戻る TOPへ

季節を抱きしめてのグッドエンディング (5)


麻由を捜して雨の夜を彷徨い、そしてアパートへ帰宅してきた主人公。
その頭に、タオルがかぶさる。

主人公「うわっ!」

主人公にタオルを投げかけたのは、同じアパートに住む綺麗なお姉さん。

お姉さん「……風邪ひくよ……そのままじゃ……」
主人公「……」
お姉さん「……あの子、出て行っちゃったのね……」
主人公「……はい……」
お姉さん「……フゥ…… でも、男なら元気出して! 女の私だって、立ち直ったんだし…… ……ね?」
主人公「……はい……」

お姉さんが主人公を優しく抱きしめる。

主人公「!」
お姉さん「……元気出しなよ…… 今日は私がなぐさめてあげるから……」


(……その晩はお姉さんのなぐさめもあり、ボクはなんとか立ち直れそうな気がしていた……)


(その後、麻由を捜して何日もボクは走り回ったのだった……)
(しかし、麻由は見つからなかった……)


(あれから一週間が過ぎた……)

(気がつくと、僕はこの桜の樹の下に来ていた)

悲恋桜の下に佇む主人公のもとへ、お姉さんがやってくる。

お姉さん「また、ここにいるんだ……」
主人公「あ、お姉さん……」
お姉さん「元気だしなってば……」
主人公「……そういうお姉さんだって、彼氏の思い出を引きずってるじゃないですか?……」
お姉さん「うん? それなんだけどね……」

お姉さんがバッグから、死んだ婚約者の形見の婚約指輪を取り出す。

お姉さん「……私、もう前を見て歩こうかと思って……」

桜の樹の根元を彫り、指輪を埋めるお姉さん。

主人公「そ、それは!」
お姉さん「こんなもの、いつまでも持ってるからつらいのよ…… 彼の分まで、明るく生きなきゃいけないのにね……」
主人公「お姉さん……」

お姉さんが差し出す手を、主人公がつかむ。


(麻由が去り、トモコが去った……)
(なにも残らないはずの惨めなボクを救ってくれるのは、年上の女性の包容力なのかもしれない……)

(人は別れを一つ経るたびに、大きく成長する)
(そして別れから生まれる、思い出という目には見えない力を糧に、前へと歩き始める)
(そして新たな出会いを経てまた一歩、前へと歩き始めるのだ……)


(ボクはこの春の日に新しい出会いと、新しい愛を手に入れた……)


Good End お姉さん編
inserted by FC2 system