10年前、東京・渋谷。
ある『組織』同士の戦いがあった。
一方の組織は“ゆらぎ”と呼ばれる空間の歪み…異世界とこの世界を繋ぐ門を開こうとした。
もう一方の組織は、世界を混沌に導くその『計画』を阻止しようとした。
完全封鎖された渋谷での戦いは熾烈を極め…やがて、終結した。
片方の組織…政府直属の特務機関『森羅』側が“ゆらぎ”の出現を防いだ事によって。
特務機関『森羅』。
悪霊、鬼、天狗…古来より、人の世に害をなす異界の存在と戦い続けてきた組織。
その組織を知る者は少なく、その戦いもまた、人知れぬ闇の中で連綿と続けられてきた。 現在に至るまで。
…人は信じない。 自分達が生きる、この“世界”の他に、異なる“世界”が存在する事を。
…人は感じない。 静かに、現実に…人あらざる者達がこの世界に足を踏み入れている事を。
…そして人は知らない。 決して交わる事のない“世界”が交わった時…何が起こるのかを。
10年前の『事件』から、世界中で確認され始めた、異界との接点…。 “ゆらぎ”と呼ばれたそれは、
ゆっくりと世界を蝕みつつあった。
戦いは…終わってはいなかったのである。
そして西暦20XX年。 東京・渋谷。
“ゆらぎ”の発生により完全封鎖され、『閉鎖都市指定』を受けた街。 10年前の“あの日”と同じく。
物語は再び…この街から始まろうとしていた。
-西暦20XX年…六本木-
ここは日本・東京にある六本木…。 六本木にある『森羅』本部にて、ある二人の人物がいた。 一人は白の混じった黒髪と左額に古傷、
赤と黒の服をしていた男性。 もう一人は九尾のような金髪のポニーテールと赤と黒のチャイナドレスをした女性。
彼らが『森羅』組織のメンバー、『有栖零児』と『小牟』である。
零児「…ああ、了解した。 このまま俺たちは渋谷に向かう。 段取りはいつも通りで…ああ、頼む。」
無線を使っていた零児は、電源を切り、準備を整っていた。
零児「行くぞ、小牟(シャオムゥ)…渋谷だ。」
小牟「やれやれ…また出動かいな。 それも渋谷…“ゆらぎ”かの?」
零児「いつもの事さ。 そう…あの日から、何も変わってない。」
小牟「あの時も渋谷じゃったの。 そして、今また『閉鎖都市指定』とはのう。」
零児「………」
小牟「あれからもう10年か。 そりゃぬしもデカくなるわけじゃ。 あの頃は、もう少しかわいげがあったんじゃがのう。」
零児「…懐かしんでる場合か。 それから大きなお世話だ。 それに“あの時”は…。」
小牟「ほれほれ、そんな顔をするでない。 10年…もう昔の話じゃ。」
零児「そうだな。 もう感傷に侵れる歳でもない、か。」
零児「さあ、今日はやる事が多いぞ。 渋谷の調査を終えたら、すぐにアメリカ総合戦略軍のエージェントと合流だ。」
小牟「はぁ? そんなんと組んで、ウチの組織はなにしようっちゅうんじゃ? アメリカン合同こんにゃく軍?」
零児「アメリカ総合戦略軍…U.S. STRATCOMだ。」
小牟「問題なのはそんな名前とちゃうぞ。 わしらの組織…『森羅』はいわゆる裏の機関じゃぞ。 それがここ最近、
どうして…。」
零児「…上からの命令だ。 俺達が表舞台に出なかった理由は、“奴ら”もまた、裏の世界にいたからだ。 だが、
ここ最近“奴ら”の動きは、世界規模で活発になっている。 …世界中で目撃例が確認され始めた今…。」
小牟「ふう…皆まで言わんでも、わかっとるわ。 わしらもコソコソ陰でやっとる場合とちゃう…っちゅう事じゃろ。」
零児「そこまでわかってるなら文句を言うな。」
零児「行くぞ。 待ち合わせに遅れる。」
小牟「…ウチの組織も人使いが荒すぎじゃ。 ストライキ起こしたろか。」
零児「やるのは勝手だが、給料をカットされるだけだぞ。」
小牟「ふふん。 無計画な若造のぬしと違って、わしにはヘソクリがあるのじゃ。 ダテに長くは勤めておらんて。」
零児「そいつは重畳(ちょうじょう)。 …ああ、ベッドの下に隠してあった金がそうなら、俺が回収したぞ。」
小牟「な…なにゃアーーッ!?」
零児「…もっとマシな隠し場所を考えろ。 中学生か、おまえは。」
小牟「回収すなッ! いくらあったと思っとんのじゃ!」
零児「任務が済んだら返してやる。 おまえはすぐにサボろうとするからな。 仕事を一つこなすごとに、
少しずつ返すというのもありか。」
小牟「人をアシカかオットセイみたいに扱うな。 …まったく、最近の若いモンは年寄りに対しての…。」
零児「口よりも体を動かせ。 いくぞ。」
-超未来…貸客船、エルザ艦内-
『ゼノサーガ』シリーズにある貸客船『エルザ』にて、ある四人の人物がいた。 一人は長い茶髪にメガネをしていて、
黄色いスーツを着ていた女性。 もう一人は長い薄青髪をしていて、白いアーマーをしていた女性だが、
外見的には人間ではなさそうだ。 もう一人はピンク色の髪にロリっぽい服装をしていた少女。 もう一人は茶髪で
黄色いスーツを着ていた男性。 彼女達は『ヴェクター・インダストリー』の一員…『ゼノサーガ』シリーズの主人公であり、
ヴェクター・インダストリー第一開発局、KOS-MOS開発計画統合オペレーションシステム開発室主任の『シオン・ウヅキ』…
ヒト型グノーシス掃討兵器の『KOS-MOS』…そして百式汎観測レアリエンのプロトタイプの『M.O.M.O』…
そしてKOS-MOS開発計画統合オペレーションシステム開発室副主任の『アレン・リッジリー』である。
シオン「KOS-MOS、調子はどう?」
KOS-MOS「筐体(きょうたい)そのものに異常はありません、シオン。」
シオン「でも、ここ最近…側頭葉のノイズが頻繁に検出されてるのよね。」
KOS-MOS「自律行動自体に影響はありませんが。」
シオン「う〜ん…まあ、そうなんだけど…。」
アレン「気にしすぎですよ、主任。 ここ最近、原因不明の空間歪曲なども起こっている事ですし…
KOS-MOSにもそういう時がありますって。」
シオン「あのね、アレン君。 …ただでさえこの子には、私達が把握できていない…ブラックボックスが存在しているのよ?
何でもかんでも“原因不明”で片付けるのは良くないわ。」
アレン「そ…そうですけど…。」
M.O.M.O.「あの、KOS-MOSさん…具合が悪いんですか?」
シオン「あくまでデータ上はね。 でもこの子…自分からはそういう事、言わないよね…。 “潜って”みるしかないか。」
アレン「主任、なにもここでやらなくてもいいんじゃないですか? 貸客船の設備じゃ、詳細なデータは録れませんし…
第二ミルチアに到着してからでも遅くはないかと。」
シオン「潜るわ。」
アレン「しゅに〜ん…。」
シオンの判断に対し、アレンは落ち込んだ。
M.O.M.O.「潜るって…エンセフェロン・ダイブですか…? KOS-MOSさんの意識領域に直接アプローチを?」
シオン「そうよ、モモちゃん。 本人の事は本人に確認するのが一番よ。」
アレン「ですから主任、何もこんな所でやらなくても…。」
シオン「非局所的連結(インターコネクション)を開始するわ。 アレン君、接続補佐(バックアップ)お願いね?」
アレン「…はぁ…わかりました。」
シオンの指示に対し、アレンは無関心にも呆れ始めた。
シオン「KOS-MOS、じゃあ一度眠ってもらうわね。 エンセフェロン内で、また会いましょう。」
KOS-MOS「了解しました。 …お休みなさい、シオン。」
シオン「よくできました。 …お休み、KOS-MOS。」
-西暦20XX年…日本、渋谷-
完全封鎖された日本・東京の有名な街、渋谷…。 完全封鎖されているため、人気もなく、完璧にゴーストタウンと化していた。
しかし、そんな封鎖された街中に、四人の女性達がいた。 一人は青いチャイナ服を着た女性…。 もう三人は色は違うが、
同じスーツを着ていた…一人は金髪のお下げ…一人はショートなオレンジ色の髪…もう一人は肩まで長い茶髪であった。
彼女達は『ストリートファイター』シリーズに登場したICPO所属刑事の『春麗』と、悪組織『シャドルー』の一員『キャミィ』、
『ユーニ』と『ユーリ』である。 どうやら何らかの理由で、春麗は渋谷にいる三人のシャドルー構成員を追っているらしい。
春麗「待ちなさい!」
キャミィ「………」
春麗「…言葉はわかるわね? ここ、渋谷は先日『閉鎖都市指定』を受けた地域よ。 一般人の立ち入りは禁止されているわ。」
キャミィ「………」
春麗「それ以前に…あなた達が“あの組織”の構成員だという事もわかっているのよ! 過去、一度壊滅したはずの…
『秘密結社シャドルー』のね! 話を聞かせてもらうわ。 あの男…ベガがどうなったのかを…!」
彼女は戦闘態勢を構いながらそう言った。
キャミィ「………」
ユーニ「任務遂行の妨げと判断…速やかな排除を提案します。」
ユーリ「提案:同意。」
キャミィ「かまう事はない。 …我々の任務を忘れるな。 日本政府直属の特務機関『シンラ』…それ以外には目もくれるな。
行くぞ。」
ユーニ「了解しました。」
ユーリ「任務:了解。」
三人はその場から離れ、目的地へと向かった。
春麗「あ! 待ちなさいッ!」
春麗(『閉鎖都市指定』を受けた渋谷…各地で頻発する“怪物騒ぎ”、そして『シャドルー』…。 一体どこに接点が…?
何が始まろうとしているの?)
そう思いながらも、彼女は早速キャミィ達の後を追い始めた。
-物質界…渋谷・交差点-
渋谷の交差点に辿り着いた零児と小牟。 辺りには人がいなく、いるのは彼らだけであった。
小牟「人っ子一人おらん街か。 これはこれで風情があるの。 服とか買う時も、並ばずに済むぞ?」
零児「おまえの話には風情がないな。 大体、店自体がやってないだろ。 それに…この雰囲気で買い物などする気になるのか?」
小牟「…ヘンじゃな、そう言われると、おかしな空気じゃ。」
零児「ああ、妖気が混じってる。 “奴ら”、恐らく仕掛けてくるぞ。」
小牟「強いっちゅうても、たかが知れておる。 ま、出て来るとしても格下じゃな。」
その時、零児と小牟の前に三体のモンスター、『鎌鼬・蒼』が現れた。
小牟「お、出おったな。 鎌鼬(かまいたち)か…やっぱ下級の妖物じゃの。 わしが直接手を下すほどの相手でもない。
ほれほれ零児、片付けてしまわんか。」
零児「なんだと?」
小牟「わしは朝メシがまだでの。 後ろで油揚げ定食を食っとるから、終わったら教えるんじゃぞ?」
しかし、そんなのん気な話をしている間に、鎌鼬・蒼が攻めて来た。
零児「ちっ、間を詰められたか。 おい、小牟。」
小牟「じゃ、そういうわけで。」
彼女は逃げるかのようにその場から離れようとするが…。
零児「…こいつらを倒したら、例のヘソクリ、少し返してやろうと思っていたんだがな。 嫌だというなら仕方ない。
俺一人で何とかするさ。」
その言葉を聞いた小牟は、急いで彼の元へ戻る。
小牟「さぁて! やっちゃるけえのう! わしがおるからには、大船に乗ったつもりでおれ、零児!」
零児「…わかりやすい奴だな。 どうも街の雰囲気がおかしい。 さっさと片付けて、調査を続けるぞ。」
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鎌鼬・蒼に戦い込んだ零児と小牟は、三体共見事に全滅させた。
小牟「ま、ざっとこんなもんじゃな。 さあ零児! わしのヘソクリ返さんか!」
零児「…自分一人で戦ったような顔するな。 わかった、本部に戻ってから…。」
小牟「……待て。」
文句を言うどころか、小牟は何かを感じ取った。
零児「ほう、殊勝だな。 いらないのか?」
小牟「いや、待ての意味がちゃうわ!」
零児「わけがわからん。 …ん…!?」
彼も小牟が感じた同じ何かを感じ取った。
小牟「やっと気付いたか。 案外鈍いの。 雰囲気がおかしいと言うとったのはぬしじゃぞ?」
零児「ああ。 …“奴ら”が現れる時とは違う…。 なんだ…?」
突然交差点の反対側に、突然空間が歪み、何かが出現した。 先ほどの鎌鼬・蒼とは全く違う三体の生物…
不気味なボディを持った怪物…。 その怪物はなんと、『ゼノサーガ』シリーズに登場した雑魚敵の『グノーシス』、
『ゴブリン』であった。 しかし、彼らの体は半透明化になっていた。
ゴブリン「………」
零児「ちっ、新手か…! しかし…。 今のは…“ゆらぎ”なのか? 本部の情報とは違うぞ?」
小牟「…しかも、見た事もない連中じゃな。 ほれほれ、新顔なら挨拶の一つくらいせんか。」
ゴブリン「………」
零児「フッ、礼儀は知らんらしいな。 ならばこっちの挨拶は…こいつだ。」
挨拶代わりに零児は拳銃で一発放ったが、驚くにも攻撃はゴブリンに透き通った。
零児「…なに…!?」
小牟「弾が通り抜けおったのか!? …っちゅう事は、実体のない霊体の類か。 こら零児! 弾丸をケチるでない!」
零児「おまえじゃあるまいし、そんなセコいマネをするか。 『大霊体処理』の済んだ弾丸を使ってる。 なんだ、
こいつらの…ここにいないような…違和感は。 “ゆらぎ”から生まれた…新種か…!? しかも、
触れる事ができないとなると…。」
ゴブリン「………」
小牟「…じゃが、こやつらは石畳をしっかりと踏みしめておるな。」
零児「ふん、ならば俺達にも触れられる道理か。 …小牟、最悪の場合…一度撤収するぞ。」
ゴブリン「………」
小牟「かぁ〜、情けない! この10年! わしは、ぬしをそんな子に育てた覚えはないぞ!」
零児「うるさい。 おまえは少し踏みしめられてろ。」
小牟「だいたいじゃな、そんなにサクっと撤退できるなら、一目散にやっとるわ。」
零児「なんだと? おい、まさか…新たな“ゆらぎ”が!?」
その時、突然空間が揺れ始め、そして歪み、零児と小牟の背後から何者かが現れた。 その正体は超未来・貸客船エルザに
いたはずのシオン、KOS-MOS、そしてM.O.M.O.であった。
零児「……!?」
シオン「…うう…こ、ここは…。」
KOS-MOS「シオン、お怪我はありませんか?」
シオン「大丈夫。 それに…ここはあなたのエンセフェロン内よ。 怪我という表現は、身体に物理的な損害が加わった
場合に用いる言葉で、この場合には…。」
M.O.M.O.「あ、あの…シオンさん…。」
シオン「え!? モ…モモちゃん? なぜあなたまで、KOS-MOSのエンセフェロンに…!?」
零児「化け物じゃない…? 民間人…?」
小牟「ふむ。 メガネ、無表情、ロリ…いろいろ取りそろえて来おったのう。」
零児「おい! 渋谷は完全閉鎖地区だぞ! こんな所で何をやってる!」
シオン「え? え!? ちょ、ちょっと…KOS-MOS!」
KOS-MOS「ここは仮想空間ではなく…現実の世界です。」
シオン「それってどういう事…!?」
KOS-MOS「…ですから、先程の私の言動は、この状況下においては適切であったと考えられます。」
シオン「そこはいいから!」
M.O.M.O.「じゃ、じゃあここは…どこなんですか?」
シオン「ど、どこって言われても…。」
当然ながら彼女達のいる場所は来た事もない街…或いは過去の世界とでも言うべきであろう。 状況も知らないシオンは、
ただ戸惑うだけであった。 その反面、零児はただ彼女達にイライラしていた。
零児「何を言い争っているんだ…? おい!」
ゴブリン「……!」
シオン「グノーシス…! そんな!」
小牟「なになに? …『モウ ガマン デキナイ』。」
零児「おまえ、わかるのか!?」
小牟「いや、たぶんそういうニュアンスかと…。」
零児「ちっ、言ってろ! おい、ここは危険だ! 避難するんだ!」
彼はシオン達に警告するが、状況に対して混乱しているシオンはその警告を耳にしなかった。
シオン「そんな、ここはエンセフェロン内じゃ…。」
零児「さっきからわけのわからない事を! こいつらには攻撃が効かない! 守ってやれないんだ! 民間人は下がれ!」
KOS-MOS「お心遣い、感謝します。 シオン…ヒルベルトエフェクトを使用します。」
シオン「え!? 待って、KOS-MOS! 不確定な状況下では、危険すぎるわ!」
KOS-MOS「…現在の状況の方が危険であると判断します。」
M.O.M.O.「シオンさん! 私達だけじゃなく、この人達も危ない目にあってしまいます!」
シオン「………」
零児(さっきから、一体何の事を話しているんだ?)
ゴブリン「……!」
小牟「え〜と、『モウ ガマン シナイ』。」
シオン「くっ…! KOS-MOS、ヒルベルト発動…!」
KOS-MOS「了解しました。 ヒルベルトエフェクト、展開します。」
その指示を受けたKOS-MOSは、頭についている機械からゴーグルのような兵器を装着した。 その兵器から放った衝撃波は、
半透明になっていたゴブリン達を実体化させた。
小牟「な、なんじゃ!?」
ゴブリン「……!!!??」
小牟「お? 半透明な感じがなくなりおった?」
零児「攻撃…なのか?」
M.O.M.O.「違います…あの…虚数空間に干渉するための装備です。」
零児「は…? 虚数…空間?」
KOS-MOS「正確には、限定知覚領域発生装置の事を指します。 虚数領域への干渉可能範囲を拡大、
実在事象からグノーシスにアプローチするための…。」
零児「わけのわからん敵に、わけのわからん装置の説明か。」
シオン「KOS-MOS、ちょっと黙って! 物理的に触れられるようになったんです! だから!」
小牟「ほほう、それが本当ならすごいのう。 …というか、ぬしら何者なんじゃ?」
零児「間違いなく、この化け物と関係がある人間らしいな。」
シオン「…はい…。」
零児「そいつは重畳。 まず片付ける! 話はその後にゆっくり聞かせてもらうぞ。」
ゴブリン「………!!!!」
零児と小牟の戦いにシオンとM.O.M.O.、そしてKOS-MOSが加わり、ゴブリンを倒すために戦闘を始める。
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しばらく五人がゴブリンと戦っていると、突然交差点の別の方からもう三人の人物が現れた。
それは先ほどこの街にやって来たキャミィ、ユーニとユーリであった。
零児「なにっ!?」
キャミィ「………」
ユーニ「………」
ユーリ「…目標:発見。」
小牟「また民間人が紛れ込んで来おったのか? あの食い込み…どっかのコンパニオン?」
零児「いや、身のこなしを見る限り…素人じゃない。」
ユーニ「…ターゲット、目視します。 サンプルデータと98%一致。」
ユーリ「目標:確認。」
キャミィ「…『シンラ』のエージェント、アリス・レイジ…情報通りだな。 隣の小さいのは?」
ユーニ「サンプルデータと100%一致。 “センコ”シャオムゥと確認。」
キャミィ「では、作戦を開始する。 私は本部へ向かい、あの方と合流する。 『シンラ』のエージェント二人をこの街で足止めしつつ、
データのサンプリングを行え。」
ユーニ「特殊エネルギー感知。 サンプルデータの存在しない、不特定多数の個体に関してはいかがいたしますか。」
キャミィ「…任意で排除しろ。」
彼女がそう指示した後、その場から離れた。
ユーニ「了解。 サンプリング開始、第一種戦闘態勢へ移行。」
ユーリ「任務:了解。 モード移行:応戦態勢。」
そしてユーニとユーリは、零児と小牟に向かって戦闘態勢に整った。
小牟「ハイレグの一人、逃げおったぞ?」
零児「…よく聞き取れなかったが、俺達の事を言っていた?」
KOS-MOS「『シンラ』と呼称される組織、ないし団体の構成員である“アリス・レイジ”…。 “センコ・シャオムゥ”という人物の
情報収集が目的のようです。 足止め…という言葉から、それ以外にも何かしらの目的が存在すると考えられます。」
小牟「ほ〜、耳がいいのう! …っちゅうか、仙狐(せんこ)…わしの正体を知っとる連中じゃと?」
零児(『森羅』の名前まで? …どういう事だ。)
M.O.M.O.「こ、怖い女の人達…こっちに来ます!」
シオン「え? え!?」
零児「ちっ、どこぞの敵対組織か! 俺達以外はすべて敵だと思え! やられるぞ!」
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しかししばらくにして、ユーニとユーリの背後から、彼女達を追っていた春麗が現れた。
春麗「待ちなさいっ!」
ユーニ「………」
ユーリ「………」
零児「今度はなんだ!?」
小牟「千客万来、満員御礼じゃのう。」
春麗「え…!? ちょっとあなた達! ここは閉鎖都市指定を受けた場所なのよ! 何をやってるのッ!」
零児「それはこっちの台詞だッ! そいつらは誰だ! そしてあんたは!」
春麗「私は春麗…ICPOシャドルー特別捜査官、春麗よ。」
零児「シャドルー…? シャドルーだと!?」
ユーニ「任務遂行の妨げと判断、速やかに排除。」
ユーリ「判断:同意。 対象物:排除。」
小牟「なるへそ。 秘密結社シャドルー…そこの強化兵士らしいの。」
零児「過去壊滅したシャドルーがなぜ俺達を狙う?」
KOS-MOS「対象は明らかな敵意を持っています。 迎撃を行うべきと判断しますが?」
小牟「…状況がわかってないのに強気だのう、この娘。」
ゴブリン「………」
春麗「…閉鎖都市らしく、化け物も出てきてるのね。 それも相手にしないと…。」
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ユーニとユーリに勝利した零児と小牟、KOS-MOS、シオンとM.O.M.O.、そして春麗…。 ユーニとユーリはさすがに
ダメージを食らっていた。
ユーニ「被害甚大…残りLP0.55…回復まで焼く180秒…!」
ユーリ「ミッション:遂行困難。」
ユーニ「サンプリング52%で中断…。 ユーリと供に帰投します。」
二人は戦闘から離脱した。
春華「あ、待ちなさいッ!」
零児「おい、深追いはするな!」
春麗「そうはいかないわ!」
そう言い残し、彼女は逃げ出したユーニとユーリを追うためにその場から離れた。
零児「おいっ!」
小牟「あわただしいのう。 もうちこっと、情報を知りたかったが…。」
ゴブリン達は全滅し、ユーニとユーリは逃げてしまったが、無事に生き残る事が出来た零児と小牟、KOS-MOS、
そしてシオンとM.O.M.O.。 とりあえず武器をしまい、一時休息する。
零児「…今ので終わったようだな。」
小牟「ふむ。 今度こそ、おかしな感じはせんな。」
KOS-MOS「半径1Kmの索敵は終了しています。 グノーシス、生体反応…ともにありません。」
零児「なに? それが本当なら重畳だが…。」
M.O.M.O.「チョウジョウ…?」
KOS-MOS「データベース検索。 “極めて喜ばしい事” “満足である事”を指す、古代語だと思われます。」
零児「な、なんだこの娘…さっきから…。」
小牟「ほう…この娘、からくりのようじゃぞ。 なるほど、シャドルーっ子達の会話が聞き取れたのも、そういう理由か。」
零児「からくり…ロボットだと?」
シオン「あの…。」
零児「…聞きたい事は山ほどあるが、あんたも状況がわかっていない…という顔だな。」
M.O.M.O.「ここは…どこなんですか? 私達は…これからどうしたら…。」
余りの混乱に対して戸惑うM.O.M.O.。
零児「心配するな、お嬢ちゃん。 悪いようにはしない。」
小牟「とりあえず、次の行動を決めんとな。」
零児「ああ。 あんた…ええと。」
シオン「ウヅキです。 シオン・ウヅキ。 この子が百式レアリエンのモモちゃん…。 そして、こっちがアンドロイドのKOS-MOSです。」
零児(アンドロイド…?)
零児「俺は有栖零児。 こっちの小さいのが小牟だ。 …ある組織から派遣されてきた。」
シオン「ある…組織…? ええと…『シンラ』とかいう…。」
小牟「まあ立ち話もなんじゃし、ほれ、そこらの茶店かゲーセンでも忍び込んでじゃな…。」
零児「忍び込むな。 それにここは完全閉鎖地区だ。 …いつまでもウロウロしてるわけにはいかない。
本部に連れて行くしかないだろうな。」
小牟「そこでこってり尋問じゃ。 にひひ。」
シオン(…本部…? それに…この女の子も…普通の人間とは…何か違う。)
小牟「それにしても…どう思う? 零児。 なにやら、おかしな事になってきたのう。」
零児「ああ。 “奴ら”の跳梁、『シャドルー』、新しい『敵』…そしてアンドロイドにその飼い主か。」
小牟「国際警察機構の捜査官とかいうのも出て来おったしの。」
零児「………」
零児(“ゆらぎ”は、ますます大きくなってきているという事か… 10年前の…“あの日”と同じ、か。)
『プロローグ1 ゆらぎの街のアリス』