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マ イ ネ リ ー ベ
優美なる記憶


◆◇◆ アイザック ◆◇◆
(CV 子安武人)
グッドエンディング



プレイヤーの名前は 「チョコ」 愛称は 「ミント」 を使用。


■□■□■ 1937年7月24日 ■□■□■

卒業式



(今日は、とうとう卒業式。
卒業かー。
2年間色々あったけど、
今日で終わりなのねー。)
2年間の思い出を胸に
寮の自室を出るチョコ。


- 講堂 -

校長先生は、
相変わらずの金髪たて巻きカールにヒゲ…。
「皆さんと過ごした2年間は、
とてもファンタジックなひと時でした。
私は皆さんを忘れたりはしない。
それはまるで、永遠のララバイ…」
校長先生の自分に酔いしれた挨拶はじめ、
卒業式典は、無事終了。


- 講堂ロビー -

「びえ〜!!卒業いや〜ん!」
泣きじゃくるマリーン。
「みんなとお別れしなきゃいけないなんてイヤよ。」
ヴェルヘルミーネも、ハンカチで涙を拭う。
「いつでも会えるわ。」
2人の肩をそっと抱き、
そうなぐさめる冷静なオーガスタ。
「卒業しても、みんな友達よネ。」
「また夏には、家に遊びに来てね。」
確かめるように尋ねたヴェルヘルミーネに、
オーガスタは微笑んだ。
去年の夏、オーガスタの別荘で過ごした日々が、
チョコの心によみがえる…。
「みんな、みんな、一生親友でいようネ!」
マリーンの言葉に、うつむくみんな。


- 校門 -

「ほら、いつまでも泣いてると、
卒業パーティーに目を腫らしたまま
行くことになるわよ。」
オーガスタのこの一言で、みんなの様子が一変。
「えっ!…それもそうね。」
笑顔に戻るヴェルヘルミーネ。
「大変!早く帰って仕度しなきゃ。」
マリーンも、さっきまで幼子のように泣いていたのがうそのように、
お気に入りのウサギのぬいぐるみを振り回しながら
自分の部屋へ走って行った。
チョコも、微笑んでオーガスタにうなづいてみせた。
「そうね、急ごう!
だって、あのお城での最初で最後のパーティーだもん。」
この学校へ入学した女の子なら誰でも憧れる、
あの、学校の北側にそびえ立つ古城での卒業パーティー…。
数々のカップルが誕生するという、
それはロマンティックで、
ステキなパーティーだと聞いたことがある。
チョコの心は、ちょっぴりときめいた。

自分の部屋に戻ると、
チョコは、気合を入れて、
取って置きのドレスに着替えた。
ピンク色の、胸元の大きく開いた、
少し背伸びしたドレス。
きっと自分をキレイに見せてくれるはず…。
鏡に映った自分にそう言い聞かせると、
チョコは部屋を後にした。


- お城 -

「とうとうこの時がやってきたわ。
幼い頃から憧れてたの…。
あの方は、私にダンスを申し込んでくれるかしら?」
心配そうなヴェルヘルミーネ。
「うーん、問題は、このマリーンお手製の
特製媚薬ミラクルバージョンを
どうやってあの御方の飲み物に混ぜるかよね〜。
うーん、なやむ〜。」
マリーンは、特製の媚薬持参でパーティーに望むらしい…。
もしかすると、
マリーンが2年間「神秘研究部」に所属していたのは、
この日のために、媚薬の研究をしていたからなのだろうか??
「まー頑張ってよ。
それより時間よ。行きましょ。」
オーガスタは、あくまで冷静だった。
「うんそうしよー。
(なんかオーガスタ、余裕オーラ出てる?)」
チョコは、期待と不安を胸に、
ヴェルヘルミーネ、マリーン、オーガスタと一緒に、
ダンスフロアーへと入っていった。


- ダンスフロアー -

ダンスフロアー…、
そこはもう、夢の世界かと見紛うほどの美しさだった。
まばゆいほどのシャンデリアは、
フロアーを隅々まで照らし出し、
みがきこまれた床をキラキラと輝かせている。
こんなフロアーで、意中の人とダンスを踊れたなら…
乙女たちは、きっと誰もがそう思っているに違いない。
もちろん、チョコもその一人だった。
「ダンスフロアーも豪華ー!
私、なにか飲み物もらってくるから
フロアーにいて!」
チョコは、高鳴る胸をまず落ち着けようと、
飲み物を取りに行くことにした。
「いいわよ、それまで誰かに誘われなかったら
待ってるわ。」
オーガスタには珍しく、
冗談とも本気ともつかない、そんな言葉を
微笑みながらチョコに返してきた。
「そうね、
早く戻って来た方がいいかもね!」
さっきまでの不安は、消えたのか…
にっこり笑うヴェルヘルミーネ。
「どうやって、この薬を…ブツブツ。」
マリーンは、いったい誰の飲み物に
媚薬を混ぜるつもりなのだろう…?
チョコは、小走りに3人の元から離れ、
色とりどりの飲み物が並べてあるテーブルへ向かった。


□■□■ ここまでは全エンディング共通 ■□■□■


(えーっと、何飲もうかな?)
チョコが飲み物を選んでいた
その時…!

「無事卒業できたみたいだな、お嬢ちゃん。」

…これは………?
この声は…!

去年の夏、オーガスタの別荘で出逢い、
声はその時にしか聞いていないけれど…
チョコの耳から決して離れることのなかった…
忘れない…忘れられなかった…この声。
何度、手紙に「電話をください」と書きたかったか。
でも、任務の真っ只中にいる彼を思うと、
そんなことは書けなかった。
聞きたくて…聞きたくてしかたなかった…
この声。

「え?!アイザック様!」
振り向くチョコ。
「久しぶりだ。…いい女になったな。」
ああ…、あの時と同じ。
白いシャツの胸を大きく肌蹴て…
でも、
その左胸には、真っ赤な薔薇を一輪さしている。
夢ではない…
思い続けたアイザックが
もう二度と会えないと思っていたアイザックが
今、チョコの目の前に立っている!
「今日は大事な話があって来た。
せっかくだ、俺と一曲どうだ?」
「ええ、喜んで。」
涙をこらえ微笑むチョコ。
アイザックはチョコの手をとり、
ダンスを始めた。
やわらかく、力強く、なめらかで…
アイザックのとるダンスのリードは大人に感じられた。
「卒業おめでとさん、お嬢ちゃん。」
「あっ、アイザック様!ありがとうございます。
…わざわざそれを伝えに?」
「まあな、ついでもあったんだが。」
「ついで?…任務ですか?」
「ああ、そうだ…。
しかも、あんたに関係がある。」
「えっ!?私に?」
「ああ、そうだ。単刀直入に言う。
俺に新たな指令が出た。
この国を離れることになった。」
「えっ、どこに行かれるのですか?」
「それは言えない、機密さ。
…その前に、俺がこの国に残した痕跡を消すよう
指令が出てる。」
「痕跡?…それには私も含まれるのですか?」
「ああ、俺の正体を知るもの全てだ。
…すまんが、俺は…。」

そう…彼はスパイ。
任務を全うするためには、
自分の命さえ惜しまない。
ましてや、関わりあった全てのものに情けは無用。
…チョコにだって、それくらいわかっている。
アイザックからの最後の手紙…

愛するミントへ
突然驚かすようだが、おそらく、これがあんたへの最後の手紙になると思う。
詳しくは言えないが、俺は重大な決心をして、ある行動を起こした。
その結果はいまだわからない。
ただ、一ついえることは、こういう手紙のやり取りはもう出来そうもないってことだ。
今まで楽しかった。礼を言う。
だが、もう会えない訳じゃない。少なくともそのチャンスはある。
その日を夢見つつ筆をおくぜ。


この手紙を読んだとき、
彼の身に、今までにないほどの危機が迫っていること、
そして、自分との手紙のやり取りが、
その迫りくる危機に、拍車を駆けかねないということ、
そしてもう一つ…
彼に会えるチャンスなど、
本当は微塵もないことをチョコは感じ取っていた。
でも、こうして再び彼に会えた…!
チョコには、それだけで十分だった。

「…いいんです、それ以上おっしゃらなくて。
ですからお好きに…。」
「えっ?!…どういうことだ?」
思わず足を止めるアイザック。
そして、チョコの両肩に手を掛け、
チョコの目線の高さに自分の顔を合わせるように
少し身をかがめた。
「アイザック様は命の恩人です。
あの日、助けていただかなければ私、
ここにはいません…ですから。」
去年の夏、
オーガスタの別荘で火事に巻き込まれたチョコ。
もうダメだと思ったとき、
自分の危険も省みず、
火の海に飛び込んできて、チョコを救ってくれたのは、
アイザックだった。
炎と煙に囲まれ、遠のく意識の中で、
アイザックの胸に抱かれたとき感じた
あの力強さとやさしさが、
それからのチョコの心の支えだった。
もうチョコには、何の迷いも無かった。

この人が望むなら…
この人のためなら…

私は死ねる!!


「…本当にいいのか?
命が惜しくないのか?」
「…ええ。」
「…あんたにその覚悟があるなら、
もう一つだけ手があるんだ。
国も家族も何もかも捨てて…。
俺に…、この俺に付いて来られるか?!」
チョコの目をじっと見つめるアイザック。
「えっ!?」
「…無理強いはしない。
もし、嫌なら俺が全てを捨てて消えればことは済む。
俺には、あんたを殺すことだけは、
到底出来そうも無いからな。
もう既にスパイ失格さ。」
「…私、行きます。」
「えっ?!…今、何て…。」
「私、全てを捨てて、
アイザック様に付いていきます!」
「言ってる意味がわかってるのか?
俺と一緒じゃ、約束された幸福な未来も、
何もかも失うんだぜ?」
「ええ、わかってます。」
「…本気か?国はいざとなったら、
俺たちを見捨てるぜ?
広い世界にたった二人で生きてくんだぜ?」
「ええ、もう、覚悟できました。」
一度は、もうアイザックには会えないと覚悟した。
その覚悟に比べたら…
アイザックと一緒にいられるのなら、
たとえ、
地獄へ行くことすら厭わない…!
チョコの頬に、一筋の涙がつたう。

「よし、判った…!
俺はたった今から、
国王陛下でも家族でもない、
お前のためだけに、戦い続ける事を誓う!

愛している…お前を…!」

「アイザック様、私も愛しています…。」



優美なる
二年間の
記憶を胸に

あなたは
ローゼンシュトルツ
「薔薇の誇り」
と名付けられた
学園を卒業した

そして
二人は永遠に
一つの物語を
紡いでいく…



§ END §

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