シオ:
ここは、海洋都市イシュワルド。温暖な気候を持つ世界有数の大都市。
そのほぼ中央……レミュオール地区は都市の中でも最も商業の盛んな地域でもあり、様々な人たちがその場所に自らのお店を構えています。
海から捕れた新鮮な魚を売る魚屋……大地の恵みを産地直売として売る果物屋……草木から採取した薬草を売る薬屋……地元で取れる物を観光品として売る土産屋などなど……。
お店の種類は様々で、どのお店も自分のお店を一番にしようと切磋琢磨・商魂たくましく毎日を暮らしているのです。
さて、今日のお話は、そんなレミュオールに住む商売人のお話……街の人々に『魔女』といわれる妖しい女性ティコと、その弟子ルヴェルのアトリエ奮闘記です。ゆっくり楽しんでね♪
ルヴェル:
う〜む……ない……。おかしいのぉ……確かここに挟んでおいたはずじゃが……。無い……いくら探しても出てこない……ワシの『へそくり』……師匠に内緒でコツコツ貯めた『へそくり』……。一体どこにいったんじゃ?……うちにはお世辞にも泥棒に入られるような家じゃないし……これはつまり……やっぱり……その……。身内の犯行じゃろうか……といういか、そう考えるのが一番自然な気がする……。……問い詰めてみるか……怖いけど……。
(ドンドン!ドンドン!)
師匠!師匠!入りますよ!
ティコ:
ん〜……なによ、ルヴェル君、こんな朝っぱらから……話なら夜にして……。
ルヴェル:
今聞きたいんですじゃ!師匠、まさかとは思いますがワシの『へそくり』とっていきませんでしたか!?
ティコ:
やだ……いつの話よ。大分前にありがたく使わせてもらったわよ……。
ルヴェル:
……!なに勝手に人のお金、使っているんですかーっ!!
ティコ:
私のものは私のもの……ルヴェル君のものも私のもの……よ……ふ〜……。
ルヴェル:
くぅ〜……使われたくないからこそ『へそくり』として隠しておいたのに……。
銀行員:
(ドンドン!)
すみませ〜ん。早朝から失礼いたします。
ルヴェル:
む……客人か。一体誰じゃ……。
銀行員:
おはようございます。イシュワルド銀行の者ですが……。
ルヴェル:
……?イシュ銀が、うちに何か?
銀行員:
はい。こちらにティコ様はおられますよね。ティコ様に当銀行からお金をお借りいただいたのですが、実は返済期間を過ぎても、返済の方が滞っておりまして……伺ったのですが……。
ルヴェル:
……!?ちょ……ちょっと待ってくだされ。借金のことなんて知りませんぞ!?
銀行員:
はあ……しかし、これがその証拠というか……借用証になります。
ルヴェル:
……!じゅ……じゅ……100,000G〜!?
銀行員:
二ヶ月ほど前に1000Gほど返済はしていただいtのですが、それっきりでして……。
ルヴェル:
……1000G……ワシの『へそくり』と同じ額じゃ……。
銀行員:
そういうわけですので……なるべく早いうちに返済を済ましてください。お願いします。
ルヴェル:
は……はあ……いろいろご迷惑をおかけしました……。
ルヴェル:
……。師匠ーっ!
ティコ:
あ〜うるさい……頭にひびく……殺すわよ……。
ルヴェル:
のんきに寝ている場合じゃないですぞ!起きてくだされ!なんですか!この借金!100,000Gって!
ティコ:
……あらやだ……見つかっちゃったのね。
ルヴェル:
銀行員の方がわざわざ来てくれたんですじゃ!
ティコ:
……ありがた迷惑ねえ……。まったく、私の金をどう使おうと勝手じゃないのよ……。
ルヴェル:
師匠の金じゃないですよー!
ティコ:
あ〜うるさいうるさい……。
ルヴェル:
どうせ、またこの借金はワシに払わせる気でしょう!?
ティコ:
よく判っているわね。その通り……。
ルヴェル:
その通りじゃないですじゃーーっ!
ティコ:
今日はいつになくご機嫌斜めねえ……100,000Gぐらいでガタガタ言わないでよ……もう……。
ルヴェル:
100,000G稼ぐのに、どれだけ働かなければいけないか……師匠も身をもって体験してくだされ……!
ティコ:
ええ……?
ルヴェル:
師匠が働かなければ、ワシは今日限りこの家を出ていきますじゃ!
ティコ:
……ちょっと……そんなこと言って判っているの。家出なんかしたら48時間拷問の刑よ……。
ルヴェル:
……そ、その前に舌を噛んで死んでやりますじゃ〜!
ティコ:
む……その据わった目……どうやら本気のようね。いわゆる反抗期ってやつかしら……。
ルヴェル:
……働いてくだされ。師匠……。
ティコ:
はあ……しょうがないわねえ。今回ばかりはルヴェル君の気迫に押されたわ……。
ルヴェル:
……それじゃあ……!
ティコ:
せっかくいい土地に家を持っているのだから、お店を開きましょう。家にある、商品になりそうなものを持ってきてくれるかしら?
ルヴェル:
……判りました!