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最終電車のエンディング (冥界封印編 離脱の章)


【解説】
主人公・石岡哲也の乗った最終電車が、駅に停車せずに暴走を始めた。
車内で次々に起こる奇怪な超常現象。
石岡は乗客たちと協力し、車内設備を使って即席の脱出装置を作り、車外へ脱出した……。


地下トンネル


その後の事は、よく覚えていない。
たぶん、ジャンプして来る僕を御堂が受け止め、さらにロープを切ったのだろう。
おぼえているのは、サスペンションの壊れた自動車に乗せられたような、首の骨がイカれそうな上下の振動だけだ。

それが収まった時、僕らは暗い地下トンネルの中にいた。
引きはがされた電車のシートに、しがみついた姿勢で。
シートの下のレールは、しばらく規則正しい振動を伝えていたが、それもやがて消えていった。
列車は、去ってしまった。

両手が、見えない粘液でヌルヌルする。
「やぁれ、終わった終わった」
御堂だった。
トンネルの壁にもたれて、大きく伸びをする。
その隣に智道が、そして美由紀が、同じように背をあずけた。
僕は立ち上がり、列車の去った暗いトンネルの奥を見ていた。
あの列車は、どこへ行くのだろう。

僕らは、いったい何を体験したのだろう。
全ては謎だ。
ひょっとしたら、その謎は永久に解かれることはないのかもしれない。
それでもいい、と僕は思った。
今、考えなければならないのは、ここがどこか、という事。
そして、どうやって家へ帰るか、という事。

それ以外の事は、全て明日だ。
そう。
僕らには、明日があるんだから。


冥界封印編 離脱の章
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