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第13話 最強の流浪人見参!

輝たちは今、割符に描かれていた町、下妻町へとやってきた。
しかし………………。
「変ねえ……割符には、ここの場所が書いてあったんだけど。
 こんな町の中に十勇士がいるのかしら。」
薫は不思議に思った。一見町は平和に見えたのであった。
「……ヤツらのことだ、霊山で人知れぬトコからあの花を栽培していたのと同じように
 それの加工も、誰にも気付かれぬよう行なっているだろう。」
「言われてみればそうだな。」
蒼紫の解説に弥彦は納得した。
「そんじゃ、その工場とやらに行ってみますか。」
そして一行は町の入り口の近くにある最近できたという工場へ向かおうとした。その時、通りがかりの男性に声をかけられた。
「お前さん達、工場へ行くのかい?」
「はい、そうですけど……?」
「あそこ、どんな工場なのか俺たちは知らないんだ。
 それに中に入れてもくれなんだ、つまんねえと思うぞ。」
男はそのまま去っていった。
「つまんねえと言われてもなあ……。」
「入れてくれないってんなら、無理矢理通してもらうとすりゃいいだろ?」
「う〜ん……とりあえず、そうするか否かは行ってから考えましょう。あまり騒ぎを起こしたくありませんから……。」
「そうね。」
輝たちは男の忠告を頭の片隅に置きつつ工場へと向かった。

工場の表門から入った輝たち。入り口に入ってすぐ、近くに男を見かけた。
輝は男に声をかけた。
「すみません、この工場のことなんですけど……。」
すると男はあっさりと答えた。
「お話はうかがっております。中でずっとお待ちですよ。」
変な回答であった。輝たちはまだ何も話していないのに輝たちをすんなりと工場の中へと
通してくれるのである。
輝は不振に思いながら渋々と中へと入っていった。
工場は現在その機能を停止していた。そして奥へと進んでいくとそこには見た感じは老いた男と眼鏡をかけた青年と
長髪でボロい着物着た男の子がいた。2人は老いた男の後ろにいる。
「遅かったじゃないか。待っていたよ。」
待っていたという言葉に輝たちは反応した。表情が引き締まった。
「何だと?誰だよ、おまえ。」
「私は海野(うんの)……といえば、正体はわかるかな。」
「海野って……、やっぱり十勇士の1人のはずよ!」
「その通り……。君たちにやられた根津や清海、伊三、それに私達は十勇士なのさ。
 今の世の、見せかけだけの平和に耐え切れず、こうして姿を現したのだ。」
「おまえら、何するつもりなんだ!?」
弥彦は怒った表情で海野に問い詰める。
「知れたこと。再び我々の世を取り戻す!」
「そのために、罪もない人々を苦しめても平気なの!?」
「罪のない人間などいるものか。人は皆、生きながらにして罪人よ。
 ならば、強い者が弱い者を利用して、何が悪い!」
「そんなのヘリクツじゃねえか!」
「そうよ!あなた達の思い込みに過ぎないわ!」
輝と弥彦は海野の言葉に腹を立てて言った。
そして全員武器を取り構えを取った。
「ほう、やる気か…………、おもしろい。
 さあやれ、左近児(さこんじ)!邪魔者は消すのだぞ、結城!」
海野は後ろに下がり、左近児と結城が襲い掛かってきた。
「殺す!殺す!殺すッ!!」
左近児はまるで狂った猛獣のようである。

左近児の素早い動きに佐之助と弥彦は翻弄されていた。
「くっ、速えぇ!!」
「うわ!危ねぇ!!」
左近児のひっかき攻撃をなんとかかわした二人であったが、攻撃を仕掛けられない。
一方薫も避けるのが精一杯で攻撃ができないでいる。
唯一動きについていっているのは、輝と蒼紫の二人であった。
「があぁ!!」
「……フン!」
「!?」
「たあ!!」
輝の掌底が左近児に命中する。
蒼紫の流水の動きで翻弄している隙を突いて攻撃を仕掛けたのだ。
「うう……、がああ!!」
左近児はめげずに再び攻撃を仕掛けてきた。
「甘いわ!」
今度は輝が摩利支の型で攻撃をかわした。
「!?」
そしてそこからすかさず迦楼羅の型をお見舞いして左近児を戦闘不能にした。
「相変わらず…すげえな、あの二人。」
弥彦は輝と蒼紫の強さには驚かずただ呆然としていた。
「くっ、うおおおおお!!」
左近児がやられたのを見た結城が懐刀で攻撃を仕掛けてきた。
しかし輝に赤子の手を捻るが如く、いとも簡単に武器を弾かれてしまった。
「あわわ……ゆ、許してくれっ。」
結城は輝の表情を見て慌しい表情をして命乞いをしてきた。
「ふん、今さら命乞いかよ。」
佐之助は結城に駄目押しを仕掛けようとしていた。
しかし薫は佐之助を止めた。
「降参して助けを求めてるいる人に、剣を向けたりできないわ。」
「でもよぉ……。
 …………分かったよ。」
薫の顔を見て佐之助はしかたなく拳を引いた。
「しょうがねえなあ。」
そんな佐之助を見て弥彦も竹刀を引いた。
しかし、そこへ左近児がいきなり起き上がって
「シャアアッ!!」
薫に飛びつこうとしてきた。
「ムッ!?」
蒼紫はそれを察知してか薫を突き飛ばした。
「し、しめた!」
蒼紫にしがみついた左近児に向けて結城はなんと爆弾を取り出しそれに向かって投げ出した。
爆弾は爆発し、蒼紫と左近児は重症を負ってしまった。
「蒼紫さん!!」
「蒼紫っ!!」
4人は2人に駆け寄った。
「二人とも、ひどいケガだわ!」
「しがみつかれて、逃げられなかったのか……。
 それにしても、仲間まで巻き添えにするたあ、根っから腐ったヤツらだな。」
佐之助は結城と海野を睨んだ。
「仲間?誰が?」
「!!」
海野の言葉に輝は動揺した。
「左近児を、我々といっしょにするな。ヤツは、何かの役に立てばと思って、拾ってやったまで。
 生きようが死のうが、一向に構わんのさ。」
「なんてヤツだ!」
弥彦も非道な言葉に怒りを覚えた。
しかし、それ以上に怒ってたのは輝であった。蒼紫を傷つけられなおかつ、左近児のことをどうでもよいという言葉に
輝は小刻みに体を震わせていた。輝も以前左近児と同じようにまよっていたところを薫に保護されお世話になっているので
左近児と自分が重ねあっていたのである。しかし薫とは違い、左近児を捨て駒扱いする海野と結城に対し
輝は怒りを露にし、そして我を忘れてしまったのである。
「この……、腐れ外道があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
輝は刀を思い切り振り回した。するとそこからものすごい衝撃波が結城に向かってきた。
「ぎゃあっ!」
それに命中した結城は吹っ飛んだ。それは以前霊山で見たものとは比べ物にならない威力であった。
「な、何だ、ありゃあ!?霊山で炎を消したヤツと同じみてえだ!」
「ううん、それよりも威力があるわ!ケタ違いの威力だわ!!」
佐之助と薫は輝のものすごい技に驚いた。
「あの技!み、見たことがあるぞ。」
海野も驚いたが、何か見覚えがあるようである。
「あれは……。」
「逃がすかぁ!」
佐之助は海野を捕まえようとした。……しかし
「!」
突然小柄が飛んできた。佐之助はなんとかかわしたが海野の捕獲を遮られてしまった。
佐之助は小柄が飛んできた方向を向くとそこには由利と底が高い下駄を履いた芸人風の男がいた。
そして海野は彼らに近寄った。
「てめえらは!」
「……ハァ……ハァ……。」
輝は息を切らしていた。しばらくして我を取り戻すと吹き飛んだ結城を見てワケが分からず混乱した。
そして……。
「はっ!ううっ!…………あっ……ああっ!!」
何も考えていないのに突然頭痛が発生し、輝は気を失って倒れてしまった。
「輝!」
弥彦は輝に駆け寄った。
「おい、大丈夫かよ!?」
佐之助も輝に声をかけるが輝は依然として反応しない。
そして海野はなにかを思い出した。
「そうか、思い出したぞ!そいつ(輝)は、滅ぼした神爪(かみつめ)の里の者だ。」
「神爪の里?」
「生き残りがいたとはな。まあいい。
 筧(かけい)、由利、ヤツらを始末するんだ!」
海野は二人に偉そうに命令する。
「やれやれ、あくまでも人任せですか……。」
筧は渋々しながらも小柄を投げ飛ばした。
「うおっ!?」
佐之助はさっとかわした。
「この小柄……清海と戦ったときに見たヤツと同じだぜ!」
弥彦の言うとおりその小柄は清海に刺さっていたものと同じである。
「清海を殺したのはてめえだな!?」
「だったら、どうだっていうんです?」
再び筧は小柄を投げ続けた。
「チイッ!」
佐之助は再び避けた。
「速すぎる!これじゃあ、間合いに飛び込めないわ!」
小柄の飛ぶ速さがあまりにも速すぎるため3人には避けるのが精一杯である。いや、恐らく薫と弥彦には避けられないであろう。
唯一飛んで来る小柄をかわしながら間合いに飛び込めるのは輝と蒼紫だけである。
しかし蒼紫は重傷を負い、輝は気を失っている為不可能である。
佐之助は小柄を避け続けた為動きが鈍くなっていた。
(くそ!次飛んできたら、間違いなく避け切れねえ!)
佐之助は息を切らしていた。
「最後ですよ、みなさん!」
筧はトドメとばかりに小柄を投げ付けた。
(くそ!!)
佐之助の避けようとしたが、動作が遅くなっている為避けきれずに小柄が佐之助の肩に当たろうとしていた。……そのとき
突然何者かが佐之助の前に立ち、右手に持っている何かで小柄を叩き落した。
「!」
筧は信じられないできごとに驚きを隠せなかった。
佐之助の危機を救ったのは、朱色の着物を着ていて左頬に十字の傷があり、
以前輝を不良達から救った男もとい、緋村剣心(ひむらけんしん)であった。右手に持っていたのは彼の愛刀『逆刃刀』である。
「バカな!飛んできた小柄を、叩き落すなんて!?」
「ま、まさか……あいつ?」
海野と弥彦も突然の出来事に驚いた。
「まずいですね。これ以上、新手が増えては、こちらが不利です。」
筧は状況を不利と感じた。確かに剣心なら飛んできた小柄を避けながら接近して攻撃を仕掛けることが可能であるからだ。
「ひとまず退くか……由利!」
海野は由利に再び偉そうに命令する。
由利は呆れて二人と共にそのまま裏口へと逃げ出した。
「みんな、無事でござるか……。」
剣心は逆刃刀を鞘に収めた後笑顔でみんなに言い寄った。
「剣心!!」
薫達は剣心との再開に浸った。
今まで彼は、不穏な空気を感じて神谷道場を留守にしていたのであった。
そして剣心は倒れている輝を見て言った。
「この少女は……。」
「ああ、いっしょに行動してるんだ。自分の名前しか覚えてないらしいけど。」
輝のことについて弥彦が説明するがそこに佐之助が割り入って来た。
「そいつはどうだかな。今までの技もそうだが、さっきの技……、とっさに出したにしちゃ、完成され過ぎてる。
 何かを思い出しかけてるんじゃねえか。」
佐之助の言う通り先程輝が出した技は霊山で出した時とは威力が比べられないだけでなく完全な形として放たれていたのであった。
「それより、ケガをした人たちを運びましょう!話はその後よ。」
「そうでござるな。」
薫の指示に剣心は了承した。
そして佐之助は輝を、剣心は蒼紫を、薫は左近児を抱えて工場を後にした。
果たして海野が言っていた神爪の里とは一体何なのか?そして輝との関係は?
また新たな謎を抱えながら一向は一路東京へと戻っていくのであった。

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