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★☆★ きまぐれストロベリーカフェ ★☆★

〜 栗田 透 トゥルーえんでぃんぐ 〜
(透の声…保志 総一郎)



卒業式も無事終わった校庭で…
話をしている苺と梨香。

《この部分は、『梨香 えんでぃんぐ』をご一読ください》

「いい、そーゆー数学的世界な日常の刺激はいらないっ。」
激しく首を横に振る苺。


〜・〜・〜・〜・ここまでは、全エンディング共通・〜・〜・〜・〜


そんな苺を見て、梨香は微笑んだ。
「ふふ、そうね。
きっと、こちらの刺激の方が、楽しめるのではないかしら。」
「こっちって?」
「お迎えが来ているわよ。」
「えっ?」
「それじゃあ、私は帰るわ。またね、苺ちゃん。」
「あ、うん。って、え、ちょっと、梨香!?」
「後ろ、振り返ってごらんなさい。
待たせてはだめよ。」
梨香の言葉に、苺が振り返ると…
「後ろって……あ。」
そこに立っていたのは、透だった。
「ここにいたのか。卒業おめでとう、苺。」
ニッコリ微笑む透。
「透もね。卒業、おめでと。
高校生活も終わっちゃったね。」
「ああ。中学の時より、3年間過ぎるのが早かったような気がするよ。」
「そうだね。んー、もーちょっと学生やってもよかったかな。
終わっちゃったからそう思うんだろうけど…。」
「俺はまだ当分、学生だからな。うらやましいだろ。」
「そう言われると、意地でも『うん』って言いたくなくなるっ。」
「言うつもりなんて初めからないくせに。」
「ふーんだ。透なんか、大学で遊び呆けて
平和ボケしてくればいいんだ。
あたしはその間、立派に社会人やってるんだから。」
「俺、大学に遊びに行く予定はないけどなあ。」
「どーだか。」
「ま、それは実際始まってみないとわからないよ。
もし遊んでたら笑ってくれ。」
「大学生活が遊び一色になる可能性もあるワケ……?」
「それは蓋を開けてみないと不明。
それより、ちょっと歩かないか?行きたいところがあるんだ。」
「え、いいけど。どこ?」
「行けばわかるよ。
珍しいところでも、目新しいところでもないからな。」
「むー……?」
「ほら、行くぞ。」
「ちょっと待ってよ!」


― 神社 ―

二人は、幼い頃、よく一緒に遊んだ神社にやって来た。
「到着、と。」
「あ…ここ。」
周りを見渡す苺。
「やっぱり何度来ても懐かしいな、この神社は。」
透も、懐かしそうに石段に眼をやった。
「変わってないもんね。10年経っても変わってないんだもん、
半年やそこらで変わるはずもないし。」
「ああ。……なあ、覚えてるか?」
「え?なにを?」
「ここで、あったこと。」
「そりゃあ覚えてるよ。いろいろあったし、いろいろやったよね。
かくれんぼしたり、木登りしたり、ケガしたり、
親に怒られたり……
他の子たちとケンカもしたっけ。」
「おまえ、あの頃から勝ち気で無謀なところあったよな。
いくら理不尽なこと言われたからって、
どう考えても勝ち目なさそうな相手に
真っ向から食ってかかったりな。」
「あう……あれはねえ。
親にも怒られたし、反省もしたんだよ。
あいつらにケンカ売ったのはあたしだったのに、
透がひどい目にあっちゃったからさ…。
なんてゆーんだろ、すごいショックだったのは覚えてる。」
「放っておけなかったからなあ。
俺が割って入らなかったら、ああなってたのはおまえだったんだぞ。」
「かなりボコボコにされてたよね……
うわあああ。
ホント、あたしって後先考えないコトしてたんだなあ。
やっちゃってからめちゃめちゃ後悔したって遅いんだけどさ。
でも、ちょっとうれしかったような記憶もあるんだよね。
透が助けてくれたからだと思うけど、
それだけじゃなかったような……なんだっけ?」
「覚えてるような覚えてないような、か。
どっちでもないあたりおまえらしいよ。
どうすればいいかわからなくなる。」
ちょっと苦笑いする透。
「え、え?」
「うーん、でも忘れてるなら、それはそれでも……。」
「よくないっ、全然よくないっ。」
「……どうせなら完全に忘れててくれ。」
「そりゃあんまりでしょ。内容覚えてないあたしが言うコトじゃないけど。」
「その中途半端さ加減が、
よけいにいたたまれないんだよ……。

『ぼくが守ってあげるから、だいじょうぶだよ』 」


― 回想 ―

幼い透と苺。
透は、ケガをしたひざこぞうを抱えて座り、
そのひざを、心配そうにそっと撫ぜる苺。
「透ちゃん、透ちゃん、だいじょうぶ?
ごめんね、ごめんね。」
「これくらいなんともないってば。
ほらね……いたたたた。」
「なんともなくないよ!
いっぱいケガして、いたそうだよ。
いたいよね……?
ごめんね、あたしがへんなこと言ったから。」
「苺ちゃんは、まちがったこと言ってないよ。
だから、なかないで。」
「な、ないてないもん。
ないていいのはあたしじゃないもん、
透ちゃんだよ。」
「ぼくはなかないよ。パパとやくそくしたんだ。
おとこは、かなしいときしかないちゃだめだって。」
「いたいときはだめなの?」
「うん。だからね、ぼくはなかないからあんしんしてよ。」
「………?」

「苺ちゃんは、ぼくがまもってあげるから。
だいじょうぶだよ、なかないで。」

「……うん。あたし、なかない。
透ちゃんがまもってくれるなら、
あたしも透ちゃんをまもれるようにがんばる。つよくなるね。」
「ええー?ぼくもまもられちゃうの?」
「だって、いっしょがいいもん。
どっちかだけなんて、やだもん。
だから、あたしもがんばるのっ。
透ちゃんといっしょがいいんだもん。
ずっと、ずっとだよ……?」

― 回想 おわり ―


ちょっと顔を横に向け、斜め下に視線を落とす透。
「殴られて怪我だらけの奴が言っても、
説得力はあまりない台詞だよな。」
苺は、その出来事をすっかり思い出し、
ちょっぴり頬を赤く染めた。
「そんなことない。
だってあたし、うれしかったもん。
あの時は、あたしが考えナシなこと口走ったせいで、
透に怪我させたって動揺のほうが凄かったけど……
それでも、うれしかったんだもん。
ホントにね、頼りになるなって思ったんだよ。
それに…、ホントにずっと守っててくれたじゃない。
いろいろめんどう見てくれたし…。」
「最初は守ってやりたいだけだったんだ。
けど、変わっていくんだよ、やっぱり。
守るだけじゃ足りなくなってくるのに、
おまえは強くなっていって守る余地もなくなっていくだろ。
独占欲って言うんだろうな。
でも、幼なじみ、腐れ縁って関係は、
ものすごく居心地がいいんだ。
だけど、これも難しくてさ。性別を意識しないから身近でいられる。
でも、かわりにそれ以上近づけない。
近づくには壁を壊す必要があるけど、
壊したら、二度と元には戻せないだろ。
本当に壊していいのか、
それともこの気持ちは単なる錯覚なのか。
……結構長い間、悩んでたよ。
だから、きっかけをくれたおじさんたちには感謝してる。」
「おじさんって……うちの父さん?」
「旅行、行ってくれたからな。
おまえ、俺に店のこと相談してくれたじゃないか。」
「あ……そういえば、他に相談する相手、
思いつかなかったなあ。」
「好きな人に頼りにされると、男ってのはうれしいんだよ。
そのまま店を手伝うことになって、やっと壁を壊す決心がついたんだ。
…結局はおまえに、背中を押され形になったけどな。」
「あたしに?」
「クリスマスイブのとき。」
「あれは……あはは。
ちょっとだけ焦ってたのかも。あたしも同じだよ。
幼なじみじゃ物足りなくって…、
でも、踏み出す勇気はあんまりなくて。
ただ、あたしのほうが気が短かった、それだけかな。
……でね、もうひとつ思い出した。」
「もうひとつ?」
「透が、ここであたしに約束してくれたときのこと。
……10年前、だよね。
あたしもね、約束したんだよ。透があたしのこと守ってくれるなら、
あたしも透のこと守ってあげるって。
守られてるだけじゃイヤだった。あたしもなにかしたかった。
できたかどうかはわかんないけどね。
でも、これだけはちゃんと叶えたよ。
あたしね、一緒にいたかったの。
ずっと、一緒がよかったの。
知らないでしょ…?
透の志望校聞いてから、高校の第一希望、変えたんだよ。
……無意識だったけどさ。
幼なじみでも友達でも同級生でも、
どれでもよかったのかもしれないけど、
今がいちばん近いとこにいるよね。」
「ああ、もちろん。
…ずっと好きだったよ。
たぶんおまえが気づいてない頃から。」


それから2年後……

初夏、桜並木の続く土手。
ゆるやかな傾斜は、まるで緑色のカーペットを敷き詰めたように、
鮮やかに輝いている。
そこへ、苺が誰かを探しながらやって来た。
「いたいた。寝てる場合なのかなー、いいのかなー?
明日、レポート締め切りとか言ってた気がするけどなー?」
草の上で眠っている透に近づく苺。
「こらあー、起きろーっ。出前だよー。
さっさと起きないと、コーヒーぬるくなっちゃうよー。
その前に、あたしが飲んじゃうぞー。
このあたしに無駄足を踏ませるつもりなのかー?
足でつついちゃうぞー。」
ちょんちょん足でつつく苺。
「…いいから起きてよ、いつまでやらせんのよ。」
やっと目を覚ます透。
「…あのな。もうちょっとましな起こし方はないのか…?」
「せっかく起こしてあげたのにっ。
あ、なーんだ、おはようのキスでもしてあげたほうがよかった?
やだなー。
それならそうと言ってくれれば、
ご期待に応えないでもないのに。」
「そういう問題じゃ……
ああ、でもそれもいいか。」
「え。なに、ホントにやれって?
どしたの、思考が乙女モードだね。
暑さでやられた?それとも、レポートからの逃避?」
「さりげにめちゃくちゃ言ってるよ。」
「つっこんじゃダメ。
てゆーか、ホントにやるの?
やっちゃうよ。」
「なんだよ、乗り気だな。
まあ……たまにはいいだろ。」
「よくわかんない理屈だけど、
まあいいか、うん。
………
それじゃ。
おはよー、もうお昼だよ?
お・き・て・ね。」

透の頬に、そっとキスする苺…


〜 栗田 透 トゥルーえんでぃんぐ おわり 〜

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