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街 〜運命の交差点〜 のエンディング (飛沢陽平)


陽平の前に、ユキ、亜美、そしてウェディング姿のままの美奈子がいる。
何事かと見て通る人もいるが、陽平はそんなことはどうでもよかった。

「みんな、悪かった。謝って済む問題じゃないのはわかってるけど……ユキ」
「……」
「昨日優作が熱出して、亜美ちゃんと看病したとき俺初めてわかったよ。お前が今までどれだけ一人で頑張ってきたか、頑張らなきゃならなかったか」
「……」
「大体、一人で優作を産むとき、周りの冷たい目もあっただろうし、すごく不安だったと思う。なのに、俺は何も知らなくて、何一つしてやらなかった。おまけに、今度はそんなお前からも逃げようとして……」
「……」
「でも、優作の父親は俺なんだ。優作はお前が産んでくれた大切な子供なんだ」
「陽平……」
「そうだ、まだユキに話してなかったよな」
「え……?」
「優作、ゆうべ立って歩いたんだぜ。それに、俺のことパパっていったんだ、パパって。初めてだろ喋ったの。お前に早く知らせたかったんだ」
「……ウン」


陽平は亜美を見た。

「昨日は、本当に亜美ちゃんに助けられた」

亜美は小さく首を振る。

「キミにも……この2ヵ月、ずっと不安な想いをさせたんだよな」
「……」
「俺は卑怯にも、君がウソをいってるんじゃないかと疑い、逃げようとした。自分の体裁ばかり考えて、君とお腹の子のことは本気で考えようとしなかった」
「……」
「でも、優作と同じ新しい命だもんな。しっかりと、君のお腹の中で育ってるんだもんな。昨日、優作を看病してる君を見て、もう母親なんだなって思った」
「……」
「こんな風にしておいて、今更何いってんだって感じだけど、俺……父親になるから。父親として、できることは何でもするから」
「飛沢君……」


「とにかく……」

ユキがため息まじりにいった。

「これからどうするか、みんなでゆっくり考えるしかないわね。もうジタバタしても仕方ないもの」
「ええ。大変な状況だけど、事実は事実ですから」


「……」

美奈子は黙っている。

「美奈ちゃん……結婚式を台無しにして本当にゴメン。とりあえず、今は白紙に戻させて欲しい……もっとも、もう愛想も尽きたろうけど」
「……」


秋葉雄三が現れた。

「も、申し訳ありません!」

陽平は慌ててその場に土下座する。

「何とお詫びしたらいいかわかりません。償いは何でもします。本当に申し訳ありませんでした!」
「……立ちなさい」

秋葉は静かに言った。

「状況が状況だからね。今日の式はとりあえず中止だ。しかし……陽平君、私はこの結婚を諦めてはいないよ」
「……は?」
「恭子」

秋葉は妻を呼んだ。
恭子は赤ちゃんを抱いて現れた。

「はい、梨穂ちゃん、ママに抱っこしてもらいなさい」
「おいで、梨穂」

美奈子が赤ん坊を受け取った。

「……え?」
「式が終わってから君には話すつもりだったんだが、美奈子には1才の娘がいたんだ」

「ええええーっ!!!」

「ウフフ、そんなに驚かないで陽平クン。だってこの子はあなたの子供なのよ」

「ウ、ウソーッ!!!」

「陽平クンは覚えていないみたいだけど、私たちが最初に出会ったのは、もう2年も前なの……」

そ、そんな……バカな……。

「実は、赤ん坊の父親が誰なのかは、私も妻も知らなかったのだよ。美奈子はかたくなに話そうとはしなかったのでね。それがようやく昨夜、両手をついて挨拶をしてくれたときに、打ち明けてくれた。まったく驚いたよ……しかし、これで正直ホッとした。君に他人の子供を押し付けることにならなくて済んだのだからね」
「……」
「だって、陽平クンの子供だなんてもし白峰の伯父様に知れたら、何されるかわからないと思ったんだもの。それに……何も知らない陽平クンに私を選んで欲しかったの。だから、私だけの秘密にしてました。ゴメンネ(ハート)」
「……」
「でも、これからは私たち三人、いいえ、生まれてくる子どももみんな合わせて六人、ずーっとアナタと一緒よ」

美奈子は嬉しそうにいった。
それは、今までの天使の微笑みではなく、聖母の微笑みだった。

「しっかりするのよ、陽平!」
「がんばりましょうね、飛沢君!」
「……」

陽平は、今度は本当にその場に倒れた。


そしてその夜……。

「あ……見て!」

亜美が夜空を指さした。
渋谷の上空に、なぜか打ち上げ花火が上がった。

「梨穂ちゃん、見て、キレイ!」
「ホラ、優作、花火よ!」
「お腹の赤ちゃんも、きっと見てます。ね、飛沢君」
「……」

陽平はまだ放心していた。

やがて、陽平はそっとつぶやいた。


「まさか四人目は出て来ないよね……」


で・き・ちゃっ・た


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