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街 〜運命の交差点〜のエンディング (篠田正志)


日曜日はスルリと近づいた。

「もう一度考え直しなさい。私について来れば何でも思いのままよ」
「イヤだ……キミとは世界がちがう」

《平手打ちが飛ぶ》

「だったら、だったらどうして戻って来たの?」

日曜日がはじめて感情を見せた。
その表情は般若のようだ。

「オレは約束を果たしてもらいに来ただけだ」

正志は力まずに胸を張った。

「約束?……私が、どんな約束を」
「水曜日に会わせてくれ」
「呆れたわね」

日曜日はまじまじと正志を見た。

「あなた、ずいぶんおめでたい人ね」
「ありがとう。ときどき人にそういわれる」
「私がそんなこと、教えると思う?」
「ああ、やっぱり……ダメですか」
「帰って。五体満足なうちに帰してあげるだけでもありがたく思いなさい」
「……」
「……」

日曜日の目に、殺気のようなものが浮いた。

正志の目の前にナイフが突き出された。
息詰る長い時間が過ぎる……。

窓辺へカラスが来て鳴いた。
その声で緊張の呪縛が解けた。

「アハハ……帰るよ、日曜日、さよなら」

正志はわざと陽気な声でいった。


《部屋を去る正志。日曜日がガックリと膝をつき、ナイフを落とす》


街は儚げで、待人たちは淋しげに見えた。
正志はぼんやりと街を眺めた。

「水曜日……」

もう二度と会えないのだろうか。
ポケットの中へ入れた手が、何かに触れた。

「……?」

取り出して見ると、レッドカードだった。

「レッドカード……!?」

それは、水曜日との約束切符だった。

「一段落したら、刑の執行」

水曜日は確か、そういっていた。
レッドカード。めくるめくお仕置き。
しかし、それも、いまとなっては、ただの切ない思い出だ。

またあの笛が聞こえる。

「これは、かなりの重傷だ……」
「何ボンヤリしているの。笛で呼んだら、返事するッ!」

「ス……水曜日!?」

幻覚ではない。
本モノだ。
今度こそ本モノの水曜日だった。

「す、水曜日……会いたかった」
「もといッ、敬語ッ!」
「あ……ハイ、とッても会いたかったデス!」
「カード」
「は?」
「レッドカード!」

早く出せと催促している。

「あ、ハイ」

正志はあわてて、レッドカードを渡した。

「OKよ……チンチコーレ」

水曜日は正志を見つめて、にっこり笑ってくれた。

「チ、チンチコーレ、水曜日」
「いいわ、手続きは完了よ」
「え……?」

水曜日は合図の笛を鳴らした。


《謎の男たちが現れ、正志を抱え上げてどこかへ連れ去ってゆく》


「わッ、わッ、わッ、わッ、わッ、わッ、わッ、わーア!!」

謎のグループは去った。

人々は遠巻きに退いた。


《渋谷の道の真ん中に、逆さまになって張り付けにされた正志》


レッドカードは執行された。


七曜会


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