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★☆★ きまぐれストロベリーカフェ ★☆★

〜 千頭 貴行 グッドえんでぃんぐ 〜
(貴行の声…上田 祐司)


卒業式も無事終わった校庭で…
話をしている苺と梨香。

《この部分は、『梨香 えんでぃんぐ』をご一読ください》

「いい、そーゆー数学的世界な日常の刺激はいらないっ。」
激しく首を横に振る苺。


〜・〜・〜・〜・ここまでは、全エンディング共通・〜・〜・〜・〜


そんな苺を見て、梨香は微笑んだ。
「ふふ、そうね。
きっと、こちらの刺激の方が、楽しめるのではないかしら。」
「こっちって?」
「お迎えが来ているわよ。」
「えっ?」
「それじゃあ、私は帰るわ。またね、苺ちゃん。」
「あ、うん。って、え、ちょっと、梨香!?」
「後ろ、振り返ってごらんなさい。
待たせてはだめよ。」
梨香の言葉に、校門の方を振り返る苺。
「後ろって……あ。」
そこには、バイクにちょっともたれかかって苺を待つ
貴行の姿があった。
「よー。卒業おめでとーさん。」
いつも通りクールに微笑む貴行。
「ありがと。…わざわざお祝いに来てくれたの?」
苺は、うれしそうに貴行に駆け寄った。
「んー……それもあるけどよ。」
「うわ、ホントにそうだったんだ。」
「そのわざとらしー驚きはナンなんだ。」
「なるべくわかりやすく驚愕を表してみました。
…いや、その、ゴメン。
祝いに来てくれるなんて、少しも予想してなかったんだよ。」
「あんたの中にあるオレの印象ってヤツが、
よーくわかったぜ、コノヤロウ。」
「だ、だからゴメンってばあ。」
「……話がズレたじゃねぇか。確かに祝いに来たけどよ、
どっちかっつーとついでなんだよな。
じつは、他に用事があんだよ。
ちっと来てくんねぇ?
一緒に行って欲しートコがあってな。」
貴行の表情が真剣になる。
「それはかまわないけど…あたしと?」
「あんたじゃないと困る。
そんな遠くはねぇよ、電車使っても5駅ってトコだ。」
「制服のまんまでもいいの?」
「ンなモン気にすんな、どーぜ バイクで行くんだ。」
「え、ヘルメット今持ってないよ。」
(※ヘルメット…以前、貴行からプレゼントされた苺専用)
「オレが持ってきた。」
「わあ、いたれりつくせり?」
「アホか。」
「ちょっとした冗談なのに…。で、どこ行くの?」
「オレんち。」
珍しくちょっと頬を赤らめてうつむく貴行。
「えーと。貴行くんの家は
電車で行くようなとこじゃなかったような…?」
「あー、もー、めんどくせぇな。オレの、実家。」
「……え?」


― 貴行の実家 ―

客間で、一人待っている苺。
そこへ、貴行の双子の兄 雅行がやってきた。
顔こそそっくりだが、貴行に比べちょっぴりインテリ風な雅行。
「お待たせしました。すみません、どうやらまだかかりそうです。」
「でしょーね。だって3年ぶりくらいなんでしょ?
積もる話もあるんだろうなあ。
親子水入らずがいいかなと思って、先に出てきたんです。
のんびり待ってますよー。」
「貴行も両親も、お互いに言いたいことが
積み重なっていたようですね。
思ったよりは和やかでしたから、放置してきました。
最初からああできていたら、あいつも家出なんかしなくて
すんだんでしょうけれど。
家にいた頃は、跡目の問題やらなにやらで、
いつも窮屈そうでした。
直接何かを要求した人はいなかったんですが、
それがよけい重圧になったんでしょう。
この家を離れていたからこそ、
ああいう態度をとれるようにもなったんでしょうね。
おそらくあなたのおかげです、感謝していますよ。」
「いや、その、えっと、あたしはなにもしてないし…。
余裕、できたんじゃないでしょうか。
でも、ちょっとってゆーか、かなりびっくりしたんですよー。
唐突に実家に来てくれ、ちゃんと家族に紹介したいからって、
ナニゴト?って思っちゃいました。」
「うちに連絡してきたのも昨日でしたよ。
会って欲しい人がいるから連れて行く、明日家にいろ、
それだけでしたがね。
3年ぶりの電話でしたよ。
ですが、両親はそれだけで喜んでいました。」
「昨日…。おじさまやおばさまに用事があったら
どうするつもりだったんだろ。」
「いえ、本当は先約があったようですよ。」
「うわ。」
「電話を切った直後に先約をキャンセルしていましたけれどね、
21時過ぎでしたか、たしか。」
「……さすが、親の愛。」
「ストレートに親馬鹿と仰ってくださってもかまいませんよ。
僕もそう思います。」
「とか言って。雅行さんもちゃんと家にいたじゃないですか。」
「僕は…春休みですから。
たまたま用事がなかっただけです。」
「そーゆー素直じゃないトコ、
やっぱ双子なだけありますね。そっくり。」
「……その評価はかなり複雑なんですが。」
「貴行くんもそう言うだろうなあ。」
そこへやってきた貴行。
「オレがどうしたって?」
「あれ、もういいの?」
ちょっと驚く苺。
「なんでもない、気にするな。話はもう終わったのか?」
雅行の質問に貴行は、苺のことを親指で指しながら言った。
「つーか、そもそもオレはコイツを紹介したかっただけなんだよ。
親父の長話につき合うつもりはなかったっつーの。
まぁ…マトモにしゃべったのは、えらい久々だったけどよ。
ちゃんと会話になるもんだな。」
「おまえが会話を続ける気になれば、ちゃんと続くさ。」
「オレのせいかよ。……間違っちゃいねぇけど。」
そこへ、苺が口をはさんだ。
「それより、ねえ、あのことはちゃんと報告した?」
「あのこと?」
尋ねる雅行。
「親父とお袋には言ったぜ。なんか喜んでたな。
反対されるかと思ってたけどよ。
…ロードレースのチームに、メカニックとして参加すんだよ。
オレがずっとやりたかったコトなんだ。」
すると、雅行はちょっと意外だという表情をみせた。
「レーサーじゃなくてか?
バイクで走るのが好きなのかと思っていたな。」
「走るのも好きだぜ、そりゃな。
だけど、オレはバイクをいじるほーが好きなんだよ。
ロードレースのバイクいじれるなんて、願ってもねぇよ。
話持ってきてくれた工場のオヤジに感謝してもし足りねぇ。
ウチに帰ってくる気になったのも、それがあったからっつーんかな。
ただ目的ナシにフリーターやってる間は、
絶対、顔なんか見せたくなかった。
単なる意地だけどよ。
でも、たぶん決定打はあんただよな。
あんたがいなかったら、帰ってみようなんて思いもしなかっただろーし。」
「え?あたし?」
ちょっと頬を赤らめる苺。
「他に誰がいるんだよ。
ひとりのが楽だけどつまんねぇって、それを教えてくれたのはあんただ。
けっこー感謝してんだぜ、これでもな。」


それから3年後……

貴行が仕事をしているパドックに、
ケーキの包みを持ってやってくる苺。
髪を短く切り、ちょっぴり大人びている。
「おはよーございまーすっ。今日も大変そーですねっ、
がんばってくださいねー。
あ、そーだ。差し入れ持ってきたんで、
あとでみんなで食べてくださいねっ。」
「……なんか聞き慣れた声がする。」
ツナギにスパナ…黒く汚れた顔で現れた貴行。
相変わらずクールな表情…、そこに男っぽさが加わったようだ。
「聞き慣れない声とか言われたらショックだよ。
わー、すごい顔。また徹夜?」
「んだよ、あんたか。来てたのか?」
「パドックパスもらったもん、活用しなきゃね。
明日から予選だけあって、パドックも活気あるなあ。
メカニックも正念場だね。」
「正念場っつーかなんつーか、
サスペンションがトラブってて、にっちもさっちもいかねぇよ。」
「か、かなり修羅場?」
「すげぇ修羅場。」
「明日来たほうがよかったかな…。」
「いや…、んなこたねぇよ。煮詰まっててもしゃーねぇし、
それに………、なんでもねぇ。」
「なんでそこでやめちゃうかなー。ちゃんと最後まで言ってよ。
釣った魚にもちゃんとエサはあげなきゃダメなんだぞ。」
「あんた、魚かよ。」
「ものの例えだよ。」
「ったく……。
あんたの顔見られてよかったってだけだ。」
「…えへへへへ。」
「にやけんなよ。」
「いーじゃん。」
「で、なんか差し入れっつー言葉が、
さっき聞こえたよーな。」
「耳ざといなあ。お店の材料くすねてケーキ焼いてきたんだよ。
疲れたときには甘いもの食べたくなるって言ってたでしょ。
みんなで食べて。」
「甘いもの苦手なくせに、作るのは上手だよな、あんたって。
自分で味見、できたんかよ?」
「う、ぐぐ…。母さんに味見してもらったもん、
ちゃんと合格点もらったもん。」
「ま、味なんてどーでもいいんだけどな。
あんたが作ってくれたモンなら、それだけで力になるぜ。」

パドックの中で、微笑み合う苺と貴行…


〜 千頭 貴行 グッドえんでぃんぐ おわり 〜

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