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  犬夜叉 ―また此処で―


「犬夜叉――っ!受かったよーっ!」
春。
かごめは、戦国時代で過ごしていたにも関わらず、無事に志望校に合格する事が出来た。
やはり、かごめの努力であったのだろう。
犬夜叉に邪魔をされつつも、楓の家で必死に勉強した甲斐があった。
「"こうこうごうかく"?それって良い事なのか?」
「良いに決まってるじゃないのっ!」
こんな当り前の事を聞かれて、いつもはちょっとイライラするのに、今は気分が弾んでいるため、怒る気にはなれない。
「かごめ様ーっ!」
「高校・・・ってやつ、受かったんだって!?おめでとう!」
「良かったのぉー!」
弥勒達も集まってきた。
「えへへ・・・ありがとっ!」
かごめにとって、これほど嬉しい事はなかった。
一時は受験する事さえ危ぶまれていたのに。
かごめは内心ホッとし、「後は安心してこっちに来れる。」と思っていた。
もちろん、犬夜叉や弥勒達も、そう思っていた。
―――だが、現実は甘かった。

「日暮ー。ここ読んでみろー。」
「え゙っ!?・・・わ、分かりません・・・。」
「全く・・・予習してきてないのか!?」
中学と高校では全然違かった。
授業のスピードも速く、疲れも溜まる。
「あっちには、帰ってから行こう。」と思っていたのに、疲れて行けない日もあった。

「ただいまー。」
誰も居ないんだろうか。
と思っていたら、置き手紙を見つけた。
『かごめへ。
 おじいちゃんが体調を崩して病院に行きました。
 入院だそうです。2〜3日で帰ってくるって。
 その間は、ママはおじいちゃんの所に行ってますからね。
 留守番お願いね。  ママ。』
「えぇー・・・あたし一人かぁ・・・。」
今日は、草太もいない。
親戚の家に泊りに行ってしまった。
静かなので、廊下を歩く音が良く聞こえる。
――と、かごめは足を止めた。
誰か居る。
ちょっと不安になりながらも、かごめは勢い良くドアを開けた。
やっぱり人の気配がする。
だが、暗くて分からない。
「誰っ!?」
「・・・何怒ってんだよ。」
「いっ犬夜叉!?」
犬夜叉が居た。
ずっとあっちで待っていると思っていたので、心底驚いた。
「『来る』って言ってんのに、来ねーじゃねぇか。」
「だって忙しいんだもん!!」
「・・・じゃぁ今から来ねぇか?」
「へ?」
「来ねぇか、って言ってんだよ。」
犬夜叉が言うには、来た時から人は居なく、安心してかごめを待つ事が出来たと言う。
人が居ないのなら・・・と思って、かごめを連れて行こうと思ったらしい。
結局、連れていかれてしまった。

井戸を出た所で、かごめは思った。
(今日、数学で宿題出されてたじゃないの・・・!!)
正直、迷った。
帰ろうかと思った。
でも、せっかく犬夜叉に来てもらったのだから、帰るわけにはいかない。
それに、久しぶりに会うのだし。
(でっでも宿題がっ!)
かごめは決めた。
「かごめ、弥勒達にも言わな・・・ってオイ!!」
「いいから来て!!話があるの!!」
無理やり衣を引っ張って、御神木の下に連れ出した。
「なっ何すんだよ・・・。」
「あのさ・・・あたし、もぅこっちに来れないや。」
「あ゙?何でだよ。」
かごめは宿題を優先してしまった。
宿題、というより、今後の将来を優先した。
「だって・・・忙しくて・・・」
「・・・次はいつ会えるんだよ?」
「分かんない・・・。」
「休みはないのかー?」
「・・・そうだ!夏に来るから!!」
「夏・・・か、絶対だな!?」
「うん。絶対だよ!!」
犬夜叉とかごめが微笑みあう。
「・・・じゃぁ、夏に此処で会うか。」
「そうだね!また・・・此処で会おうね!」
「じゃ・・・またな・・・!」
「バイバイッ!!」
犬夜叉は笑顔で見送った。
心底辛い決断だった。
が、かごめの事を考えると、自分の考えはワガママにしか思えない。
二人は、此処で再会を約束した。


季節は過ぎ、夏が来た・・・。
セミが鳴き、蚊も増えた。
――そんな時、御神木の下には、一人の少年が立っていた。
向こうから、少女が走ってくる。
それと共に、犬夜叉の顔もほころんでくる。
「犬夜叉!ただいまっ!!」
少女が抱きついてきた。
少年は顔を赤らめた。
目には、少し涙が浮かんでいた。

「・・・おかえり。」

END

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