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第3話 金鉱跡の錬成陣

「おはよう、エド。アル。」
「おはよう。」
食堂にエドとアルがやってきた。セリスは2人より先に来ていて先に朝食を食べ始めていた。
セリスの表情は昨日アルが見た時とは裏腹に普段と変わらなかった。昨日のことがまるで嘘のようである。
テーブルには既に2人分の朝食が並べられているが、エドは自分の分を見て不満げな顔をした。
それを見たセリスはエドに話しかけた。
「あら?エド、食べないの?」
「そうじゃねえんだよ。」
「じゃあ、なんで不満そうな顔してるの?」
「ん…………。」
エドが指差した先には牛乳が入っているコップがあった。
「牛乳?」
「セリスさん、兄さんは牛乳が嫌いなんだ。」
アルが割り入って説明をした。
「ふふ……、好き嫌いしてると二十歳(ハタチ)になってもそのままよ。」
セリスは微笑んだがエドは怒り出した。
「あのな!確かに俺は背が低いの気にしてるが、嫌いなのは嫌いなんだよ!!」
「はいはい……、朝から騒がしくしないでよ……。牛乳は私が飲んであげるから、そこにあるオレンジジュースでも取ってきたら?」
セリスが指を指した方向には牛乳の他にオレンジジュースなどの飲み物を入れたピッチャーが置かれているテーブルがあった。
エドはしぶしぶと飲み物を取りに入った。
エドは背が低いのを異常に気にしてるわりに牛乳が大嫌いなのである。そんなことを知らずセリスはエドの食事の分に
牛乳を置いてしまったのである。仕方なくセリスはエドのトレーに置いてある牛乳を自分の所に持っていった。
エドの怒鳴り声のせいかセリスは呆れた顔をしていた。
そんなこんなで二人は朝食を始める。
「ここの牛乳って、結構おいしいのよ。コクがあって、甘味もあるの。この宿のご主人の自慢で、配達も行なってるの。」
「農家と契約でもしてるの?」
「ううん。この宿に牛舎があって、そこで飼ってる牛から牛乳取ってるの。殺菌なんかも自分で行なってるんですって。
「へー……そうなんだ。」
「しかも乳製品の加工もやってるそうよ。しかもこの牛乳はこの町を統治している大佐御用達なんですって。
 ま、エドにはこの牛乳の良さがわからないでしょうけどね。」
「うっさいなあ!」
「でも、どうしてそんなの知ってるんですか?」
「ここのご主人から聞いたの。」
「フーン……まっ、野菜ジュースとかがあるだけでもよしとするか。いくら牛乳が自慢でもそれしか飲み物扱ってないんじゃ
 どうしようもねえからな。」
「そんなことより、朝食済ませたらさっさと図書館へ行くんでしょ?」
「わかってるよ。」
そんな会話の他に、故郷のことや、旅の話などをしながら朝食を進めていった。

町の図書館
エドたちは新聞を片っ端から見てさらわれた人たちをすべて見てみたが、年齢、性別、職業など、すべてにいたって
バラバラであり、共通点がないため犯人像が掴めなかったが、目的らしきものは割り出せた。
「やっぱりどうみてもすべてバラバラ、ホントにだれかれ構わずさらったのね。」
「やっぱり賢者の石の錬成の為にさらったんだな。」
「まだ調べる所があるんじゃないかしら?」
「なんだ?」
「人たちが誘拐にあった現場とか、その犯人らしきものを目撃した場所とか……。」
「……そうだな、次はそれだな。」

図書館をあとにしたエドたちは町の人たちに聞き込みを始めた。
しかし、そう簡単には手がかりは見つからない。帰ってくる答えは「知らない」とか「わからない」であった。
……しかし。
「それかどうかわからないけど、見たよ。」
「ホントですか!?」
アルが手がかりらしきものをみつけた。証言者は中年の男である。
「確か、今から一週間ぐらい前に人じゃねえ何からしきものが洞窟に入っていくのを見たんだ。」
「洞窟!?…どこですか?」
「この町のはずれにあるんだ。もとはゴールドラッシュ時は金鉱だったんだが、今では金が出ないため
 誰も入らないんだ。」
「町のはずれですね!?ありがとうございます!」
「……だが、大佐に報告し、調べてもらったものの、何もなかったそうだ。」
「そうですか……。でもありがとうございます。」
アルは男にお礼を言った後この場を去っていった。アルは、何もないという男の言葉をもとになにかあると思い
エドとセリスと合流することにした。

そしてエドたちは、男の情報をもとに町外れの洞窟へとやってきた。
「これが、その洞窟かあ。」
「見た所、何もないただの洞窟ね。」
「ともかく入ってみよう。」
3人は洞窟の中へと入っていった。
洞窟の中は意外にも一直線になっており、迷うことはまったくないので簡単に進めた。
そして3人は行き止まりに突き当たった。
「なにもねえな。」
「本当にただの行き止まりだね。……ん?」
アルが壁を見渡すとそこに錬成陣らしきものが描かれていた。
「錬成陣!?」
「なんでこんな壁なんかに……。」
「いえ、これは錬成陣ではないわ。」
「えっ?」
「よく見て、確かに錬成陣に似てるけど、中の文字が少し違うわ。」
エドとアルはセリスに言われたように錬成陣の文字を見ると、不思議がった。
なぜならそれには、錬金術では見当たらない文字があったからである。
さらにその下になにやら不思議な文字が書かれていた。
エドは解読してみようと試みたが、全く読むことはできなかった。
「なんて書いてあるんだ?これ。」
「『この紋に魔力を注げよ。』……って書いてあるわ。」
「なんで読めるんだ?」
「これは『魔術文字(まじゅつもじ)』っていって、魔術に関する知識を身につけた者にしか読むことのできない文字なの。」
「「魔術文字?」」
「錬金術師が、研究書を暗号化するのと同じように、魔術師もこの文字を使って研究書なんかを悪用されないようにしてたの。
 ……けど、これはそのまま書かれてるわ。昔はそれと同時に暗号も用いてさらに難解にしてたんだけどね。」
「じゃあ、なんでそのまま書かれてんだ?」
「恐らく魔術文字を読むことのできる人間がいないと思ったからでしょうね。万が一読めたとしても、魔術を扱う人がいないから
 どうしようもできないという理由もあるわね。」
「確かにな、……けど、現にそれを読めて、使える人がここにいるんだけどなぁ……。ちなみに、上の錬成陣らしきものはなんだ?」
「魔法陣っていうの。基本的には錬成陣と一緒なんだけど、何かの仕掛けや召喚術などに用いらてるの。」
「へぇ〜〜、そうなんだ。」
「とにかくやってください。」
「うん。」
セリスは壁に描かれた魔法陣に手を置き魔力を注ぎ込んだ。
するとそこから壁が両サイドにスライドしさらにはそこから先に通路が現れた。通路の先には階段があった。
「……すっげえ。」
エドは仕掛けに驚いた。
「こんなヘンピな洞窟にこんなのがあるなんて……。」
「大昔に作られたってわけじゃなさそうだな……。」
「そうね、ひょっとしたら行方不明者が見つかるかも、……誘拐犯と共にね。」
「そんときゃ犯人をブッ潰しゃあいいってこと!行くぜ!!」
エド達は階段を下りて行った。
その先は広い通路となっており、3人が横に並んでも苦にならない広さであった。
しばらくして分かれ道にあった。それは真っ直ぐ行くか曲がって行くかの分かれ道であった。
「どうする?」
「俺とアルは曲がっていきたいが、セリスは1人で平気か?」
「平気よ。それにこんな狭い所でも対策はとってあるから大丈夫、万が一でも剣があるしね。」
「それじゃあ僕たちはここで……、セリス…気をつけて。」
「そっちもね。」
分かれ道をエルリック兄弟は曲がり角を曲がり、セリスはまっすぐ進んだ。

曲がり道ルートを進んだエルリック兄弟は扉に突き当たった。
見てみると魔法陣らしきものは見当たらないのでこのまま進んでも平気だろうと扉を開けた。
扉を開けると、その先は高い天井の広い部屋であった。奥の方にエドが見たことある錬成陣らしきものが地面に描かれていた。
「これは!?」
「こんな所にも賢者の石の錬成陣が……!」
それはエドが以前中央(セントラル)の第五研究所跡で見つけたもので、賢者の石を錬成するための錬成陣であった。
ちなみにアルにとってはそれを生で見るのは初めてであった。
「やっぱり、誘拐の目的は賢者の石……」
すると突然辺りから不気味な声が響いた。
「こんな所に人間が現れるとは……キサマ、魔術師か……?」
「「!?」」

一方まっすぐルートのセリスは、エド達と違い階段に突き当たった。
「なにかありそうね……。」
セリスはそのまま階段を下り降りた。その先の向こう側にはなんと鉄格子が張られていた。牢屋だ!セリスは思った。
中には人々がうずくまっていた。どうやら誘拐された町の人たちのようだ。
「大丈夫ですか!?」
それを見たセリスは声をかけた。人たちはセリスの声に反応して見上げた。
「危ない!!後ろ!!」
「!!」
後ろからいきなり何者かに攻撃された。セリスはとっさにかわした。
「……どうやら番兵の登場ってワケね。飾りとしてカムフラージュしてたとはね……ま、あまり驚かないけど。」
セリスを攻撃したものは、右手に剣を持った牢屋の端にあった鎧であった。
それがなんと動き出しセリスに襲いかかってきたのである。
それを見たセリスは剣を抜いて戦闘態勢に入った。

一方エドたちは、翼の生えた悪魔のような姿をしたものと対立していた。
「キサマらには、魔力を感じられんようだが……どうやってここに来た?」
翼の悪魔(ガーゴイル)はエドたちに質問をしてきた。
こんな洞窟に入ってこれる人間といえば魔術師ぐらいのはずと思っているからである。
「それは教えられねえなあ。」
エドは悪魔の質問にはまったく答える気はない。
(ホントはセリスがいたからここにこれたんだけどね。)
「フン、まあいい……。ここを知られたからには…………死んでもらう!!」
「お約束のセリフだなあ……まったく!いくぞ!アル!」
「うん!」
エドは錬金術で甲剣(右手のアレ)を錬成した後アルと共に構えを取った。
エドの錬金術を見た悪魔は興味深げに笑った。
「錬成陣もなしに錬金術を行なうとは……面白い!!」
悪魔は爪を深く立ててきた。
今、エルリック兄弟とガーゴイルとの戦いが始まろうとしていた。

「でやぁー!!」
「ふん!」
「やあ!」
「ふぬ!」
エドとアルはガーゴイルに攻撃を仕掛ける。ガーゴイルも防御しつつ爪で応戦した。
状況は一進一退だが、二人にとっては苦とも感じない状況であった。
「そんな爪で俺たちを倒そうってのか?」
「キサマなど、これで充分だ!」
「悪いが、負ける気はないんでね。」
エドとガーゴイルはつばりあいのあと距離をとった。
「やあ!」
すかさずアルも攻撃を仕掛けてきた。
「おっと!シャァ!!」
「うわ!!っと」
アルは攻撃をかわした。アルは鎧であるもののガーゴイルの爪はアルの体を切り裂くほど鋭いので避けざるを得ない。
兄弟息揃っての攻撃がガーゴイルを徐々にではあるが追い詰めていった。
「なかなかやるな……だが、これならどうだ!?………」
ガーゴイルは距離を置いて呪文を唱え始めた。
「!!、危ねぇ!」
「ファイヤーボール!」
ガーゴイルは炎の玉を手から放った。エドは壁を錬成しそれを塞いだ。
「……あまり驚かなかったようだな……。」
ガーゴイルは先程の炎の玉を見て驚かなかったエド達を不審に思った。
普通ならば驚いて対処を考える暇もなくまともにくらうはずなのだが、壁を錬成しファイヤーボールを防ぐという
落ち着いた対処を取ったのであったからだ。
「まあな、それに似たモンを使うヤツにあったからな。」
「なに!?」
「そいつなら恐らく、あんたが捕まえてた人を救出してんだからな。」

その頃セリスは鎧の化け物と交戦していた。
攻撃をかわし剣を振るうもそこは鎧、まったく通用しない、蹴りを放っても無意味であった。
「こうなったら外れてたら悪いけど、斬らせてもらうわ!」
セリスは聞き取れないほどの早口で呪文を唱え始めた。すると剣が光り出した。
その剣で鎧の腕を切り裂くとなんと今まで通用しなかった剣が豆腐を切るように鎧を簡単に切った。
どうやらセリスが使った魔法は、剣の切れ味を鋭くする魔法であった。
腕を切られた鎧は何の躊躇いもなくセリスの襲い掛かった。無論セリスは攻撃をかわしていった。
「やっぱり、リビングアーマーね!」
予想が当たったかのようにセリスは鎧を睨んだ。セリスは先程、鎧を蹴ったとき中身のない感触を感じていたのであった。
リビングアーマーとは、死んでいった戦士などの怨念が鎧に宿り誰彼構わず襲い掛かるモンスターである。
その証拠に切られた鎧の腕部から血が全く流れていない。
アルとは違い理性は持たず、ただ人を襲うために存在するものなのである。
この場合では、ここの主の命により牢屋の守護を主な任としている。
「人じゃないなら、遠慮はいらないわ!」
セリスはリビングアーマーに向かって駆け出した。
迎え撃とうとリビングアーマーは剣をセリスに向かって振った。しかしセリスは攻撃をかわしリビングアーマーを
魔力で鋭くなった剣を袈裟に振りリビングアーマーを切った。
「はぁ!!」
それはそのまま真っ二つに切り裂かれそのまま動かなくなった。
セリスは鎧を調べ、中にある紋が切れているのを確認した。そうしないとまた襲ってくる可能性があるからだ。
「よし!これでOK!」
倒したリビングアーマーが二度と動かないのを確認した後セリスは牢屋の鍵をそのまま剣で壊し、牢屋の扉を開けた。
「もう大丈夫ですよ。」
セリスは牢の中の人たちに穏やかな顔で言った。
「あ、ありがとうございます!」
「もうダメかと思いました。」
「もうダメって、どういうこと?」
セリスは『もうダメ』という言葉に疑問を持ち質問をした。
「何人かが、化け物にここから別の所に連れ去られてしまって、それからしばらくしても戻ってこなかったんです。」
「ひょっとしたら、殺されちゃったんじゃないかって思ってったんです。」
「!!」
セリスは驚いた。そして
(恐らくその人達は、賢者の石の錬成のための生贄にされたんだわ!…やっぱり、誘拐の目的は賢者の石を作るために……。)
「あの、どうかしました?」
女の人が考え込んでたセリスに声をかけた。
「ううん、何でもないわ。それより早くここから逃げてください!私も後から来ますから。」
「分かりました。では……」
人達は皆駆け足で洞窟の出口へと向かっていった。一人残ったセリスはリビングアーマーの破片を見て考え込んだ。
(アルとは違って理性を犠牲にし、ただ服従心を尊重させるなんて……これは闇魔術ね。錬金術では決してできないわ。
 となると…………犯人は魔術師か魔族ね……。エド達は大丈夫かしら?戻ってさっきとは違う道を行ってよう。)
セリスはこの場を後にしエド達が向かった通路へと向かって行った。

一方ガーゴイルと交戦しているエルリック兄弟は未だに戦っていた。
地上戦では不利と感じてかガーゴイルは翼で宙を舞っていた。空中から攻撃を仕掛けるのである。
その為二人は急降下してくるガーゴイルの攻撃に避けることしかできず反撃の機会が見当たらない。
「くそ〜〜!降りてきやがれ!!」
「うるさいぞ小僧!勝てば良いのだ!!」
エドの怒鳴り声をガーゴイルは全く無視し攻撃を仕掛けた。エドはなんとかそれをかわした。
「くっそ〜!うかつに飛び込んだらあの鋭い爪か魔法の餌食だぜ!」
「さて、どうする?」
「こうする!!」
エドは両手を合わせ甲剣を元に戻した後再び両手を合わせ地面に手を置いた。するとそこからガドリングガンが現れた。
エドはガドリングガンを錬成したのである。
「?」
「アル!!」
「うん!」
アルはガドリングガンをガーゴイルに向けて発射した。ガーゴイルは空中を自在に動けるため簡単にかわせるので
全く当たらない。しかしエドはまたしても両手を合わせ今度は壁に手を当てた。
今度は突起物を沢山錬成した。どうやら相手の動きを制限させる作戦に出たのである。
突起物もガーゴイルを襲うがそれでも構わずガーゴイルはかわし続ける。
「バカめ!それで私を倒せると思うな!!」
ガーゴイルはエドの作戦をあざ笑った。
「別にそれで倒そってわけじゃねえぜ!」
「なに!?」
エドはなんと錬成した突起物を足場にしてガーゴイルのもとへとやってきた。
エドが突起物を錬成したのはこの為であった。
そしてすかさず甲剣を錬成しガーゴイルの翼を切り落とした。
ガーゴイルは断末魔と共に地上へと落ちていき駄目押しとばかりにアルのガドリングガンがガーゴイルに命中した。
そして地面に落ちたガーゴイルはピクピクとケイレンするだけでまったく動かなくなっていた。
「さっすが俺達!ナイスコンビネーション!!」
「兄さんにしては珍しく頭脳プレーをしたね。」
「ほっとけって!……それよりも、こいつ(ガーゴイル)に聞いとかなきゃなんねぇモンがあるからな。」
「……そうだね。」
「……今度はこっちが質問する番だ。……おい、ウロボロスの入れ墨が入ってる連中を知らないか!?」
エドはガーゴイルに問い出した。
ガーゴイルはほくそ笑みながら口を開いた。
「…………そんなものなど……知らん。」
「しらばっくれる気かよ!!」
「まあまあ兄さん……。」
「それよりも面白いことを教えてやろう……。
 もうすぐ我らの主が、恐ろしい計画を行なっている。」
「恐ろしい計画!?」
「それが発動すれば、人間どもなど皆殺しだ!そうなれば……この世は我ら魔族のモノとなる……。」
「魔族だって!?」
「セリスの言ってたアレか!」
「でもそれって大昔に全滅したはずじゃ。」
「……今から数百年も昔に、人間との戦いに敗れた我々には生き残りがいる……それが闇の中で時を過ごしていたのだ……。
 昔はいたのだが…今では我らと契約し力を得たものがいなくなった……人間とは愚かだ……我らの力を得れば地位も、名誉も、
 そして賢者の石以上のものが手に入るというのに…………ぐはっ!!」
エドはガーゴイルの言葉に腹を立て甲剣でガーゴイルの体を貫いた。そしてガーゴイルは泡となって消えた。
「確かに人間は愚かだよ……。けどなあ!悪魔の力を手にしなくたって手に入るモンはあるんだよ!!
 そんなことしなくても……、俺達は元の身体に戻ってみせる!!」
部屋にエドの声が響き渡った。
アルはしばらくした後エドに声をかけた。
「それより兄さん、ヤツらの計画ってなんだろう?」
「多分賢者の石を沢山作った後権力者なんかに渡して人間同士の戦争でも起こそうって魂胆だろう。
 それで人間の自滅を狙ってんじゃねえのか?」
「う〜〜ん……。」
アルはエドの回答に考え込んだ。確かに有り得そうなことなのだが何か別の目的はあるんじゃないかと思ったからだ。
しかし答えは出ず、そのままエドの回答を受け入れた。
とそこに先程人達を救出したセリスがエド達のもとにやってきた。
「エド、アル、大丈夫?」
「ああ、こっちは片付いた。そっちはどうだ?」
「捕まってた人達を助けたわ。」
「そっか。そっちも片付いたようだな。」
「ええ。」

「これが賢者の石の錬成陣ね……初めて見たわ。」
セリスは錬成陣を見ていった。そしてしばらくしてエルリック兄弟に聞き出した。
「これを残しておくのはいけないと思うから、壊すわ。いい?」
「ああ。」
「うん。」
エドとアルはうなづいた。
セリスは呪文を唱え始めた。
「大地の精霊よ、わが力のもとに集約し、あらゆるものを潰す象徴となれ…………」
すると地面が錬成陣の上に昇っていき大きな岩を作り出した。
「ロックブレイク!!」
セリスが魔法を唱えると同時に岩は勢い良く錬成陣に落ちていき、それを跡形もなく破壊した。
「これでもう賢者の石を作れないけど……ホントに良いの?」
「仕方ないさ、賢者の石はどこにもないからな。別の方法でも探すよ。」
「早く元の身体に戻れるといいわね。応援するわ。」
「ありがとうセリス。」
「まっ、それはそうとして……戻るとするか。」
「「うん!」」
エド達は洞窟を後にした。これで無差別誘拐事件も解決し一件落着だと思い町へと向かうのであった。





…………しかし
ガーゴイルが言い残した“計画”は誰にも知れず進んでいた……。
「賢者の石の材料を逃がしてしまったか……まあいい。
 今ここにある賢者の石が完全ではないものの、“アレ”の錬成は予定通り進める……。」
闇の中で不気味な声が響き渡った。
はたして“アレ”とは一体何なのか?そして、ガーゴイルが言う主とは一体、何者?

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