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Another Time Another Leaf〜鏡の中の探偵〜・オープニング
 
暮れ行く和室の中。主人公・桜音楓(さくらねかえで)が一つの箱を覗き込んでいる。
これまで私は、一度もこの箱を開けたことがなかった。
箱を開けてしまえば、母が死んでしまうかもしれないという思いがあったから。
病院の暮れ行く黄昏の下、母は、私の手を握りしめて言った。
 箱に収められていたのは美しい装飾の施された手鏡。
『これからは、この箱の中のものが、あなたを守ってくれる』と。
それから数日後、母はこの世を去った。
棺の中の母は、生前と同じ美しい顔で眠っていた。
今にも目を覚まして、『冗談よ』って笑い出しそうな気がしてならなかった。
幼い頃に父を亡くしてからというもの、母は私のすべてだった。
庇護者であると同時に、唯一心を許せる親友ともいうべき存在でもあった。
 楓の頬を涙が伝う。
私はすべて失ったんだ。
これからは、たった一人で生きていかなければならない。
でも、生きていく意味なんてあるの……?
愛する者が誰一人居ないこの世界で、どうして笑うことなど出来るというの?
この悲しみが、癒やされる事なんて絶対無いのだから……。
 鏡には楓の顔が映っている。だけどその顔には眼鏡はかけられていないし、眼も赤い。
「ひどい顔……。」
確かにそうね……。
目は充血してるし、顔なんて真っ青……まるで幽霊みたい。
 鏡の中の楓…そっくりの少女は表情を変える。
「もう少し笑ったほうが、カワイイと思うんだけど!」
 鏡の中の少女が喋った事に驚く楓。
ひぃーーー!!
どうしちゃったんだろ、私……。
私は喋っていなかったはずだし、あんな表情もしてなかった……。
 鏡を恐る恐る覗き込む楓。
あはは…気のせいよね……。そうよ、そうに決まっているわ。
 鏡の中の少女はにやっと笑って、
「はい、初対面の感想をどうぞ!」
 あまりの事態に気を失ってしまった楓。
う〜ん……。
 ホワイトアウトする視界。しかし浮かび上がってくる様々な風景。
薄れ行く視界の中で感じたこと。
それは今見たものが、夢か幻かはわからない。
だけど、きっと、これから先、途方も無い事が待ち受けている。
その事だけは間違いない。
 
(オープニングムービー&テーマソング「Make a shine with a shadow 〜光芒と影が交わる時に〜」)
 
 そして次の日。楓がSt.モンフォール学院に入学する日でもある。
 
今日から私は、高校生。
かつて母も学んだ全寮制の高校で、
これから私も3年間という月日を過ごす事となる。
高校生活の事を話す母が
本当に楽しそうだったのを今でも覚えている。
学校の記憶は、母の青春そのものであり、
たくさんの出会いと、思い出が詰まっていた。
今の私と同じ年の母が、
その時、何を感じて、何を思ったのか……。
それを知ることが
私にとって唯一残された母とのつながりといえる。
 
 鏡の中に居る楓そっくりの少女、朱葉(あけは)が話しかけてくる。
朱葉「ちょっと楓(かえで)!
 私も忘れずに連れて行きなさいよ!
 ねえ、聞いているの!?」
楓「あの……、って言うよりさ……。
 私まだ君のこと、頭の整理出来ていないんだけど。」
朱葉「はぁ〜。
 も〜う、いいかげん、あきらめたらどう?
 私もわからないんだから説明のしようがないんだもん。」
楓「あははっ……。
はぁ〜。」
 
そうなの……。
忘れていたわけじゃないけど、今、私には大きな問題がある。
それは昨日、私の身に起こった不思議な出来事。
母から譲り受けた鏡を開けたら、
私そっくりの女の子がそこに映っていた。
(そっくりと言うのは、
鏡だから当たり前といえば当たり前だけど)
女の子は朱葉(あけは)と名乗り、
幼い頃からの私と記憶を共有していた。
何故彼女が出現したのか?彼女の存在が何なのか?
わからないことばかり……。
ただわかっているのは、
彼女は私の鏡の中だけに存在するということだけ。
 
朱葉「なになに?またお悩みタイムなわけ?
 言っちゃ悪いけど、人生損するタイプよね。
 もっとポジティブに考えられないかな〜。
 だってさ……、
 新しい友達が出来たと思えば、全然平気なわけじゃない。」
楓「うるさい、うるさい!性格なんだから仕方ないでしょ!
 それに学校に連れて行くのは、別にいいけど、
 言っておきますけど、学校では勝手に喋らないように。
 わかった?」
朱葉「はいはい、わかりました。」
楓「(はぁ〜、不安でいっぱい)」
 
 ここから楓のSt.モンフォール学院での新しい日常が始まり、そして起こる数々の事件を朱葉と協力して解決していく日々も同時に始まることになる…
 
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