神田院長が屋上から転落した。 直ちに手術かが行なわれ、僕を含めた外科病棟のスタッフが懸命に治療にあたったが、翌朝、静かに息を引き取った…… 神田院長の机からは、彼の供述通り筒井弁護士の古い日記が発見された。 その日記から、11年前何者かが青沼佐知子氏のカルテを彼に送りつけていたことが分かった。 神田院長と僕の父は、そのカルテを盗みに筒井家に忍び入り、あの惨事へと発展したらしい。 残された疑問が二つある。 一つは、病院側が必死になって隠した青沼氏のカルテを、誰が何のために、わざわざ筒井弁護士に送りつけたのか……? そして、もう一つは、なぜ僕の父が、院長とグルになって、筒井家にカルテを盗みに入らなければならなかったか……だ。 一つ目の疑問は、どうやら宙に浮いたままらしい。 どのみち、その犯人が分かったところで、それは刑事事件として扱うほどのことではないらしく警察も軽視している。 二つ目の僕の疑問は、二階堂刑事が知っているようだ。 今日彼に会い、全てのいきさつを聞くことになっている。 一体何が、父さんをあんな行動に走らせたのか? もうすぐ全てが分かる。 |
僕は壊れたマリア像を手提げ袋に入れた。 わざわざ、神父さんがフランスから持ってきたものだ。壊れているからといって、僕にはどうしても捨てることはできない。 このマリア像の処分は神父さんにゆだねよう。 |