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新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンドのエンディング (マナ編1)


マナで悩み続けていたらダメになってしまいそうだ……
いままで山を探したんだから、今度は海だ……


海へ向かう急行電車の客席に、シンジの姿。


始めて乗る電車だ
なんかドキドキする
知らない風景、知らない駅名、
初めて食べた立ち食いそば

急行の中では皆が旅人に見える


車掌らしき服装の男が歩いてくる。

男「碇シンジ君だね」
シンジ「……人違いです」
男「私はネルフ本部のものです」
シンジ「知りません、さよなら」
男「こら、待ちなさい!」


海。

港で酒盛りをしている漁師たちに、シンジが声をかける。

シンジ「すみません! すみません!」
漁師「なんだ? 坊や」
シンジ「漁師さんですか?」
漁師「そうだ、なんだ漁師志望か? 海の男にアルバイトはいらないんだけどな」
シンジ「いえ、あの、網で魚を獲るんですよね」
漁師「なんだ ハッキリいってくれなきゃこまるよ!」
シンジ「あの、救命カプセルが網にかかりませんでしたでしょうか!」
漁師「ああ、あの女の子が入ってたやつか」
シンジ「見つけたんですか!」
漁師「最初、爆弾だと思って大騒ぎになったんだけどな 開けてみたら女の子だったよ、今そこの病院に入ってる」


霧島マナが入院されている病院で、シンジとマナは遂に再会を遂げる。

シンジ「マナ……」
マナ「シンジくん!」
シンジ「逢いたかった」
マナ「来てくれたのね、ありがとう」
シンジ「彼は?」
マナ「だめだった……」
シンジ「マナ、気をしっかり持って」
マナ「シンジくんここにいてはダメ、もうすぐ恐い人たちが来るから」
シンジ「マナ、ここから逃げよう!」
マナ「迷惑がかかるわ」
シンジ「マナを助けたい」
マナ「シンジくん」


シンジはミサトに電話をかける。

シンジ「マナを助けたいんです」
ミサト「生きていたのね」
シンジ「病院からさらってきました」
ミサト「やるじゃない、うちに連れてきなさいよ、協力するわ」
シンジ「父さんには内緒にして下さい」
ミサト「そのつもりよ」


ミサトの家。

シンジ「まだ、誰もいないや」
マナ「シンジくん、シャワー借りてもいい?」
シンジ「え? ああ、いいよ」
マナ「この乾燥機、すぐ乾く?」
シンジ「洗濯するの?」
マナ「服、汚れてるし全部洗いたいの」
シンジ「いいよ」
マナ「シンジくんのバスタオル貸して」
シンジ「ちょっとまってて」
マナ「こっち、見ないでよ」
シンジ「う、うん」
マナ「この洗濯機わかんないや」
シンジ「全部入れておいてくれてば、僕がやるよ」
マナ「汚いから、中身見ないでよ」
シンジ「見ないよ」
マナ「絶対よ」
シンジ「絶対見ない」


洗濯を始めるシンジ。
浴室から鼻歌が漏れてくる。

やがて、浴室からバスタオルを体に巻いたマナが姿を現す。

マナ「じゃーん」
シンジ「……シャワーどうだった?」
マナ「生きるって素晴らしいって感じ」
シンジ「顔色よくなったね……」
マナ「うん、ゆでたてだもん」
シンジ「タオル、とれそうだよ」
マナ「見たい?」
シンジ「え……」
マナ「へ・へ・へ・へ……」
シンジ「……」
マナ「……」
シンジ「その…… 無傷でゆかったね」
マナ「確かめてみる?」

バスタオルをまくり、マナが悪戯っぽく笑う。


やがてミサト、アスカ、レイを加えて食事となる。

アスカ「あの爆発から、生きて帰ったなんて、奇跡ね」
マナ「みなさんには、ご迷惑をおかけしました」
ミサト「ここに霧島さんがいることは絶対秘密だからね、みんな誰にも言ってはだめよ」
シンジ「これからどうしようか加持さんと相談しようかと思ってます」
ミサト「あいつかぁ」
シンジ「あのひとなら味方になってくれそうな気がするし……」
アスカ「なぁに? アタシ達が味方してない、みたいな言い方ね」
ミサト「まあまあ、加持くん暇そうだからいいんじゃない?」

玄関チャイムが鳴り、加持が現れる。

加持「暇じゃないけど、退屈はしてるってところだ」
アスカ「加持さん♪」
加持「厳しいことを言わせてもらえれば、病院から抜け出したのは問題だな」
シンジ「連れ出さなければ抹殺されていたかもしれないんです」
加持「向こうにしてみれば、シンジ君が暗殺者のようなもんだろう」
シンジ「じゃあ、マナを助けるにはどうすればいいんですか!」
加持「霧島マナを殺すのさ」
アスカ「さっすが加持さん♪ 過激ぃー!」
ミサト「冗談やめてよ!」
シンジ「殺すって……」
加持「名前を変えて別の人間として生きるのさ 軍の名簿と日本政府の戸籍簿から『霧島マナ』の名前を消す コンピューターだから一秒もかからないんだな、これが」
マナ「父さんや母さんは、どうなるんですか?」
加持「残念だけれど、他人になる これが屋根裏にもれず、生き延びる為の唯一の方法なんだ」
シンジ「マナは助かるんですね」
加持「ただし、彼女と逢えるのもこれが最後になる 消えた人間がこの街をうろつくわけにいかないだろう?」
マナ「シンジ……」
シンジ「……」


ベランダで外を見つめるシンジとマナ。

マナ「誰も知らない遠くの町か……」
シンジ「日本の地名なんか全部、地図に書いてあるよ」
マナ「私ね、ひとりで生きてく」
シンジ「……」
マナ「病院で思い切り泣いたらすっきりしちゃった」
シンジ「あの、彼のために……泣いたんだね」
マナ「……そうかもね」
シンジ「マナ」
マナ「ん?」
シンジ「ひとりぼっちはマナだけじゃないよ」
マナ「シンジ……」
シンジ「それに、ひとりってそんなに悪いもんでもないし ひとりだったからマナと二人になれたんだ いいこともあるんだよ」
マナ「ありがとう シンジ……」


駅。

マナが電車に乗り込む。

マナ「さよなら」
シンジ「……」

発車のベルが鳴る。


シンジが見送る中、マナを乗せた電車が次第に駅から遠ざかってゆく──


(終)
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