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かまいたちの夜2
〜監獄島のわらべ唄〜

犯人バレを含みますのでクリアしていない方は途中に
犯人が分かる部分が有ります、御注意下さい。

「わらべ唄編」
ゲームに登場したとして主人公(透)達前作のキャラが三日月島に
招待された。だがそこで島に伝わるわらべ唄に見立てた殺人が起きる。
その犯人と共犯者を透が当てるが、皆で島を脱出しようとする時
島に津波が押し寄せて来た。犯人と共犯者はその場に残る事を決意。
透とヒロイン(真里)達は三日月館に逃げ込む。

〜脱出〜
それから...。僕達は暗闇の中で津波の水がひくのを、ただ待ち続けていた。
何の物音がしなくなっても、僕は部屋の中央で真里を抱き締めたまま
微動もしなかった。そして..そして..そして..どの位の時間がたったのだろう
長い長い静寂の後、僕達はロビーへ行き玄関の扉を開けた。
むせかえるような海のにおい。まだ、地面には十センチほど水が溜っており
大小の魚介類の死骸、ぼろ雑巾のようにちぎれた海草類などが無数に散乱している
割れた瓦礫、へしゃげた鉄パイプ、何だか分からない木の板、半ばから
へし折られた太い樹木...あたりは様々な物の残骸で足の踏み場も無い程
ぐちゃぐちゃになっていた。館を振り返ると津波がなめるようにこそぎとって
しまったのだろう、屋根瓦のほとんど無くなってしまった屋根から
海水がしたたり落ちていた。「この建物が私達を守ってくれたのね」
真里の言葉に僕は大きくうなずいた。
香山さんと啓子ちゃん、可奈子ちゃんもおびえきった表情で外に出てきた。
俊夫さんとみどりさんも、やつれはてた姿を見せた。
最後にやっと美樹本さんが苦笑いを浮かべながら現れた。

半ばから飴細工のように折れ曲がってしまった二つの監視塔を横目に
見ながら、僕達は防波堤の外に出た。森だった場所は巨人が大暴れした
みたいに切り株だらけになっており、青くさい匂いが一面に漂っていた。
丘の上から押し流されてきた木々や岩石が天然のバリケードを築いている上
道も無くなってしまっていて、進むのが容易では無い。

丘の上に村上さんの姿は無かった。僕は今日子さんの言った言葉を思い出した
『神さまは、呪われた岸猿家の血を絶やしたいとお考えだったんだわ』
そうなのだろうか..この島の事件は何もかも神のいたずらのような物だったのだろうか

海岸の惨状は想像以上だった。砂が流出してしまいビーチは無くなってしまっていた
ハーバーの三分の一程は崩壊し、残りもコンクリートが海綿状になってしまって
今にも崩れ落ちそうだ。その上、湾自体が大きくえぐり取られ形状が変わって
しまっている。「透..」真里が僕の胸に頭をつけて泣き出した。僕は、
彼女の髪をそっとなでながら、小林さんが最後に僕達に向かって叫んだ言葉を
思い出していた。『いきなさい』小林さんはそう言った。あの時は
『早く行きなさい』という意味だと思っていたが、あれは『生きなさい』と
小林さんが僕達に教えてくれたんじゃないか..。ぼくは..そう思った..。

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