?」
「行けい!!」
長老は懐から煙玉をだすと地面に思い切り叩きつけた。そして辺りは煙に覆われた。
「きゃあっ!」
思わずこれに由利は驚き後ずさりをする。
「長老……チクショウ!……行くぞ。」
「……うん。」
輝達は煙の中から聞こえる激しいつばりあいの音を聞きながら小屋から脱出をした。
(長老……どうかご無事で……。)
長老の無事を祈りつつ輝達は一心不乱に逃げ出すのであった。
「逃げたわ!追うのよ千鳥!!」
緑の髪の男松風は長老と交戦している為追う事ができないので残った朱色の髪の千鳥という男が
由利の命令通り逃げた4人を追うのであった。

「長老……すみません…………。」
外へ脱出した4人であったが一旦止まり逃げる方向とは逆にある小屋のほうを龍也は見つめる。
「龍也さん。」
「……行くぞ。遅かれ早かれ、追っ手がかかる。」
「うん。」
再び駆け出そうとすると近寄ってくる足音が4人の耳に入ってきた。
「ちっ!もう来やがったのか!」
「構うな、逃げるぞ!」
足音に関わらず逃げ出すがその途中で大きな気配を感じて4人は足を止めてしまう
「!!」
なんと目の前には輝たちのおよそ2倍の大きさはあろう大男が立ちふさがっていた。伊三である。
「おっと、逃げよったってそうはいかねえぜ!」
「あ……ああっ……あ…………。」
忍は恐怖のあまり言葉を失う。そして追ってきた足音が止むと反対方向には千鳥が立っていた。
まさに“前門の虎 後門の狼”とはこの事である。
「やむを得ないな。」
「ああ!」
すると突然龍也と英二が刀を抜き出した。
「龍也兄さん!?英二!?」
「追っ手は俺がやる!輝は忍と一緒に逃げるんだ!」
「そうだ、デカイのは俺がやる!早く行くんだ!」
龍也と英二は二人を挟んで背を向き合い構えを取っていた。
「ううん、私も戦う!」
「駄目だ!……今のうちに逃げるんだ。」
「ここは龍也さんと俺が食い止めるから早く!」
「いや!龍也さん!英二!やめてっ!!」
「そうよ!兄さんと英二だけ残して逃げるなんてできない!!だから私も……」
「駄目だって言ってるのが分からないのか!?長老の話を聞いてただろ。お前達は、未来を引き継がなきゃならない。
 こんなところで、死なせるわけにはいかないんだ!」
龍也は輝に向かって思い切り怒鳴りだす。しかし輝は退こうとしない。
「でも…………っ!」
それでも討論する輝を龍也は跳ね除ける。
「輝……生き抜けよ。もしもの時は…他のみんなの分まで生きるんだぞ。それが、俺や長老の願いなんだから。」
「兄さん……。」
龍也を見た後輝は英二を見る。
「大丈夫だ輝。こいつをやっつけたらすぐ向かってやるからな。」
「英二……。」
輝は英二にも何か言おうとするが、彼の本気の思いがあってか言い出すことはできなかった。
「さあ、行け!」
「う……うん。行こう忍。」
「龍也さん……英二…………死なないで!」
2人は悔いるように駆け出していく。
「おっとそうはいかねえぜ。」
伊三が二人の行く手を遮ろうとする。しかし英二が割り込み伊三を遮る。
「お前の相手は俺だろ!?」
「ぐぬぬ……。」
伊三は英二の妨害に苛立ち歯ぎしりをする。
「大丈夫か?」
龍也は英二に質問する。
「平気ですよ。こいつをなんとかしたら速攻で輝たちのもとへ向かいます。
 今はそんなことより目の前の敵をなんとかするのが先でしょう。」
英二は平然として答える。
「……そうだな。いくぜ!里のみんなの仇をとってやる!」
龍也は構えを取った。すると千鳥も扇状の刃を手に取り構える。
龍也と千鳥はお互いの武器がぶつかり合い激しいつばりあいをしていた。
英二の方は伊三の激しい攻撃をかわしつつ確実に攻撃を仕掛けていた。
お互い一歩譲らない互角の戦いの様に見えるが実際には龍也、そして英二の方が押していた。
「そんな細い腕で、俺に勝てるか!」
「くっ……!」
龍也が千鳥を追い詰める。
「そんな大振りの攻撃なんて俺には当たんないよ!」
「ぬうっ!」
英二も伊三を追い詰める。
そして龍也の龍也の怒涛の攻撃が千鳥をよろめかした。
「あっ!!」
「もらった!」
龍也が千鳥にとどめをさそうとする……しかし
「うっ!?」
後ろから伸びてきた紐状の何かにより拘束されてしまった。
「!、龍也さん!!」
「おっと!よそ見してる場合じゃねえぜ!」
伊三が余所見をしている英二に攻撃を仕掛けてくる。しかし英二はとっさに攻撃を何とかかわした。
「くっ……邪魔をするな!梵天の型!」
「なにーーーーー!?」
英二は刀を勢いよく振りその衝撃波で伊三を吹き飛ばした。
「龍也さん!!」
英二は龍也を助けるべく彼のもとへ駆けつける。しかしその途中英二の前で小さな爆発が起こった。
「!?」
爆発が晴れるとなんと彼の目の前に龍が現れ唸り声を上げていた。
「な…………!?」
英二が驚く暇を与えず龍は口から激しい炎を吐き出し英二を火だるまに変えていく。
「うわああぁぁぁぁぁ!!」
「英二!!」
「あ……あ…………ひ……か…………る…………。」
まだ燃え上がる炎の中で英二はその場に倒れこみ息を引き取ってしまった。
「英二ーーーーーーーーーーっ!!」
龍也はただ焼け死んでいく英二を見つめることしかできなかった。
「さすが才蔵(さいぞう)。見事なものだわ。」
「!」
紐の方向から由利の声がした。彼女は鉄鞭を持っておりそれは龍也を拘束しているのにつながっている。
紐状の物は由利の鉄鞭であった。
「お、お前ら……長老はどうしたっ!?」
「あら、あんなじいさんなんて大したことなかったわ。
 それよりも私の千鳥に傷を負わせたこと、あんた自身の血であがなってもらうよ!!」
由利は確かに長老と戦っていた。しかしそれはわずか数分しかもたず龍也達が戦っている間に
やられてしまったのである。長老は神爪の里の中で老いておきながらもかなりの手慣れ。
しかしそれがやられてしまったということは由利達はそれ以上の手慣れのようである。
「くっ……!!」
龍也は必死になって鉄鞭をほどこうともがくが、緩むことはなくもがけばもがくほどよりいっそう身体を締め付ける。
「無駄よ、もがけばそれだけ、あんたの身体が傷つくわ。」
「………………ッ!」
無駄な努力と分かっていてもそれでも龍也はもがいていた。するとそんな龍也を見て由利がほくそえみだした。
「頑張るわね、うふふ。あたし、あんたみたいなの好きよ。松風や千鳥みたいに、部下にしてやってもいいくらい。」
「ふ……ふざけるなっ!お前らの仲間になるくらいなら、殺された方がマシだ!!」
「……なら、望み通りにしてあげるわ。松風!千鳥!」
2人が由利の命令に何も答えず龍也に一斉に襲い掛かってきた。
「うおおっ!」
龍也は身体中を血だらけにしながらも拘束していた鉄鞭をほどき反撃に入るが
「グッ!?」
後ろから千鳥に袈裟に切り刻まれ、最後には松風のカタール(手にはめる片手剣)に縦一文字に切り刻まれ
もう片方のカタールで突き刺されてしまった。そのとき彼の鉢巻きがハタッと地面に落ちた。
「が……はぁっ!」
龍也は力尽き地面に膝をつく。
「うう……ぶ、無事に逃げ延びてくれ……。輝…………!」
最後に輝の無事を思いながら倒れこんでいった。
「ふん……バカな男。」
由利は龍也の死体をあざ笑った。
「由利様……助けてくださって、ありがとうございました。」
「うふふ、いいのよ。その綺麗な顔にケガなんてしてないでしょうね。」
由利は千鳥の顔をよく見つめる。どうやら無傷である。
「由利様、逃げた子供達ですが……、追いますか?」
松風が由利に問いだした。
「あんたたちが、行くほどのことでもないわ。誰か下っ端でも差し向けときなさい。」
辺りの家が真っ赤に燃え上がり、そして龍也の死体の側にあった鉢巻きは血で真っ赤に染まった。
まさに里は、真っ赤に染まり跡形もなく消えようとしていた……。


その頃龍也達によって無事に逃げ切り地下通路のような洞窟を駆け進む輝と忍は一心不乱に走っていた。
しかし、やはり龍也のことが心配なのか輝は一旦立ち止まり進路を里へと向かおうとしたその時
忍が輝を制止する。
「戻っちゃダメ!龍也さんの気持ち、無駄にする気なの!?」
「でも……。」
「……ダメだよ。龍也さんの悲しむ顔、みたくないもん。それに、英二だってあなたが死ぬのを
 望んでなんかいないわ。だから…ね、行こう。」
輝は仕方なく黙って相槌を打ち進路を戻し再び走り出した。
しかしその途中の道を賊達に遮られてしまう。由利達が差し向けたものである。
「!」
しかも前方だけでなく後方からも賊が迫っていた。
「へっへっへっ、見つけたぜ!もう逃がさねえぞ!」
「お前たちを殺せば、由利様からご褒美をいただけるんだ。覚悟しな!」
賊たちは輝たちを見てあざ笑う。
「忍!こうなったらやるしかないわよ!」
「うん!」
2人は背中合わせになり刀を抜いた。
「“吉祥天の化身”を甘く見ないでね!!」
そして2人は賊達に攻撃を仕掛けてくる。
2人は持ち前の素早さと柔軟さで次々と賊達を倒していく。ある程度の人数を倒していくと
逃げ出す方向から男の声がした。
「やめておけ!特にそこの白装束はできる奴だ。お前らが束になっても勝てねえぜ。」
賊の群れから黒い髪でどす黒い忍び装束を来た中年くらいの男が現れた。
「こいつ…………。」
輝はただならぬ雰囲気を感じ冷や汗を掻いた。
「こいつは俺が殺る。お前達は残った奴をやりな。」
「そうはさせない!!」
輝は忍を守るべく賊に飛び掛る。しかし攻撃を黒装束の男の刀に受け止められてしまう。
「!」
「……お前の相手はこの俺だ。」
「輝!」
「大丈夫よ忍!こいつを倒したらすぐ助けるから!!」
輝は男との距離を置き構える。そして再び激しい剣劇が始まった。
一方忍は時間はかかっているものの確実に賊を一人、一人と仕留めていく。
「これならどう!?梵天の型!!」
輝は梵天の型を放つ。しかし攻撃はかわされる。だが狙いは男ではなかった。
「うわーーーーっ!!」
なんと男の後方にて待機していた賊達に命中しそれらを全滅させた。
「…………なるほど、逃げる為の策というわけか。……だが!」
男の激しい攻撃が輝に襲い掛かる。一撃、一撃をなんとか防御するがあまりの早さについていけず
輝は身体の至る箇所を切り刻まれていく。急所は外れているものの輝は追い詰められている。
それでも輝は反撃を試みるがまったくもって当たる気配はなくかわされてばかりである。
「そんなことしても、俺を倒さぬ限り逃げることはできん!」
「くっ……。」
輝は息を切らしながらも必死に男の刀を押さえる。
一方忍も限界が近づいてきた。あと一人というところで息を切らしており今にもふらつき倒れそうであった。
なにせ大勢の人数をたった一人で倒し続けてきたのであるからだ。しかし所詮は多勢に無勢。
もはや忍にはあと一人倒せるかどうかの体力が残っている状態ではなさそうだからである。
忍は最後の一人の刀を受け止めるが体力があまり残っていない為大きく弾かれてしまい袈裟に斬られてしまった。
「きゃあっ!!」
「!、忍!!」
輝は男を蹴って怯ませた後忍のもとへと急いで駆け込む。
「敵に背を向けることは死を意味する!!」
男は懐から手裏剣を取り出し輝に向かって投げ出す。
手裏剣が飛んでくることを知らず輝は急いで梵天の型で賊を撃破する。しかしそれと同時に
輝の背中と両足と左腕に手裏剣が刺さった。
「っ!!」
輝はその場に倒れこみそうになりふらふらになりながらも必死に体制を整え男の方を向く
「………………っ!」
今までにくらったダメージが大きかった為か輝の動きはかなり鈍くなっていた。
男は輝に向かって来てそのまま切っ先を向けて突っ込んでくる。輝は突然の事に対処しきれずそのまま刺されてしまった。
ブスッという鈍い音をあげ刀は深く刺さった。
「あっ…………。」
幸い刺さった所は胸の下で即死には至らなかったが輝は口を半開きにして倒れこむ。
「これで、終わりだ!!」
男は輝に向かって刀を振り落とそうとしていた。その時
「だ、だめえっ!!」
大きな切り傷を負いながらも忍が持てる力を振り絞り男の胸元に刀を深く刺し込んだ。
「な……に……この……俺が……。」
刺さった所が急所だった為男は突然のことに対処できずそのままその場にバタッと静かに倒れた。
「はあ、はあ……。
 輝!しっかりして!輝!!」
忍は輝に必死になって声をかけるが何も反応はしない。意識を失っているようである。
「ああっ……ひどい傷!このままでは輝が…………ううん!絶対に死なせない!
 ありたっけの薬草を使ってなんとかしてみせる!龍也さんが命がけで守ろうとしたあんたを、こんなところで
 死なせはしない……。」
忍は傷ついた身でありながら持っていたありったけの薬草を輝に全て使いある程度傷を処置していく。
そして必死に輝を引っ張り通路の外へと運んでいく。途中倒れこむがそれでも必死に輝を押し出していき外へと運び出した。
その後忍は何故かもとの通路へと戻っていき死体の山の中心辺りに傷を押さえながら立ち上がった。
「どれが敵で、どれが私達だか……わからないようにしなくちゃ。
 生き残りがいると知れたら、きっと追われる……。」
このまま逃げても、朽ち果てても輝は奴らに追われてしまう。そう考えた忍は炸裂弾を取り出し
その火薬を少量中から取り出し火打石で火をつけ小さな爆発を出した。
すると爆発の火は死体の服などにうつり辺りは炎に包まれた。
「輝……いつか龍也さんや私達の仇をとってね……。
 さようなら……私の大切な……無二の親友……。」
忍はそのまま倒れこみ炎の中へと消えていった。









あとがき
『なんで忍は火をつけた後逃げなかったんだ?』という疑問の答えはただひとつ、それは
『傷が深くて逃げ出す体力がなかったから』ということなんです。
ゲームをやってた方はご存知の通り輝も忍も切られてしまいましたからね。
私の輝はほぼ100%強いみたいなのでこじつけの為輝より強い者を追っ手に起用しました。
こうすれば1話での輝の怪我を立証できるのではないかと思ったからです。(剣心ならそいつに圧勝ですけどね)
神爪の里での強さのランクは、長老>龍也>輝>英二>忍の設定です。(私の中では)
あと英二のやられ方はオープニングに出て来た十勇士のメンバーを参考にしました。
でてきたのは“根津”“由利”“海野”“望月”“才蔵”“清海”“伊三”以上者です。
しかし、考えると『このやられ方がいいんじゃないか?』ということで英二は才蔵に殺されることになりました。(^^;)
『なんで龍なの?』と言いますとゲームをクリアした方、もしくは後半くらいまで進んだ方以外には後にこの小説でわかります。
ゲームとは少し違うようですが、大目にこの小説を最後まで読んでください。m_ _m

inserted by FC2 system