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フォトジェニックOP

昔から、自然を見るのが好きだった。

まさに、満開という言葉がピッタリの世界だった。
都会を離れると、そこは桜の園だ。
僕はカメラを握る手で、その場にある全てを漏らさず、
すくい上げるようにシャッターを切る。

山間からひょっこりと顔を出した太陽が、
濃紺一色の世界に赤と黄色の色彩を加え始めた。
それらは混ざり合い、溶け合い、本来の色を形作る。
もう春とはいえ、山岳部の朝はまだ寒い。
しかし今の僕は、吹き抜ける冷たい風を心地よく感じていた。

ご覧の通り、僕は、フリーカメラマンの端くれだ。
加えて言うなら、風景専門。

もともと都会で生まれ育った僕なのだが、昔から大自然の生活や、
自然そのものの存在には憧れを感じていた。
写真を始めたのは、遠い自然の美しさを都会に戻っても
見つめていたいと思う、純粋な趣味からだ。
しかし、趣味はいつの日からか、目標へと変化した。
自分自身が体験し、感動した自然を、他の人にも伝えたい。
だから、風景写真カメラマンとなった、今日の僕が居るのだ。

(綺麗だなぁ……何時間見ていても……)

――ピピピピピ ピピピピピ ピピピピピ――

(…なんだ?もう、人がいい気分に浸っている時に…)

雄吾「はい、もしもし?」
公平「おう、なんとか電波の届く範囲に居たみたいだな?」
雄吾「公平か…今仕事中なんだ、適当な用だったら切るからな」
公平「何言ってんだよ、おおかた地面に寝っころがって、
    ボケーっと昼寝でもしようとしてたんじゃないの?
    大体、お前の撮ってるモンは、俺の被写体と違って
    ちょっと位ほっといても逃げやしないだろ」
雄吾「わかったわかった……で、何の用さ?」
公平「今日は、そのままそっちへ泊まって撮影を続けるんだったよな?」
雄吾「……そのつもりだけど?」
公平「編集長が、話があるから来いって言ってたぜ」
雄吾「編集長が……何の用だろう?」
公平「さあてな、ヘヘヘッ!」
雄吾「……何を知ってるんだ、正直に言ってみろ」
公平「ま、来てからのお楽しみだ。じゃあな!」

(……なんだろう、公平の奴、妙に勿体ぶってたな……)

昔から、自然を見るのが好きだった。
それは、四季を通じて変貌を続けていく、動の魅力に
とりつかれていたからかもしれない。
しかし、僕はこの電話をきっかけに知ることになる。
より美しく変貌を遂げていく、天使達の存在を……

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