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季節を抱きしめてのグッドエンディング (3)


記憶喪失の少女・麻由は、かつて主人公が愛した少女・麻由が不慮の死の後、桜の精として転生した姿だった。悲恋桜に伝わる怨霊伝説の呪縛により、このままでは主人公は死の世界へ引きずり込まれてしまうという。そして麻由の妹・麻美も危篤状態で入院しており、この呪縛に引きずり込まれようとしていた。麻由は妹の麻美を救うため、麻美の魂と融合して主人公の前に現れたのだった。
主人公は悲恋桜の伝説が誤りであることを突き止め、麻由を呪縛から解放した。そして麻美も長い眠りから目を覚ました──


(あの出来事からもう一年が過ぎようとしていた……)

(今年の悲恋桜の花は、なぜか優しく感じられる……)
(春の暖かな陽気につられ、ついつい眠りに誘われる……)

桜の枝枝の中に、麻由の姿が浮かび上がる。

主人公「麻由……?」
麻由「今年も花、咲かせに来たんです……」
主人公「呪縛は解けたんじゃ?……ボクもこうして無事だし……」
麻由「今は綺麗な花を咲かせる桜の精…… 優しい春を伝える桜の精になったんです……」
主人公「それはよかった……」
麻由「ううん……お礼をいうのは私…… これからはこの桜の樹も〈悲恋桜〉なんて呼ばれないと思います。春は人と人とが巡り会い、新しい空気を歩み始め、優しい思い出を心に残していく……そんな季節。だから私は春が来た事を告げるために桜の花を咲かせます……」
主人公「……ボクもこの桜が〈悲恋桜〉じゃなくて、〈思い出桜〉になるように真実を伝える努力をするよ…… そうしないと麻由が怨霊になっちゃうからね……ハハハ」
麻由「……ありがとうございます……」
主人公「こっちこそ……」


「せんぱーい!」

その声に我に返った主人公。
目の前には麻由の妹、麻美がいる。

麻美「先輩! 遅れちゃいますよ、集合時間!」
主人公「あ、うん……」
麻美「もう……のんきなんだから。先行きますよ!」

(……麻由の妹は無事に一命を取り留め、今ではこの大学に、ボクの後輩として入学してきた……)
(高校時代、麻由から妹がボクに恋してるっていう話はそれとなく聞いた事があった……)

(麻由の死後、麻由の家族は遠く海外に移り住んでしまったという)
(娘の悲しい思い出が残るこの地に、住んではいられなかったのだろう)
(けれど麻由の妹は、麻由の思い出が残るこの街に……そしてボクの住んでいるこの街に帰って来たかったらしい……)
(そしてあの時、大学受験の下見にと、この土地に来たのだが、不幸にも事故に遭い、意識不明の重体になってしまったのだ……)
(そして後は、ボクが体験した不思議な出来事が展開したわけだ……)


(あれから一年……)
(ボクは悲恋桜に関する研究サークルを創設し、その真実を広めようと動きはじめた)
(そして、その手伝いをあの子……麻由の妹が手伝ってくれている……)


(桜の樹は優しく花を咲かせて、出会いの季節を彩ってくれる……)
(そして、ボクは麻由に励まされたかのように、あの子との新しい一歩を歩み始めたのだ)

(……思い出桜の樹の下から……)


Good End 桜の精編



季節を抱きしめてのノーマルエンディング (2)


グッドエンディング(3)の主人公「こっちこそ……」より続く。


(麻由が桜の精だった……)
(今から思えば、あれば夢だったのかもしれない……)
(けれど、あの後、麻由の妹が奇跡的に助かったのは事実で、今年からの大学に姿を見掛ける時もある)
(ただ、少し残念なのは麻由の妹が麻由であったときの記憶は、全然残ってはいないという事だ……)
(でも、ボクにとってあの数日間の思い出は、心の中から消える事はないだろう……)

(麻由の残してくれた優しい記憶……春の記憶として……)


Nomal:2 麻由の妹は?
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