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『いばらの森』のねむり姫
千年夢見てねむる姫
流れる髪はエメラルド
恥らう頬はバラ水晶
『いばらの森』のねむり姫
目覚めぬ哀れなとりこ姫
緋色の紙の魔王が紡ぐ
毒の想いに呪われて
『いばらの森』のトゲの奥
ずっとずっと夢みてる
世界が消える夢をみる


>嵐の夜、森の中を二人の男女が逃げるように走っている。

赤い服の人物:……見つけた。

若い男:コハク、こいつが例のやばいやつなんだな!?
コハク:うん、魔道士インカローズ!彼女がそう言ってる!
若い男:おわっ
コハク:きゃああっ

>二人は崖に追い詰められる。

赤い服の人物:見つけた。見つけたぞ。

若い男:くそっ。魔道士だか知らねえが、やってやるぜ!
コハク:お兄ちゃん。

>何か囁くコハク。

若い男:コハク、お前、おれが泳げねえって知ってるよな?
コハク:大丈夫。私も高いとこ、苦手だから。

>インカローズの魔法が二人を襲うが、

コハク:おあいこだよ!
男:おわっ!

>間一髪、崖から飛び降りる。

二人:うわああーーー!!
インカローズ:逃げても無駄だ。お前の思念は完全に捕らえた。あれから2000年、今度こそ使命を……果たす!

いつか落ちる黒い月
いつか崩れる白い月
とどめる祈りも夢に棲む
魔物に喰われ枯れ果てて
真珠の涙も砕け散る
『いばらの森』のねむり姫
トゲに包まれねむる姫
悪夢が現となる日まで
勇者が悪夢を止めるまで

???:…………を探しだせッ!…………を手に入れろッ!…………のためにッ!!

???:……を探せ……手に……ろ……ために……。
ゼクス:起きんか、シング!
シング:ふあ、ジイちゃん……を見つけた?
ゼクス:な〜にを言っとる!?ワシより先にボケたか?
シング:痛てて……そっか。ジイちゃんと剣術の特訓してて、またぶっ飛ばされたのか。う〜……でも、変な夢を見たなあ。誰かが『探し出せ』って叫んでて……。ま、今は夢なんかより『ソーマ』だ!ジィちゃんから一本取って、『ソーマ』を譲ってもらうんだ!!
シング:ふん、ソーマをただの武器を思っとる孫なんぞにワシが負けるか。……まぁ、スジは悪くない。あと十年、真面目に修行すれば打ち込めるようになるかもな。
シング:十年!?その頃ジィちゃんはヨボヨボだろ?そんなジィちゃんに勝ってもなぁ……。
ゼクス:ばかもん!ワシは長寿世界一の座を狙っとるんだ!!あと十年や二十年ぐらい…………お前が一人前になるまでは、現役でおるわい。いいか、シング。真に鍛えるべきは『ここ』だ。
シング:……心臓?
ゼクス:違う。人の精神と意思を司る生命の根源……『スピリア』だ。スピリアは、この世界で一番強く……そして一番脆いものだ。激しい感情――怒りや憎しみ、恐怖……また時には愛や夢ゆえに乱れ、壊れてしまう。ソーマには、それを癒す力がある。だからこそソーマ使いは誰よりも己のスピリアを鍛えねばならん。シングよ、一時の感情に流されない、本当に強いスピリアを見極め、育てるんだ。

>シングの腹が鳴る。

シング:ジィちゃん、ごはんにしよう!強いスピリアも、腹ペコには叶わないよ。
ゼクス:まったく、お前という奴は……。

>ゼクスの腹も鳴る。

ゼクス:そうだな、メシにするか。………………遅れて家に入った方が後片付けだぞッ!
シング:な、何ぃ!?卑怯だぞ、ジィちゃん!

シング:はあ〜〜〜食べた、食べた!やっぱ、ジィちゃんの作るアクティブタの角煮は最高だなあ。
ゼクス:だろ?グミ焼酎を入れて煮込むのが秘訣なんだぞ。

>訪問者が来る。

近所のおじさん:ゼクスさん……となり街の兄の娘が、もう何日も口をきかず部屋からも出てこないらしい。兄は、例の『デスピル病』じゃないかって心配してるんだ……ソーマで診てはもらえんかね?
シング:デスピル病!最近、流行ってるんだってね。スピリアが暴走する原因不明の奇病なんだろ?
近所のおじさん:その上、普通の医者や薬ではどうにもできないときている。
シング:う〜ん、『スピリア』ってのは難しく言うと精神と意思を生み出す『生命の根源』だからねえ。それを癒せるのは、人のスピリアの中に『リンク』できる神秘の武具『ソーマ』だけさ!
ゼクス:お前はだまっとれ!……スマンが、ワシはソーマを気軽に使う訳にはいかんのだ。
シング:なんでさ?いつも『人が困ってたら助けろ。美人が困ってたら絶対助けろ』って言ってるクセに。
近所のおじさん:兄の娘はなかなかの美人ですが……。
ゼクス:ほほう!?…………いやいや、そういう問題ではなくて。
シング:この前は、村の広場で突然暴れだした奴にリンクしてすぐに大人しくさせたじゃないか。でもオレ、死んだ母さんがソーマ使いだったとは聞いてたけど、ジィちゃんもソーマを使えるなんて、あのときまで知らなかったなぁ。
ゼクス:明かす気はなかったが、暴れた男には『ゼロム』が憑いておったからな……。まさか、『彼女』の身に何かが?ソーマリンクの感触では、かなり力が衰えているようだったが……。
近所のじいさん:……無理は言いたくないが、教会もないこんな辺境では、ゼクスさんを頼るしかないんだよ。
シング:ジィちゃん、人のスピリアを救うのがソーマ使いの役目じゃないの?
ゼクス:放ってもおけんか。とにかく一度様子を診て、ソーマを使うかどうか判断しよう。
近所のおじさん:ありがたい!お願いします。
シング:そうこなくっちゃ!
ゼクス:……シング、お前は連れていかんぞ。隣町だからな。
シング:ええ、またかよ!?なんでジィちゃんはオレを村から出してくれないんだよ!?オレは、もう子供じゃないんだ!訳のわからない命令は、いい加減にしてくれッ!!
ゼクス:理由はそれだ。シング、教えたはずだぞ。怒りや憎しみ……強い感情に飲み込まれてはいかん、と。
シング:う……。
ゼクス:そんな弱いスピリアじゃ、街の美人に会ったら、一発でとろけてしまうからなぁ〜。
シング:そ、それは自分だろ!
ゼクス:ははは、お前に色気はまだ早い!土産に『グミ大福』を買ってきてやるから、大人しく待ってろ。
シング:なんだよ!留守番なんかしてたって、スピリアが強くなるわけないだろ!

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