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街 〜運命の交差点〜 のエンディング (馬部甚太郎 その1)
「はい、じゃあいよいよ組長の最終カット。本番いくよ! 周りお静かに願いマース。ヨーイ……ハイッ!」
クマ野が叫んだ。
馬部の演技が始まった。
「若いうちにムチャをしないでどうする。どんどん行けばいいさ。だがな、倒れるときは男として、前のめりに倒れるんだ……いいな」
《渋谷の街の中へ去ってゆく馬部の後姿》
The wrong man 馬
完
街 〜運命の交差点〜 のエンディング (馬部甚太郎 その2)
上記クリア後のセーブデータを
ロードすることで見ることのできる
最終エンディングです。
「……はい、カット! OK!」
馬部はホッとした様子で戻ってくる。
これで馬部の出演シーンはすべて撮り終わり、期せずして拍手が起こった。
「いやあ、なんかウマちゃん急にうまくなったよなあ!」
クマ野が感心していう。
周りのスタッフたちも同感のようだ。
「最初はどうなるかと思ったけど、もう完全にヤクザの組長に見えたもの。なんか役者として一皮むけたって感じだよ。ねえ監督」
「うンうン、その調子でガーッといったら、ダダーッってとこまで、もうバリンバリン!」
「はいッ、ありがとうございました!」
「ウマさん……!」
サギ山まで声をかけて来た。
「ありがとうございました。また機会があったら、よろしくお願いします」
「サギ山くん……お互い、がんばろうな」
ようやく傷跡メイクを落とし、ヤクザ風衣装も脱ぐことができた。
馬部は体が軽くなったような気分でロケバスの外に出た。
「あーあ……!」
思いっきり伸びをする。
ようやく平和な時間が戻ってきたのだ。
「やっとこれで、本モノの“役者”になれる気がする……!」
馬部は足取りも軽く歩き出した。
そのとき……!
「待ってたわ」
後ろから声がして、ギクリと立ち止まった。
馬部はゆっくりと振り向いた。
「!!!……」
るい子と白峰がいた。
その後ろには、組の若い衆たちも。
「ち、ち、ちがう、ボクは……!」
「わかってるわ……馬部甚太郎さん」
るい子の声はしっとりとしていた。
「アワアワアワ……」
馬部は助けを求めて周囲を見回す。
……ロケ隊はすでにどこかへ行ってしまっていた。
「安心しろ。何もしやせん」
白峰がいった。
「あの取り決めは、わしと牛尾政美がしたものだ。あんたとじゃない」
「……は」
馬部はとりあえずホッとした。
……だったら、何の用だ?
「それより、別の頼みがあるんだが……」
「え……た、頼み? ボクに……ですか」
「あんた、本当にるい子と結婚しないか?」
「えええーッ?!?!」
「どうやら牛尾より、あんたを気にいってしまったらしくてね」
るい子は頬を赤らめながら馬部に抱きついた。
「馬部さん……今度こそ本当に、もう離れません」
「アワワワ……」
「あんたがウチで見せたあの度胸なら、きっとこの世界でもやっていける。跡目継いでくれ」
馬部はめまいがして倒れそうになった。
悪夢はまだまだ終わらない……。
The wrong man 馬
完