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ダブルキャストのバッドエンディング (13)


主人公の出会った記憶喪失の少女・赤坂美月。
彼女の本当の名は、赤坂志穂。美月とは志穂の姉の名で、既に死んでいた。
それを看破した主人公と美月が、学校の校舎で……


美月「志穂は私のもの、お前に渡すくらいなら……」

美月が屋上淵の柵に片足をかける。

美月「このまま飛び降りて、私と同じ様にこの世から消してあげる」
主人公「待て! 美月!! いや、志穂ちゃん! 思い出すんだ、君のその人格は姉さんのもので、君のものじゃない!」

その言葉に、険しかった美月の顔が、一瞬ゆるむ。

美月「私じゃない……」
主人公「志穂さん!! 君の意識は姉さんの、美月さんのものに入れ替わってるんだ! ここで飛び降りても、喜ぶのは墓の中の美月さんだけだ! 君の人生を狂わせた美月さんだけなんだ!! 志穂さん、負けちゃいけない! これ以上自分の人生をお姉さんに委ねてはいけないんだ!!」
美月「!?」

柵から足を下ろし、主人公の方へ向き直る美月。

美月「志穂?……あたし志穂なの?」
主人公「そう、君の名前は志穂。美月って言うのは君のお姉さんで、君が思い込んでいただけの名前なんだ……」
美月「私の名前は志穂…… そう、志穂…… だんだん思い出してきたわ……」
主人公「思い出した?」

主人公が美月に歩み寄る。

美月「思い出す……かぁ!!」

主人公目掛けて拳を振り下ろす美月。その手に握られていたヘアピンが、主人公の足を突き刺す。

主人公「ぐぅっ……」

床に落ちている鉄パイプを拾い上げる美月。

美月「バカよねぇ、男なんてちょっと甘い言葉出すとこれだもん。志穂は渡さない。志穂は永遠に私のもの…… 近寄ってくる男は全て…… 殺す!!」


鉄パイプが振り下ろされる──。


とどかぬ思い
Bad End 13



ダブルキャストのバッドエンディング (14)


バッドエンディング(13)の主人公「待て! 美月!! 〜」より続く。

美月「ね、姉さん……?」

しかしまた、険しい顔に変貌する。

美月「うっさいわね!! ぐっ」

頭を抱え、苦しみだす美月。

美月「ギャァァァァァ……」

力が抜けた美月の体が、屋上の縁から落ちる……。
とっさに主人公が駆け寄り、美月の左手をつかむ。

主人公「くっ……」
美月「あたし……」
主人公「いま助ける、頑張って!」
美月「ありがとう……あなたは私を愛してくれた……記憶をなくした……こんな私を愛してくれた……。」

美月の瞳から涙がこぼれる。

美月「……嬉しかった。本当に嬉しかった……」
主人公「美月、そんなこと言うな! 頑張れ!!」
美月「……助けて……ボク……死にたくない……。……まだ死にたくないよぉ……」
主人公「君は死なないよ。大丈夫、僕の撮った映画観るまでは君は死ぬワケないさ」
美月「……そうだよね、まだ映画観てないもんね……もうちょっとで完成するんでしょ……」
主人公「あと少しだよ、完成したら一番最初に美月に見せてあげる」

美月が右手を主人公の方へ伸ばす。

主人公「ほら、片手を伸ばしてこっちに……ぐっ、もう少しだ、そうしたら……」

美月の右手が主人公の手をつかむ。

美月「もう少し……そう……もう少しで志穂ちゃんはあたしのもの!!」
主人公「何!?……」

再び美月の顔が険しく変貌。美月の右手が、主人公の指をほどく。

美月「これで志穂ちゃんは、いつまでもあたしと一緒よ!!」

主人公の指がほどかれる。
美月の顔が、もとの愛らしい顔に戻り、そして──屋上の下の闇の中へと落ちてゆく。


美月「イヤァァァァァァ……」

主人公「み、美月……」


姉妹
Bad End 14



ダブルキャストのバッドエンディング (15)


主人公「殺したいんなら殺せばいい、だけど痛いのはいやだ。それに好きなコに殴られて死ぬっていうのもなんか浮かばれないし……」

屋上の縁に主人公が立ち、美月に背を向ける。

主人公「このまま僕を押してくれ。それが一番君にも僕にも楽な方法だ…… さあ!」
美月「わかった、あなたの思い通りにしてあげるわ……」

主人公に歩み寄って行く美月。

美月「まったく誰もかれも志穂志穂って。あたしの立場はどうなるのよ。で、寄って来る男っていえばロクでもない奴ばっかし! フン! 男なんてみんな同じなのよ。」

主人公の背へ美月の手が伸びる。

美月「サヨナラ……志穂には遠くに行っちゃったって伝えておくわ。それじゃ……」

そのとき、主人公が急に美月のほうを振り向き、美月が伸ばした手をつかむ。

美月「なにする気!!」

主人公が美月もろとも、屋上の下へ。

美月「!!」

2人の体が落ちてゆく……。


二村「やっぱり伝説って、本当だったんですかね」
遥「バカなこと言わないでちょうだい!」

地上。
駆けつけた警察が忙しく動き回っている。

二村「でもこうやって実際目の前で飛び降りが……」
遥「わかってるわよ、だから言ったのよ! 完成するまで恋愛はご法度だって!!」

力なく地面に両手を突く遥。


遥「どうして守れないのよ!! バカ! バカァァァァァ」


終焉
Bad End 15



ダブルキャストのバッドエンディング (16)


主人公と美月が校舎から飛び降りた後──病院のベッドの上。

二村「気がついた……」
遥「よかった…… まったく! あんたは人に心配かけさせるのだけは天才的ね」
二村「運が強いところも、ですね」
遥「そうね……でも本当によかった……」

主人公と美月は、遥と二村が咄嗟に用意したマットで受け止められていたのだ。

二村「あの時……ギリギリ間にあったけど、一歩間違えたら今頃ぼく、葬式で黒いスーツ着るコトになってたかもしれなかったんだよ。まったく、こっちの寿命が縮んだよ」
遥「まあ、アイディアはよかったんだけど、もう二度としてほしくないわ」

二村「おい、生きてるだけでもめっけもんだな、なんとか言えよ」

主人公「あの……あなたたち誰ですか?」
遥「え!? なんですって?」
主人公「……それに僕、なんでこんな所に……」
遥「なにふざけてんのよ! しっかりしなさい!」
主人公「僕は誰?……わからない……」

二村が、思わず顔をそむける。


主人公「何も覚えていない……思い出せない…… 僕は誰? ここは……どこ……そして君は、いったい誰?」

その脳裏に美月の顔が浮かび、そして笑い声が響き渡る──。


記憶
Bad End 16
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