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ダブルキャストのノーマルエンディング (1)


【解説】
映研の飲み会の帰り、主人公は同じ部の翔子を送って帰ることになった。
いつか映画制作の仕事に就きたいと夢を語る主人公。
2人は酔い覚ましのため、いつものファミレスに入った……。


翔子「新人クンやさしいから、きっと恋愛映画向いてるんじゃないかなぁって思う。心温まるような映画、いつまでもいつまでも時代を越えて見られるような……そんな恋愛映画……」
主人公「そうかなぁ…… 僕自身はアクションとかサスペンスなんかが好きなんだけど……」
翔子「やさしいの知ってるの、あたし。きっと恋愛映画が向いてると思う。サスペンスもいいけどね」
主人公「知ってるって、僕のこと?」

ケーキをつまむ翔子。

翔子「あたしね、大学入ってすぐくらいかな…… ちょうど雨の降り続いてる日に見たの。大学の裏門の隅に、子犬が捨てられてるのを、ずっとずっと悩んで、タオルにくるんで、困り果てながら連れていったでしょ?」
主人公「あっ、あ……、アレ見てたの?」
翔子「うん、偶然……」
主人公「あの時は困ったよ。可哀想だし、雨降ってるし。あの犬の顔見てほっとけるヤツなんているのかなぁ。そのままにしておけなくて、つい後先の事考えずに……」
翔子「だからやさしいのよ。自分が困るのも考えずに、犬を想って拾ってっちゃうなんて。子どもの頃ならあるけど、大人になるとなかなかね」
主人公「あの後困ったよ。引き取ってくれる人探して大学中駆け回ってね……」
翔子「それも知ってる!」
主人公「そうなの? あちこちに聞きまわってさ……、やっと見つかったときはホッとしたよ。そいつの所、大の犬好き一家でね。ちょうどそのころ飼ってた犬が死んじゃったばかりで、家族中から喜ばれたよ。この前会いに行ったら、こーんなにでっかくなってて」

両手を左右に大きく広げる主人公。

翔子「フフッ……ほら、やさしいじゃない。あたし、そんなとこが…… 好きだなぁ」

その言葉に主人公、口にしたコーヒーを思わず吹き出す。
慌てて、おしぼりを差し出す翔子。

翔子「あ〜あ、ゴメンね、驚かしちゃった? あたしまだ酔ってるのかな」
主人公「あ、ありがと……」


主人公「実は僕も知ってることがあるんだ」
翔子「……あたしのことで?」
主人公「去年の秋頃かな? 駅のベンチで小さな男の子がひとりいて、その子に話しかけてたでしょ?」
翔子「あ……」
主人公「ずっと見ていたんだ。あの男の子、誰かを待っていたでしょ? それで翔子ちゃん、その子にいろいろ話しかけて相手してあげてたでしょ。でも待ってる人がなかなか来なくて、男の子ついに泣き出しちゃって。で、近くの交番だっけ、そこに連れていってあげたら その子の父親だったのかな? 交番の男の子見つけて……。そうしたら翔子ちゃん 男の子よりも大きな声で泣き出して、まわりの人たちビックリさせてたでしょ」
翔子「ヤだ、見てたの……」
主人公「今時珍しいよ」
翔子「えーっ、そう?」

主人公「ボクさ、ずっと心に引っかかってる女の子のイメージがあったんだ。でも今気づいた。いや、思い出した。あの時はボーっと見てたけど、そのイメージ、ずっと今も心の中にあって。ボクの全ての女の子のイメージは、あの時大声で泣いていた女の子そのままなんだって。僕、このイメージ忘れたくないんだ。さっき言ったの、もし本当ならいイメージだけじゃなくて……現実にしたい。リアルに、身近に感じていたいんだ……」
翔子「それって……どういうこと?」
主人公「いつまでもそんなイメージの女の子が側にいてくれたらってこと。」

きょとんとして主人公の話を聞いていた翔子の顔が、微笑みに変わり──そして、大声で号泣しだす。


主人公「え、ちょっと翔子ちゃん! ゴメン変なコト言って、お願いだから泣かないでよ、ね!……」


The End


翔子
Nomal End 01
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