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幻想のアルテミスのエンディング (生駒良子)
(こうして生駒アクトレス･スクールで起こった一連の事件は幕を閉じた。)
(村岡の犯罪は、芸能界の一大スキャンダルとしてマスコミを大いににぎわせるコトとなった。)
(その騒ぎに巻き込まれる前に、オレはこの学園で、ひとつケリをつけなきゃならないコトをかかえている。)
(そう……オレはここで彼女に出会った。彼女にこの気持ちを打ち明けなきゃならない……)
恭一「良子……いきなり呼び出したりしてゴメンよ。」
良子「ちょっとぉ、今さらナニあらたまったりしてんのよ、もう、このこのっ! ところであたしに用事ってどういうこと? 事件ならぜんぶ恭一さんが解決しちゃったじゃない。」
恭一「わかってる。つまりオレの役目は終わったんだ。今すぐにでもこの学園を去らないといけない……そうだろ?」
良子「まあ、そういうことよね。ちょっと寂しくなるけど……」
恭一「だから良子……その前にどうしても君に話しておきたいことがあるんだ……いいかな?」
良子「え、ええ……なあに?」
恭一「オレ……本当に短い間だったけど、良子と知り合えてとっても楽しかったよ…… もちろん、最初のうちは君がこの学校の生徒だし、オレの助手でもあったから特別な気持ちで見ていたかもしれない。でも、良子のことをもっと知っていくうちに…… 探偵助手としてなんかじゃなく、普通の、一人の女の子としての良子がオレにとって大事な存在になってきたんだ…… だから、その……オレ……」
良子「ちょ、ちょっと……恭一さん?」
恭一「好きなんだ! 良子のことが……もうお別れだなんて、そんなの耐えられないよ!! こんなオレだけど、ずっと付き合ってもらえないかな。その…… 正式な……恋人として……」
良子「……」
■ バッドエンド
良子「恭一さん……ありがとう。気持ちはとってもうれしいけど…… 今までのことを考えてみるとね、あたしたち、いいパートナーになれるなんて絶対に思えないの。もちろん恭一さん、探偵としては優秀よ。でも、恋人ってことになると話はちがうのよね。だから……せっかくだけど、ゴメンなさい! さようなら!」
■ グッドエンド
良子「恭一さん……正直に言うとね、あたしも、これでお別れなんてイヤだなあって思ってたの。だって、恭一さんって、あたしにとっては理想のパートナーだったから…… 恭一さんみたいな人、世界中探したって絶対いない……お別れの時にはそう言うつもりだったの……ほんとよ。だから、なーんか手間が省けちゃったって感じ。アハハ!! ま、そういうわけで返事ならもちろんYES! じゃじゃ馬はもれなくついてくるけどね…… ありがと、恭一さん……ヘヘッ。」
(……オレは東京へもどってきた。良子とは約束したけど、彼女にはまだ学業が残ってる……卒業までもう少し、それまではもとどおりこの事務所で寂しいひとり暮らし……)
(のハズだった。ところが、あの事件を解決を解決したことで、芸能関係を中心にこの事務所のカブは急上昇して……)
(帰ってきたとたんに依頼が殺到。目の回るような忙しい毎日だ。まあ、彼女がいない寂しさを紛らわすにはちょうどよかったが……)
恭一の事務所。誰かがドアをノックする。
(ん? また仕事の依頼かな…… でも『本日休業』ってドアの所に貼ってあるんだし……いないフリいないフリっと……)
再びノックが。
(……ああもう、しつっこいなあ。早く帰ってほしいんだけど……)
「あのー、すみませーん、誰かいませんかぁー?」
恭一「(ん……いたいけな女の子の声! まさか、もしかして!?) は、はーいっ、ただいま!」
現れたのは良子であった。
良子「ヘヘッ、どうせこんなことだと思ってたわ。進歩ないわねえ……」
恭一「りょ……良子!? お前、どうしてここに……?」
良子「あら、お言葉ねえ。そろそろあたしが必要なんじゃないかと思って、わざわざきてあげたんじゃない。」
恭一「でもお前、学園の方は……?」
良子「うん、休学届出してきた。どうせタレントになる気なんて、これっぽっちもなかったし。江里子おばさんとはちゃんと話つけてきたから、心配しないで。」
恭一「はあ……」
良子「ところでさ……しばらくここに置いてくれない? 東京じゃ、他に行くトコなくってさあ。」
恭一「えっ? な、何だよ突然。……ここはホテルじゃないぞ。」
良子「だから、住込みで働くってこと。連日忙殺されてるんでしょ? 噂はきいてるわよ。あたしの探偵助手としての手腕は先刻ご承知よね? ちょっとは役に立つと思わない?」
恭一「うんまあ……そうだな、助手としては気心も知れてるし、願ったりではあるけど……」
良子「よし、決まり! じゃ、この荷物運んでね!」
恭一「えっ……わっ、おい、何だこの山のような荷物は! おまえ、こんなのどこに置けって……」
良子「あたしの部屋の荷物、全部持ってきちゃった。いまさら送り返せないし……何とかなるでしょ?」
(じ……じゃじゃ馬なところは全然変わってないなあ……)
良子「誠にふつつかものですが、何とぞよろしくお願いしまーす!……なんてね、ヘヘッ!!」
《スタッフロール》
■ 後日談
良子「……恭一さん、グラス……」
恭一「ああ……」
良子「……それじゃあ今回の事件解決とお互いのパートナーに……乾杯。」
グラスを合わせる音。
夜景をバックにした良子の姿。
良子「……はぁ……」
恭一「……どうしたんだい、良子。そんなため息をつくなんて……」
良子「ううん、何でもないの……ふと思っただけ……」
恭一「思った、って……何を?」
良子「窓の外を見て。たくさんの人……みんなそれぞれに運命を背負っている。人生って人の数だけ存在するのよね…… そして、私たち探偵は人の人生を調べるだけ……決して変えることなんてできやしない……」
恭一「……しかたないさ。それがオレたち探偵の宿命であり、限界だ……」
良子「……恭一さん……」
恭一「……良子……」
良子「なーんちゃって! アハハ! 恭一さんも名演技なんだから、もう、このこのっ!! あー、でも慣れないことはするもんじゃないわねえ、肩が凝って凝ってしょうがないわ。」
恭一「……なんだよ、言い出したのはそっちだぜ。せっかくその気になってたのに……」
良子「ふーん、その気ってなあに?」
恭一「えっ? あ、い、いや、その……」
良子「あら、恭一さんってば、顔真っ赤にしちゃって、カーワイイ(ハート)」
恭一「あ、あのなあ……」
良子「はいはい……じゃあもう一度乾杯しましょう。今度は、自然体のあたしたちでね。日下部恭一と生駒良子、世界最高の名コンビに……カンパーイ!!」
グラスを合わせる音。
