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街 〜運命の交差点〜 のエンディング (青井則生)


青ムシ、街をさまよいましたが、やっぱり元気が戻りません。

「ボクにわ、やっぱり美少女コミックしかないノデ……。でも、もうエゲレス書院では出せないノデ……」

コラー! いつもの「勝手なプラス思考」はドコに行ったんだー!

「わが友、ヨウヘイも、もういないノデ。いったいどうすればイイノデ……」

青ムシ、哀しみのラビリンスに落ちたまま。
……と、そのとき!

「……あれは?!」

前方20メートルにいるあの男!
大きな体、妙によれよれアーミーコート、なにより鋭いトンガリアタマ!
あれは、昨日、青ムシ他2名を再起不能にした狂犬野郎だあ!

「あいつのせいなのデ、すべてはあいつのせいなのデ……」

青ムシ、声が怒りに震えてマス。
そりゃそうだヨネェ。
あいつがいなけりゃ今頃、こんな目にはあってないからネェ。

「日本の警察は怠慢なのデ。あんな事件を起こした奴を放っておくなんて間違ってるノデ」

それは確かにそうかもネェ。
でも青ムシにはどうにもできないしネェ。

「もう国は信用できないノデ。よってボクは独立を宣言するノデ……」

出たぁ!
得意の妄想が始まりマシタ。

「独立国の秩序は独立国独自の法律によって守られる……」

青ムシのつぶやきが、お口いっぱいに広がります。

「ボクの国はボクが法律! よって判決! 夜の暴れん坊将軍は……極刑に処す

気持ちはわかるけど、無理だと思うヨ。
なにせ相手はムチャンコ強いからネェ。
勝ち目はないネェ。

「覚悟するノデ……」

おや、青ムシ、さっきのモデルガンを構えましたヨ。
おやめなさい、青ムシ。
所詮はモデルガンですヨ。
当たっても外れても、相手に気づかれたら、またボコボコにされますヨ!

トンガリアタマ、タクシーに乗ろうとしていますが、こっちには気づいてマセン。

「黒川さん、白ブタ……ボクのトモダチ。キミタチのカタキはボクが討つ!」

あんなにイヤなコトばかりあったのに、やっぱり青ムシは、2人のコトが好きだったんだネェ。
まともに相手にしてくれたんだもんネェ。

「最後にはなむけの歌を一曲……ハゲハゲハー、ハゲハゲハー、ハゲハゲハゲハゲハー」

おいおい、なんですかソノ歌は?


「それでわ、死刑執行3秒前……2……1……バキューン!」

青ムシ、運命の引き金を思い切り引きました……。


爆発音とともに、弾丸発射の反動で青ムシ、オシリから地面に落っこちました。
あれ? オモチャの拳銃の発射に反動はないはずだゾ!

「ど、ドユコトなのデ……?」

体を起こした青ムシの目に、すべての光景がスローモーションになって映ります。
トンガリアタマは、一瞬ビクッとエビ反りして、その腹膜の辺りから赤いしぶきが散ったような散らないような。
そして、そのまま地面に仰向けにバタン・キュウ……大の字になって倒れます。

「??」

青ムシ、銃口を見ると煙が出てて、焦げ臭いような。

「ほ、ホンモノだった……ノデ?」

気付いた途端、ホンモノの銃と運命の重さが青ムシの背中にのしかかります。
青ムシ、キミはついに人を射っちゃったんだネェ。
それもホンモノの銃でネェ。

「……一皮むけた自分になり、ワイルドでデンジャラスなサバイバル人生をたくましく生きて行きたいのなら……」

青ムシは宇宙人のセリフを思い出しマス。
夢じゃなかったんだネェ。
夢だとしても正夢だったんだネェ。

「深呼吸したら、今までと違う自分になれるって……」

確かに変わったよネェ。
でもネェ……。
でもネェ……。

この5日間、青ムシを通り過ぎていった数々の出来事が、走馬灯になって目の前を駆け抜けて行きます。

「なんだか、イロイロあったノデ……」

そうだったネェ。

「なんだか、イロイロあったノデ……」


青ムシの目にナミダがキ・ラ・リ……。


「ククク……ククク……ククククククク」

青ムシ、地面に大の字になって笑います。
笑います。
笑います……。
見上げる夜空には、美しい、数々の花火が……。

「本当にイロイロあったノデ……」

つぶやく青ムシの目に、涙が次々と沸き上がるのです……。


切ないネェ……。
哀しいネェ……。
トモダチが欲しかっただけなのにネェ……。
ただ愛されたかっただけなのにネェ……。
なんでこんなコトになっちゃったんだろうネェ……。
青ムシだから……仕方がなかったのかネェ……。
これで輝ける人生もおしまいだネェ。


グッドバイン、青ムシ!
フォーエヴァー……
青ムシィィィィィィッ!!


……ここは渋谷中央署の接見室デス。
透明の壁を挟んで向かい合う青ムシと弁護士さん。

「……心配はいらないよ。拳銃が本物であることをキミは知らなかったわけだし、情状酌量の余地もある。過失ということで、なんとか執行猶予に持ち込むことも可能だ」
「……ノデ」

真っ白になった青ムシには弁護士さんのコトバも届きません。

「……とにかく元気を出してがんばろう。青井くん……私はそろそろ帰るが、何か欲しいものはないかい? 今度来るときに持って来るよ。何か食べたいものは?」
「……」
「本かな、何か読書でもしたらいい」
「……」
「困ったなァ……何かひとつくらいあるだろう? 遠慮することはないんだよ」
「じゃぁ……紙とペン……を」
「え……何?」
「……忘れる前にカタチに残しておきたいノデ」
「形に残す?」
「ネーム……A4のケント紙とGペンを」
「はぁ?」
「紙とペンが欲しいノデ……」
「まさか……キミ、まだマンガを……」

弁護士センセイ、おどろきを隠せません。

「……」

ブキミに浮かんだ青ムシスマイル。


「マンガじゃないノデ…… コミックなのデ」


イヤッホー!
さぁーっすが青ムシ。
プロだネェ。
エロだネェ……。


偉ァいネェェェェ!




青ムシ抄
The aomushi show!




また会う日までなのデ


おしまい
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