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-FINALFANTASY X-   AFTER ED

5年後のスピラにて…Vol,4


*この話は,FINALFANTASY]INTERNATIONALの付録,アナザーストーリー『永遠のナギ節』を全く無視した内容になっています。


俺の名前はアーロン………。大召喚師、ブラスカ様のガードだった男だ…。
しかし、ブラスカ様が「シン」を倒し、ジェクトが新たな「シン」になったことに腹を立て、
ユウナレスカに挑んだものの、結局殺されてしまった。
だが、ジェクトの望み…。息子のアレを見守るため、
醜くもスピラにとどまっていた。
その一件も、何とか丸く収まり、俺はユウナに異界送りをされたところだった。
そう、異界送りされて、異界で静かに暮らすはずだった…。
はずだった―――――…………。

「お〜いっアーロン!!新しい酒、持ってこいよぉ〜〜っ!!」
「………………貴様ぁ、飲みすぎだぁ!!!」
そう、俺は異界送りされて、静かに暮らすはずだった。
しかし、異界に来てみればどうだ?ブラスカ様は宴会の用意をして待っているし、
こいつ(ジェクト)はジェクトで、俺よりほんの少し先に異界に来たのをよいことに
「オレ様の方が、異界の先輩なんだからな〜?オレの言うことはちゃんと聞けよ〜〜っ」
などと訳のわからないことを言う始末…。
死んだ体を引きずるように、アレに付いて旅を続け、役目を果たし、やっと異界で落ち着くはずが…。
おまけに5年経った今でも、やれ宴会だ、祭りだ〜…と、毎日騒いでいる。
「ブラスカ様、最近飲みすぎなのでは?お体に悪いです…。」
「アーロン、私達はもう死んでいるのだよ?体に悪いも何もないだろう?」
「はぁ…ですがしかし…。」
「ブラスカよぉ、そのカタブツにゃぁなに言っても無駄だぜ〜?」
「…貴様は黙っていろぉぉぉ〜〜〜っっ!!」
俺は、持っていた酒徳利で、ジェクトの頭を殴りつけた。
「っっっ〜〜〜〜〜〜!!!???」
痛いはずはなかろう?ここは、異界なのだ。
「とにかく、そろそろ酒は控えていただきませんと。」
俺の話を無視して、ブラスカ様は酒を飲んでいる。
誇り高き大召喚師ブラスカ様も、ジェクトの毒気に当てられたか…!
はぁ……。


ところで、アレ…は今、元気でやっているだろうか?
ん?アレ?アレと言ったらアレだ。
あの金髪の泣き虫だ。
実は、最近までアレも、オレ達と一緒だったのだ。
だが、毎日毎日ユウナの傍に行っては、ユウナを見つめてばかり…、
無駄だと知りながら話し掛け、結局気づいてもらえない自分の身を呪う…、その繰り返しだ。
さすがに見かねたジェクトが「元気出せよ〜っ!」と、ブリッツボールをしに、
アレと出掛けたのだが…、戻ってきたのは、ジェクト一人だった。
「あんまりなさけねぇ面してっから、『テメエなんざ、スピラに戻っちまえ〜』って、崖からチョット突き飛ばしたらヨ、
消えちまったんだよっ!!」
これには、さすがのブラスカ様も驚かれて、一時は、異界中が大騒ぎになった。
結局見つからなくて、途方にくれていた頃、
下界(スピラ…と言ったほうが正しいか)にちゃっかりアレがいることがわかったのだ。
再び異界は大騒ぎになったのだが、誰一人、アレがなぜスピラにいるのか、理由を説明できる者は
いなかった。ブラスカ様でさえ、「ユウナが呼び寄せたに相違あるまい…」と、おっしゃるだけ。
ただ、アレはスピラに戻れたんだ…という事実が、そこにあるだけだったのだ。

「おいアーロン、痛てぇぞ?こぶになっちまったぞ?どうしてくれんだよ?」
「・・・異界に痛みなど、なかろう?」
「あのなぁ?そのしかめっ面、なんとかならねぇもんかね?まぁ、別にいいけどよ〜。」
「別に構わないなら、冗談にもならないことを言って、笑わせようとするのはやめろ。」」
「…あぁそうかい!!そうですかっ!!ケッ、なんでぇてめぇなんかなぁ、俺のジェクトシュートでも喰らえばなぁ、
泡吹いて倒れるに決まってんだ!おうよっ、そうに決まってらぁ!!」
・・・・もう、反論する気にもならん。


ふと、一人になって考えてみる。
スピラのこと、異界のこと、アレのこと、そして自分のこと…。
気づけば、俺は、自分の墓に来ていた。
…ユウナ達が、形ばかりではあるけれどと言って作ってくれた、俺達の墓だ。
こうして自分の墓の前に立つと、未だに不思議な気がしてならない。
全てが,夢だった様な、そんな気さえしてくるのだ。
ん?まだあったのか…アレの墓。
異界にいた頃、よくアレは、ここへやって来ては、自分の墓にブリッツボールを投げつけていたな。
バチ当たりな奴とも思ったが、自分の墓に何をしようと、バチを当てるのも当たるのも自分なのだから…と、
アレは笑っていた。
さては、「スピラに逆戻り」とかいうバチを、わざと自分に当てたのではあるまいな。
しかし、この墓が今もここにあるというのはおかしかろう…。アレらしくもない。


『そうなんスよ〜。もう最悪…。』

…ん?この声は…。

ユウナと並んで、自分の墓参りという訳か…。
!!
こ、これはいかん…。隠れなければ…!
あぁ…、あっちからは、俺の姿は見えないのだった。

『ひどいッスね〜,オレの墓作るなんて…。しかも親父の隣だし…。』
 『そういうこと言わないの!』

フフ…、仲の良いことで何よりだ。
あぁ、そうか。アレの墓を壊しに来たのか。
いい加減に壊さないと、アレがまだ死んだままのようだからな。


「アーロン、さっきはすまなかったね…。」
ブラスカ様!あぁ、ジェクトもいっしょか…。
酒は…?見当たらないところをみると、どうやら、自分達の墓の前で酒盛りをするつもりでは
ないようだな。
「おお?二人とも仲良くやってるようじゃねぇか!!」
「元気にやっているようだね…?ユウナ。」
そして、アレとユウナは、アレの墓を壊しにかかった。

どの位の時間が経ったろうか…。
1つ減った墓の前で、突然ユウナが言った言葉――
『父さん、ジェクトさん、アーロンさん…、私達、結婚するんです。』
!!!!!
「「「な、なにぃぃぃぃぃっっっ!!??」」」
ユ、ユウナ、今なんて……
『そうッスよ〜。今日はその報告に来たんスよ〜〜。』
おっ、おい!少しは、真剣に話さんか!
ブラスカ様は、にっこりと微笑まれて、そして2度3度うなずかれた。
「…ユウナを、頼んだよ。」
一方、ジェクトは驚きを隠しきれないようだ。口がぽかんと開いたままだ。
一気に酔いが醒めたって顔だな…。

『…大っ嫌いだ……』
「おうっ!?」
アレの言葉に我に返ったか、ジェクトはこぶしをふりあげてアレに殴りかかる。
「て、てめぇ〜!俺に向かって‘大っ嫌いだ’と?…。」
『……さよなら……。そして…ありがとう……。』
おい、お前もしかして、俺たちのこと見えてるんじゃないのか?
計ったようなタイミング…、いいコンビだ…、いい親子…だ…。
「こ…こいつぅ……。」

『いままでお世話になりました。』
「ユウナ……。』
ブラスカ様は、微笑んではいらっしゃるものの、やはり少しお寂しそうだ。

そして、かく言う俺も、嬉しいような、悲しいような……。

アレは、ユウナをちゃんと幸せに出来るだろうか?
心配だ…、何せアレは、ジェクトの息子なのだ。

が!……ジェクトの息子だから…
………イイ奴だ。


『じゃ、行こうか?ユウナ。』
『うん!』


どうやら俺の役目も、本当にこれで終わるようだ。
ユウナのことは、心配要らないだろう。
ユウナには、決して裏切ることの無いガードが、付いたようだからな。
あまり、有能とはいえないが…。

きっとジェクトもブラスカ様も、同じことを考えていたに違いない。
「大丈夫、2人はきっと幸せになるね。」
「そうだな…。ユウナちゃん泣かせたら、オレ様がゆるさねぇからな!!」

ジェクト、憎まれ口をたたきながら、泣くのはやめたらどうだ?
アレが見たら、バカにされるぞ…。

さて、泣いているジェクトに代わって、俺が言おう。


おい、泣き虫…、一人前になったな…



「なぁ、結婚式、行かねぇか?」
「……あぁ?」
「そうだな、私達も出席しようか!!」
「…はっ、はい!?」
「なんだぁ?アーロンは出ねぇのか?折角報告に来てくれたんだ。行かねぇわけにはいかんだろっ?」
「しかし、俺達の姿はアイツらには見えんだろう!?」
「んなの関係ねぇよっ!おいブラスカ、来月って言ってたな?祝い酒でもして、一ヶ月過ごそうぜっ!!」
「ジェクト、一ヶ月間も飲み続けるつもりか?私はそんなに飲めないよ。」
「い〜や!オレについて5年も飲んでたじゃねぇか!楽勝だろっ!!」
「おいっジェクト!!少しは、ブラスカ様のお体の心配をしたらどうなんだっ!!」
「だぁかぁらぁ、オレ達はもう死んでるんだから関係ねぇ〜だろっ!!」


結婚式まで、一ヶ月…。

それまで祝い酒……?


ユウナ、…結婚式、もう少し早くせんか……?






-THE END-




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