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最終電車のエンディング (冥界封印編 埋葬の章)


【解説】
主人公・石岡哲也の乗った最終電車が、謎の大音響と共に土砂に埋もれてしまった。
石岡は乗客たちと協力して即席の時限爆弾を作り、車体を爆破して脱出した……。


地下トンネル


僕らを迎えたのは、冷えた、けれど新鮮な空気だった。
湿っぽく、泥臭いが、それでも僕らはその空気は肺いっぱいに吸い込んだ。
2号車の前半分と、そして1号車は、爆発で完全に吹き飛んでいた。
その向こうに、地下トンネルがあった。

「計算どおりだな。え、おい」
御堂のごつい手に、髪の毛をくしゃくしゃとかき回れ、智道は、えへへ、と笑う。
僕らは車両を降り、瓦礫の山を乗り越えそして今、地下トンネルを歩いている。
遠く、大勢の人の声が聞こえる。
駅員か、それとも救助隊だろう。
暗い地下鉄の線路の向こうに、ぼんやりと駅の明かりが見えた。

帰って来たんだ。
もとの世界へ。
僕は、壊れた電車を振り返った。
僕が……僕らが体験した恐怖の、その正体が何だったのか、わからない。
御堂の言うように超常現象だったのか。
それとも単なる事故だったのか。
たった一つの確かな事は、僕らがそれを体験した、という事実だ。
僕らは確かに、そこにいたのだ。

謎は残った。
でも、僕らは今、そこから生きて脱出してきたのだ。
少なくとも今のところ、重要な事はそれだけだ。
「お兄ちゃん! 行くよ!」
智道の、げんきんなまでに元気な声が、地下トンネルにエコーした。

そうだ。
行こう。
帰ろう。
家へ。


冥界封印編 埋葬の章
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