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モノローグ:遠い遠い未来の時代……人類は新しい文明のあり方を見つけだしていた。そんな時代……物語は未来の魔界よりはじまる――

ルシフォン:マノ……どうしたんだ?なぜそんな切ない……悲しそうな顔をする?
マノ:だって……私たちのこと、お父様が許してくれるはずがない。
ルシフォン:大丈夫だ。私とて魔界の四天王のひとり、ミナクス様だってわかってくれる。
マノ:駄目……今、話をしたら、きっと反対される。私はあなたを失いたくないの……。あなたを失うくらいなら、このまま黙っていた方がいい。
ルシフォン:それでは、ミナクス様を裏切ることになる。
マノ:ルシフォン、お父様には私から話すわ。でも今はその時じゃ……ない。
ルシフォン:……わかった。
マノ:そんな顔をしないでルシフォン。……大丈夫、いつの日か、お父様もきっとわかってくれるわ。
イノ:ルシフォン様……。
マノ:ルシフォン。もう一度キスして……そして私を抱き締めて……。

モノローグ:【カケル、生後一ヶ月】
カケル:ちゅうちゅうちゅう。
ルナ:はーい、カケルちゃん……いっぱい飲んで早く大きくなるんでちゅよ。
カケル:ちゅうちゅう……むしゃむしゃ。
ルナ:……む、むしゃむしゃっ!?
カケル:……ちゅうちゅう。
ルナ:……。
カケル:……ちゅうちゅう。……ちゅうちゅう。……むしゃむしゃ。
ルナ:……ひっ!?タケルうっ!!この子、絶対に変だわあ!!
タケル:わっはは!当たり前だ……俺の息子だぜ!!

モノローグ:【カケル、5歳】
ナターシャ:きゃああん!!カケルちゃんなんて大っ嫌い!!
カケル:わーいっ!!見えたじょぉー!!
ナターシャ:ママに言いつけてやるからあっ!!
カケル:平気だもんっ!!お前のママが来たら、ママの背中にカエルを入れてやるじょ!!
ナターシャ:うちのママは、すっごい魔法使いなんだからね。……カケルちゃんなんて、カエルにされちゃうんだからあっ!!

*場所は変わって魔界。

ミナクス:四天王の一人であるお前が、私に隠れて娘と契りを結ぶとは……な。
ルシフォン:お言葉ですがミナクス様。遅かれ早かれ、私とマノはこうなったのでは?
マノ:やめて、ルシフォン……。お父様、ルシフォンは悪くない……私が彼を誘ったの。
ミナクス:お前は黙っておれ……。我が娘であるマノと契りを結ぶのは、この魔界の跡を継ぐ者だ……それはわかっておるな?
ルシフォン:はい。それが魔界に伝わる儀式です。
ミナクス:では聞こう……私がいつ、お前を跡継ぎにすると言った?
マノ:お父様……私、ルシフォンを愛してるの。
ミナクス:愛などいらん……必要なのは、強大な魔力を持つ子孫なのだ……。それでなければ、今の状態を覆すことができん。
ルシフォン:四天王の一人である私ならば、さぞや強大な魔力を持つ子孫が生まれるでしょう。
ミナクス:確かに私の後を継ぐ者は、四天王の一人となるであろう……。しかし、お前ではないかも知れんのだ。
ルシフォン:そんなことはありえません。
ミナクス:自分が一番相応しいとでもいうか。
ルシフォン:もちろんそう思っております。四天王の中で、私以外に誰がいるというのでしょう。
ミナクス:愚か者め……。お前のように慢心した心の持ち主では、安心して魔界を任せることなどできん!!
ルシフォン:しかし……。
ミナクス:闇界の王、ディードを忘れたのか!!……奴は自分の力を過信したからこそ、人間に倒されたのではないのか!?
ルシフォン:……。
ミナクス:ルシフォンよ、お前は私を裏切ったのだぞ……この償いはしてもらう。
マノ:い、いや……。
ミナクス:お前を次元の狭間に送り込んでやる……。次元の狭間で、私が許すまでじっとしておるのだ!!
マノ:お、お父様っ!!私も一緒に……ルシフォンと一緒に行かせてっ!!
ミナクス:マノよ、イノを恨むでないぞ……。お前の妹は、姉であるお前を思えばこそ私に知らせたのだ。
イノ:…………。
マノ:私もお父様を裏切りました……私もルシフォンと一緒に罪を償います!
ミナクス:マノよ……私をこれ以上怒らせるな。
マノ:ルシフォンと離れるくらいなら、生きていても仕方ありません!!
ミナクス:ええい、いい加減にするのだ!!……ルシフォンよ、次元の狭間に落ちよっ!!
マノ:や、やめてえっ!!お父様っ!!

モノローグ:【カケル、12歳】
ルナ:まあ!!またケンカしてきたのね!!今度は誰なの!?……隣のマノクスちゃん?それとも二軒先のロバーツちゃん?ま、まさかシモンちゃんじゃないでしょうね!?シモンちゃんだったら、お母さんがまた怒鳴り込んでくるわ……ああ、どうしましょう!!
タケル:カケル、またケンカか?
カケル:うん、お父さん……今日も勝ったよ。
タケル:そうか、そうか、わっはっはっ!!
ルナ:もう、あなたっ……ちゃんと叱ってください!!
タケル:よし……叱るぞ、すぐに叱るぞ、今叱るぞ。カケル、ケンカをするときは勝つことが一番大事だぞ。
カケル:判ってるよ、お父さん。
タケル:でもな、ケンカにはルールがあるんだ……相手が降参したら、もう殴っちゃ駄目だ。
カケル:うん、僕は殴らなかったよ。
タケル:そうか、そうか……カケルは偉いな。
ルナ:あなたぁっ!!後で文句を言われる私の身にもなってください!!

*場所は変わって再び魔界、次元の狭間。

ミナクス:ルシフォンよ……私の声が聞こえるか?
ルシフォン:その声は……ミナクス様。
ミナクス:指一本動かすことの出来ない、哀れな悪魔よ……お前が魔界に戻れる機会を与えよう。これから言うことをよく聞くのだ。
ルシフォン:魔界に……戻れる?
ミナクス:お前の罪はまだ償われていない。……しかし、こうしてお前を呼んだのには理由がある。
ルシフォン:…………。
ミナクス:ルシフォンよ……次元を超え、ある男を殺してくるのだ。
ルシフォン:ある男を……殺す?
ミナクス:遠い遠い過去に、神の血を受け継いでいるにも関わらず、地上に住んでいた人間がいたのは知っておるな?
ルシフォン:知っております……。神の血を受け継いだ人間といえば、人間界の歴史の中でもただ一人……闇界の王・ディードを倒した伝説の剣士、ヤマト・タケルのみです。
ミナクス:人間が天界をあがめ、我々魔族が入り込む隙間がなくなってしまったのは……この男の存在があったからこそ。奴こそ全ての元凶なのだ。
ルシフォン:…………。
ミナクス:タケルの命が尽きた後も、人間たちは奴の示した方向に導かれ続けた……つまり、逆にタケルさえいなければ、今の人間どもに天界の入り込む隙などなくなっていたであろう。
ルシフォン:次元を超え猛を殺せば、人間界は魔界に近い存在となる……その役目をこの私に?
ミナクス:そうだ。よいか、ルシフォンよ……私はもちろんのこと、我々上級魔族は常に天界の神に監視されている。天界の住人に、我々がなそうとすることを気付かれるわけにはいかぬ。
ルシフォン:タケルは神の血を受け継ぐ者……確かに天界に知れれば、厄介なことになるでしょう。
ミナクス:しかしお前は3千年もの間、次元の狭間に封じ込められていた……天界の奴らも、お前の存在は見落としているようだ。
ルシフォン:…………。
ミナクス:相手はディードを倒したタケルだ……誇り高きお前にとっても、不足のある相手ではなかろう。
ルシフォン:はい……遊ぶ相手としてはちょうどいいかも知れません。
ミナクス:くっくっくっ……ルシフォンよ、手を開くがよい。それが……何だか判るか?
ルシフォン:こでは魔族に伝わる……次元を超えるための石ですね。
ミナクス:そうだ。一つはタケルがいた過去の世界へ行くために……もう一つは元の世界に戻るために使うのだ。くっくっくっ……タケルの殺し方はお前に任せるが、その前に一つだけ言っておくことがある……。次元を超える石は魔族の女を儀式にかけ、その子宮から取り出すことは知っておるな?
ルシフォン:はい……知っております。
ミナクス:そして今、お前が握っているその石は……我が娘マノの子宮から取り出したものだ。
ルシフォン:!?
ミナクス:マノは自分から願い出たのだぞ。お前を助けるために……そして自分たちのことを認めてもらうために、だ。
ルシフォン:な、なんということを……。
ミナクス:その石に込められた願いを解放しなければ、マノの傷は永遠に癒えることはない……そしてその石に込められた願いとは、神の血を人間界から消し去ることだ。
ルシフォン:マノ……。ミナクス様、魔族の女には三つの子宮があります……残りの一つの石は?
ミナクス:残りの一つは……最後のときに私が使わせてもらおう。
ルシフォン:最後の時?
ミナクス:私がこの石を使うのは、お前が失敗したときだけだ。まさか、私に使わせるつもりではあるまい?
ルシフォン:ミナクス様、相手は人間一匹です……遊びながらでも殺すことができるでしょう。
ミナクス:よいかルシフォンよ……お前はディードが倒された直後の時代に行くのだ。その時代であれば、天界は人間界に干渉することができない。
ルシフォン:確かに。ディード亡き後、神は自ら人間界につながる扉を閉めたと聞いております。
ミナクス:マノに感謝することだ……。お前がすべて上手くやれば、私もマノとのことを祝福してやろう。
ルシフォン:ほ、本当ですか、ミナクス様!?
ミナクス:くっくっくっ……次元を超え、まずはタケルを捜し出すのだ。
ルシフォン:お、お任せくださいミナクス様。
ミナクス:とろこでルシフォン……。その石の力を使うにあたって、やってはならぬことは知っておろうな?
ルシフォン:勿論です……過去の世界で自分の正体を自分自身に明かさぬこと。しかしミナクス様、タケルのいる時代には我が魔界への扉も閉じられているはず。私自身と出会う可能性などはありません。
ミナクス:うむ、お前は我が四天王の一人だ……闇界を利用し、愚かな人間たちを利用すれば、造作のないことであろう……ディードのいない闇界など恐れることはない。
ルシフォン:闇界が閉じ込められている、次元の狭間を解放するのですね……。奴らを利用すれば、タケルの方から私の元にやってくるでしょう。
ミナクス:くっくっくっ、お前が戻ってきたとき、人間界は我が魔族が支配しているだろう……。楽しみにしているぞ、ルシフォン。

*どこかの街

ルナ:……あなた、「ソニアの街」からお手紙が来てるわよ。
タケル:手紙……いったい誰からだろ?
ルナ:やだ、ソニアの街って言ったら、バーンが住んでいる街じゃない……。
タケル:バーンかあ……懐かしい名前だな。

【カケル、15歳】
タケル:カケルよ……バーンの名前は知ってるな?
カケル:うん、お父さん……バーンおじさんの話は何度も聞いてるよ。
タケル:そのバーンおじさんから手紙が来た。悪い奴が「ドラゴンナイト一族」だと名乗り、街を占領し、悪事の限りをつくしているそうだ。
カケル:悪い奴は退治しないといけないよ……そうだよね、お父さん。
タケル:バーンも同じことを書いている……。悪い奴を退治するために、手伝ってくれと書いてあるんだ。
カケル:うわぁ、お父さん……また冒険のたびに出掛けるんだね!!
タケル:カケル、お前がバーンのところに行くんだ。
カケル:お父さんも一緒に行くんでしょ?
タケル:いいや、私は行かない。
カケル:僕一人で行くの?
タケル:私がお前ぐらいの歳の時、既に一人で旅をしたもんだ……。お前は私の息子だ、強くならなくてはならない。
カケル:わーい!!僕もお父さんみたいに冒険ができるんだ、嬉しいなっ!!
タケル:一人で行くのが怖いのは判る……不安な気持ちで一杯だろう。
カケル:わーい、わーい!!
タケル:でもお父さんは行かないぞ……そう、お前一人で行くのだ。
カケル:ねえねえお父さん、明日すぐに行ってもいい?
タケル:お前が泣いて頼んでも、私は行かないぞ……私は強い父親なのだ。
カケル:わくわく、わくわく……お父さん、冒険に出掛けるときって何を持っていけばいい?そうだ、お願いがあるんだ……お父さんが使っていた剣を持っていってもいいでしょ?
タケル:……持っていっていいって……お前の後ろにある剣は何だ?
カケル:あはははは……バレた?
タケル:カケル……全然不安そうじゃないな。
カケル:全然不安なんかないよ……。だってお父さんが冒険してた時と違って、モンスターもいないし。
タケル:確かにモンスターはいないが、悪い人間に襲われるかもしれないぞ。
カケル:うわあ、楽しみだなあ!!どんな奴かなあ!?
タケル:その悪い奴が、剣を振り回すかも知れないんだぞ。
カケル:わくわくするなあ!!
タケル:き、斬られると……痛いぞう。
カケル:す、すごいなあ!!ねえねえ、明日の朝出掛けてもいいでしょう!?
タケル:ち、ちょっと待て、冒険に出るには準備が必要なんだぞ……干し肉やらなんやら用意しないといけないしな。
カケル:お父さん、大丈夫だよ!!お腹が空いたら木の実でも食べるから!!
タケル:でも……まだお母さんに話をしてないしな。
カケル:楽しみだなあ!!わくわくするなあ!!
タケル:……。
カケル:どきどきどき、わくわくわく……明日出掛けたいなあ。
タケル:とにかく今日はもう寝なさい……話は明日にしよう。

モノローグ:そして数日後……。なんとかルナを説得したタケルは、ルナと共にカケルを冒険の旅へと送り出すのであった。
ルナ:カケルちゃーん!気をつけていくんですよ!!……怖い目に会ったらすぐに戻るんですよお!!
タケル:あいつは俺以上の大物かも知れない……そう思わないか、ルナ?
カケル:ずんちゃ、ずんちゃ……行ってきまーす!!

カケル:あれれ、ナターシャじゃないか……随分と早起きだね。
ナターシャ:ふん……。
カケル:あれれ……もしかして見送りに来てくれたの!?
ナターシャ:じ、冗談じゃないわ……偶然、ここで考え事をしてただけ。
カケル:こんなに朝早くに?
ナターシャ:う、うるさいわねぇ……。
カケル:僕がいないくなると、寂しいでしょ?
ナターシャ:ふ、ふん!!誰が寂しくなるのよっ!!
カケル:そうだね、僕がいなくても寂しくないよね。
ナターシャ:カケルなんて、どっかに行っちゃえばいいんだわ。……いじわるされないですむし。
カケル:ははは……よかったねナターシャ。
ナターシャ:……。
カケル:ばいばい、ナターシャ!!
ナターシャ:ばいばいって……も、もう行っちゃうの!?
カケル:ずんちゃ、ずんちゃ……。
ナターシャ:カケルっ……こ、これを持って行きなさいよ。
カケル:……何、これ?
ナターシャ:私が作った不幸のお守りよ。
カケル:ふ、不幸のお守りぃ!?
ナターシャ:そ、そう、不幸のお守り……。
カケル:ふーん。
ナターシャ;な、なによ……。
カケル:ありがとう、せっかくだから貰っておくよ。元気でね、ナターシャ!!
ナターシャ:あ……。

*魔界にて

リディア:おひさしゅうございます、ルシフォン様……。
ルシフォン:リディアか……うむ。これより再び、私のために……そしてマノのために我が力となるのだ……よいな。
リディア:……はい。
ハーディス:お任せください。我が力、我が命、すべてルシフォン様とマノ様のもの。どのようなご命令でも、必ずや成功させてみせましょう。
リディア:少し口を慎みなさい。調子に乗って口数を多くする戦士は、あまりに下品……。
ハーディス:な、なんだと!?
ルシフォン:フフ……まぁよい。我らが目的はタケルの抹殺だ。わざわざ私が手を下すまでもあるまい。相手はたかだか人間一匹。お前たちのやりたいようにやるがよい。
リディア&ハーディス:はっ!!

*ソニアの街にて

カケル:つ、着いたあ……ここがソニアの街だ。


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