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女神異聞録

〜ペルソナ〜
OP


ある時、私は蝶になった夢を見た。
私は蝶になりきっていたらしく、それが自分の夢だと自覚できなかったが、
ふと目が覚めてみれば、まぎれもなく私は私であって蝶ではない。
蝶になった夢を私が見ていたのか。
私になった夢を蝶が見ているのか。
きっと私と蝶との間には区別があっても絶対的な違いと呼べるものではなく
そこに因果の関係は成立しないのだろう。
〜荘子〜


聖エルミン学園、空き教室
7人の生徒たちが、「ペルソナ様遊び」をしようとしている。
4人がそれぞれ、部屋の隅に立って、順番に
「ペルソナ様、お越しください。」
と、言いながら、次の人の所まで歩き、4人で部屋を一周し終えると
「ペルソナ様」が姿を現すらしい。
「『ペルソナ様』だぁ?そんなんで未来の自分が見えりゃ、苦労しねぇってーの。
上杉よぉ、オマエ頭 暖かいんじゃねーか?」
マーク(稲葉 正男 通称マーク イナバクリーニングのドラ息子 直情型)が、
馬鹿にしたように言った。
「へっへー、バカにしたもんじゃないんだな、これが!未来がうんぬん てのは言い過ぎだけど
もう、超常現象バリバリよ!賭けたっていいぜ、マーク!」
ブラウン(上杉 秀彦 通称ブラウン 目立ちたがり屋のお調子者)は、
自信たっぷりのようだ。
「おーし、賭けるか?ジョイ通のピースダイナーで、食い放題だ、いいな?」
(ジョイ通のピースダイナー:ジョイ通りにあるファーストフード店)
マークの言葉に
「わ〜い!じゃ、アヤセ、上杉にのる!」
アヤセ(綾瀬 優香 通称アヤセ 天下御免のコギャル トラブルメーカー)が、
真っ先に手を上げた。
「私も、BrownにBetしますわ。」
エリー(桐島 英理子 通称エリー 帰国子女のお嬢様 知的な美人)が、
続く。
「なんだなんだぁ?オイ!南条、ゆきの、オマエら、どっちにのるんだ?」
マークがイライラしたように、さっきから、興味のなさそうな顔をしている二人に尋ねた。
「ふん、愚にも付かんな、俺は知らん。」
南条(南条 圭 通称なんじょうくん 南条財閥の御曹司 徹底した合理主義者)
「右に同じ…。勝手にやりな。」
ゆきの(黛 ゆきの 通称ゆきのさん 学園の姐御的存在で 皆から信頼されている)
二人とも、そっけなく答えた。
「けっ!相変わらず、付き合い悪りぃヤツらだぜ。オイ、オマエはどっちにのるんだ?
とーぜん、俺だよな?」
マークは、主人公に尋ねた。
(ここで、マークにのる、と、ブラウンにのる、の選択肢あり。ここでは、マークにのるを選択)
「あ〜あ、後悔するよ〜。」
アヤセが呆れたように言った。
「ぷぷぷぷぷ…。泣きべそかかせちゃる!ほいじゃ、はじめようか!!」
ブラウンは相変わらず自信たっぷりにそう言い、アヤセとブラウンとマークとエリーが部屋の四隅にたった。
教室の真ん中で、南条とゆきのと主人公はそのようすを見ている。
「んじゃ、行くよー。」
アヤセが一番に歩き出した。
「えっとぉ、ペルソナさま、ペルソナさま、おいでくだぁい。」
「おーし!ペルソナさま、ペルソナさま、おでいでくださいなっと!」
次はブラウンがマークのところまで歩いた。
「ったくよぉ、なんでこんなことしなくちゃいけねぇんだか…。」
乗り気ではない様子のマークに、
「いいから早くいけって、食い放題、食い放題!」
と、ブラウンがせかした。
「わーーーーったよ、ペルソナさん、ペルソナさん、てきとーに来てくんな。」
しかたなくマークは、エリーのところまで歩いた。
「それでは…、Persona様Persona様おいでください…。」
エリーが最後に歩いて、四人で部屋を一周し終えた。
「よーし、来るぞぉ!………・・・……………あ、あれ?」
ブラウンの言葉に皆待ち構えていたが、何も変わったことは起こらない。
「ちょ、ちょっと上杉ぃ!!これじゃアヤセ、バカみたいじゃん!」
アヤセがブラウンに詰め寄った。
「おら、見ろ、何も起きねーじゃなーか。へっへ、俺の勝ちだな。」
マークは、勝ち誇ったようだ。
「ふぅ…、気が済んだろう?さっさと先生呼んできな。」
ゆきのの言葉に
「ちょ、ちょい待ち!もう一回だけ!な!な?マークが入ってたからだって!もっとやる気だせよぉ!」
と、焦ってブラウンが叫んだ。
「あ、てんめぇ、往生際の悪りぃやつだなー。」
マークがそう言い放った時、教室の片隅に熊のぬいぐるみを抱いた、
白い洋服を着た小さな女の子が、ぼんやりと姿を現した。
「お、おい稲葉…。後ろ…。見てみろ…。」
南条の言葉に、
「んだよ、今更連れてけってもおせぇ…。」
と言いながら、マークが振り向いた。
「ゲッ!!」
全員が、一斉にその女の子の方を見る。
「な、なにこれ…。マ、マジィ?」
と、アヤセ。
「前は、音だけでしたのに、驚きましたわね。」
やや冷静にエリー。
「ハハ…、ほ、ほれ見ろ、やっぱ、言ったとーりだろ?この前とちょっと違うけど…。」
ブラウンの笑顔は、かなり引きつっている。
その女の子は、ぬいぐるみを抱きしめて、泣きじゃくっている。
「…ヒック、…グス、助けて…助けて…」
と!、教室の中に、無数の稲妻が落ち始めた。
「な、なんだぁ?」
「こ、これは!?」
驚く、マークと南条。
「Fantastic!ますます興味深いですわ!」
一人、わくわくした様子のエリー。
「キャー!なにぃ〜!!」
ただ、騒ぎ立てるアヤセ。
「みんな!気をつけな!」
そう言ったゆきのが、稲妻に打たれた。
「キャ!?」
次々と、稲妻に打たれ、倒れるみんな。

ゆがんだ、不思議な空間。
まるで、タイムトンネルの中を通っているようだ。
美しく黄色に輝く蝶に、いざなわれるように進んでいく。
落ちているのか…登っているのかすら、わからない…。
と、一つのドアが現れ、扉が開くと、
そこに、仮面の男が立っていた。
仮面の男は、丁寧にお辞儀をすると、静かに話し始めた。
「ようこそ…。お初にお目にかかる。私はフィレモン…。
意識と無意識の狭間に住まう者。
さて、君は、自分が誰であるか、名乗ることができるかね?」
(ここで、主人公の名前を入力)
「結構。ここへ来て、自分が誰であるか語れる者は多くはない。
どうやら君は、合格のようだ。
…君は、自分の中に、複数の自分がいることを自覚したことがないか?
神のように、自愛に満ちた自分…
悪魔のように、残酷な自分…。
人は、さまざまな仮面をつけて生きるもの。
今の君の姿も、無数の「仮面〜ペルソナ〜」の中の一つでしかないのかもしれない…。
しかし君は、自分が誰であるか、名乗ることが出来た。
その強い意志に対しての敬意のしるしに、これを贈ろう…。」
フィレモンの右手に、なにやら不思議な…悪魔とも神ともつかぬモノがのっている。
「『ペルソナ』…心に潜む、神や悪魔の姿をしたもう一人の『自分』を
喚びだす『力』だ。
この先、きっと役に立つ時が来るだろう…。
…さぁ、では、そろそろ帰りたまえ。
君があるべき、時間と空の下へ…。」

フィレモンの姿が、少しずつ遠くなり、意識もだんだん薄れてゆく…。

そして、主人公は、学校の保健室のベッドの上で、目を覚ます。
どうやら、仲間たち全員が、同じ夢を見たらしいが……。


女神異聞録〜ペルソナ〜 Start…


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