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【異界の地ドラグリア】
ある日、ドラグリアに一隻の難破船が打ち上げられた。



*アトルシャンは難破船を見に行く。難破船の見える岬には、既に三体の龍がいる。

緑の龍:このドラグリアに、我ら龍族が移り住んで二千年。本物の人間なんて、一回も見た事がないぞ。お前、あるか?
赤い龍A:人間達の住んでいるイシュバーンとは、次元の隔たりがあるはずなのに……。どうして、人間の船が流れ着いたのだろう。
黄色い龍:人間ねぇ……もしかして、あの難破船にまだ乗ってたりして……?

*と、難破船に様子を見に行っていたもう一体の赤い龍が、人間の子を抱えて岬に帰ってくる。

緑の龍:に、人間だぁ!本当に、角もうろこもないぞ!
赤い龍A:この地で人を見るのは初めてだ。どうすればいいだろう……。
黄色い龍:わあ、人間の子なんて、ど、どうしよう……。アトルシャン、行って話を聞いて来いよ。
赤い龍B:あんなに壊れてしまった船の中で、かすり傷一つなく生きていたなんて……なんて、運の強い子だ!

*アトルシャンは人間の子に話しかける。警戒して、後ずさりする人間の子。

アトルシャン:恐がらなくてもいいよ。みんな、優しいドラゴンばかりだから。怪我はしてないの?どこか痛くない?
人間の子:……うん、大丈夫。あ……、ありがとう。
アトルシャン:そう。……よかった。君、えーっと、名前は?
人間の子:……。
アトルシャン:……どうかしたの?
人間の子:……わからない……全然、覚えてないの……。
アトルシャン:えっ、記憶をなくしちゃったのかい!……かわいそうに。

*岬の上空に白い龍の姿が現れる。

白龍:アトルシャンよ……。
龍たち:おお、白龍さまだ。白龍さまのお声が、聞こえる……。
アトルシャン:白龍のじっちゃん!
白龍:我ら龍族が、滅多に子宝に恵まれないことは、皆も知っておろう。それゆえ、子供の大切さはよくわかっているつもりじゃ。たとえ、それが人の子であろうとも……。龍族の長として、ここに、決定を下す!その人間の娘を、皆で大切に、育てることを!名前は……、そうじゃ、”タムリン”と!清き者を意味する龍族古来の言葉じゃ。よいな、アトルシャン。仲良くしてやるのじゃぞ!
アトルシャン:やったー!!さすが、じっちゃん!よろしく、タムリン!ボクの名前はアトルシャンだよ。何でも困ったことがあったら、僕に言うんだよ!
タムリン:うん、ありがとう。アトル……シャン……。
アトルシャン:じゃあ、おいで。この国を案内してあげるよ!

15年後

白龍:アトルシャンよ。15年も前じゃ、タムリンがこの地に暮らし始めたのは……。そして、あの娘がこの地を去って、既に3年。月日が経つのは、早い……。今、タムリンが角笛を吹き、そなたを、イシュバーンへ呼んでおるというのじゃな。アトルシャンよ、イシュバーンへ、行くと言うのか?その角の折れた跡を見るたびに、胸が痛む……。

アトルシャンの回想

夕暮れの岬。難破船を一人見つめるタムリンのもとに、アトルシャンガやってくる。

アトルシャン:タムリン!!どうしたんだい?タムリン。変だよ、さっき白龍のじいさんに呼ばれてから……何か、元気ないぞ!どうしたんだい?タムリン?
タムリン:アトルシャン……。
アトルシャン:タムリン……泣いているの……かい。……そうかッ!あの白龍のじいさんに、何か言われたんだね!あのじいさんの戯言なんか気にしちゃ駄目だよ。待ってて、タムリン。僕が白龍のじいさんに文句言ってくるから。
タムリン:待って!アトルシャン!私……、人間の世界へ……人間の世界へ帰ることにしたの。
アトルシャン:なんだって!?そんな、バカな!白龍のじいさんがイシュバーンへ帰れって言ったのかい!
タムリン:違うの!私が決めたのよ!もっと前から白龍様から言われていたわ。人は人の中で生きるのが幸せだって。
アトルシャン:タムリン……。
タムリン:私、みんな好きよ。だから、ずっとここで暮らしていたい……。でも、私は人間。アトルシャンたちとは違う種族なのよ。このままここで暮らせばいつかきっと、辛い別れの日が来る。だから、戻るの。イシュバーンで探してみたいの。人の幸せというものを。
アトルシャン:……。そうか……。タムリンが、そこまで考えているんだったら、もう何も言わない。でも……。
タムリン:アトルシャン……?

*アトルシャンは角を片方折った。

タムリン:……!!
アトルシャン:この角を笛にして持っていくんだ。
タムリン:え……!?
アトルシャン:僕の助けが必要になったときに、それを吹くんだ。僕は、角笛の音を聞きのがさない。君が、どこにいても、必ず駆けつける!約束だよ、タムリン!いいね……。

回想終了

白龍:タムリンを帰したことでこのわしを、恨んでおるじゃろうなあ。
アトルシャン:……!いいえ、白龍様のお決めになられたこと、そのようには、決して……。
白龍:白龍”さま”か……。どうしても、タムリンのところへ行くというのだな。イシュバーンへ……。
アトルシャン:はい!
白龍:だが、イシュバーンは龍族には呪われた地、死が待つのみじゃ。よく聞け、アトルシャンよ!これを持って、龍の墓場へ行け!
アトルシャン:これは?
>龍の鍵を手に入れた!
白龍:龍の鍵じゃ。それで、墓場の壁画が開く。その奥に、龍族の秘宝であり、悪しき呪いより命を守るための銀のうろこが隠されている。そなたが、それを手にしたとき、イシュバーンへの異界の門を開いてやろう!さあ、ここから行くがよい!



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