（主人公の名前は、マルスにしています）
ここは剣と魔法の世界。
勇者が活躍し、モンスターが暴れ、
悪党が陰謀をめぐらし、真実の愛と
素晴らしい冒険が…
まあ、こっちの世界ではもう
めったにお目にかかれない出来事が
ごく普通にある世界ということだ。
これは、その世界の片隅の
【キングダム王国】を舞台にした、
【野球人形】にまつわる冒険のお話。
（キャッスル城の倉庫に、野球選手そっくりの人形が眠っている…）
【野球人形】とは…魔法で動く人形（ゴーレム）の一種で
野球をやるためだけに特別に
作られたもののことである。
ここ５０年の間、【キングダム王国】は
毎年、隣の【エンパイア帝国】と
【野球人形】による野球の試合を行い、
その勝敗でおたがいの間の問題を
解決してきた。
そのおかげで、どちらの国も
軍隊なんてものにお金をかけずにすみ
平和にのんびりと過ごしてきた。
（野球人形を狙う怪しい影）
しかし、この日【キャッスル城】に…
（ドカーン！）
（城の一部が爆破される）
（大臣が王様に報告する）
王様：どうした、いったい何のさわぎだ？！
大臣：はい、先ほど城に賊が侵入し、壁を爆破して逃走しました！それと…賊は【野球人形】を１体盗んでいったようです！
王様：なんと！？９体しかない【野球人形】の、そのうちの１体が盗まれたと申すか？
大臣：このままでは次の試合はできず、わが国の負けになってしまいます！これは、ここ数年試合に負けている隣国のしわざにちがいないです。こうなったら戦争で決着を……
王様：まあ、落ちつけ。なんの証拠もないのに、勝手な推測でそのような大事を決めては、いかん。…だが、このことが広まれば民の間に騒ぎ出す者も出てこよう。このことは秘密にするのじゃ。
大臣：し、しかし…試合の日になればバレてしまいますぞ。賊は、すでに逃走してしまいました。【野球人形】を取り戻せる方法は…
王様：なくなったのなら、また作ればよい！よいな、このことは秘密にするのじゃ。
（野球のユニフォームを着た青年が切り株の上で小鳥とたわむれている）
王様：それと…すぐに使いを送れ。今回も、あの者に頼むとしよう。幾度となくこの国の危機を救ってきた勇者【マルス】殿に。