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ダブルキャストのグッドエンディング (1)


主人公の青年が夜の街で出会った、記憶喪失の少女・赤坂美月。
主人公は自分の大学の映研の自主制作映画のヒロイン役に、美月を推薦する。
しかしその撮影旅行や、主人公の身の回りで奇怪な事件が発生。
実は美月の本名は赤坂志穂であり、美月とは志穂の亡き姉の名だった。
美月の意識が志穂に宿り、様々な事件を引き起こしていたのだ。
正体を看破された美月は大学校舎の屋上に追い詰められ、主人公と共に飛び降りる……。


志穂が目を覚ます。

主人公「志穂、目が覚めた?」
志穂「ゴメン……眠ったりして」


映研の部室。
完成した映画の試写を、主人公と志穂が肩を寄せ合って見ている。
周りには、眠りこけている部員たち。

志穂「せっかく映画完成したのに」
主人公「ムリないよ、いろんなことがあって今日まで5日間連続徹夜だったもん」
志穂「今回、いろんな人に迷惑かけちゃった。部員のみんなにもケガさせちゃったし、特に佐久間さんには……」
主人公「気にするなっていってもムリがあるけど、みんな理解してくれてるよ。それに、こんな素敵な映画も完成したんだし、君ももう他人を演じる必要もないしね。これからは志穂自身として、みんなと仲良くなれればそれが一番のお返しになるとおもうけど?」
志穂「でも、あの時ビックリした……」


回想。
校舎の屋上から落下する主人公と志穂。
2人が落下したのは、地面ではなくマットの上。
映研部長の遥、主人公の友人の二村がとっさに用意しておいたのだ。


志穂「まさか、あんな高いトコから落とされるなんて……」
主人公「あれは、イチかバチかだったんだ。美月サンの人格から目覚めない時は、屋上から一緒に飛び降りてショックを与えてみるっていう計画だったんだけどね。幸か不幸か、それ以降、別の人格は出てきてないだろ?」
志穂「ウン」

志穂「でも、記憶喪失になったおかげで、こんなステキな人とめぐり会えたのかなって思うとお姉ちゃんに“ありがとう”って言いたい気分」
主人公「僕はもう、お姉さんに会うのはコリゴリなんだけどね……」
志穂「フフフフフ……」

志穂、目を閉じ、唇を主人公に突き出す。

主人公「って、まわりにいるじゃない」
志穂「みんな疲れてグッスリなんでしょ?」

いつの間にか部員たちが、カメラを2人に向けている。

志穂「うわぁっ!!」
二村「アッハハハ、別にいいじゃない、初めて見られたワケじゃないんだし。ホラ!」
志穂「えっ?……」

試写のスクリーンには、いつの間にか、主人公と志穂が撮影旅行の夜にキスを交わしていた場面が映し出される。

志穂「ワァァァッ!」

慌ててスクリーンを身体で隠す志穂。

志穂「あっ、わかった! あの時、島行って港でセリフ練習してたの覗いてたの二村さんでしょう!!」
二村「ピンポン!! 一応ね、主演男優と女優が悪いコトしないように見張っておかないと」
部員たち「そうそう!!」
志穂「もう! 撮るんだったらちゃんと声かけてよね!! あたしだってお気に入りの角度があんだから!」
部員たち「ワハハハハハハハハハ!」
松田「なんだ、お気に入りの角度って?」
竹本「ヒューヒュー、途中で終わんなよ!!」


盛り上がる部員たちを、遥が冷やかに眺めている。

遥「チッ、近頃の若いヤツは……」
二村「残念でしたね、部長」
遥「なにが?」
二村「だって、あいつのこと、狙ってたんでしょ?」
遥「な、何言ってんのよ!!」
二村「だって、結構前からわかっていたんでしょ、志穂ちゃんのこと。それに、一緒に暮らしていることも…… でも、このままだとあいつの身が危ないから、旅行のあと、部長命令でふたりを引き離したんじゃないんですか? それに、志穂ちゃんがケガした時も、看病させずに編集作業しろって近寄らせなかったんですよね?」
遥「ふーん、なかなか面白い推理だけど、まさか誰かにそのこと話してないでしょうね?」
二村「もちろん!! でも、口止め料ってことで…… どうです、ぼくがあいつの代わりっていうの?」
遥「……フラレ女のなぐさめかい?」
二村「これでもぼく、一生懸命部長のこと守ったつもりなんだけどなぁ」
遥「……そうだね……まぁ、考えとくよ」
二村「えぇ、考えておいてください」


部員たちの歓声が飛び交う中、主人公と志穂がキスを交わす──。


The End


ダブルキャスト
Good End 01
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