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ペルソナ2 罪

〜Opening〜



静けき夜 巷は眠る
この家に 我が恋人は かつて住み居たりし
彼の人は この街すでに去りませど
そが家は いまもここに残りたり
一人の男 そこに立ち 高きを見やり
手は 大いなる苦悩と闘うと見ゆ
その姿見て 我が心おののきたり
月影の照すは 我が 己の姿
汝 我が分身よ 青ざめし男よ
などて 汝 去りし日の
幾夜をここに 悩み過ごせし
我が悩み まねびかえすや


珠阯レ市 蓮華台にある 七姉妹学園(通称セブンス)
校舎裏の駐輪場で、主人公(セブンス3年、学園1イケていると言われている男子生徒)が、
バイクをいじっている。
何度かキーを回してみるが、エンジンがかからない。
「よぉ…今帰りかい?」
ガラの悪い生徒が2人やって来て、薄ら笑い混じりに声をかけた。
「へっへ〜!!そのオンボロなら、もう動かないぜぇ〜!こいつがねぇからなぁ〜」
そう言って、バイクの部品らしき物をちらつかせている。
無視する主人公。
「シカトかよ…そのスカした面見てっと、超クカツクんだよ。チョづいてんじゃねぇぞ、テメェ…」
主人公は、いつもお守りのようにして持っているジッポのライターのふたを、
カチンカチンと鳴らすのがくせだった。
寂しい時、悲しい時…幼い頃から、彼はそのライターになぜか励まされてきたのだ。
そして、今のように、怒りをこらえる時にも…。
と、その時、主人公は、今まで感じたことのない体の震えを覚えた。
頭の先からつま先まですべてが脈を打ち、まるで何かに激しく共鳴しているような感覚だった。
思わず主人公は、顔をしかめて、その場に崩れ落ちるように座り込む。
「オ、オイ…どうしたってんだよ!?」
さっきまでバカにしていた2人も、主人公のただならぬ様子に、
駆け寄って声をかけた。

その時、突然、主人公の耳元で、何者かがささやいた。
『我が……手を……取れ……』
恐ろしく冷たく、それでいてやさしい不思議な声…。
「…な、何か様子が変ですよ?コイツ、すげえ汗かいてる…」
慌てる2人。
『恐れるな……我は汝……汝は……』
その声がするたび、主人公の体の共鳴が、ますます激しくなる。
体が、バラバラに壊れてしまいそうだ。
「…!!!!!!…」
そこへ、校舎の裏口から、年甲斐もなく長髪のハンニャ校長が出てきた。
(ハンニャ校長:反谷 孝志 エルミン学園から転勤してきた新校長。エルミンでは、ハンニャの通称で
嫌われていたが、なぜか、七姉妹学園では慕われている)
主人公の体の異変が、おさまる。
「ハイ!そこぉ!一体何をしとるか、このバカチンがぁ!!下校時刻はとっくに過ぎとるんだぞ?」
腰に手を当て、ナントカ先生を気取っているつもりか。
「は、反谷校長先生!?ハ、ハイ!!今すぐ帰って予習するであります!オ、オイ!帰るぞ!」
「こ、これ、返すから!!さいなら〜!!」
バイクの部品を、主人公に押し付けるようにして返すと、2人は慌てて走り去った。
「分かればいいのだよ、分かれば。はっはっはっはっ!実に気分がいい!」
そう言ったものの、ハンニャ校長は、無視してバイクをいじる主人公を見て、再び怒り出した。
「貴様もだ!!私の言う事が聞こえなかったのか!?」
お構いなしに、バイクの修理を続ける主人公。
「なぜ私の言うことを聞かない!?ありえんことだ!貴様、何年何組の誰だ?!
名前所属を言え!さっさと言わんかぁ!?」
(ここで、主人公の名前と通称の入力。今回は、初めから設定されている『周防 達哉』とする)
「ほう、どうりで…貴様が噂の周防達哉か。先ほど、廊下で感じた不快な共鳴も、
貴様が原因ならば納得がいく…。確かに、聞きしに勝る問題児のようだな。」
まるで無反応な達哉。
「ククク…まぁいい。貴様には 『あの方』 直々の指導が待っている。
残りわずかな青春を、精一杯謳歌することだ。」
含み笑いを浮かべ、そう言い残すと、ハンニャ校長は、去って行った。
入れ替わりに、別の男子生徒が来る。
「よう、ひどい目にあったなぁ。まぁ、でも、反谷校長はとってもイイ人だからな。
言うことは、聞いとこうぜ。」
達哉は、バイク越しに男子生徒を見上げた。
「そうにらむなよ。俺は、冴子先生がお前の事探してるって、伝えに来ただけなんだからさ。
お前、進路指導逃げまくってたろ?家まで押しかけかねない勢いだったから、
ちゃんと会っといた方がいいと思うぜ。」
達哉は、仕方なく、冴子先生のところへ向かうことにした。
学園の中には、まだ結構生徒が残っていて、
その中には、顔をすっかり包帯で覆った生徒が何人かいる。
彼らは『発病した』のだと言う。
最近、この学園で流行り始めている、突然、顔が崩れだすという奇病…。
噂では、制服の七星のエンブレムに、呪いがかけられているらしいというので、
エンブレムを外す生徒も多い。が、原因等は、まったくの不明。
それと、もう一つ、この学園で噂になっているのが『ジョーカー様』という儀式だ。
自分の携帯から自分の携帯へ電話し、『ジョーカー様』を呼び出すことに成功すると、
夢や願いを、叶えてくれるというもの。
何人かは、本当に願いが叶ったというのだが、失敗すると、影人間にされてしまうらしい。
それにしても、冴子先生がなかなか見つからない。
職員室、昇降口、中庭…。散々探し回った挙句、駐輪場へ行くところを見たと聞き、
達哉は、結局、駐輪場へ戻る。
駐輪場、達哉のバイクの横に、冴子先生が立っている。
「お、やっぱり来たね?周防。コイツがあるから、ここで待っていた方が確実だと思ってさ。」
(冴子先生:高見 冴子 エルミン学園から転勤してきた、達哉の担任。
男っぽくさっぱりとした性格と、生徒の自主性を重んじる教育方針で慕われている。)
「進路指導ってもさ、そんなカタ苦しいもんじゃないから、安心しな。」
冴子先生の言葉に、達哉は、仕方なく先生の正面に行って立つ。
「結構、結構。さぁて、あんた、進路はもう決めたの?」
(もう決めた、まだ決めてない、の選択肢あり、今回は、まだ決めてない、を選択)
首を横に振る達哉。
「そうか…。じゃあ、こう…漠然としたものでもいいんだ。
何か、やりたい事とかは無いのかい?」
(ある、ないの選択肢あり、今回は、ない、を選択)
達哉は、首を横に振る代わりに、ジッポをカチンと鳴らした。
「うーん…、進路も決めてない、やりたいこともない、か…。
でも、一生そのままってワケにもいかないだろ?その辺は、どう考えてるんだい?」
(そうしながら本当にやりたいことを探したい、別に何も考えてない、の選択肢あり、
今回は、そうしながら〜、を選択)
ジッポをもう一度鳴らし、達哉はうなずいた。
「そうだね。あせることはないさ。本当にやりたいことを、よく考えてから決めな。
夢を追いかけるのに、早い遅いなんて、関係ないからね。」
そう言って、冴子先生は、達哉の肩にポンと手を載せたが、それを振り払うように、
バイクの方へ行く達哉。
「周防…、なぜ、そんなに無理して、人を避けるんだい?
なんか辛そうで、見ちゃらんないよ…」
カチン…カチン…ジッポの音だけが、駐輪場に響いている。
「あ、いたいた!!い(ワーイ)ねぇねぇ!達哉!達哉!って…あい呀!!(アイヤー)」
その静寂を打ち破り、ブロンドの髪(染めているのではない)をしたリサが、けたたましく走ってきた。
(リサ:リサ・シルバーマン 達也につきまとう、セブンス2−Cの生徒、生粋の白人だが、
日本語ペラペラでカンフー好き、本人曰く、セブンス1イケてる女子高生)
「…リサ!どうしたんだい?そんな大声出して?」
冴子先生が、尋ねた。
「ソ、Sorry呀(ソーリーア)冴子先生!大事な用事なんですよぉ!
ちょっと、達哉借りてもいいですよね?」
焦るリサ。
「しょーがないねぇ…、じゃあね、周防。」
冴子先生は、肩に掛けたカーキ色の上着をひるがえし、校舎に入って行く。
それを見届けると、リサは達也に近づいて言った。
「タイヘンなんだよ、達哉!!って、あい呀!!(アイヤー)」
突然、達也の胸のエンブレムをむしりとるリサ。
「信じらんない…、なんで、まだエンブレムつけてるの?!紋章の呪い、
知らないワケじゃないでしょ?」
そ知らぬ顔で、達哉は、怒るリサに背を向け、バイクの方を見た。
「モー!わたしがこんなに心配してるのに…って、そんなこと言ってる場合じゃなかった!!
果たし状!!カス校のヤツが、達哉に渡せって!!」
(カス校:春日山高校 セブンスの隣町にある、最低の偏差値、やる気の無い運動部、
札付きの不良生徒たちで悪名高い男子校)
その『果たし状』を、開いてみる2人。
「なになに?『周防 達哉に告ぐ 貴様の学校の女を一人あずかった 女の命がおしければ
スマル・プリズンに一人で来い 春日山高校番長 ミッシェル栄吉』〜!?
係刀I?(ハイメ)マジ!?今時、なんつーレトロな…でも、コイツ、かなり強いって噂だよ!
それに、これも噂なんだけど、紋章に呪いかけたの、カス校の連中らしいんだ…。
きっと、コイツが何かやらかしたんだよ!!」
(ミッシェル栄吉:三科 栄吉 カス校2年 ペルソナを使って学校を仕切っているため死神番長とも、
けんかで負かした相手のパンツを脱がすことからパンツ番長とも呼ばれている。
うぬぼれの強いナルシスト、自らミッシェルと呼ばせている)
(スマル・プリズン:ライブハウス 栄吉が溜まり場にしている)
「達哉…一人で行く気でしょ?」
…黙って、ジッポを鳴らす達哉。
「やっぱり…でも、スマル・プリズンの場所、知ってるの?道案内くらいできるし、
このまま、呪いにかかるの待ってるなんてやだよ。お願い、連れてって!」
リサの言葉に、達也は、うなずいた。

二人を乗せたバイクが、栄吉の待つスマル・プリズンに向かって走り出す。
それが、これから始まる、長く、恐ろしい戦いへ向かう道だとは
知る由も無かった…。


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リサの会話の中に、一部、私の能力では変換しきれない、日本では現在使われていない漢字があり、
ひらがなで書かれているところが
ありますが、お許しください。

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