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クロノ・クロス


〜Opening〜


このゲームには、40人以上の、パーティーに加えることのできるキャラクターが
登場します。主人公を含め、好きな名前に変えることが出来ますが、
今回は、すべて初めから設定されている名前を使用します。
また、これは、シンプルにニューゲームを進めた場合のオープニングです。



はじまりは、何だったのだろう?
運命の歯車は、いつまわりだしたのか?
時の流れのはるかな底から
その答えをひろいあげるのは、
今となっては不可能にちかい……
だが、たしかにあの頃わたしたちは、
おおくのものを愛し、おおくのものを憎み……
何かを傷つけ、何かに傷つけられ……
それでも風のように駆けていた
青空に、笑い声を響かせながら……


高い崖に、ぐるりと周りを囲まれた真ん中に、不気味な石の城が建っている。
その、要塞とおぼしき迷宮の中、
上がってきたエレベーターに、乗っている3人。
主人公の少年セルジュ、少女キッド、そしてコルチャ。
(セルジュとキッド以外の一人は、ランダムに15人の中から選ばれる)
「どうしたんだ、セルジュ、ぼぉっとして?これからが本番だ。
死にたくないなら、気をぬくんじゃないぞ。」
コルチャが、エレベーターの中でぼーっとしているセルジュに言った。
「さあ、行こうぜ!セルジュ、コルチャ!
待ってろよ、ヤマネコ!今日こそ、きさまの息の根を止めてやるぜ!!
泣いてあやまるなら、今のうちだぞ。許してやらねーけどな!
ククク……アーッハッハッハッ!」
カワイイ顔に似合わない言葉使いと、豪快な高笑いをするキッド。
「さあ、セルジュ!」
コルチャにせかされ、エレベーターから出るセルジュ。
3人は、走った。
どこへ、何をしに行こうというのか…まったく分からなかったが、
とにかく、迷宮の中を走る。
途中、いたるところにうろついているロボットや、襲いかかってくるモンスターを
次々と倒しながら…。
水晶のスイッチのようなものを押し、建物の真ん中にある台に乗ると!
3人の体が、光の筒の中を瞬時にのぼり、迷宮の真上に浮いているフロアに運ばれた。
「おいっ、何だ、今のは!?いきなり空の上かよ?」
キッドは、そう言って下を覗き込んだ。
「高けぇ〜!!これ、もしかして、空中に浮いてんのか!?」
「今、すきとおってなかったか、オイラたちの体…?」
コルチャも、信じられない!といった顔つきだ。
「まったく、とんでもねぇ砦だな。なぁ、セルジュ?」

「………」
「!? お前、大丈夫か?さっきからなんか変だぞ?
この先も何があんのか分かんねぇんだから、気合入れ直していくぞ!」
キッドにそう言われて、セルジュはうなずくと、フロアのつきあたりにある
大きな扉に向かっていった。
ドッキン、ドッキン、ドッキン……
セルジュの鼓動だけが響いている。
扉に手をかけたその時!突然、手前にドアが開いて…
それと同時に、セルジュの脳裏に、こんなシーンが浮かんできた。
倒れているキッド、その横に立つセルジュ…
セルジュの手には、血のしたたり落ちる剣が握られ、
その口元には、うっすら笑みを浮かべていた…。


「セルジュ…セルジュ…!いつまで寝てるの!?
いいかげん、もう起きなさい!
セルジュ!!」
セルジュは、アルニ村の、自分の家の、自分のベッドで目を覚ました。
何か、夢を見ていたような気がする。
よく思い出せないが、とてもイヤな夢だったような…。
そんなことより、もうだいぶ陽が高いようだ。
あわててセルジュは、部屋を出る。
セルジュの母マージが、あきれたようにセルジュに言った。
「あら、おはよう、セルジュ。ようやくお目覚めのようね?
お天道様は、とっくにのぼってるわよ。
ところでおまえ、お隣のレナちゃんとなにか約束してたんじゃない?
レナちゃんせっかく迎えに来てくれたのに、おまえったら、
ぐっすり眠りこんでて起きないんだから。
ダメじゃない、約束をすっぽかしたりしちゃ。女の子を怒らせると、後がこわいわよお。
はやく、お隣さんへ行って、あやまって来なさいよ。『あんたなんか知らない!』
なんてレナちゃんに言われる日がきても、知らないわよ、母さん。」
セルジュは、そんなことあるもんか!と、思いながらも、
そうなったら、ちょっと困るので、急いで隣のレナの家に行った。
レナの家には、レナのおばあちゃんしかいなかった。
「おや、セルジュ。おはようさん。なんじゃ、おまえさん、まさか今まで
ねとったのかい?まあ、ねる子はよく育つというがのう…。
レナなら、ほれ、そこのさんばしにおるじゃろ。娘から、なにやら用事を
言いつかっておったようじゃぞ。早く行っておやり。」
さんばしのところに、レナがいるのが見える。
セルジュは、さんばしに駆けていった。
レナは、さんばしに立って、海で泳ぐ村の子供たちを見ていた。
「あ〜ら、セルジュ。ようやくお目覚め?今日は、コドモ大トカゲのウロコ集めて
ネックレス作ってくれるって約束じゃなかったかしら?
あなたが、いつまでたっても起きないもんだから、こっちは、母さんに
用事いいつかっちゃったわ!」
レナは、ちょっとムクれて言った。
「わーい!セルジュ兄ちゃん!レナ姉ちゃーん!」
「兄ちゃんたちも、いっしょに泳ごうよー。気持ちいいよー!」
海の中から、子供たちが、2人を呼んでいる。
「こっちは、あんた達とちがって、遊んでんじゃないの!
あんまり遠くへ行っちゃダメよー!」
「ほーい!りょーかーい!」
「のんきでいいわねえ、チビ助どもは…。私たちにも、あんな頃、あったんだよね。
なんの悩み事も、心配事もなくて…。一日がすごく長くて…、
毎日毎日が新しくて、おもしろいものでいっぱいだったっけ。
でも、いま重要なのは、失われた子供時代ではなく、
トカゲのネックレスなのだ!!
そうよ!現実をしっかりみすえて、今を生きていかなくちゃ、わたし達!!
ってことで、先にトカゲ岩に行って、ウロコ集めといてね、セルジュ!
わたし、まだ仕事あるし…、元々、あんたが寝坊するのが、いけないんだしね。
コドモ大トカゲのウロコ、ちゃんと集まったら、オパーサの浜で待っててよ。
後から、すぐ行くから。いいでしょ、セルジュ?」
セルジュは、ちょっと納得がいかなかったが、黙ってうなずいた。
だって、すこしは悪いと思っているし…。
「そうそう!いつもそうやって、素直でいればいいのよ。じゃあ、ほら!
そんなとこに突っ立ってないで、さっさとトカゲ岩の岸に行ってウロコ集めてきてよ。
そうね、3枚も集まれば充分かしら…。期待してるわ、がんばってね、セルジュ!」
しかたがない…セルジュは村を出て、トカゲ岩へと向かった。

トカゲ岩に着いたはいいが、なかなかコドモ大トカゲが見つからない。
おまけにヤツらは、すばしっこいことこの上なく、捕まえるのが大変だ。
やっとのことで、3枚ウロコを手に入れたと思ったら、
どデカいオトナ大トカゲが仕返しにやってきて、危なかった…。
またデカいヤツが襲ってきてはたまらないので、
セルジュは、レナとの待ち合わせ場所、オパーサの浜へ急いだ。

浜は、いつもの通り波が静かで、色とりどりのサンゴが、白い砂浜を彩っている。
セルジュが着いてほどなく、レナがやって来た。
「お待ちどーさま!遅くなっちゃった。ごめんねー、セルジュ。
どうだった?コドモ大トカゲのウロコ、ちゃんと集めてくれた?」
セルジュは、苦労して集めたウロコを、レナに渡した。
もう少しで、オトナ大トカゲにやられそうになったことは、内緒にして…。
「わあ、きれい!これなら、ステキなネックレスがつくれるわ。
ありがとう、セルジュ!」
セルジュは、どーってことないような顔をして見せた。
「でも…、ひさしぶりねえ、ここに来るのも…。昔はよく遊びに来たよね。」
海をじーっと見つめる2人。
レナは、セルジュの横に、腰を下ろした。
「変わらないね、海は…。わたし達が生まれるずっと前から、こうして、よせてはひいて…。
気が遠くなるくらいのながい、ながい時間…。たくさんのものを見て、たくさんの声を聞いて…。
わたし達がいなくなった後も、きっと何一つ変わらない…。
よせてはひいて…、ひいてはよせて…。
ねぇ、セルジュ。ずーっと昔、子供の頃にも、こんな日があったよね?
やっぱりここで、こんな風に海をながめながら、ふたりでいろんなこと話して…。
あの日のこと、おぼえてる?」
セルジュは、なんとなくうなずいた。
「ほんと!?ほんとに…?そうかー、セルジュも忘れずにいてくれたんだ、
あの日の約束! くすっ…。なんだか…、うれしいな。
でも、不思議だよねえ、思い出って。もう、すっかり忘れたと思ってたのに、
胸の奥から、いきなり浮かび上がって来るんだもん。
じっと待ってるんだね、ちょっとしたきっかけで思い出してもらえる、
その日が来るまで…。そう、今この瞬間だって、いつかふと思い出したりする時が
くるのかも…。10年、20年たって、わたし達が大人になって、結婚して、子供ができて…、
そんなある日、ふとね…。その時わたし達…、どんな大人になってるんだろう…。
どんな生き方をしてるんだろう…。」
レナが話すのを聞きながら、セルジュは、なぜか、この日のことは、
ずっと覚えているような、そんな気がした。
「うん…。そうだといいよね、本当に…。ねぇ、セルジュ。わたしね、ほんとは…」
『セルジュ…』
セルジュの耳に、だれかが呼ぶ声がする。
『セルジュ……』
あたりを見回すセルジュ。が、2人の他に誰もいない。
「セルジュ?どうかしたの?…セルジュ!」
突然!セルジュの目に写る海が、ゆがみ始める。
と、フラッシュバックするセピア色の映像。
幼い頃の、浜で起きた恐ろしい体験、そして、野獣のような目…。
その時、今まで静かだった浜に、大波が押し寄せてきた

と、見る間に、セルジュの体を、オーロラのようなものが包み始める。
そして、セルジュは、気を失って倒れてしまった…。


「どうした、兄ちゃん、こんなところで寝てちゃ、あぶないぞな。」
どの位の時間がたったのだろう…。
セルジュは、おじいさんの声で、気がついた。
オパーサの浜は、まるで、何事もなかったかのように、静かだ。
「大丈夫かの?なんでまた、こんなとこで、ひっくり返っとるんじゃ?
遠くから兄ちゃんを見つけたときは、正直、ギョッとなっちまったぞな、
ドザエモンかと思うてな。」
セルジュは立ち上がって、あたりを見回した。
(そういえば、レナは…!?)
「はあ、なんじゃ?レナじゃと…?わしらが来たときには、誰もおらんかったがなぁ。
レナの知り合いか、おまえさん?レナなら、村で、子守をしとったようじゃが?
それじゃあ、わしらはこれでな、兄ちゃん。レナに用があるなら、アルニ村に来るがいい。
こんなところで、遊んじゃあいかんぞ。なんかあってからじゃ、遅いでなあ…。」
そう言い残すと、おじいさんは、いっしょにいたコドモ大トカゲを連れて、行ってしまった。
さっきのは、いったいなんだったのだろう…?
夢でも見たのだろうか?
あれ?今のおじいさんて…?
それにしても、レナはちょっと冷たいじゃないか…
いろいろなことを考えながら、セルジュは、オパーサの浜を後にした。
もちろん、アルニ村へ帰るために…。
帰って、レナに一言文句を言ってやろうとも思ったし、
考えてみれば、朝から何も食べていないので、おなかがペコペコだ。
母さんが、料理を作って待っているに違いない。
セルジュは、アルニ村への道をいそいだ。


だが、セルジュは、まだ知らない。
今、向かっているアルニ村には、セルジュのことを知る人も…
母さんさえもいないことを…。


クロノ・クロス  Start…


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