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テイルズオブシンフォニア−ラタトスクの騎士−(トゥルーエンディング)




エミルはラタトスク−もうひとりの自分−に深々と剣を突きつけた。刺し貫く感触がエミルの腕に伝わってくる。
ラタトスク「この俺が、まけるとはな・・・・」
エミル「ありがとう。きみが僕でよかった」



ふたりは向き合って立っている。

ラタトスク「・・・・・まいったな。おまえみたいなひ弱な坊やは俺じゃないっいてずっと思ってたのに」

ラタトスクはため息をした。

エミル「今度の旅が、僕たちを変えたんだよ。僕はきみの強さが必要なんだって気づいて・・・・」
ラタトスク「俺はおまえの優しさがただの弱さじゃないって気づいた・・・・か」
ふっ、とラタトスクは笑う。
ラタトスク「仕方ねぇ、受け入れてやるさ。おまえのなけなしの『勇気』に免じてな」







エミル「・・・・・僕も、ラタトスクを信じる。だってきみは僕だから」

エミルは目を開いてマルタからセンチュリオン・アクアのコアを受け取る。彼はそれを高くあげ孵化させた。
エミルが光につつまれた。光が消えたとき、そこには赤い瞳をしたエミル−ラタトスクがいた。
マルタはそのことに気づいた。

マルタ「エミル・・・・・。ううん、ラタトスク?」

マルタが見つめると、

ラタトスク「・・・・・そんな顔をするな。ヒトを滅ぼすってのは取り消すよ」

仲間たちがほっと胸を撫で下ろす。

ラタトスク「・・・・・だが、このままじゃ扉を守りきれない」

ロイド「どういうことだ」

ロイドが訊ねる。

「俺以外の存在が強引に扉を開けたために、古の封印が狂ってしまった」

リヒター「・・・・・フ・・・・・俺のせいか・・・・」
リヒターは苦笑し、
リヒター「ならばやはり俺自身が封魔の魂魄となって・・・・」
と言いかける。
すると

ラタトスク「おまえにそういう気持ちがあるなら、俺も力を貸そう」

リヒター「・・・・・何・・・・・」
リヒターは視線をあげた。

ラタトスク「リヒターが人柱として扉を守る間に世界の理を変える。そうすればリヒターも少しは苦しまずにすむ」

マルタ「新たな理?それは・・・・・」
マルタが首を傾げる。

ラタトスク「元々この世界にはマナが存在していなかった」
ラタトスクは続けた。
ラタトスク「彗星デリス・カーラーンの恵みと俺−大樹カーラーンが移されたことでマナが命の源となったのだ。
      だから、世界を構成するものからマナを取り上げ、それをこのギンヌンガ・ガップの封印とする」

そのときジーニアスが驚いて口を開いた。
ジーニアス「そ、そんなことをしたら大地が滅びるよ」

ラタトスク「滅びない。そのように理を引く。時間はかかるがな・・・・。」
とジーニアスの言葉をラタトスクは否定する。

ラタトスク「この地に根付く全ての命がマナを必要としなくなるだろう。ヒトもエルフも大地も、何もかも」

するとしいなが、
しいな「精霊も?」
と訊ねた。

ラタトスク「それは無理だ。精霊はマナによっていかされている。我ら精霊は本来この世界の住人ではないからな」

マルタ「それじゃあマナがなくなったら困るじゃない」
マルタがいうと、ラタトスクは首を振る。

ラタトスク「世界を構成するものからマナが消えるだけで、マナは世界に残る。新たな世界樹がマナを生み続ける限り、
      マナは世界にあふれ、世界を巡って扉の封印に注がれつづける」

彼はちょっと扉を振り返った。
ラタトスク「俺はその流れを操り、見守ろう。もうひとりの樹の精霊として、このギンヌンガ・ガップでな」

ゼロス「俺たちの世界は何か変わるのか」
ゼロスが訊いた。

ラタトスク「マナの庇護から切り離されたことで、必ず滅びを迎える世界となる]

プレセア「必ず、滅ぶ・・・・」
プレセアがラタトスクの言葉を繰り返した。

ラタトスク「そう。大地の寿命が来れば滅ぶ。何百億、いや、何千億年以上も先のことだろうがな。
      だがそれも、この大地があるべき姿に戻っただけだ。大樹カーラーンが移される前のな」

マルタ「じゃあ、エミルも・・・・・あるべき姿に戻ったの?」

ラタトスク「・・・・・マルタ・・・・。ああ、そうだな。俺はエミルでもあり、ラタトスクでもある。
      これが正しい姿なのかもな」

マルタ「私たちのこと、ちゃんと覚えてるんだね」

ラタトスク「・・・・・もちろんだ。おまえたちと旅した時間は・・・・・ムダじゃなかった・・・・」
      ・・・・・人間も、案外悪くない」
と、ラタトスクは目を閉じた。

マルタ「ラタトスク・・・・・」

マルタの額に埋まっていた偽のラタトスク・コアが、光となって散る。
それはエミルが命をかけて守ろうとしていた輝きだった。




ラタトスク「さあ、行け。二度と人類が扉に触れぬよう、ここを封じる」

まず先にゼロスが歩き出した。

ゼロス「じゃあな、エミル。妹を助けてくれてありがとよ」
と、軽く背中をたたいて出ていった。

しいな「あんたのこと、忘れないよ。元気でね、エミル」
次はしいなだった。ラタトスクと頷き合い、片手を上げて去って行った。

リーガル「君と旅ができたこと、私は誇りに思う」
と、ラタトスクに握手を求め、去って行った。

プレセア「あなたは、ひとりじゃないから」
彼女はそう告げて、通路の隅に木彫りのクマを置いて、出て行った。

リフィル「あなたみたいな生徒、受け持ってみたかったわ」
ジーニアス「精霊の友達ができたなんて、すごい自慢だよ。僕のこと、忘れないでね」
と告げ、ふたりの姉弟は去って行った。

コレット「あなたが生かしてくれた世界、わたしたちが守り続けるからね」
コレットも去って行った。

ロイド「エミル・・・・・。また会えるって信じてる。だからさよならはいわないぜ」

肩を叩かれて、ラタトスクは軽く頷いた。そして、ロイドも去って行った。


ひとり残ったマルタは肩を落とし、うつむいている。

マルタ「キミは・・・・・ずっと生きるんだよね。ここを封印しても、ずっと・・・・・」

ラタトスク「そうだ・・・・・」


そしてマルタが歩きはじめた。
ラタトスクの前まで来ると足を止め、

マルタ「私もさよならは言わないから。私とエミルの心はずっと一緒だから・・・・・」
と、言って再び歩き出す。

そして出口の前でまた足を止め、ラタトスクに振り返り、

マルタ「エミル、ずっと大好きだよ・・・・・」
と告げた。

ラタトスクもまたマルタに振り返り、

ラタトスク「僕も大好きだよ、マルタ」
といった。

その瞳が緑色に輝いているのをマルタは見落とさなかった。

再び歩き出すマルタの背後で、永遠の別れを告げる扉の音が響き渡った。−−−−















リヒター「・・・・・・儀式は終わったのか」

ラタトスク「ああ・・・・・。これでおまえはこの部屋から出ることはできなくなった」

リヒター「・・・・・永遠の地獄、か。魔族に魂を売って世界を破滅させようとした男の末路にはふさわしいな」
と、リヒターは言った。

リヒター「じゃあ、さっそく人柱になるとするか。神子の輝石なしでどこまで体がもつかわからないが」

ラタトスク「千年だ」

リヒターが振り返った。

ラタトスク「全ての命あるものからマナを切り離すのに千年かかる。千年が過ぎ、マナで世界を支える必要がなくなれば、
      余ったマナで新たな封印を構成できる」
ラタトスクは目を開いた。

ラタトスク「そのときには、おまえを解放してやる」
と約束する。



リヒター「ならば俺も言わせてもらおう。おまえはコアと実体とに分かれることができる。しばしの間、
     エミルとラタトスクに分離して暮らすことはできないのか・・・・。
     必要なら、俺の体を宿り木にしてもいい」

ラタトスク「無理だ。マナを切り離す作業がある」
とそのとき。

テネブラエ −−−−−それはあなたの命令で我らセンチュリオンと魔物たちが行うこと。
           連絡さえ取ることができるなら、ふたつに分かれていようと問題はないでしょう。
と、テネブラエの声が響いた。

アクア −−−−−ラタトスクさま。人間の一生なんてアタシたちに比べたら一瞬でしかないでしょう?
と、次はアクアの声が響いてきた。

ラタトスク「オレは・・・・ひとりの人間を殺した。それが今回の事態を招き、さらに多くの犠牲を生んだ。
      そんな虫のいい話は・・・・・」

リヒター「だがエミルは・・・・・・もうひとりのおまえは、アステルの死を悼み、自分の意志ではなかったのに
     罪を償おうとしてくれた・・・・・。俺はそんなエミルに、人間として一生を全うしてもらいたい」

ラタトスク「・・・・・リヒター・・・・・・さん・・・・・」
ラタトスクがエミルとして呟いた。

ヴェリウス −−−−−ラタトスク。
そのとき心の精霊ヴェリウスの声が響いた。

ヴェリウス −−−−−あなたの心の一部が告げています。自分が殺めてしまったアステルの分を生きろ、と。
           私はその心に従いましょう。

リヒター「アステルも・・・・・あの馬鹿なお人好しも喜ぶだろう」
リヒターが微笑んだ。すると彼の額が赤く輝きだした。

ラタトスク「・・・・・ありがとう・・・・・」
と、ラタトスクが告げる。そして彼の体が光り輝いた。


        

       スタッフロール




   エピローグ 






マルタはパルマコスタに来ていた。

マルタ(・・・・・エミル。見てて。私、パパとは違うやり方で、
    テセアラの人たちにシルヴァラントのことを認めてもらう。
    エミルが守る世界を平和にしてみせる。それが、
    私の罪を償うことにもなると思うから・・・・・)

そのとき、足音がした。マルタが振り向くとそこには少し照れて頭を掻いているエミルの姿があった。

マルタ「うそ・・・・・!」
そしてマルタは彼に駆け寄った。

マルタ「エミル・・・・・・!」

マルタは彼に抱きついた。
そして彼もマルタをしっかりと抱きしめた。

そしてふたりは見つめあった。


                 Fin(完)





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