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最終電車のエンディング (冥界封印編 破滅の章)


【解説】
主人公・石岡哲也の乗った最終電車の車内で、次々に起こる奇怪な超常現象。
超自然を一切信じようとしない石岡だが、自分たちに襲い掛かる怪物たちに、ようやく真実を悟る。
彼は他の乗客たちを見捨て、車外へ飛び出した……。


地下トンネル


目の前を猛スピードで、列車が横切っていく。
窓から、飛び出してしまったのだ。
地下トンネルの壁に叩きつけられ、それでも僕は生きていた。

通り過ぎていくいくつもの窓。
そのうちの一つから、小さな顔が僕を見下ろしているのが、ちらり、と見えた。
少年の顔。
何といったっけ……。
そうだ……智道だ。

彼は正しかった。
彼が正しかった事を、僕は知った。
けれど、もう遅い。
僕は逃げだしてしまった。
逃げようと思ったわけではないけれど、でも、逃げだしてしまったんだ。

薫は、動く死体たちに喰われて死んだ。
美由紀も、同じ運命だろう。
そして、たぶんあの眼鏡の男も、そして智道も。
僕だけが生き残った。
僕だけが、一人で生き残ってしまった。
暗いトンネルの中、湿った壁に背をあずけて、僕は遠ざかっていく車両の最後尾を見送った。

やがて、その窓の明かりが暗闇の中へ消える瞬間、遠く、警笛が鳴る。
誰が鳴らしてるんだろう。
誰が、あの警笛を鳴らしているんだろう……。
闇に包まれた地下の空洞の中に座って、かすかに響く警笛のエコーと、そして遠くなっていくレールの振動音を聞きながら、僕はそんなことを考えていた。


冥界封印編 破滅の章
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