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(最初に)
「三國志孔明伝」はWin、PS、SS、GBAと出ていますがGBA版を準拠としたテキストにしています。

(ラストに至るまでのあらすじ)
史実に反し、孔明が五丈原で病没しなかった(4章3幕の「五丈原の戦い」にて孔明の「寿命」が残っていた場合のエンディングを。
その後、司馬懿を敗走させた孔明は長安を目指し進撃する。
しかし蜀軍の快進撃に危機感を覚えた呉軍は司馬懿の策にかかり、同盟を破棄して巴西へと侵攻して来る。そのため孔明はやむなく撤退することとなるが、孔明の息子・諸葛瞻達が巴西を守り呉軍を食い止めていた。また南蛮王孟獲たちも参戦し、呉軍を押し戻すこととなる。
その後孫権とは和睦し、再び強固な同盟を締結した上で長安を攻めることとなり、やっと長安を陥落させる。
一方魏では、曹叡の死後実権を握っていた曹爽(曹真の息子)兄弟をクーデターで処刑して軍の実権を握った司馬懿が孔明を迎え撃つ。
そして、いよいよ洛陽での決戦。曹丕に帝位を奪われた山陽公・劉協(献帝)を助け出し、洛陽の深部へと進撃していく孔明たち。
司馬懿父子及び魏の宿将たちとの死闘の果て、ついに孔明は勝利を収め、洛陽の宮殿に入ることとなった。

(本文)
 終章三幕「洛陽の戦い弐」で勝利した後。
 洛陽の宮殿に入る事となった孔明達。しかしそこでは魏の廷臣たちが倒れていた。
諸葛瞻「こ、これは!」
姜維「ま、まさか…」
孔明「…何ということだ」
 姜維が魏の廷臣の1人の遺体に駆け寄る。
姜維「……だめだ。全員、毒を呑んでいるようです」
 姜維が高貴な子供の遺体に駆け寄る。
姜維「この服は皇帝の……では……この子供が、曹芳(曹操の曾孫)…?」
孔明「……むごいことだ」
姜維「これは……?」
 姜維が孔明の元に戻ってくる。
姜維「丞相、これを…」
孔明「遺書…?…私宛てにか?」

 これまで魏が行った罪は全て
 朕と朕の祖先によるものである
 漢の丞相諸葛孔明殿よ
 生き残った魏の将兵や民には
 どうか寛大な処置をお願いする

      大魏皇帝 曹芳

孔明「…名君の器だったようだな。今はただ、彼らの冥福を祈ろう。彼らは、司馬懿に踊らされた犠牲者だ。彼らには罪はない」
諸葛瞻「……はい」
孔明「姜維、そなたは彼らを手厚く弔ってくれ」
姜維「……はっ」
孔明「瞻は、成都に使者を送ってくれ。劉禅様に、洛陽まで来ていただく必要がある」
諸葛瞻「はっ」
 諸葛瞻、去っていく。

 成都の街中。諸葛瞻の帰還を街の人々が出迎える。
男の子「あっ!諸葛瞻様のお帰りだ!」
民「諸葛瞻様、ばんざーい!」
老女「孔明様、ばんざーい!」
商人「劉禅陛下、ばんざーい!」
諸葛瞻「皆…ありがとう。丞相もきっと喜んでいることだろう」
 黄月英(孔明の妻)が諸葛瞻の元に駆け寄ってくる。
黄月英「瞻!!」
諸葛瞻「母上!」
黄月英「瞻……生きて帰ってきてくれて……よかった……よかった……」
諸葛瞻「は、母上……さあ、もう泣かないで」
黄月英「そうね……泣いていたら、洛陽の父上に笑われるわね」
諸葛瞻「そうだ。母上も洛陽にいらっしゃいませんか?」
黄月英「えっ?」
諸葛瞻「これからは、漢の首都は洛陽に戻ります。父上も、おそらくは洛陽で働くことになるでしょう」
黄月英「そうね……」
諸葛瞻「私はどうなるかわかりませんが、やはり父上の側で働きたいです。ぜひ母上も洛陽にいらしてください」
黄月英「そうね、そうするわ」
諸葛瞻「ぜひ、そうして下さい。では、私は宮殿に行かねばなりませんので」
黄月英「はい、行ってらっしゃい」
諸葛瞻「母上、失礼いたします」
 諸葛瞻、去っていく。
黄月英「瞻………立派になったわね」

 成都の宮殿にて。
諸葛瞻「陛下、ただいま戻りました」
劉禅「おお、諸葛瞻か!もうすでに報告は受け取った。ご苦労だったな!」
諸葛瞻「ありがとうございます、陛下。丞相が、洛陽にお越し下さいとのことでございます」
劉禅「そうか、わかった。準備はできている、すぐに向かおう」
諸葛瞻「はい。それでは参りましょう」
 諸葛瞻と劉禅、ともに去っていく。

 洛陽の宮殿にて。蜀の武将たちが一堂に集う。
姜維「丞相、ついに悲願を果たされましたね」
孔明「うむ…長かった。幾多の苦難があったが…この日を迎えることで報われた気がする」
趙雲「劉備様…あなたの夢は今現実になります。漢室の再興という、壮大な夢が…」
孔明「陛下が見えられたぞ。一同、礼!」
孟獲「れ、礼?は、ははっ」
 蒋エン(漢字が出ずに申し訳ない)に伴われ、献帝が入ってくる。
蒋エン「さあ、陛下。こちらでございます」
献帝「本当に…本当にここに戻ってきたのか。朕は…夢を見ているのではないか?」
蒋エン「陛下、これはまぎれもなき現実にございます。さあ、玉座までお進みください」
献帝「う、うむ」
 献帝、玉座に座り、
献帝「夢のようだ……またこの場に来ることができるとは。そうじゃ……孔明と申す者はおるか?」
 孔明、前に出てくる。
献帝「そなたか……そなたが、朕をまたここに戻してくれたのだな。蒋エンに全て聞いた。この日が来るのを何度も夢見た。孔明、ありがとう。れ、礼を申す…ううっ…」
孔明「陛下、どうかお顔をお上げ下さい。我らは、漢中王の遺命を受けて働いただけでございます」
献帝「漢中王……劉備か……そうだな、彼のおかげだ。劉備、ありがとう。そなたの忠義は、この劉協、死ぬまで忘れることはないだろう」
孔明「陛下、これからはまた漢の皇帝として、我らにお命じ下さい。漢朝の再興のため、我らは働きます」
献帝「ありがとう。孔明……、そして皆、よろしく頼むぞ」
孔明「ははっ」
 そこに諸葛瑾(孔明の兄で呉の家臣)が入ってくる。
諸葛瑾「陛下、失礼いたします」
孔明「……その声は!兄上!」
諸葛瑾「…………」
 諸葛瑾、献帝の前に拝謁し、
諸葛瑾「陛下。呉の使者として参った諸葛瑾と申します。我が主孫権の書状を持参いたしました」
献帝「確か、江東の孫氏だったな…して、用件は?」
諸葛瑾「はい。我が主孫権、および呉の民はもともとは全員が漢朝の臣下、漢室再興が成った今、呉の者は全員陛下に臣従いたします。かつて曹丕から受けた王位、そして自称していた帝位は返上いたします。そのことをお伝えに参りました」
献帝「そうか、ご苦労であった。孫権に伝えてくれ。かつて、曹丕が与えていた呉王の位はそのまま朕も認めるとする」
諸葛瑾「…な、何と!王位を返上せずともよいと!?」
献帝「うむ、漢の重臣として、漢朝再興のために力を尽くしてくれと伝えよ」
諸葛瑾「ははっ、もったいないお言葉にございます。では、失礼いたします」
 諸葛瑾、去っていく。
孔明「…兄を見送りたいのですが、よろしいでしょうか?」
献帝「おお、彼はそなたの兄だったのか。遠慮は無用だ、はやく行くがよい」
孔明「ははっ、ありがとうございます」
 孔明、去っていく。

 洛陽の河原。諸葛瑾が佇んでいる。
孔明「兄上っ!」
諸葛瑾「孔明……」
孔明「兄上、お見送りに参りました」
諸葛瑾「孔明、そなたのような弟がいることを、私は生涯、誇りに思うぞ。呉王への報告を急がねばならぬのでな。もうこれで、洛陽を出発する」
孔明「そうですか。……道中、お気をつけて」
諸葛瑾「うむ」
 諸葛瑾、去り際に、
諸葛瑾「孔明……よくやった」
孔明「兄上…」
諸葛瑾「孔明…さらばだ。また、会う日もあろう」
 諸葛瑾、去っていく。
孔明「…………長い、道のりだった………」
 そこに黄月英と諸葛瞻がやってくる。
黄月英「あなた!」
 黄月英、孔明に駆け寄る。
黄月英「よかった…本当に…よかった…」
孔明「こ、これ、どうした、どうして泣く」
黄月英「よかった……」
 諸葛瞻も孔明の元に駆け寄る。
諸葛瞻「父上、母上を洛陽にお連れしました」
孔明「そうか、そなたが連れてきたのか」
諸葛瞻「はい」
孔明「そうか…すまぬな」
 そこに姜維がやってくる。
姜維「丞相、陛下…いえ、劉禅様が洛陽に到着されました」
孔明「わかった。すぐに宮殿に向かう。ほら、もう泣くな」
黄月英「はい…」

 洛陽の宮殿にて。劉禅と孔明が入ってくる。
劉禅「劉備の子劉禅でございます。本日は、漢の帝位をお返しに参りました」
献帝「帝位を……そうか…。曹丕の簒奪後、皇叔が仮に帝位についたと聞いた…」
劉禅「はい。今日まで帝位をお借りしていたことをお詫び申し上げます」
献帝「いや、そなたの父のおかげで漢朝の再興がなされたのだ。朕が礼を言わねばならぬ」
劉禅「もったいないお言葉でございます。父も天上で喜んでいることでしょう」
献帝「そなたの父…劉備に救いを求めたのは、もう昔のことだ。その息子が朕を助けてくれるとは正直、思いもしなかった。劉備……、今も、どこかで見ているのかもしれぬな」
孔明「………」
献帝「劉禅。賢臣を率いて漢朝再興を成し遂げた功績と、そなたの父の忠心をたたえ…そなたを漢中王に任ずる。そなたは、今まで通りに蜀と漢中の統治を行ってくれ」
劉禅「ははっ」
献帝「それと……、孔明」
孔明「はっ」
献帝「そなたは、蜀漢の丞相だったな」
孔明「はい」
献帝「そなたには、この漢の丞相の位を与える。これからは蜀一州だけでなく、漢の国事を取り仕切ってくれ」
孔明「えっ!し、しかし…」
献帝「これは、朕だけの希望ではない。皆がそう思っているはずだ」
馬岱「はい。その通りでございます」
魏延「まったく異存はございません」
趙雲「きっと万民も、孔明様の治世を期待しているはずです」
孟獲「我ら南蛮の民も、孔明様の統治を望んでおります」
孔明「…………」
姜維「丞相。これからも漢の丞相として我らをご指導下さいませ」
孔明「…………」
献帝「孔明……そなたはかつて、南陽で晴耕雨読の生活をしていたと聞いている。そして劉備がそなたを、三顧の礼で迎えたということもな」
孔明「…………」
献帝「そなたのことだ、漢朝の再興成った今……そういう生活にまた戻りたいというのは当然のことだろう。しかし、これは朕の頼みだ。戦乱のために苦しんだ民を、そして、朕を助けて欲しい」
孔明「もったいないお言葉にございます。この老体が役立つとあらば…漢朝のために我が一生を捧げましょう。謹んで丞相の職、お受けいたします」
諸葛瞻「父上!おめでとうございます!」

 三國はついに統一された
 もとの蜀漢は漢朝再興後、漢中王国となった
 劉禅を王として、その農産力を背景にして国を富ませ、民を慰撫していった
 呉の孫権も呉王の位を認められ、漢朝の臣下として重要な地位を占めた
 魏は滅びた。しかし、滅びたのは国家としてであり、曹氏一族にも寛大な処置がなされ、魏に仕えていた文官・武官の多くは新生漢朝の官僚・将兵として登用されたのである
 こうして河南・河北は戦乱の地と化すことなく平定された
 蜀漢の旗のもと奮戦してきた将兵たちには、各々地位と恩賞が与えられ、新生漢朝を支える一翼を担ったのである
 そして、孔明は漢の丞相として漢朝の政のすべてを司った
 彼の治世の素晴らしさは、もはや語る必要もあるまい…
 天下統一から五年後、孔明は丞相の位を返上して隠遁生活に入った
 その後、南陽で仙人然とした孔明を見た、故郷の瑯邪で隠棲している等の噂が流れたが、孔明の行方は杳として知れず、天才軍師諸葛孔明の伝説だけが残ったのである

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