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 犬夜叉 ―いつまでも―



犬夜叉一行は奈落を倒した。
仲間の力を信じあい、心を信じあった。
これで、物語は終わるはずだった。
成すべき事は終わったはずだった。
―――だが、物語は続いている。
一人の少女に、大事な役目があったのだ。
一人の少年から授けられた、大事な役目が。



犬夜叉とかごめは近くの野原で寝転がっていた。
奈落との戦いが終わり、みんな安心しているのだ。
「はーっ・・・これで終わったなーっ・・・。」
「・・・。」
厄介払いしたように犬夜叉は笑っている。
だが、かごめは違う。
深刻な顔をして空を見上げていた。
「・・・どうしたんだよ?この頃元気ないぞ?」
この一言で、涙があふれた。
かごめの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「お、おい・・・何で泣いてんだよ・・・?」
急に泣かれてしまい、焦ってしまう。
そして、かごめは言い出した。
「もう、一緒に居れないよ・・・。」
「なっ何だって!?」
「・・・犬夜叉と一緒に居れない。
 考えてみて。私は何でここに居るの?」
「な・・・何でって・・・。」
犬夜叉は状況を理解できていない。
「・・・あたしは、四魂の玉を捜すために居たんだよ。
 ただ、それだけのために。・・・もうここに居る理由がないの。」
「それだけかよ。」
「・・・え?」
犬夜叉が予想外の事を口に出したので、かごめは目を丸くした。
「本当に、それだけのために居たのかよ?」
「あたしは・・・それ以外は何もしてない。」
「そんなの違う!!」
犬夜叉の一言一言に、胸が重くなっていくような感じがした。
二人の間に重い沈黙が流れる。
かごめは肩を震わせながら言った。
「・・・あたしに何が出来たの!?あたしなんて助ける事も出来なかった!」
「十分、俺の力になってた。」
「え?」
「側に居るだけで・・・それだけで良かった。」
かごめは、その言葉に重みを感じた。
今まで言った言葉よりも、重い言葉だった。
「・・・。」
「俺の心を癒してくれてた。」
かごめの顔から、いつの間にか涙が消えていた。
「・・・本当?」
「・・・あぁ。」
だが、返事を聞かなくても、彼の言った事は本当だと思っていた。
彼を疑うなんて出来なかった。

「それじゃ・・・ずっと一緒に居てくれよ・・・な。」
かごめは微笑んだ。
「・・・うん。」
「それが、ここに居る理由だ。」
「・・・そうだね!」
微笑みあった。
いつもの輝きが戻った顔。
優しい瞳。
無くしていた物を、取り返したようだった。

「ずっと一緒にいるから。」

言葉を放った。
言いたかった言葉。

「ずっと一緒に居よう。」

彼の口からこぼれた言葉。
ずっと聞きたかった。その一言が。

そして少女は役目を授かった。
自分でも願っていた役目。

この最後の役目を、いつまでも続けてみせる。

心に誓った。その誓いは、いつまでも消える事はないだろう。

END

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