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季節を抱きしめてのオープニング


※ 選択肢によって台詞や展開は若干変化します


(ボクが〈あの子〉と出会ったのは、この大学に入ってまもなくの事)
(ちょうど桜の花が咲き始めた頃だった……)


大学の通学路、下校途中の主人公と、ガールフレンドのトモコ。

トモコ「うーん、サイコー! 空は青い、空気もうまい! そして桜も満開っ! うふふ、シアワセだわ」

(あっ……ボクの言った〈あの子〉とは、この〈トモコ〉の事じゃない 今、ボクの目の前にいる〈トモコ〉は予備校時代のクラスメイトだ)

トモコ「二人とも同じ大学に入れてよかったよね」
主人公「まぁね」
トモコ「きっとあたし達ってさ、赤い糸で結ばれてるのよね!」
主人公「それ、どういう意味?」
トモコ「かわいいっ! テレちゃって!」
主人公「あのね……(汗) ボク達、トモコが考えてるような関係じゃないでしょ!」
トモコ「……じゃ、どんな関係なのよ?」
主人公「ク・サ・レ・エ・ン」
トモコ「よぉし! これから二人はず〜っと、くされ縁でいきましょ、ね?」


(トモコと知り合って以来、友達というか、恋人といったらいいのか……そんな関係がずっと続いていたりする ま、ボクとしては、どちらでも構わないんだけど…… でも、トモコの方はボクの事を恋人と決め付けているらしい…… もっとも、去年一年間の長くて淋しい浪人生活をクリアし、無事に大学に合格できたのも…… このトモコのおかげだと言えなくはないのだけれど…… 何事に対してもアッケラカンとしているトモコ…… ボクにとって初めてできた仲のいいガールフレンドである)

トモコ「ほら、こんなに桜がきれい」
主人公「ああ……」
トモコ「もう……春なのにそんな辛気臭い顔してないの!」
主人公「……」
トモコ「まさか、まだあの子のコト、忘れられないっていうの?」
主人公「ちがうってば」
トモコ「しょうがないなあ」

トモコが缶コーラを差し出す。

トモコ「欲しい?」
主人公「お、ラッキー! いただきっ!」

目を閉じて唇を突き出すトモコ。

トモコ「う〜ん」
主人公「あのね(汗)……いったい何を考えてんの?」
トモコ「コーラのような刺激的なキッス♡」

(ボクはレモンのように酸っぱいキスのほうがうれしいと言おうと思ってたんだけど…… またなんて突っ込まれるかわからないので止めることにした……)


大学に伝わる巨木「悲恋桜」のもとに、誰かが倒れている。

(ん?)

事態に気付き、慌てて駆け出す主人公。

主人公「大変だ!」
トモコ「あっ? どうしたの!」

(悲恋桜の下に倒れていたのは、この辺りでは見慣れない制服を着た高校生ぐらいの女の子だった……)

少女を助け起こす。
その拍子に、主人公の手にしていたタウン雑誌が地面に落ちる。

主人公「おい、どうした? 大丈夫か!」

(! ……ま、麻由?)

少女「うーん……う……」

(よかった、意識はあるようだ……)

少女「ん……あ……」

少女の目が開く。

(どきっ)

少女「……?…… キャァーーッ!! なにすんのよ! このスケベーーッ!!」


突然起き上がった少女。主人公目掛けて蹴りが炸裂……


トモコ「ちょっと、あんたねェ!」
少女「……はい?」
トモコ「この人は、ここで倒れていたあんたを助け起こしてあげただけじゃないの!」
少女「え?……そうなんですか?」
主人公「そういうこと! ……ったく、いきなり蹴りだもんなぁ(汗)」
少女「アハハッ……(汗)」
主人公「アハハッ……じゃないだろ!」
少女「ごめんなさい。私……チカンだと…… あっ……本当にすみませんでした」

(……まぁ、悪気はなさそうだし、あの状況なら混乱して痴漢に間違われても仕方ないかな 許しちゃおうかな? この子〈麻由〉に似てるし…… かわいいな、本当に……)

トモコ「なっなによ! あんたたち、二人で世界創っちゃって!」
主人公「えっ? あ、そんなあ……ほら、間違いって誰にだってあるし(汗)」
トモコ「鼻の下伸ばして言われても、説得力に欠けるわね!」
少女「でもぉ……私、なんでこんな所に倒れてたんでしょうか?」
トモコ「あのね……あんた、ふざけてんの?」
少女「いいえ……ここは、どこですか? なんで私、ここにいるんでしょうか?」
主人公「……えっ?…… ここは大学の構内で、君はどう見ても高校生だし…… 本当になにも覚えてないの?」
少女「……ハイ……」
トモコ「もう! 記憶喪失じゃあるまいし、大人をからかうのもいいかげんにしなさいよね! 行こう、行こう!」
主人公「お、おい……トモコ」
トモコ「アルバイトあるんでしょ、アルバイト!」

トモコが主人公の手を引っ張り、その場を立ち去る。

(トモコに強引に引っ張られ、どうやらついて行かざるを得ない雰囲気になってしまった…… だけど……あの子の事がひっかかる 特にトモコが口にした〈記憶喪失〉という言葉が……)

ふと、主人公が立ち止まる。

トモコ「どうしたのよ?」
主人公「あの子……大丈夫かな……」
トモコ「ふーん、そんなにあの女子高生の事が気になるんだ?」
主人公「! い、いや……」
トモコ「さぁ、行こう!」
主人公「…… ごめん……トモコ」

少女のほうへ引き返す主人公。

トモコ「あっ…… アルバイト遅れるわよ!」
主人公「すぐ戻るから!」
トモコ「もう……勝手にすれば! 私、先に帰る!」
主人公「ごめん!」


少女「あ……」

(憧れの麻由にそっくりな彼女とふたりっきりになって、ボクはすっごく緊張した……)

主人公「あのぉ……」
少女「はい?」
主人公「あ、えっと…… ……そうだ!」

主人公が手帳に何やら書き込み、ページを破って少女の手に握らせる。

主人公「これ、ボクのバイト先の電話番号 もし、なにか困った事があったら電話していいから…… あ、もちろん捨てちゃってもいいんだけどね 悪いけど、バイトへ急いで行かなきゃいけないんで…… それじゃっ!」

(……本当はもっとずっとしゃべっていたかったのだけど、どんどんふくらんでいく緊張感がそれをさえぎっていた 言いたい事だけを、一気にまくしたてて、ボクは彼女の前から逃げるようにして立ち去っていた……)

主人公「ねえ、君! ちゃんと家に帰るんだよ!」


主人公が駆け去る。
少女が、主人公の落としたタウン誌を拾い上げる。


少女「……わたし……記憶喪失……なんですか?」
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