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★☆★きまぐれストロベリーカフェ ★☆★

〜 猪口 祐介 グッドえんでぃんぐ 〜
(祐介の声…矢薙 直樹)



卒業式も無事終わった校庭で…
話をしている苺と梨香。

《この部分は、『梨香 えんでぃんぐ』をご一読ください》

「いい、そーゆー数学的世界な日常の刺激はいらないっ。」
激しく首を横に振る苺。


〜・〜・〜・〜・ここまでは、全エンディング共通・〜・〜・〜・〜



そんな苺を見て、梨香は微笑んだ。
「ふふ、そうね。
きっと、こちらの刺激の方が、楽しめるのではないかしら。」
「こっちって?」
「お迎えが来ているわよ。」
「えっ?」
「それじゃあ、私は帰るわ。またね、苺ちゃん。」
「あ、うん。って、え、ちょっと、梨香!?」
「後ろ、振り返ってごらんなさい。
待たせてはだめよ。」
梨香の言葉に、苺が振り返ると…
「後ろって……あ。」
そこには、ニコニコ笑いながら祐介が立っていた。
「ここにいたんですねーっ。
先輩、卒業おめでとうございますっ!」
「ありがと。高校生活も終わっちゃったなあ。」
「ひとつの区切りじゃないですか、おめでたいことですよー。
あ、でも、学校で先輩と会えなくなるのはさみしいなあ。」
「あはは。かわいいこと言ってくれるじゃない。」
「だって、ほんとのことじゃないですか。
でも、今度はお店に会いに行けばいいんですよねっ。」
「うん、いつでもおいでよ。待ってるからさ。」
「はいっ。」
「2年生になったらいろいろ忙しくなるとは思うけどね。
そういえば、猪口くんは受験するの?」
「そのつもりですっ。でも、えへへ。
サッカーのためですけどね。
クラブチームのユースに入ることも考えたんですけど、
もっといろいろ経験積んでおきたいなって。
大学サッカーでも、国際試合とかいろいろありますしねっ。
いっぱい経験を積んで技術を磨いて、
いつか世界で活躍できる選手になりたいじゃないですか。
……夢ばっかり大きいですけど、
そのための努力はしたいと思ってます。
だから、実現したときは、試合見に来てくださいね?」
祐介の瞳が、キラキラ輝いた。
「もちろん行くよ。夢が大きい…いいじゃない。
応援してるよ、がんばって。
あたしも祈ってるからさ。
猪口くんの夢が、現実になりますようにって。」
「先輩が祈ってくれるなら百人力ですっ。
まずは目先のインターハイ予選、ですけどねっ♪」
「よしよし、がんばれサッカー部レギュラー。
勝利はキミの脚にかかってる!」
それを聞いて、ちょっとはにかむ祐介。
「それは言い過ぎです、ほめすぎです。
でも、うれしいからがんばりますっ。」
「じゃあ、今日は景気づけにパーっといこうか、パーっと。
お姉さん、おごっちゃうよ。」
「ええっ!?今日は先輩の卒業記念なのに、
それは話があべこべですっ。
えーと、なんでしたっけ?
本末転倒って言うんですよね、たしか。
とにかく、そうなんですっ。」
「いーじゃない。どうせあたしと猪口くんじゃ、
ファミレスがせいぜいだし…。」
「じゃ、ぼくがおごります♪」
「それはダメ。」
「うわーん、却下早すぎですーっ!」


それから8年後……

苺の店
すっかり大人になった苺がいる。
♪カランコロンカラ〜ン…♪
「いらっしゃいませー。」
「おい、聞いたか!?」
突然、店に飛び込んで来たのは、
これまたすっかりスーツ姿がイタについた透だった。
「れ、透?聞いたかって…とーとつにどーしたのよ?
てゆーか、こんな真っ昼間にサラリーマンがなにやってんの。
会社は?仕事は?」
「いや、そんなのどうでもいいから。」
「どーでもよくないと思うけど…?」
「…はあ。おまえ、25にもなって、なんでそうのんきなんだよ。」
「歳のことは言うなっ。」
「あ、気にしてたのか?仕方ないだろ、同い年…
痛いって。トレイ投げるな、トレイ。」
…8年経っても、2人の関係はあまり変わっていないようだ。
「あんたこそ25にもなって、もー少し気配りってモンを
身につけたらどーなのっ!?」
「おまえにそんなの発揮しても…
だから暴力反対、物は投げるな。
これだよ、これ。」
透は、持っていた新聞を、パン!とカウンターにたたきつけた。
「これ?なに、今日のスポーツ新聞じゃない…
え、え?」
「ほらみろ、驚いただろ?」
一面トップにデカデカと載せられた見出しを読む苺。
「猪口、ミンテルに移籍決定……?
みんてる?
ミンテルって……どこの国のチーム?」
「おいおい…知らないのか?
イタリアのチームだよ。」
「有名なサッカーリーグのある国だっけ?
あ、それってフランスだっけ?」
「イタリアであってるよ。」
「とゆーことはぁ……ウソ。祐介ってばイタリア行くってコト?
うわー、イタリア語しゃべれるのかなあ。」
「あのな…そういう問題じゃないだろ。」
「ええ??そういう問題だと思うけどなあ。
あ、でも通訳つくだろうし平気か。」
「…おまえ、とことんのんきだな。
8年越しのつき合いなんだろ、少しは慌てろよ。」
「8年越しだから、よけい慌てようがないっていうか…。
うん、どーすんだろうね?」
「俺に聞くな。」
「だって他に聞く人いないし…。」
その時…?
「ぼくに聞いてくれればいいのに。」
突然、入り口の方からそんな言葉が聞こえてきた。
「あ、そーだよね……って?え、え、え?」
思わず相づちを打ってから、ハタと気づいた苺。
「うわ、噂をすれば猪口。
おまえ、いつの間に現れたんだ?」
「たった今でーす。栗田さんってば、ドア開けっ放しだったでしょ。
暖房もったいないから、ちゃんと閉めとかないとだめですよー。」
祐介もまたすっかり大人びて、あどけなかった笑顔に、
どことなくたくましさを感じさせる青年になっていた。
おまけに、透より小さかった身長も、
今では、透を見下ろすほど大きくなっている。
「あ、ああ。って、そうじゃなくて…」
後を続けようとする透の言葉をさえぎる祐介。
「はい、ちゃんと説明しますってば。
だから…あれ?」
見ると、苺の姿がない。
「おーい、苺さーん?あ、だめだ、帰ってきてない。」
「新聞見せたときより、衝撃が強かったらしいな。」
「ええっ?ぼくの顔、そんなにショック受けるほど
変わったりしてます?」
祐介は、真剣な表情で透に尋ねた。
すると透は、呆れたようにこう言った。
「…おまえら、どっちもどこかずれすぎだ。」
「そうかなあ?」
「そうだよ。じゃあ、俺は帰るから。」
「え、もう帰っちゃうんですか?栗田さんに会うの久しぶりなのに。」
「堂々とカップルの邪魔できるほど、俺は根性図太くないんだ。
じゃ、がんばれよ。」
店を出てゆく透。
「はーい、ご声援どうもです。がんばりますねー。
さーて、と…
苺さーん?そろそろこっちに帰ってきてよ。」
店の奥から、やっと姿を見せる苺。
「……な。」
「な?」
「なんつー心臓に悪い登場の仕方すんのよっっ!?」
「だからあ、栗田さんがドア開けたままだったから、
ベルが鳴らなかっただけだよ。」
「てゆーか、口挟む前から聞いてたわね?」
「えへへ、ちょっとだけ。でも、ちょっと残念かなあ。
ぼくが自分で報告したかったのに。」
「そりゃムチャでしょ。これだけデカデカと新聞に載ってればねぇ…。」
「栗田さんが新聞持ってこなかったら、気づいてなかったよね?」
「…それは否定しない。」
「これもね、正式発表はしてないんだよ。
ここにはバレちゃったみたいだけど。
うーん、くやしいなあ。」
「そんなダダ漏れでいいのかな……。」
「あはは、よくないよね。まずいよねー。
…でね、苺さん。」
祐介が、突然、真剣な表情になる。
「なに?」
「明日、日本で最後の試合があるんだ。
それが終わったら、ぼくはイタリアに行くよ。」
「うん。」
「それで、一生のお願いがあるんだけど、言ってもいい?」
「…うん。」
「いっしょにイタリア、来てくれない?
イタリア語なんてわからないのも知ってるし、
ぼくもしゃべれないけど。
でも、わからないと不便だから、ぼくはこれから勉強するし、
きっとなんとかなると思うんだよね。
この店があることも知ってるけど、最後のわがままだから。ね?
だめ……かなあ?」
赤くなって下を向く祐介…。
ちょっとの間の後、苺が言った。
「……イタリアで喫茶店やるには、
やっぱイタリア語覚えないとダメかな。」
「…来て、くれる?」
「一生のお願いは叶えてあげなきゃ。
それに、お店は父さんと母さんがまだ現役だから大丈夫。
問題はイタリア語なんだけど…まあ、なんとかなるか。」
「ついでに苗字変わってもいい?
ぼくの専属マネージャーになってくれる?」
「それも、一生のお願い?」
「一生のお願い!!
色気ないけど、プロポーズ。」
「…だから、さっきも言ったでしょ。
一生のお願いは叶えてあげなくっちゃ。
世界で一番好きな人のなら、ね。」
「…えへへ、ありがとう。
夢って、叶うときは一度に全部叶っちゃうんだね。」

幸せそうに微笑む苺を、ギュッと抱きしめる祐介…


〜 猪口 祐介 グッドえんでぃんぐ おわり 〜

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