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★☆★きまぐれストロベリーカフェ ★☆★

〜 葛城 手良 グッドえんでぃんぐ 〜
(手良の声…風間 勇刀)



卒業式も無事終わった校庭で…
話をしている苺と梨香。

《この部分は、『梨香 えんでぃんぐ』をご一読ください》

「いい、そーゆー数学的世界な日常の刺激はいらないっ。」
激しく首を横に振る苺。


〜・〜・〜・〜・ここまでは、全エンディング共通・〜・〜・〜・〜



そんな苺を見て、梨香は微笑んだ。
「ふふ、そうね。
きっと、こちらの刺激の方が、楽しめるのではないかしら。」
「こっちって?」
「お迎えが来ているわよ。」
「えっ?」
「それじゃあ、私は帰るわ。またね、苺ちゃん。」
「あ、うん。って、え、ちょっと、梨香!?」
「後ろ、振り返ってごらんなさい。
待たせてはだめよ。」
梨香の言葉に、苺が振り返ると…
「後ろって……あ。」
そこには、ニッコリ笑って手良が立っていた。
「ご卒業おめでとうございます。
間に合ったようでよかったですよ。」
「わざわざお祝いにきてくれたんですか?
えへへ…、ありがとうございます。」
「僕がお祝いしたかったんですよ。
せっかくの区切りの日です。
ご一緒していたいですからね。
4月からは、あなたも大学生ですし、また忙しくなるでしょう。」
「忙しいかどうかはともかく、葛城さんと同じ大学生ですよー。
…あ、そういえば……」
「はい?」
「葛城さんは医学部ですよね?」
「そうです。4月からは3回生ですね。」
「とゆーことは、6回生まであるんですよね?」
「そうですねえ、まだ、半分終わっていません。」
「あたしが4月から1回生ってことは、
つまづかなければ卒業する年、同じですか?」
「おや…、そうなりますか。
では、残りの学生生活はあなたとずっと一緒なんですねえ。
それは気づきませんでした。
素直に喜んでおきましょう。」
「意地でも一緒に卒業しますから!
単位落としたりしないようにがんばりますね。」
「その心意気や良し、ですよ。
僕も留年したりしないようにがんばりますね。
7年も8年も大学に行くのは、さすがに勘弁ですからねえ。」
「8年って、小学校より長い……。」
「ああでも、8回生の先輩がたしかいらっしゃいますよ。」
「うわ、ホントですか?」
「後がないですからねえ、必死でいらっしゃったような気がしますよ。
無事に卒業できたんでしょうか…。」
「あ、あはは……」
「さて、そろそろ移動しましょうか。
今日は記念日ですから、豪勢にいきましょう。
どこへ行きたいですか?ご希望をお伺いしますよ。」
「そーですねえ。
とりあえず、おなかすいた……」
「あはは。では、まずは食事に行きましょうか。」
「はーいっ♪」


それから6年後…

診療所の事務室に、大人びた苺がいる。
なにやら難しい顔をして…。
「これが、こっちで…、う、読めないな。なんだろ、コレ。
……ああ、個数か。
んで、これは国民保険で、こっちは社会保険で…。
えーと…あれ?あー、こんなのの点数、覚えてない……。
てゆーか、そもそもレセコンの使い方がよくわかってないんだよなー。
機械ってなんでややこしいの……。」
そこへ、白衣を着た手良がやってきた。
「おや…まだやっていたんだねえ。無理はしなくいていいよ。
医療事務関係は僕ができるんだから。」
6年経っても、やさしい声と言葉は、ちっとも変わっていない。
「やだ、絶対覚えるのっ。資格取るつりはないけど、
できることはあたしがやるの。」
苺の気の強さも、相変わらずらしい…。
「どー考えてもコレ、面倒だし。
こんなの全部ひとりでやってたら、手良さん倒れちゃうよ。
診察したり、器具の手入れだけでも、じゅーぶん忙しそうじゃない。
患者さんも途切れないしね…。」
「仕方がないねえ。なにしろ、村に診療所はここひとつしかないから。
でも、大きな病院で派閥やらを気にしながら医者をするよりは、
こういうところの方がずっといいなあ。
より必要とされている感じがする…
とでもいうのかもしれないねえ。
本当は、患者さんは誰もが医者を必要としているのだけれど。
街の大きな病院は、それ以外のことが煩わしすぎるのかなあ。
どうにも、僕には合わなくて。
結局は僕のわがままなんだけれどねえ。
あなたまで連れてきてしまって、
悪いとは思っているんだよ。」
「やだなー、なにを今さらそんなコト。
イヤだったら、最初からついてきてないってば。」
「それなら嬉しいけれどねえ。
慣れないことをさせているようだし。」
「医療事務はちょっとてこずってるけど、
これでも養護教諭の免許は持ってるんだからね。
ちゃんとカウンセラーはできるんだよ。
そのために大学行って勉強したんだから。
村にひとつしかない診療所に、
医者とカウンセラー常駐、言うことないじゃない。」
「あはは。そうだねえ。
村のみんなもそう思ってくれているといいねえ。」
「えへへ。こないだ、3軒向こうのおばさんに言われたんだけどねっ。
『先生とこは夫婦仲良くていいねー』って。
思いっきり『いいでしょう♪』って応えてきちゃったよ。
そんなこと言われたの初めてだったから舞い上がっちゃった。」
「おやおや。そんな新婚さんみたいな…あれ?」
「新婚さんみたなーじゃなくて、
紛れもなく新婚なの!」
「あはは、そうだったねえ。
最近慌しくて、うっかりしていたなあ。」
「そんな大事なコト、うっかり忘れないでください。
まあ…手良さんらしいけどね。」
「納得されてしまうのも、少しばかり複雑だけれどねえ。
反論できないなあ、まったく。」
「実際、忘れてたもんね。
患者さんの病状とかは忘れないのに、不思議だよなあ…。」
「事象によって、脳の記憶部位が違っているのかもしれないね。
働き者と怠け者がいるのかなあ。」
「…そのボケには、なんてつっこんだらいいのかな……」
「いたって真面目だったんだけれどもねえ。」
「ああ、うん、天然ボケなのも、よーく知ってるから。
で、さっきのおばさんなんだけどね、
あそこのおじいちゃん、あんまり調子よくないんだって。
明日、診てもらいに来るって言ってたよ。
ちょっと心配だなあ、大丈夫かなあ。」
「そうだねえ、大事がないといいけれど…。」
「えーと、長谷川のおじいちゃんのカルテは…
ふわぁ〜…。」
「ふむ、大あくびだねえ。」
「あう。」
慌てて口を閉じる苺。
「いいから、今日はもう寝なさい。
これは明日でも十分間に合うんだからねえ。」
やさしく微笑む手良。
「でも…。」
「僕も今日はもう休むから、ね?」
「うーん…、なら、しょーがないか。
ふわぁ……ねむーい。」
「今日もお疲れさま、おやすみなさい。」

次の日…

薬の袋を患者に差し出す苺。
「それじゃこれ、お薬です。食後に1日3回、飲んでくださいね。
お大事にー。」
その時、診察室を出て、受付に手良がやってきた。
「一段落ついたかなあ?」
「待合室には誰もいないよ。お茶でも飲む?」
「お願いしようかな。
でも、今日はいつもより患者さんが少ないねえ。」
「長谷川のおじいちゃんも、ちょっと運動不足だっただけだったみたいだしね。
なんだかホッとしちゃった。
はい、お茶どーぞ。」
「ありがとう。………はぁ、落ち着く……あれ?」
手良はふと、受付に飾ってある写真に目を留めた。
「どーしたの?」
「この写真…。」
「あ、えへへ、バレた?」
「そりゃあねえ。懐かしいなあ。まだ二十歳の頃だったっけ。」
「そうそう。一緒に紅葉狩りに行って、そのとき撮ってくれた写真だよ。
ずっとね、あたしの宝物だったの。
だから、受付に飾ってみました。
ぜいたくだよね。前を見れば写真の中に手良さんがいる。
後ろを見れば、実物の手良さんがいる。
そう思うと、すごーく心があったかくなるんだ。
お休みの日に、またどっか行こうね。
ここなら、ちょっと歩くだけで、
いくらでもいい写真、撮れるよ。
季節の移り変わりが楽しみだよね。
ここの壁にいろんな写真、飾れるといいなあって思うよ。」
「そうだねえ。ここではいくらでも新しい思い出が作れる…
そんな気がするなあ。」

6年前の写真を手に、
新しい思い出作りに夢馳せる苺と手良…


〜 葛城 手良 グッドえんでぃんぐ おわり 〜

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